本多勝一著『極限の民族』をよむと、イニュイ民族(カナダ=エスキモー)、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民のそれぞれの民族について知ることができます。それは同時に、彼らの生活様式と彼らをとりまく自然環境を理解することでもあります。

それぞれの民族はそれぞれに知恵をはたらかせて、衣服や道具や家をつくりだし、狩猟や牧畜の方法を開発して、その地域独自の自然環境に適応して生活していました

民族(人間)と自然環境とのあいだには相互作用があり、その相互作用のなかから衣服や道具や家や方法などの生活様式が生まれてきたということを読みとることができます(図1)。

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図1 民族と自然環境との相互作用により独自の生活様式が生まれた。


このように民族と生活様式と自然環境とをセットにしてひとつの体系(システム)としてとらえるとわかりやすいです。
 
そしてこの体系においておこっている相互作用は、自然環境から民族への作用と、民族から自然環境への作用という方向のちがう2種類の作用がみとめられます。自然環境から民族への作用は「インプット」民族から自然環境への作用は「アウトプット」とよぶこともできます(図2)。

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図2 民族と自然環境とのあいだでインプットとアウトプットがおこっている。


これらの作用をとおして情報の流れがおこり、それぞれの民族は無意識のうちに「プロセシング」をおこなって知恵をはたらかせて生活様式を開発してきたといえるでしょう。つまり、知恵をはたらかせるとは情報処理をおこなうことだといいかえることができます。

このように「民族-生活様式-自然環境」をひとつの体系(システム)とみなして本書を読みなおしてみると、一見複雑でわかりにくい「異民族」の世界がよく整理されて理解しやすくなるとおもいます。


▼ 引用文献
本多勝一著『極限の民族』(本多勝一集 第9巻)1994年2月5日
極限の民族 (本多勝一集)  

▼ 関連図書


▼ 注
人がおこなうアウトプットとはプロセシングの結果を顕在化させることであり、書いたり話したりすることだけでなく、表現したり、つくったり、生みだしたり、成果をあげたり、行動したりすることもアウトプットであるととらえることができます。

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