国立民族学博物館のオセアニア展示は、展示空間が大きく、非常に充実しています。ここでは、地球上のほかの地域とはあきらかにちがう、海洋地域への人類の移動と拡散の歴史を想像することができます。
海がほとんどの面積を占めるオセアニアには、大小数万をこえる島々が点在しています。ここでは、発達した航海術をもち、根栽農耕をいとなむ人々がくらしてきました。
人々の移動と拡散についてはつぎのように説明していました。
今から5万年前は、海面が今よりも低く、多くの地域が陸つづきになっていて、東南アジアからの移動がしやすかった。ラピタ土器が見つかる島々をたどると、人々がメラネシアを通ってポリネシアへ移動したことがわかる。高度な航海術(スターナビゲーション)をつかって移動することができた。
チェチェメニ号
(航海や漁撈につかわれるカヌー。3000キロメートルの航海記録をもつ)
オーストラリアやニューギニアでは4〜5万年前から人々が住みはじめ、また、今から3300年前ごろには、根栽農耕文化をもつアジア系の人々がオセアニア全域の島々にひろがり定住したそうです。
このようなことを想像するだけでも、オセアニアが、大陸地域とは基本的にちがう異色な地域であることがよくわかります。地球上の多様性を知るためにも、オセアニアは重要な位置を占めるのではないでしょうか。
なお、オセアニアの人々がどこから来たかについて、東南アジア起源説ではなく、南米起源説をとなえた学者もかつてはいたそうですが、現在では否定されているそうです。