仏教、神道、キリスト教、イスラム教の要点を説明した、世界の宗教の入門書です。世界のうごきをとらえるために、宗教のことを理解しようと主張しています。どこかの宗教に入ることをすすめる本ではありません。

最初の方にでている「世界の宗教分布マップ」がもっとも役に立ちます。

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世界の宗教分布マップ 

これをよく見て、地球上での各宗教の分布をおさえてから本文を読むとよいでしょう。本文は対談になっていますが、各章のおわりに「インタビューを終えて」と題してまとめがしてありますので、ここをよく読むとわかりやすいです。

上の分布図を見れば、宗教とは元来は地域的なものであることがよくわかります。これは、ひろい意味のすみわけと言ってもよいかもしれません。宗教には分布範囲があり、それぞれの分布範囲のなかにおいて、その宗教にもとづく独自の文化がはぐくまれてきました。

また、宗教から気候風土が見えるそうです。

どの宗教にも、それぞれの土地の気候風土が反映しているのではないでしょうか。

たとえば中東の砂漠地帯では、人間は本当に無力な存在で、ちょっとした砂嵐に巻き込まれただけで、あっという間に死んでしまいます。大自然の恐ろしさを、ひしひしと感じさせる風土です。(中略)

神様によってすべてが創られているとする一神教の厳しさは、あの砂漠の中だからこそ生まれ、育ってきたものでしょう。

それに対して、熱帯についてはつぎのようにのべています。

人間を含めた生き物はあっという間に死ぬけれども、次々に新しい生命が生まれてもきます。(中略)

輪廻転生とは、そのような熱帯の自然の中から生まれた思想なのではないでしょうか。

このように、世界の宗教をとらえるときには、地理的空間的な分布を知り、それを、その地域独自の自然環境とむすびつけて理解するとわかりやすいとおもいます。


▼ 文献
池上彰著『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』(文春新書)文藝春秋、2011年7月20日


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