ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』における神々の世界は、人類が自我をもつ以前の世界(宇宙)をあらわしています。
人類は、自我をもつ以前は、宇宙(自然)の法則によって支配され、宇宙(自然)の中でただ生かされているだけの存在でしたが、神によって自我をあたえられてからは、その自我を拡大しながら、感情をそだて、英雄を生みだし、そして文明をきずきました。
しかし一方で、本来もっていた安らぎをうしない、矛盾と苦悩をかかえこむことになりました。
こうして人類の物語が生じてきました。
人類が、本来の安らぎの世界にもどるためには、自我から解き放たれなければなりません。自我から人類が解放されたとき、ふたたび、安らぎにみちた本来の世界が再生されます。しかしそれは人類の物語がおわることも意味します。
ワーグナーは、楽劇『ニーベルングの指輪』という物語を通して、法則と自我と安らぎについておしえてくれています。くりかえしくりかえしこの楽劇を視聴していると、このような奥深い世界からのメッセージをうけとめることができます。
参考文献:ポール=ハリントン著『ザ・シークレット TO TEEN』角川書店、2010.6.23。