『池上彰と考える、仏教って何ですか?』は、仏教の誕生、日本への伝来から、葬式や戒名の意味、新興宗教まで、仏教の基礎知識についてとてもわかりやすく解説しています。
そもそも仏教は、古代インドにあったバラモン教の中から生まれてきました。
仏教は、古代インドのバラモン教の伝統の中で生まれ育ったブッダが、バラモン教を超える宗教として生み出したものなのです。
ブッダの教えの要点はつぎのとおりです。
「諸行無常」「諸法無我」「一切皆苦」。この三つを、ほかの宗教にはない仏教の象徴的な教えという意味で三法印と呼びます。これに「涅槃寂静」を加えて四法印と呼ぶこともあります。「諸行無常」という真理こそ、ブッダの基本的な教えのひとつです。諸行(あらゆる物事)は無常(同じままとどまることはない)であるということです。諸行無常とともに仏教の基礎となるのが「諸法無我」。すなわち、私というものに実体はないということです。実にこの世は、思うにまかせない辛いこと、苦しいことだらけです。この考え方を「一切皆苦」(すべては苦である)といいます。苦しみを完全に抜け出した状態を「涅槃寂静」と呼びます。つまり、煩悩の炎を吹き消せば、私たちは心の安らぎを得ることができ、涅槃、すなわち悟りに至ることができるのです。ブッダは、人は死んでも何か別の生物に生まれ変わるという輪廻転生の考え方をベースに、涅槃寂静を目指す教えを説きました。
ブッダの死後、大乗仏教が生まれました。
ブッダの時代のルールをそのまま守るべきだという保守派(上座部)と時代に合わせてルールを変えていくべきだという改革派(大衆部)の二つに分裂していきます。上座部はスリランカに伝わり上座部仏教となり、大衆部は大乗仏教へと変化していきました。
日本には、中国のフィルターを通して大乗仏教がつたわりました。
聖徳太子は中央集権国家をつくるため、当時最新の外来宗教であった仏教を基盤にしようと考えたのです。聖徳太子は現在の大阪市にある四天王寺をはじめとする寺院を建立し、日本仏教の礎を築きました。
インドでは、大乗仏教が密教へ発展しました。
インドで生まれた仏教が、より多くの人に救いをもたらす大乗仏教へと発展したのと前後して、仏教に刺激を受けたバラモン教がインド土着の信仰を吸収してヒンドゥー教へと姿を変えて勢力を伸ばしました。すると仏教の側も、庶民に人気の高いヒンドゥー教の儀式や信仰を取り入れるようになりました。その結果として発展したのが密教です。
密教は、空海によって日本につたえられました。 日本では、その後、仏教は独自の発展をしていくことになります。
最澄は八〇六年に比叡山延暦寺で天台宗を開き、空海は八一六年、高野山金剛峯寺で真言宗を開きました。
本書では、さらに、「鎌倉仏教」、「葬儀仏教」、「檀家制度」、「新興宗教」などについて説明しています。
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このように、本書は、仏教の概要を歴史的に解説しています。大ざっぱに見るとつぎの通りです。
ブッダの教え → 大乗仏教 → 密教
インドでは、つぎの順序があります。
バラモン教 → 仏教 → ヒンドゥー教
これは、つぎの一神教の順序とあわせておぼえておくとよいでしょう。
ユダヤ教 → キリスト教 → イスラム教
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『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』では、世界の宗教を、世界地図のうえで地理的・空間的に見ることができました。
一方、本書では、仏教を基軸にして、今度は、歴史的な流れをとらえることができます。
歴史的な見方もできると、本来は歴史的なるものが、世界地図上では空間的にひろがって見えていることもわかってきます。
このように、地理的・空間的な分布を地図上でおさえる一方で、歴史的・時間的にも情報を整理してみると、物事の理解は一層すすみます。
▼ 文献
池上彰著『池上彰と考える、仏教って何ですか?』飛鳥新社、2014年10月24日▼ 関連記事
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