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国立科学博物館

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大アマゾン展


国立科学博物館の「大アマゾン展」は生態系あるいは自然には多様性があることをおしえてくれるよい機会でした(注1)。生態系について理解するためにはその階層構造に注目するとよいです。

アマゾンは地球上でとくに多様性のある地域なのではないでしょうか。動物・植物・原住民そして気象・地形・地質・河川などがつくりだす物理環境、もしかしたら、こんなにも多様な生態系をのこしている地域は地球上にはほかにはもうないかもしれません。アマゾンは自然の多様性をまなぶために大変貴重な地域となりました。

アマゾンでは実にさまざまな動植物が共存しています。共存できているからこそ多様性があるわけです。共存できなかったら多様性はうしなわれます。

生態系のなかでは食べたり食べられたりということはありますが、これは生きるために生物が食料を補給しているのであって、戦って決着をつけようとしているのではありません。多様性のある世界は、淘汰によって勝者が生きのこり敗者がほろんでいく世界ではありません。

動植物が共存ができるのは彼らがうまく「すみわけ」をしているからです(注2)。たとえば、一般の哺乳類は地上でくらしていますが、サル類は樹上ですごし地上にはおりてきません。菌類、水草、魚類、昆虫類、爬虫類、両生類、哺乳類、サル類、鳥類など、それぞれに生きる世界をもってすみわけています。さまざまな生物がうまくすみわけつつ共生し、全体の系(システム)を統合・維持しているのが生態系といえるでしょう。

このような生態系は、個体あるいは局所にとらわれていると全体像は決してみえてきません。

生態系は複雑な階層構造になっていて、生物はただ単に共存しているのではなく、階層的にすみわけて共存しています。階層構造があるからこそこれだけ高密度な共存ができるのです。

このような階層構造がみえないと生態系は非常に複雑にみえて理解がむずかしくなります。あるいは個体や局所だけをみていると生態系の要素あるいは下部構造しか認識できません。

階層構造に着目することは生態系のみならず、世の中の構造を理解するためにも役立つとおもいます。



▼ 注1
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼注2:参考文献
生態系について理解するためには伊沢紘生さんの本をよく読むとよいです。わたしはかねてから伊沢さんの研究に注目し、伊沢さんの本はほとんどすべて読んできました。

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