ミステリー・テレビ映画『刑事コロンボ』でコロンボを演じたピーター=フォークは、『ピーター・フォーク自伝』(注)のなかで、アイデアが生まれたときのあるエピソードについてのべています。
“糸口”のヒントはどこに転がっているかというと、意外な出どころだったりする。たとえば歯医者の待合室、しかも開業したばかりの歯医者だったり。手持ちぶさたのわたしは待合室のラックを眺めた。(中略)『ポリス・チーフ』誌だ。表紙の見出しには“歯形の物証”とある。それから5年ぐらい経ったころ、わたしたちは『完全犯罪の誤算』って題された脚本を手にした。(中略)なにより残念なことは、決め手になるオチがもうひとつ甘かったことだった。引き出しで寝かせておいた『ポリス・チーフ』誌を取り出したのは、まさにこのときだ。
こうして、『刑事コロンボ』新シリーズのなかの傑作『完全犯罪の誤算』が誕生しました。予期せぬところでえられたアイデアが、実に、5年後に生かされたのです。
すばらしい糸口にはいつどこで、どういった形で巡り会えるのかわからない。本当にいいネタっていうのはすごく稀だし見つけにくいもんだけど、なにかの拍子に現れるもんだ。
貴重な言葉です。
ピーター=フォークは、刑事コロンボをただ単に演じていただけではなく、作品づくりに積極的にかかわっていました。
▼ 注:文献
ピーター・フォーク著『ピーター・フォーク自伝 「刑事コロンボ」の素顔』東邦出版、2010年12月1日
「刑事コロンボ」に命をふきこんだ、ピーター=フォークの波乱にとんだ人生がつづられています。