国立民族学博物館のヨーロッパ展示から、ヨーロッパは伝統的に麦作農業の地域であることがわかり、一方、日本展示から、日本は稲作農業の地域であることが対照的にわかりました。
また、その他の展示を見ると、麦作は、ヨーロッパから東の地域へとひろがり、稲作は、日本から西の地域にひろがっていることがわかりました。
そして、南アジアが、麦作と稲作の境界地帯になっています。したがって、このあたりの人々(インド人やネパール人)は、伝統的・歴史的にパンも食べますし、ライスも食べます。インドの代表的なパンは「ナン」です。
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実際、わたしは、西ネパールに行ったときに、昼はライスを食べ、夜はパンを食べる人々に出会いました。そこでは、ライスとパンが半々でともに主食となっていたのです。
図1 ユーラシア大陸の麦作地域と稲作地域のモデル
麦作地域は、ヨーロッパから南アジアまでひろがり、稲作地域は、日本から南アジアまでひろがっています。
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これに、さらにつけくわえると、ヨーロッパは、実際には〔麦作+牧畜〕地域であり、日本は、〔稲作+漁撈〕の地域でした。したがって、ヨーロッパ人は、パンにバターをぬって食べ、日本人は、炊いた飯に魚をのせて食べます。
すると、南アジアではどうでしょうか?
南アジアでも、牧畜はさかんにおこなわれています。したがって、つぎのくみあわせが本当の姿です。
〔麦作+牧畜〕あるいは〔稲作+牧畜〕
〔麦作+牧畜〕の人々は、パンにバターをぬって食べています。インドやネパールでよく見かけます。
一方、〔稲作+牧畜〕の人々もいます。稲作からはライスがつくられ、牧畜からはミルクやバターやヨーグルトができます。したがって、〔稲作+牧畜〕の人々は、ライスに、ミルクあるはヨーグルトをかけて食べることがよくあるのです。
南アジアあたりを旅行して、ライスにミルクやヨーグルトをかけて食べている人々を見て「びっくりした」と言っている日本人がときどきいますが、びっくりする必要はありません。これは変な習慣でもなく、ましてや貧しいからそうしているのでもありません。〔稲作+牧畜〕という半農半牧を反映しているのであり、その背後には、それに適した自然環境があるのです。
わたしは、ネパールで2年間くらしていた間に、ヨーグルトあるいはミルクをライスにかける食文化にすっかり慣れました。
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以上から、図1のモデルを提案することができます。これは、国立民族学博物館の展示を大観したことによって想像できたことです。このようなことは、ユーラシア大陸を旅行してみてもわかるかもしれませんが、まずは、この博物館を見学してみるとよいとおもいます。
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