本多勝一著『日本語の作文技術』の第七章では段落について解説しています。
本多さんは、段落についてつぎのたとえをつかって説明しています。
段落 — つまり行がえ(改行)は、(中略)組織を集めて身体の小部分をつくることである。たとえば足という「章」は、小指・親指・すね・もも・かかと・・・といった小部分からできている。それは決して「すね・もも・血液・・・」という構造ではない。血液はそれ以前の組織としての「文」(センテンス)だからである。ということは、段落はかなりのまとまった思想表現の単位であることを意味する。足でいえば、各部分の境の関節が改行である。
つまり、ひとつの段落は、ひとつのまとまった思想表現になっていなければならないということであり、いいかえれば段落がいいかげんな人は、思想のひとまとまりができていないということです。
したがって、
だいぶ長くなったからそろそろ改行しようか
などということは馬鹿げているということになります。
そして段落があつまって章がつくられることをのべています。
長い文章や単行本だと、次に来るのが「章」である。また人体にたとえれば、これは足・腹・頭といったおおきな部分だ。(中略)人体という全思想を形成するための大きな構想である。
関節でくぎられたそれぞれの部分があつまって足ができているように、いくつかの小さな思想のまとまりがあつまって、もっと大きな思想が形成されるということです。
またつぎのようにものべています。
段落がそのようなものであれば、ときには一行で改行することもあるかわり、延々と何ページにもわたって行をかえぬこともあるのは当然である。
つまり段落は、物理的な長短で決まるものではないことはあきらかであり、思想的なまとまりをひとつの単位にしてあくまでも表現しなければならないということです。まとまりと単位、つまり ひとまとまりという点に注目してください。
*
本書ではのべられていませんが、段落がひとまとまりになっているかどうかを判断する方法としては、その段落に、たったひとつの見出しがつけられるかどうかをためしてみます。実際に書く必要はありません。ひとつの見出しがつくようでしたら段落として適切であり、2つ以上の見出しがつくようでしたら、それは2つ以上の段落にわけるべきです。逆に、複数の段落におなじ見出しがつくようでしたらそれらはひとつの段落に統合すべきです。
またひとまとまりの「思想」という言い方が大げさに感じられるようでしたら、ひとまとまりの情報といいかえてもよいです。
ひとまとまりの情報とは情報用語では「ファイル」とよびます。本ブログでもくりかえしのべているようにファイルの形成・操作・処理が情報処理の基本です(図1)。


図1 ファイル(情報のひとまとまり)のモデル
情報処理の結果を、日本語の作文技術をつかってアウトプットしていく場合、このファイルが段落としてあらわれてくるということになります。さらにいくつもの段落があつまってひとつの章が形成されるということは、情報処理の立場からいうと、いくつもの小さなファイルがあつまってもっと大きなファイルが形成されるということです。
このように段落をファイルとしてとらえなおすことには大きな意義があり、ファイルを意識してつくり処理していくことにより、情報処理あるいは日本語の作文技術によるアウトプットを効果的にすすめることができます。
■ まとめ
- 思想あるいは情報のひとまとまり(単位)をひとつの段落にする。
- 情報のひとまとまりとはファイルのことである。
- ファイルを意識してつくり処理しながら、日本語によるアウトプットをすすめる。
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