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アンハングエラ(翼竜目アンハングエラ科)
水面すれすれに飛んで魚をとって食べていたらしい(注1)

東京・上野の国立科学博物館の特別展「大アマゾン展」では、第1室で、アマゾンで産出した化石を紹介しながらアマゾン形成の自然史(進化)について展示していました。要約するとつぎのとおりです。

■ 約1億数千万年前(白亜紀初期)
ゴンドワナ大陸とよばれる巨大な大陸が分裂をはじめ、太平洋がひらきはじめた。

■ 約1億年前までに
南米大陸とアフリカ大陸が分離した。

■ 6500万年前〜3500万年前(新生代の始めの暁新世〜始新世)
アマゾンは温暖期であった。多様な生物相からなる熱帯雨林が存在したらしい。

■ 約3000万年前
地球規模の寒冷化がおこり、多くの生物が絶滅したらしい。

■ 約2000万年前までに
ナスカプレートの沈み込みが活発化してアンデス山脈が隆起し、アマゾン西部に湿地や湖があらわれた。

■ 約1000万年前
現在のアマゾン川に相当する東向きの流れが確立、現在いきている多くの生物の系統があらわれた。

■ おそくとも300万年前までに
パナマ陸橋の隆起により、北米大陸と南米大陸がつながった。両大陸のあいだで動物が移動した。さまざまな系統の絶滅もひきおこしたらしい。

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サンタナ層の魚類化石(注3)


会場では、アマゾン南東部のアラリペ高原に見られるアラリペ層群(約1億1千万年前、白亜紀中頃)からえられた化石群を展示していました。アラリベ層群は、大西洋がひらいたときにはじめて侵入してきた海の海際でたまった地層群です。そのなかにある、淡水の湖でたまったクラト層と、その後ラグーン(潟湖)でたまった上位のサンタナ層には化石がふくまれ、「化石鉱脈」として世界的に有名です。


今回の特別展の主題ではありませんでしたが、このような自然史の探究は歴史的・時間的に自然をとらえるということです。自然史は、直接は見ることができないので想像しなければならず、現在の自然を空間的構造的に見ることよりは一歩ふみこんだ認識になるかもしれません。
 
空間的に現在みられる多様性がどのような歴史で生みだされたのかを知ることは、未来を予想するためにも大切なことです。
 
空間的構造的に対象を見たら、つぎには歴史的時間的にもとらえなおしてみるとおもしろいとおもいます。


▼ 注1
アンハングエラは翼竜である。翼竜は、中生代に生息した空を飛ぶ爬虫類であり、サンタナ層はとくに大型の多様な種類をたくさん産出することで知られている。見た目には恐竜とはずいぶんちがうが、系統的にはかなり近縁の仲間である。

▼ 注2
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼ 注3
南米の中生代魚類を代表する多様な化石。主な種類は、硬骨魚類のうち原始的な全骨類と、進化した真骨類のなかでは原始的な仲間、およびシーラカンス類からなっている。海生動物が見つからないことから、生息環境は淡水〜汽水環境で、地中海の前身であるテチス海の西端と浅い海で時々つながっていたとかんがえられている。

▼ 参考文献
『大アマゾン展』(公式ガイドブック)、発行:TBSテレビ、2015年3月13日

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