池上彰著『池上彰と考える、仏教って何ですか?』はつぎの3つの章から構成されています。これは、3段階をふんで理解をふかめていくためのサンプルとしても有用です。

第一章 仏教って何ですか?
第二章 仏教発祥の地インドへ。ダライ・ラマ法王との対談
第三章 仏教で人は救われるのか? 日本人にとっての仏教とは?

第1章では仏教を大観し、その全体像・概略をつかみました。つぎの第2章では、ダライ・ラマ法王に会いにインドまで行きました。つまり現地取材をしました。そして第3章では、第1章と第2章の両者をふまえて仏教について考察をしました。

この方法は、図1のようにモデル化することができます。

150117 問題解決の3段階
図1 理解の3段階


1. 大観
第1の段階では、対象の細部にこだわるのではなく、あくまでも大局をみて、全体構造を理解します。特定の部分のみに注目するのではなく、対象の全体を心のなかにまるごとインプットすることが大事です。

そのためにはなるべく時間をかけずに、対象を一気に見てしまった方がよいです。短時間で一気に見ることによって、大局や構造がわかるのです。


2. 取材
大局がわかったら、今度は、関係者に直接あって取材をします。あるいは、現地に行って自分の目で見てたしかめます。

本書の場合は、第1段階で仏教の大局をとらえてから、第2段階のダライ・ラマ法王の話へとつづきました。第1段階があったからこそ、第2段階がより一層ひきたちました。どちらか一方ですと効果は小さくなります。

第1段階では大局を見たのに対して、第2段階はむしろ局所に入りこみます。

そのためには、今度は、時間がかかってもよいのです。むしろ時間をかけるべきです。実際、インドまで行くのには長い時間がかかり、また、ダライ・ラマ法王に面会するまでにもかなりの時間またされたそうですが、それでいいのです。

何でもかんでも速くやればよいというわけではなく、第2段階の性格がわかっていれば、池上さんのように、時間がかかっても余裕であり、待たされてもイライラすることはありません。

このようなやり方は旅行法でもあります。


3. 考察
そして、第1段階と第2段階の両者をふまえて考察をします。大局と現地取材とを組みあわせることによって、第3段階が生きてきます。
 



以上の3段階は、課題に関して認識をするとき、あるいは問題を解決するためのモデルとしてつかえます。

つまり、第1段階では大局を見て、第2段階では局所に入りこみ、第3段階では対象の本質にせまります。それぞれの段階の性格のちがいに注目して、場面を明確に転換することが大切です。この方法のポイントは図2のようにモデル化できます。

150116 問題解決の3段階
図2 3段階のポイント


本書で、3つの章をつかって池上さんが具体的にしめした方法は正攻法といえるでしょう。認識や問題解決のサンプルとして参考にするとよいとおもいます。



▼ 文献
池上彰著『池上彰と考える、仏教って何ですか?』飛鳥新社、2014年10月24日


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