金森博雄著『巨大地震の科学と防災』の第四章「地震波が教えてくれたこと - 多様な地震像」では、本震にひきつづいてやってくる余震と兄弟地震に警戒するようよびかけています。

地震の発生のしかたとして、前震とよばれる小さな地震がいくつかあり、大きな地震(本震)が来て、たくさんの余震が起こるというのが典型的なパターンです。余震は本震よりマグニチュードで1程度小さいのが普通です。ときどき本震と同じ程度のサイズの地震が続けて発生することがあり、「ダブレット」とよばれます。兄弟地震といった感じです。

大地震がおこったあとに余震がおこることは多くの人がすでに知っているとおもいますが、「ダブレット」(兄弟地震)については知られていないのではないでしょうか。本震と同程度の地震がまたおこりえるわけですから厳重な注意が必要です。

余震にしろダブレット(兄弟地震)にしろ防災上の大問題です。本震でひびがはいったりして弱くなった建築物がつよい揺れにふたたびおそわれて今度は倒壊してしまったり、津波で堤防がこわれた町をふたたび津波がおそう恐れもあるからです。地震が1回おこってしばらくして地盤がおちついたようだと安心することはできません。ダブレット(兄弟地震)が1年後あるいは数十年後におこるかもしれないそうです。

2011年3月11日のマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震でも、本震がおこった40分後にはマグニチュード7.5の余震がおこり、2012年12月7日にはマグニチュード7級の地震がおこりました。今後とも余震あるいは兄弟地震がおこる可能性があり、もう大丈夫と油断することはできないとのことです。

そんなことを言われてもとおもいますが、大地震の可能性があり、いつく来るのかわからない以上、いつ来てもよいように準備をしておかなければなりません

また先日のネパール地震では、2015年4月25日にマグニチュード7.8の本震があり、2015年5月12日にマグニチュード7.3の大きな余震がおこりました。余震がおこることについて多くのネパール人に情報がつたえられていなかったために、ひびの入った家にもどっていて余震にあい、家が倒壊して多数の死傷者がさらにでてしまいました。「こんなに大きな地震がまた来るとはおもっていなかった」(被災した住民)。残念なことです。地震に関する広報活動も防災・減災のために非常に重要です



▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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