写真 ナウマンゾウの化石
東京・上野の国立科学博物館で開催されている「太古の哺乳類」展を先日みました。日本で発掘された化石を通して、哺乳類の進化と絶滅についてまなぶことができました(会期:2014年10月5日まで)。
▼ 国立科学博物館「太古の哺乳類」展
▼ 太古の哺乳類展(特設サイト)
本展は、約1億2000万年前から1万年前までに日本に生息し、今では絶滅して見ることのできない数々の哺乳類を多角的に紹介する展覧会です。会場では、おとなとこどもの全身復元骨格3体を「家族」と見立てたナウマンゾウや、日本で発掘され世界的に有名になったパレオパラドキシアの化石標本など、貴重な標本約170点が展示されていました。これだけの規模・内容で、日本の太古の哺乳類を紹介した特別展は世界でもはじめてだそうです。
会場に行くと、フロアーマップをくれるのでそれを見ながら見学するとよいです。よりくわしくまなびたい人は音声ガイドも利用するとよいです。
展示会場は、下図のように7つのセクションにわかれています。
図1 フロアーマップ
1.会場全体は「家」、セクションは「部屋」
展示会場全体は「家」、セクションは「部屋」であるとイメージしてあるいていきます。
第1室 恐竜とともに生きた哺乳類(約1億2000万〜6600万年前)第2室 繁栄のはじまり(約5000万〜3400万年前)第3室 “巨大大陸”の時代(約2300万〜1700万年前)第4室 日本海と日本列島の成立(約2500万〜1500万年前)第5室 デスモスチルス類の世界(約2800万〜1200万年前)第6室 ゾウの楽園(約530万〜50万年前)第7室 ナウマンゾウの世界(約35万〜2万年前)第8室 大型哺乳類の絶滅(約3万年〜1万年前)
各部屋に配置されている化石とそれに関する情報をイメージとして記憶していきます。
2.各部屋を想起する
一通り見おわったら休憩室にいって、フロアーマップを見ながら、各室に、どのような化石が展示されていたか、どのような解説がなされていたかを、第1室から順番におもいだしていきます。化石のみならず解説文(言語)もイメージとしておもいだすことがポイントです。どこまで正確に想起できるでしょうか。
音声ガイドをつかった人は、それにくわえて、音声ガイドリストにでている作品スト(1番〜17番)のそれぞれが、会場のどの部屋に展示されていたかもおもいだします。
空間的なイメージとして想起することがポイントです。
3.ゾウに注目する
本展は、とてもたくさんの化石を展示していて、また、解説が専門的でわかりにくいと感じるかもしれません。そのような場合は、ゾウに注目するとよいです。何といってもゾウは哺乳類の「王者」であり、その大きさや堂々とした様子は感動的で印象にのこりやすいです。
展示会場の全体を見おわったら、ゾウの部屋(第6室、第7室)にもう一度いってみます。
特に注目すべきは、第7室のナウマンゾウ(約35万〜2万年前)です。こんなに大きなゾウが日本にもいたというのはおどろきですが、世界的にゾウが繁栄していた時代がかつてはあったようです。
ゾウ(長鼻類)はアフリカ大陸を起源とし、アフリカからユーラシア大陸に放散し、日本にもわたってきました。
しかしいまでは、アフリカと南アジア〜東南アジアにしかいなくなり、いちじるしく生息数を減らして、観光地ではたらかされているアジア象の姿などをみると、進化における繁栄と衰退の現実をまのあたりにします。
地球は、約100万年前(第四紀更新世の中頃)以降は、寒冷な氷期と、温暖な間氷期とが交互にくりかえす時代となり、氷期には海面がさがって、日本列島と大陸が陸続きになる一方、間氷期には海面があがって日本列島と大陸がきりはなされました。日本列島が大陸とつながったりきりはなされたりしたことにともなって、ことなる時代にことなる種類のゾウが日本にわたってきて、その中でもっとも繁栄したのがナウマンゾウでした。
ここでも強調しているように、生物の進化は、生物だけを見ていてわかることではなく、生物をとりまく自然環境にも同時に注目し、主体である生物と、それをとりまく環境の全体を一体のものとしてとらえることが大事です。生物と環境は一つの有機的なシステムになっているのです。
図2 生物(主体)と環境は一つのシステムをつくっている
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このようにして、展示会場全体を見てから、あらためてゾウの部分をくわしく見なおすと、今まで以上に全体がよく見えてきます。全体を見て、部分をみると、全体がよくわかるということです。全体と部分とを往復していると発想もうまれやすくなります。
▼ 参考文献