岩堀修明著『図解・感覚器の進化 』は、感覚器について、動物の進化の観点から解説しています。視覚器、味覚器、臭覚器、平衡覚器と聴覚器、皮膚感覚と固有感覚などについてくわしく紹介しています。

わたしたちは感覚器をつかって心のなかに情報をインプットしていますので、感覚器について知ることはとても重要なことです。


目 次
第1章 感覚器とは何か
第2章 視覚器
第3章 味覚器
第4章 臭覚器
第5章 平衡・聴覚器
第6章 体性感覚器
第7章 クジラの感覚器


動物が認識する「世界」とは、それぞれの動物が自分のもっている感覚器で受容した情報をもとに、それぞれの脳がつくり上げるものである。同じ世界であっても、感覚器によって「世界観」はまるで違ってくるのである。

感覚が成立するためには、光、音、においなどの「刺激(感覚刺激)」がなければならない。しかし、いくら刺激があっても、それを受け取る器官がなければ、感覚は成立しない。刺激を受容する器官を「感覚器」という。

どんな感覚を感知するかは「どんな刺激があるか」ではなく「どんな感覚器があるか」によって決まる。

われわれ動物はみな、自身がもっている感覚器が受容できる感覚しか、知ることができない。

棲んでいる環境によって、動物たちがもっている感覚器の種類や性能はさまざまに違ってくる。そのために動物たちは、それぞれに違う世界を感じているのである。

神経には「入力系」と「出力系」がある。感覚器からの情報は電気信号となって、入力系を介して中枢神経系(脳や脊髄)に伝えられ、感覚となる。中枢神経系は、感覚としてキャッチした情報を処理し、その結果を出力系を介して筋や腺などに伝える。出力系からの指示により、それぞれの状況に応じた反応を起こす。

視覚器 - いわゆる「眼」は、光刺激を電気信号に変える器官である。

味覚器、いわゆる“舌”の最も重要な役割は“毒見役”を務めることである。

多くの動物にとって、臭覚は視覚よりもはるかに頼りになる感覚である。光はものに遮られやすく、到達する範囲が限られるうえ、夜にはなくなってしまう。それに対してにおいは、昼夜を問わず、どんな小さい隙間にも入り込めるという大きなメリットがある。

「平衡覚器」とは、重力に対する“傾き”を感知する感覚器である。

「聴覚器」は、水や空気の振動である音波を受容する感覚器である。

体性感覚は、皮膚で感知する皮膚感覚と、筋(骨格筋)・腱・関節などで感知する固有感覚とに分けられる。「皮膚」は多様な感覚を受容する最大の感覚器である。固有感覚は注意して行動するとき以外は、意識にのぼることはほとんどない。


以上のように、わたしたちは感覚器をつかって外界から情報を受容し、それを電気信号にかえて中枢神経系(脳や脊髄)におくり、外界を認識しています。そして、その認識にもとづいて反応をおこします。つまり、感覚器で情報をインプットし、中枢神経系で情報を処理し、反応というアウトプットをおこしているわけです。情報のながれはつぎのようになります。

感覚器 → 中枢神経系 → 反応
(インプット)→(プロセシング)→(アウトプット)

このように、わたしたちは感覚だけで判断して生きているのではなく、この情報処理のながれ全体のなかで認識し行動していることを再確認しなければなりません。

たとえば、わたしたちは眼で外界を見ているとおもっていましたが、実際には、眼には光刺激がインプットされていただけであり、刺激が電気信号に変換され、中枢神経系がその信号を処理して、外界を3次元空間として認知していたのです。つまり、眼ではなく脳で見ていたのです。

また、固有感覚を通して無意識の情報処理をおこなっているという点にも注目しなければなりません。固有感覚とは、筋・腱・関節などで感知する感覚のことです。わたしたちは無意識のうちに膨大な情報処理をおこなっていたのです。

このように、情報処理という観点からわたしたちの感覚器をとらえなおしてみると、認識や行動の仕組みがよく理解でき、また、感覚器の性能を高める訓練をすることが情報処理能力をたかめるために大切であることもわかってきます。


▼ 文献
岩堀修明著『図解・感覚器の進化 原始動物からヒトへ 水中から陸上へ』(ブルーバックス)講談社、2011年1月20日
図解 感覚器の進化 原始動物からヒトへ 水中から陸上へ (ブルーバックス)

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