旅行にでかけると、実にたくさんのあたらしい体験ができます。できればそれらについてメモをとって、家にかえってから、体験をおもいおこせるようにしておきたいものです。

何かのメモをとるとき、多くの場合は、自分の関心のある物事のみに注目して、それについてのみメモをつけるかもしれません。それは、自分の関心のある部分だけを、その空間のなかから切りとっているようなものです。しかし、せっかく旅行に行ったのに、これはもったいない話です。もっと幅広く見聞きした方がよいでしょう。

旅行先では、さまざまな印象的な場面に遭遇します。そのよう場面で、自分の五感を総動員して、自分が存在する空間全体をしっかりとらえます。対象だけではなくその周囲も同時に見ます。つまり、その時その場の全体を体験します。

実際、うつくしい風景に接したときには誰もが五感を総動員しています。局所だけでなく、その周囲もふくめて全体的に見ています。中心視野だけではなく周辺視野も同時につかっています。

メモは、そのような、その時その場の全体的で新鮮な体験を想起できるような言葉にするとよいです。その時のその場の体験に、シンボリックなラベル(標識)をつけてみるのです。

たとえば、iPhone の音声メモ機能をつかえば、移動しながら行動しながらでも、簡単にメモをとることができます(テキストで記録されます)。便利な時代になりました。

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このようなメモ(ラベル)を書く作業自体がひとつの情報処理の過程になっています(図1)。つまり、五感を総動員して現場を体験することはインプットであり、感動したり理解したり記憶したりすることはプロセシング、メモ(ラベル)を書きだすことはアウトプットです。

141224 五感→感動→メモ
図1 メモを書きだす作業は情報処理の過程になっている。


そして、iPhone に1件のメモがファイルされるごとに、体験のひとまとまりのファイルができることになります。1回の情報処理(1回のアウトプット)により1個のファイルができていきます。1つのメモが1つの体験に対応します(図2)。

141224 メモ&体験
図2 体験のファイルができる。メモは体験のラベル(インデックス)である。


すると、このようなメモは単なる記録ではなく、体験を想起するためのキーワード(検索語)になります。メモは単なる言葉ではなく、体験を想起するための手段(インデックス)となるのです。

旅先では、スマートフォンのアプリをつかって積極的にメモをとるとよいでしょう。すると、おのずとメモのリスト(ファイル)が蓄積されてきます。後日、そのメモを見なおすことにより、たのしかった旅行の場面・体験をいつでも想起することができます。これは第2の旅行と言ってもよいかもしれません。


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▼ 参考文献
栗田昌裕著『絶対忘れない! 記憶力超速アップ術』(日文新書)2010年5月28日