梅棹忠夫著『知的生産の技術』第5章「整理と事務」では、本や資料の整理、それによってえられる精神の安静についてのべています。
話は、蔵書の整理からはじまります。
本の場合、わたしは現在では、自分の蔵書はUDC(Universal Deecimal Classification 国際十進分類法)を基礎とした分類法で配列している。
蔵書のとりあつかい方については、ドキュメントスキャナー ScanSnap が出現してすっかり変わりました。
つまり、多くの人々がそうしているように、わたしも今では、ほとんどすべての本をPDFにしてしまいました。
ScanSnap をつかって紙の資料をファイルにする >
わたしは数年前から、大型本や写真集などの特別な本をのぞいて、ほとんどすべての蔵書をPDFにする作業をはじめました。すべてを自分でスキャニングしているとかなりの時間がかかってしまうので、3分の2ぐらいは業者にたのんでやってもらいました。
自分でおこなうとき(いわゆる自炊では)、本の裁断にはディスクカッターをつかっています。
1回で40枚ぐらいカットできます。本格的な裁断機ではありませんが、個人で自炊をおこなう場合には手軽につかえるコンパクトカッターとしてこれがおすすめです。
また、図書館などからかりた本については、有用なページの写真をとって保存しておきます。非破壊スキャンができるスキャナーも発売されていますが、個人的な記録として保存するだけでしたら写真で十分でしょう。
このようなことをしていると、かつては、ハードディスクがすぐに満杯になるという問題がありましたが、今では、外付けハードディスクが1TBで1万円をきるようになってきましたので、メモリーの心配はいりません。どんどんPDFにして外付けにファイルしています。写真も大量にとって保存しておくことができます。
こうして、本の保管スペースがいらなくなり部屋のなかがすっきりしました。また、すべてがデータ・ファイルになるので、いつもでも必要なときにとりだして読むことができ、とても便利になりました。
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つぎに、本や書類のおきかたについてのべています。
「おき場所」のつぎは、「おきかた」の問題だ。おくときには、つんではいけない。なんでもそうだが、とくに本や書類はそうである。横にかさねてはいけない。かならず、たてる。ほんとうにかんたんなことだが、この原則を実行するだけでも、おそろしく整理がよくなる。
PDFにするまえの本や書類は、つまずに立てておくことは重要な原則です。PDFにできない重要な書類もそうです。これだけで整理がすすみました。
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垂直式ファイリング・システムを採用するにあたって、いちばんの問題は、やはり分類項目をどうたてるか、ということであろう。徹底的に細分化しなければ、じっさいには役にたたない。細分化をすすめてゆくと、けっきょくは固有名詞が単位になってしまう。それでよいのである。
フォルダ名を固有名詞にするということはパソコンのフォルダでもそのままあてはまります。まず細分化したフォルダをつくっておいて、あとで課題別にフォルダにまとめることもできます。エイリアスやショートカットをつかうと効果的です。パソコンでは、ファイルおよびファイル名は自在にコントロールできます。また、キーワードを入力すればもとめるフォルダが見つかります。本当に便利になりました。
ただし、フォルダ名に漢字をつかう場合、たとえばつぎのようにしておくと五十音順でファイルをならべることもできます。キーワード検索ですぐにでてこないこともありますので、五十音順でも検索できるようにしておきます。
【シ】新宿図書館
【ト】東京都
【ト】東京都
【ニ】日本ネパール協会
【ヒ】東村山市
【ヒ】東村山市
以前、封筒に資料を入れて時系列でならべておき、ふるくなってつかわなくなった封筒はすてるというシステムを提案した書籍がベストセラーになったことがありましたが、パソコン・ファイルに移行し、メモリーの心配がいらなくなった今日、ファイルをすてる必要はなくなりました。検索も簡単にできるようになりましたので、ならべ方の問題もなくなりました。
こうしたことよりも、ファイルの形成とそれらの操作・活用が課題になりました。
ファイルとは情報(データ)のひとまとまりのことです。
そしてフォルダとは、くつかのファイルがあつまったものであり、フォルダは高次元の情報のひとまとまりといってよいでしょう。さらに、いくつかのフォルダーをあつめて、さらに高次元のフォルダをつくることもできます。
こうして、ファイルを単位にして、情報の階層構造ができあがっていきます。これが現代のファイリング・システムです。
したがって、どのような階層構造をつくるのかが本質的な課題になってきました。
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知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといってよいだろう。精神の層流状態を確保する技術だといってもよい。努力によってえられるものは、精神の安静なのである。
情報技術が発展したお陰で、物理的な障害はなくなってきました。そして、わたしたちは、ファイルの操作・活用に集中できるようになってきました。
ファイルを作成し操作・活用する、ファイルをあつめてフォルダを作成し操作・活用する、そして、階層構造になった自分独自のファイリング・システムをつくるということに誰もがとりくめる時代になりました。
ファイルを作成し操作・活用する、ファイルをあつめてフォルダを作成し操作・活用する、そして、階層構造になった自分独自のファイリング・システムをつくるということに誰もがとりくめる時代になりました。