情報処理は、情報のインプット→プロセシング→アウトプットという3つの場面からなっています。本書でとりあつかっている「速書法」は、これら3場面の中のアウトプットの技法のひとつです

アウトプットには文を書く以外に、絵や図を描いたり、音や声を出したり、ジェスチャーや行動でしめしたりというように様々な方法がありますが、アウトプットの中でもっとも基本的な方法は文を書くことであり、ツイッターやブログ・フェイスブックなどが発達してきたことを見ても、書くことによってアウトプットをするケースはとても多いとおもわれます。このような状況下で、いかに速く書くかということは多くの人々にとっての関心事になってきています。

本書の内容は以下のとおりです。
第1章 第1歩は「質より量」の戦略で
第2章 身近なことを書くこと
第3章 学習で知的感動を引き起こせ!
第4章 頭を整理してスピードアップ
第5章 潜在意識で想像力を高める
第6章 8原理で文章を構築する
第7章 6段階で高速文章出力
第8章 見識力で速書法のレベルアップ
第9章 ニュースを活かして速書力強化
第10章 3原則で速書力衰退を救う
第11章 6側面で文章を点検する
第12章 文章を豊かにする想像力訓練

著者は、「2段階方式」で書くことをすすめています。ひとまず大ざっぱなアイデアにしたがって下書きをしておき、意識化(潜在意識)でそれらを熟成させます。そして、別なチャンスに編集して完成させます。最初から一気に完成させようとして意気込んで取りかかるより、2段階方式でおこなう方が全体としての作業時間は短縮でき、結果的に「速書」になります。

私の場合は、データやアイデアをまず箇条書きで書き出して、その日は寝ます。そして、次の日に一気に文章化します。寝ている間に潜在意識が情報を処理・整理してくれるのでとても効率的です。著者によれば、「潜在意識による並列的な編集」→「速書による直列的な表現」ということです。 ここでも、インプット→プロセシング→アウトプットという情報処理の3場面を意識した方がよいです。

このようにして、書くことにより様々な情報が統合され、体験がひとかたまりにまとまります。内面体験もまとまり心が整理されます。また内容を、1〜2行で表現することを「圧縮表現」とよび、「圧縮表現」をしていると「見識ファイル」が整理されます。たとえばブログの本文を書くのに対して、見出しをつけるのは「圧縮表現」です。

そもそも、書くということはメッセージをつたえることです。言葉はメッセージをつたえる手段です。文字にする以前にもっていたメッセージを言葉にのせて相手に伝達しているのです。つたえたいメッセージを短時間で明確に相手につたえることが「速書法」の目標であり、したがって速く書きだすだけではなく、適切な「圧縮表現」ができることが重要になってきます。

速書は、「通常の範囲の意識(表面意識)ではない潜在意識の活性化と運用によって扉がひらく」と著者はいいます。潜在意識の活性化は「速読法」にもつながります。「速読法」は情報処理におけるインプット、「速書法」は情報処理におけるアウトプットに相当し、「速読法」と「速書法」とをあわせて訓練することにより相乗効果が生まれるとかんがえられれます。栗田博士の「速読法」をまなんだうえで本書に再度とりくむと効果が一層あがるでしょう。
 

文献:栗田昌裕著『栗田式驚異の速書法ドリル』住宅新報社、2007.1.21発行。
栗田式驚異の速書法ドリル (能力開発シリーズ)