METライブビューイング(新宿ピカデリー)でヴェルディ作曲『マクベス』を視聴しました。

指揮:ファビオ=ルイージ 
演出:エイドリアン=ノーブル
出演:アンナ=ネトレプコ(マクベス夫人)、ジェリコ=ルチッチ(マクベス)、ルネ=パーペ(バンクォー)、ジョセフ=カレーヤ(マクダフ)

オペラ『マクベス』は、ウィリアム=シェイクスピアの戯曲『マクベス』を原作とし、イタリアの作曲家ジュゼッペ=ヴェルディが全4幕のオペラにした作品です。1847年にフィレンツェで初演され、1865年に大幅な改訂がなされ、今日ではこの改訂版の方がより頻繁に上演されています。

ヴェルディは、シェイクスピアを原作とするオペラ『マクベス』『オテロ』『ファルスタッフ』を作曲しており、いずれも名作となっています。

原作の『マクベス』は、1606年頃にシェイクスピアによって書かれた戯曲です。勇猛果敢ですが小心な一面もある将軍マクベスが、妻と はかって主君を暗殺し王位につきましたが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政をおこない、貴族や王子らの復讐にたおれます。『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』とならぶシェイクスピアの四大悲劇のひとつです。

オペラでは、マクベスよりもマクベス夫人を中心にしてドラマが展開していて、マクベス夫人の心の内面(深層意識)にある欲望が悪魔のような歌声で見事に表現されていました。

一方で、みずからの手を実際によごしたのは夫のマクベスであり、運命に翻弄されていく姿がよくあらわれていました。

こうして、マクベス夫人の内面世界と夫マクベスの現実の行為の両者が、マクベス夫人の歌声と夫マクベスの演技とのコントラストによってうかびあがり、そして、音楽と演技とが融合して一本のストーリーになっていく様子がとてもおもしろかったです。総合芸術の醍醐味がありました。

それにしても、このようなおそろしい人間の内面世界をドラマチックにえがきあげることができるヴェルディは、やはり西洋音楽史上にのこる大作曲家といえるでしょう。オペラといえば、情緒あるうつくしい音楽で聴衆をたのしませるのが普通ですが、この作品は異質です。

本作の再演のおりには是非もういちど視聴して、音楽と演技が融合して、人間の深層意識がえがきだされる過程を検証してみたいとおもいます。


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