国立科学博物館で「大アマゾン展」が開催されています(会期:2015年6月14日まで)。アマゾンあるいは自然の多様性を知ることができる貴重な機会になっています(注1)。

これに関連しておもしろい本があります。伊沢紘生著『アマゾン探検記』です。密林がどこまでもつづく秘境アマゾン。その人跡未踏の奥深くに著者の伊沢さんが入っていったときの最初期の体験がつづられています。

目 次
案内人ホボ
“人食い魚” ピラニアの話
老学者の心配
ある男の人生観
アマゾンに生きる
少年

猟師

ジャングル生活
娘の心
息子と父
ナマケモノはなぜなまけ者か
威風堂々空を飛ぶ
チョウを捕る

裸族訪問
南で、北で
密林の道
ひからびたジャガイモ
緑の魔境の楽しみ方

巨大なジャングルでくらしながら、そこで出会った原住民との交流、さまざまな鳥獣虫魚の観察、釣りのたのしみなどを新鮮な目でとらえています。このようなゆたかな自然をとおしてアマゾン生態系の全体観を感じとることができます。

そしてアマゾンのジャングルには、この大自然のなかで環境と一体になって生活している人々がいました。

今なお西洋文明の影響をうけず、あるいはうけるのを拒絶して、裸で生活する原住民インディオと接触する機会は、長いアマゾン滞在中でもわずかしかなかった。

私の心に強烈な印象を残したものがあった。彼らが、自らの裸身にほどこした鮮やかなペインティングである。

あるときは、闊歩するジャガーのごとく、あるときは、舞うモルフォのように、いずれかの色のいずれかの線や円が、豊かな筋肉の動きに同調し、人を環境に埋没させ、また環境から引きたてた。

環境のなかにとけこみ、一方で環境に対して主体性を発揮する。これが人類の本来の生き方だったのではないでしょうか。

本書が出版されたのは1983年でした。今ではもうこのような人々は地球上にはいなくなったかもしれません。人類の本来の姿がここにはのこっていたのであり、今となっては大変貴重な記録です。

▼ 引用文献
伊沢紘生著『アマゾン探検記』どうぶつ社、1983年12月22日
アマゾン探検記

▼ 注2
伊沢紘生著『アマゾン動物記』とあわせて読んでみると理解がふかまります。
アマゾンの生態系に共存原理をみる - 伊沢紘生著『アマゾン動物記』-

▼ 追記
著者の伊沢紘生さんは、本書に記載されているような過程をへて、このあと、サル類の研究をふかめていったことがよくわかりました。

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