目 次第1章 人類史は、エネルギー争奪史第2章 温暖化対策に金をかけるな第3章 少子化万歳! - 小さいことが好きな日本人第4章 「水争い」をする必要がない日本の役割第5章 農業・漁業・林業 百年の計第6章 特別鼎談 日本の農業、本当の問題(養老孟司&竹村公太郎&神門善久)第7章 いま、もっとも必要なのは「博物学」
■ 人類史はエネルギー争奪史である
アメリカの覇権は1901年に石油が大量に出たことからはじまりました。アメリカの大国化や覇権については人文科学の方がいろいろ分析していますが、単純に石油の力だったと言いきることができます。先の日米戦争も油ではじまり油でおわったのです。
日本国内をみても徳川幕府にはエネルギーに関する長期戦略がありました。
このようにエネルギーの面からみると歴史がかなりちがってみえてきます。人類史とはエネルギー争奪史であるという仮説をたてると、かくれていた下部構造にこそ真実があったことがわかります。
■ 未来の日本文明は北海道がささえる
地球温暖化問題が大きくとりあげられていますが、温暖化対策に金をつかうことは無意味です。原因はともかくとして温暖化は今後ともすすんでいきます。
それではたとえば日本はどうのるのでしょうか? 温暖化した未来では北海道の気候が今の関東平野ぐらいの気候になります。そして北海道が大穀倉地帯になります。北海道は、東北6県プラス茨城県・栃木県という広大な面積があり、日本文明にとっての切り札になります。首都を札幌にうつしてもよいです。
いまは大都会ばかりが繁栄していますが、将来は、こういった自然の恵みのある地域が強くなるのはあきらかです。情報は、インターネットでどこにでもいきわたりますから情報の問題ではありません。
そもそも今日の日本文明が発展できたのは、日本中の英知と力を集中させることができる関東平野があったからです。この関東平野は徳川幕府が湿地帯だった関東地方を「関東平野」につくりかえたのです。この関東平野のインフラが日本文明を今日にいたるまでささえてきたのです。したがって未来は、北海道が「第二の関東平野」になって将来の日本文明をささえることになります。
地球温暖化のもとでは、南北に長い国土をもつ日本は大変有利な条件にあります。国土が小さかったり東西に長かったら環境変動についていけません。それにくわえて日本人は、環境・食料・エネルギーに関する対策をこれまでもしてきた民族です。人類の文明史のなかで、山の木を植林でまもろうとしたのはおそらく日本文明だけでしょう。したがって日本文明は今後とも崩壊しません。
それに対して、二度と回復することのない「化石地下水」のくみあげなどを継続しているアメリカの農業はいずれたちゆかなくなることはあきらかです。
■ インフラは文明をささえる
インフラには人に見えないという意味があります。インフラ・ストラクチャーとは「人には見えない構造物」のことです。文明をささえている下部構造は意識しないと見えない宿命をもっていますが、インフラは文明を下部からささえています。
このようなインフラは自然環境をそのままつかうのではなく、自然をいかしながらもそれを改良してつくります。「環境派」の人々も人間の手をくわえたほうがいいことに気づきはじめました(注)。
■ 五感をはたらかせる
これからは概念で理論を構築する分野ではなくて、博物学のように五感をはたらかせるやり方が必要です。博物学のように、帰納的に下からつみあげる学問は普遍性をえることができます。今まで見えてこなかったこと、あるいは見なかったことが見えてくるようになります。
このような博物学的な感覚と、それから第一章で述べたモノからかんがえる方法、この二つを組みあわせて物事をとらえることが、今後の日本あるいは世界の行方をきめてゆくうえで必要なことです。
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どうでしょうか。この斬新な視点。説得力があるとおもいますがそれ以上におもしろい。まずは本書を読んで自分なりに推理をたのしんでみるのがよいでしょう。
▼ 引用文献
養老孟司・竹村公太郎著『本質を見抜く力 - 環境・食料・エネルギー -』(Kindle版)PHP研究所、2008年9月12日
本質を見抜く力―環境・食料・エネルギー PHP新書
▼ 注
わたしの意見では、国立公園のように自然をそのまま保全する地域を確保したうえで、別の地域では自然環境をいかしながらも手をくわえるのがよいとおもいます。
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