『「男はつらいよ」寅さんロケ地ガイド』(講談社)は、映画『男はつらいよ』(全作品)のロケ地、43都道府県の446スポット(+ウィーン)を写真と地図で紹介しているガイドブックです。『男はつらいよ』のロケ地を旅行する際のガイドとして、あるいは、各作品を場所ごとにとらえなおす資料として利用できます。

『男はつらいよ』シリーズは、渥美清主演、山田洋次原作・監督の映画であり、テキ屋稼業を生業とする「フーテンの寅」こと車寅次郎がひきおこす大騒動と恋愛模様を、日本各地のうつくしい風景を背景にしてえがいた人情喜劇でした。



■ 場所ごとに情報を整理する

本書は、「男はつらいよ 寅さん DVD マガジン」(全50巻)のスタッフが、シリーズ全48作のほぼすべてのロケ地を全国津々浦々徹底的に取材して編集したものです。

「男はつらいよ」ファンで、このシリーズをすでにかなりみていて、各ストーリーを知っている人にとっては、寅さんの旅を、地理的・空間的にとらえなおすことができ、とてもおもしろいです。

作品(ストーリー)別ガイドは何冊もありますが、本書は、場所(土地)ごとに情報を整理しているのが特色です。「各エリアへのアクセス情報」も 巻末にでていて、寅さんファンにとっては貴重な一冊になっています。



■ 作品リストをみてストーリーを想起する

本書の12〜14ページには全48作のリストがでています。すでに見たことのある作品があれば、場所やイメージ、ストーリーを、このリストを見ながら想起してみるとおもしろいです。どこまで正確におもいだせるでしょうか。

マドンナが、それぞれの作品の印象的な目印になっていますので、 マドンナが誰であるかを見ればかなり想起できるとおもいます。



■ 寅さんの旅ファイル

これら48作品は、情報処理の観点からはそれぞれがファイルであるととらえることができます。ファイルとは情報のひとまとまりのことです。『男はつらいよ』シリーズは48個のよくできたファイルから構成されているのであり、それらは「寅さんの旅ファイル」とよぶことができます。それぞれの作品番号と題名とマドンナは各ファイルのラベル(標識、目印)であり、ストーリーは情報の本体です。

140926 寅さんの旅ファイル
図 「寅さんの旅ファイル」の構造
各作品はファイルである。作品番号・題名・マドンナはラベル、
ストーリーは情報の本体である。作品番号・題名・マドンナは、
各ストーリーを統合するシンボルであり、他方で、ストーリー
を想起するための引き金あるいはキーになっている。 



■ ファイルを空間的に強化する

すでに知っている作品については、本書を見ることにより、地図上で場所をおさえることができるので、ファイルを空間ファイルとして強固なものにすることができます。つまり、ファイルの下部構造を強化しゆたかにすることができます。

ストーリーのような時間的に流れていく出来事を、地理的・空間的に場所ごとにあらたな観点からとらえなおすことには大きな意味があります。

ストーリーとともに空間的なイメージもできるように訓練するとよいでしょう。

このような空間的なとらえ方は記憶法に通じ、あらたな見方は発想法に通じます。



■ ファイルのライブラリーをつくる

もし「寅さん」ファンでしたら、まだ見ていない作品があれば はやめに見てしまい、シリーズを構成する全48個のファイルをライブラリーとして心のなかにとりこみ保持することをおすすめします。

ファイルのライブラリーは増えれば増えるほど内面世界はゆたかになり、発想もひろがります。

たとえば何か別のことをイメージするときにも、心のなかにとりこんだ空間的なファイルを背景としてつかうことができます。おりにふれてファイルをおもいだして、そのなかでおもいをめぐらせて発想することもできます。

48本の作品は山田洋次監督らがつくったものではありますが、これらを、自分の心のなかにとりこんで、自分のファイル、自分のライブラリーを構築することがポイントです。これは情報活用のひとつの方法です。



▼ 関連記事
寅さんの世界に入りこむ - 葛飾・柴又 -


▼ 参考サイト
男はつらいよ ロケーション(松竹)


参考文献
「男はつらいよ 寅さんDVDマガジン」編集グループ編『男はつらいよ 寅さんロケ地ガイド』講談社、2013年7月18日
本書は、「男はつらいよ」シリーズをすでにかなり見ていて、各ストーリーを知っている人むきのガイドです。


関連書
それぞれの作品について作品ごとにくわしく知りたい人は、たとえば下記の作品別(ストーリー別)ガイドをご覧ください。
 
山田洋次監修 『男はつらいよ 寅さんの歩いた日本』1997年1月1日

『男はつらいよ パーフェクト・ガイド ~寅次郎 全部見せます』 (教養・文化シリーズ) NHK出版、2005年7月30日


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