『地図と写真から見える! 日本の街道 歴史を巡る!』は、日本全国のほとんどの街道を、約100枚の現代地図や絵図で紹介した本です。街道別(ルート別)の国内旅行ガイドとしてつかえます。東海道・中山道・甲州街道がわかる 40cm×50cm の巨大マップもついています。

普通の旅行ガイドは地域別(エリア別)になっていますが、これは街道というルート別になっているのが最大の特色です。

ルートとは道であり、たどっていく線です。そこには流れがあり、物語が生まれ、歴史の想像がふくらみます。本書で、気にいったルートをたどってみるとおもしろいです。

たとえば、甲州街道は、「家康がつくった避難ルートであり、江戸城からの逃げ道」だったそうです。甲州街道は、江戸城の裏門といわれている半蔵門からはじまります。ルート上には、さまざまな安全策がとられていました。

また、長崎街道は、「江戸に大陸文化を運んだ街道であり、鎖国中に開かれた異文化交流の道」でした。別名「シュガーロード」とよばれ、江戸時代は大変貴重だった砂糖を運搬しました。街道沿いでは、カステラからはじまり、ヨウカン・丸ボーロ・千鳥饅頭・金平糖などの砂糖をつかったあまい菓子がつくられるようになりました。

第5章では、江戸時代の旅の持ち物も解説してあり、現代の旅行でも参考になります。

このように、本書は、従来の旅行ガイドとはちがう視点をおしえてくれる本です。興味のある街道があったら、実際に旅行してみるとあらたな発見がきっとあるとおもいます。

さらにおもしろいのは、本書を大観すると、たくさんのルートがあつまってネットワーク(街道網)をつくっていることが見えてきます。ネットワークがつくりだす日本列島の大きな空間がとらえらます。

線があつまりネットワークになると、その世界は空間になります。一次元が二次元・三次元になるのです。この次元が高くなるおもしろさも味わってみるとよいでしょう。


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