発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:音楽

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テルミン(東京芸術大学 第6ホール)
(平行法で立体視ができます)
電子楽器が発明されてから100年がたちました。芸術分野にも電子機器がひろまります。技術革新の中核には規格化があります。
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ストラディヴァリウスの展示会場
 (平行法で立体視ができます)
楽器は、人間主体におけるアウトプットの道具のひとつです。音楽をアウトプットする人々もいます。
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「音楽建築空間」が構築されています。音楽をきいてイメージします。音を、イメージに変換すると情報処理がすすみます。
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音楽録音・再生メディアの歴史をたどりました。技術が進歩するときには、あるときに大きな革新がおこり、その後しばらくのあいだはゆるやかな進歩がつづき、また革新がおこります。階段状の進歩の仕方をします。
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フーリエ解析は、今日の情報化社会をささえる数学としてなくてはなりません。情報の圧縮や処理などの仕組みを理解することが大事です。
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オーディオ(ステレオ)で音楽をきけば、それぞれの楽器の配置や音響といった音楽の空間を認知することができます。
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仏教音楽のルーツは、ゾロアスター教を信仰していたソグド人の文化にあります。日本人は外来文化をうけいれ、重層文化を発達させるのが得意です。
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最新のサラウンド技術をつかえば3次元の音響空間に没入できます。聴覚をつかって3次元空間を認識する訓練をもっとすべきです。
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共感覚者と共感覚について知ることは、人間の情報処理の仕組みをよりふかく理解することにつながります。
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たとえや類比をつかうとあたらしい物事を容易に理解できます。
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《イヴァンチツェの兄弟団学校》
絵画と音楽を共鳴させて味わうとよいです。民族をつらぬく精神があります。
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ヨーヨー・マらがたちあげた「シルクロード・アンサンブル」は、異民族が共生するためには創造過程が必要であることをしめしています。
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よくできた表現(アウトプット)をするためには共鳴効果をつかうとよいです。そのためにはバランスが必要です。


劇団四季の新演出で『ウェストサイド物語』(注)をみました。
 
ミュージカルは総合舞台芸術であり、音楽・芝居・ダンスをバランスよくくみあわせて物語を構成していきます。その結果、ホールはひとつの共鳴空間になって大きな感動がまきおこります。

総合舞台芸術としてはミュージカル以外にもオペラ・歌舞伎・バレエがあります。いずれも総合芸術ですが、オペラは音楽に重点がおかれ、歌舞伎は芝居に重点がおかれ、バレエは踊りに重点がおかれます。
 
それに対してミュージカルは、音楽・芝居・ダンス(踊り)の三者のバランスが比較的よいのが特色です。作品にもよりますが、どれかかに重点を特におくということはなく、三者のバランスをとりながら共鳴効果をひきだしています(下図)。いいかえると一点豪華主義ではないということです。

160229 共鳴
図 音楽・芝居・ダンスのバランスが共鳴効果を生みだす



このことは、特定の一流スター(有名歌手や有名俳優)にたよって効果をあげるという方法ではないということでもあり、事実、劇団四季にはいわゆるスターはいないのです。
 
これはたとえば協奏曲(コンチェルト)と交響曲(シンフォニー)とのちがいにも似ています。協奏曲では一流のソリストがでてきて演奏します。それを目当てに聴衆もあつまります。それに対して交響曲には特定のソリストはおらず、すべての楽器による音の共鳴効果をあくまでも重視します。
 
オペラや歌舞伎やバレエにはない、無期限ロングランになるようなおどろくべきヒット公演をミュージカルが次々に生みだしているのは、ひとえにいちじるしい共鳴効果によるものだとかんがえられます。共鳴が観衆をまきこんでいるのです。


 

音楽と芝居とダンスの共鳴がおこった場合、これら三者をたしあわせた以上の効果が生じます。この場合 全体は、部分の単なる総和ではなく部分の総和以上のものになります。作品は機械ではなく、ここに合理主義をこえた感動がもたらされます。
 
このことがわかれば、表現(アウトプット)のときに共鳴効果をつかうのがよいということになります。共鳴力をつかう方法は表現(アウトプット)の効果をあげるためにとても役立ちます。
 
これは一点豪華主義を否定するものではありません。共鳴効果か一点豪華主義かは時と場合によってつかいわけていけばよいでしょう。注意点は、共鳴効果を生みだすためには前提として全体的なバランスが必要であるということです。


▼『ウエスト・サイド物語』(West Side Story)
劇団四季:『ウェストサイド物語』
原案:ジェローム=ロビンズ
脚本:アーサー=ローレンツ
音楽:レナード=バーンスタイン
歌詞:スティーヴン=ソンドハイム

『ウェストサイド物語』は、ジェット団とシャーク団の抗争と人間のおろかしさをえがいた悲劇だと誰もがおもいます。しかし今回は、マリアを主人公にした物語という見方ができました。かわいらしいマリアが変化し成長し、そしてきっとたくましく生きていくだろうと予感させるラストシーン。心踊る演技、そして力強い歌声が、マリアが大人になっていく姿を見事に表現していました。


ワイヤレス・イヤホンの開発競争がすすんでいます。何事も、ワイヤレスが時代のトレンドになってきています。


「iPhone Menia」(2016.01.09)によりますと、アップルは、今秋発表が見込まれる iPhone7 に先駆けて、Bluetooth を利用したワイヤレス・イヤホンを発売するようです(注1)。

イヤホンのケーブルをまいたりのばしたりすることがわずらわしいことは誰もが感じていたことでした。とくに屋外や移動中に音楽をきくときにはケーブルが邪魔になることがよくありました。ワイヤレスはこの問題を解決します。




そもそも次期の iPhone7 ではヘッドホン端子(イヤホン端子)を廃止するという報道があります。iPhone をさらにうすくするための措置です。その場合は、Lightning コネクターでケーブル接続するかまたは Bluetooth 経由でワイヤレス接続になります。

従来のケーブルのイヤホンをつかいつづけるためにはアダプターが必要になります。ヘッドホン端子廃止に反対しているユーザーもたくさんいるとのことですが、ワイヤレスでしたらコネクターの問題は生じません。

これからの時代のトレンドはワイヤレスであるといえるでしょう。



▼ 注1:「Apple、今秋Beatsブランドでワイヤレスイヤフォンを発売か?」
http://iphone-mania.jp/news-97133/


▼ おすすめワイヤレス・イヤホン & ヘッドホンはこちらです。いずれもノイズキャンセリング機能がついています。


下の2つのモデルは音質も非常によいです。


▼ 関連記事
おすすめイヤホン&ヘッドホン(ケーブルつき)


耳はセンサー、脳はプロセッサーととらえると聴覚のしくみがよく理解できます。

『Newton』2016年 2 月号では、シリーズ「感覚のふしぎ 第4回」として「聴覚と平衡感覚のしくみ」を掲載しています。聴覚についてまずみていきましょう。


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音とは音波であり空気の振動です。空気振動は「外耳」であつめられ「鼓膜」を振動させます。その振動は、「中耳」の「ツチ骨」「キヌタ骨」「アブミ骨」につぎつぎにつたわり、さらに「内耳」へとつたわります。

内耳では、「骨迷路」の「外リンパ」から「蝸牛」のらせん状の通路を頂部へむかってつたわり、その後、頂部から底部へむかってつたわります。

蝸牛にある「蝸牛菅」の基底板の上には「コルチ器」とよばれる装置があり、蝸牛菅の基底板が上下に振動すると、コルチ器が上下に振動し、「感覚毛」がかたむきます。すると感覚毛の先端付近にある「チャネル」(イオンを通す穴)がひらいて、内リンパのカリウムイオンが「有毛細胞」の中に流入します。このカリウムイオンの流入が電気的な信号となります

この電気信号は大脳皮質の「聴覚野」につたわって聴覚がひきおこされます。電気信号が脳で処理されて音が認知されるのです。

ヒトが、音のする方向や音源からの距離を推測できるのは脳が “計算” をしているからです。音源からの距離が左右の耳で若干ことなるので、音がとどく時間や音の大きさは左右の耳でことなります。脳は、この音の時間差や大きさの差をもとに音のする方向と音源からの距離を計算しているのです。

以上から、左右の耳は空気振動をうけるセンサー、脳は電気信号を処理して音を認知するプロセッサーととらえると聴覚のしくみがよくわかります。インプットとプロセシングという2つの場面から聴覚系がなりたっているわけです(下図)(注)。


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図 空気振動をうけ、音を認知する




上記のように、わたしたちの聴覚系は視覚系と同様に三次元的なひろがりを認知できます。音の奥行きがわかるのです。

たとえばオーディオ装置をつかって音楽をきくときに、スピーカーを左右2台にすることによって三次元の音響空間を再現することができます。2台のスピーカーからはそれぞれ別の音が出ているのですが、わたしたちが音楽をきくときには、2つの音は合成(融合)されて一つの音響空間となります。こうしてコンサートホールできくような交響曲も再現できるのです。

このことはステレオ写真をつかって立体視をすることとよく似ています。立体視をすると、2枚の写真が合成(融合)されて一つの3D画像になります。たとえば植物園で実際に見た花が、ステレオ写真を立体視することで植物園で見たように3D画像で再現できます。

聴覚系も視覚系もセンサー(耳と目)がそれぞれ2つずつあるというところがポイントです。2つあるために距離や奥行きが認知できるのです。

したがってわたしたちに本来そなわったこのような情報処理システムを十分にいかして、見たり聞いたり取材したりするときには3D(立体空間)をたえず意識することが大切であるといえるでしょう。わたしたち人間は三次元空間の存在です。

あるいはオーディオや音響システムの開発をするときには、このような聴覚系の仕組み、つまり音の情報処理の仕組みが理解できていた方が商品開発が適切にすすむとかんがえられます。


▼ 注
物理的にみると、空気振動が耳で電気信号に変換され、電気信号は脳で音に変換されるということです。つまり音は脳がつくりだしています。わたしたちは耳で聞いているとおもっていましたが、音は「脳で聞いている」とかんがえた方がよいでしょう。わたしたちの周囲の空間には実体としては空気振動があり、それを音として認知しているということです。

▼ 引用文献
「聴覚と平衡感覚のしくみ」Newton, 2016年2月号, 2016年2月7日発行
Newton(ニュートン) 2016年 02 月号 [雑誌]

▼ 関連記事
情報処理をすすめるて世界を認知する -『感覚 - 驚異のしくみ』(ニュートン別冊)まとめ -


よくできたオーディオ機器をつかうと情報が増幅されて心から音楽をたのしむことができます。

オーディオ・ホームシアター展は、低価格品から高級品までさまざまなオーディオ機器を試聴することができるまたとないイベントでした(注1)。わたしはオーディオが好きなのでこのようなイベントにはなるべく行くようにしています。

AIRBOW(逸品館)のブースでは、フランスのスピーカーメーカー FOCAL の製品などをつかってデモをしていました。

FOCAL の最高級スピーカー Grande-Utopia-EM の音は普通とは次元がちがいました。もはやライブをうわまわるかのようなサウンドでした。最高級品に接すると、物を見るときの自分の物差しの幅(最低と最高の幅)を大きくひろげることができるので、その分野の商品の評価ができるようになります。

また FOCAL Aria 926 と波動ツィーターの組み合わせもなかなかよかったです。波動ツィーターというのは音は出しませんが、密度の高い波動を発してサウンド全体をひきしめます。既存のスピーカーにこれをつけくわえるだけで、スピーカーをグレードアップしたのとおなじ効果がえられます。スピーカーを買いかえるよりもよい場合が多いです。

 
FOCAL のスピーカーはバスレフ型であり、うしろにいった音をうまく利用しているそうです。またキャビネットのひびきでピアノの平均律のにごりをうちけすことも可能です。オーディオ製品全体の売上げが世界的におちているなかで、FOCAL だけは売上げをのばしているとのことでした。



そのほかに印象にのこったのは AIRBOW - REVEAL402 SPECIAL です。コストパフォーマンスにすぐれるアンプ内臓型小型スピーカーです。高級品にも引けをとらないすばらしい音をならしていました。iPhone などのスマートフォンやテレビのイヤホンジャックにケーブルをつなぐだけで高級オーディオなみのサウンドがたのしめます(注3)。

* 

いいスピーカーからは体に振動がつたわってきます。音楽は、耳だけ(鼓膜だけ)でたのしむものではありません。たとえば大太鼓の音は耳に聞こえる音よりも、会場全体につたわる空気振動あるいは音圧を生みだすことが重要です。皮膚感覚あるいは体性感覚が聴覚に複合され、交響曲などにおいて劇的な効果が生じます。

たとえば料理を食べておいしいと感じるときも、見た目や色彩や香りなど、視覚や嗅覚や味覚が複合されておいしいと感じるのです。

さまざまな種類の情報が複合的にわたしたちの内面にインプットされて、そしてわたしたちの意識のなかでそれらの情報が共鳴・増幅されて感動が生じるといえるでしょう。

したがってオーディオ機器の開発のためには、机の上でのデータ解析や理論的研究をしているだけだと限界があり、ライブにいって実際の音楽をきき、その経験をいかさなければなりません。何事も、現場を知り現場を体験することが重要です。 



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作曲家のメッセージをうけとる -オーディオ芸術-
バランスを追求する
オーディオ・システムは情報処理のモデルである
音楽は意識のなかで響く -ハイエンドショウトウキョウ2014 -
アタックを明確にすると全体がひきしまる - 波動ツィーター -


▼注2:FOCAL Aria 926
FOCAL - Aria926(1本)(ノワイエ)

FOCAL - Aria926(1本)(ノワイエ)
価格:166,212円(税込、送料込)



▼ 注3:TANNOY Reveal 402
今回のデモでは、グレードアップされたスペシャルがつかわれましたが、低価格なノーマル(エントリーモデル)もあります。こちらでもすばらしいサウンドがたのしめます。 ※ このスピーカーはアンプ内臓型スピーカーですのでアンプを別途購入する必要はありません。付属のケーブルを、スマートフォンやパソコンやテレビのイヤホンジャックにつなぐだけで音がでてきます。きわめて簡単です。デスクトップ・オーディオには特にオススメです。わたしはこちらのノーマルを普段はつかっています。



本ブログでいままで紹介してきた〈おすすめのイヤホンとヘッドホン〉について以下にまとめておきます。


1.ノイズキャンセリング・イヤホン



2.通常のイヤホン








3.ヘッドホン



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屋外で音楽をたのしむ - オーディオテクニカのイヤホン“ATH-IM01” -
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両極端を知ってから評価する - イヤホンの試聴 -
空の旅をたのしむ - 『「超」旅行法 』(3)-
ノイズキャンセリング・イヤホンをつかって難聴を予防する - オーディオテクニカ ATH-ANC23 -
ノイズキャンセリング・イヤホンを比較する
音楽の広がりと響きをとらえる - ゼンハイザーのヘッドホン -





 

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新国立劇場 オペラパレス


シェイクスピアの喜劇も悲劇も「自分が見えていない」をキーワードにして見るとおもしろいです。

だましたつもりがだまされた! こりない老騎士と陽気な女房たちがくりひろげた痛快喜劇。新国立劇場で、ヴェルディ作曲《ファルスタッフ》を見ました(注1)。イタリアの大作曲ヴェルディが最晩年に、シェイクスピア原作『ウィンザーの陽気な女房たち』と『ヘンリー四世』を極上のオペラに仕上げました。

ヴェルディ作曲《ファルスタッフ》
指揮:イヴ=アベル
演出:ジョナサン=ミラー
ファルスタッフ:タッフゲオルグ=ガグニーゼ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

主人公のファルスタッフはまったく自分が見えていません。はたから見ていると「バカだなぁ」とわらってしまいます。


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彩の国さいたま芸術劇場


わたしは先日、彩の国さいたま芸術劇場で、シェイクスピアが書いた最古の喜劇《ヴェローナの二紳士》を見ました(注2)。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾《ヴェローナの二紳士》
演出:蜷川幸雄
ジュリア:溝端淳平
プローティアス:三浦涼介
ヴァレンタイン:高橋光臣
シルヴィア:月川悠貴

これもおなじです。自分が見えていないんです。なんだかバカばっかり。そんな話あるかよ。おもわずわらってしまいます。人間とは滑稽な存在です。

* 

ところでシェイクスピアの悲劇はどうでしょうか。

わたしは先日、METライブビューイング(2015-16)でシェイクスピア原作・ヴェルディ作曲《オテロ》(新演出)を見ました(注3)。

MET(メトロポリタン・オペラ)ライブビューイング:ヴェルディ作曲《オテロ》
指揮:ヤニック=ネゼ=セガン 
演出:バートレット=シャー
オテロ:アレクサンドルス=アントネンコ
デズデーモナ:ソニア=ヨンチェーヴァ
イアーゴ:ジェリコ=ルチッチ

オテロも自分が見えていないのです。自分の心の中だけで情報が堂々巡りをしていて自滅していく。悲しい物語ではありますが、「バカだなぁ」。


こうして劇がすすむにつれて滑稽を通りこして、人間の愚かさが浮き彫りになってきます。

自分が見えていない。人間の滑稽さと愚かしさ。

はたから見ることができると「自分が見えていない。バカだなぁ」となりますが、当のご本人は真剣そのもの、自分で自分を見ることはできないのです。

シェイクスピアの喜劇も悲劇も「自分が見えていない」を一つのキーワードにして見直してみるとおもしろいとおもいます。

オペラ《ファルスタッフ》のしめくくりは、ファルスタッフからはじまるフーガ「人生はみな冗談、人間はみな道化(アホ)」が、ソロと混声合唱に次々とうけつがれてわきたつような大フーガになり、最後にはすべてをわらいとばしてしまいました。

バカだなぁ。でもおもしろいではないか。



▼ 注1
新国立劇場《ファルスタッフ》

▼ 注2
彩の国さいたま芸術劇場《ヴェローナの二紳士》

▼ 注3
METライブビューイング 2015-16

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あらすじを予習してから鑑賞する - オペラになったシェイクスピア《テンペスト》-
感情が意識をゆさぶる グノー作曲『ロメオとジュリエット』-
音楽と演技が融合して一本のストーリーになる - ヴェルディ作曲『マクベス』-
絵の前後を想像する -「見つめて、シェイクスピア!」展 -
「自分が見えていない」をキーワードにして - シェイクスピア -

自分のアウトプットを見直して、自分で自分を見る




マイナス思考からプラス思考にきりかえて、若い人の芽をつみとらないようにすることが大事です。

山田太郎さん(仮名)はピアノとバイオリンを小さいときからならっていました。ピアノとバイオリンの両方をひいていましたが、ピアノが大好きだったので将来はピアニストになると決めていました。

しかしあるとき、「ピアノで食べていくのはむずかしいからバイオリンに専念した方がよい。バイオリンなら管弦楽団に就職する道があるから」と周囲の人にいわれピアノはやめさせられました。太郎さんは悲しくて悲しくて来る日も来る日も泣きつづけました。

そして太郎さんは大きくなって管弦楽団に就職しました。その管弦楽団は外国の一流の管弦楽団であり、太郎さんはそこの重要なポストについています。


しかし、わたしは想像します。音楽の才能がそんなにあるのなら、もしかしたらピアニストとして大成したのではないだろうか。そして大きな喜びと希望をあたえるすばらしい演奏をわたしたち聴衆にとどけてくれたのではないだろうか。

太郎さんのまわりの大人たちは何を根拠に「ピアノではダメだ、バイオリンの方がよい」と判断したのだろうか。実際には根拠などはなく、大人たちの単なるマイナス思考だったにちがいない。だいたいバイオリンと管弦楽団を低く見ている。マイナス思考の大人たちが日本には多いことにはいつもおどろかされます。

* 

以上からまずは、プラス思考にきりかところからはじめて、そして若い人の芽を大人がつみとらないようにすることが大事であるといえるでしょう。




情報をインプットするときには総合的に丸ごとインプットした方がプロセシンがすすみます。

『Newton』2016年1月号(注1)では「臭覚と味覚のしくみ」について解説しています。ここでは、臭覚と味覚のそれぞれの仕組みについて分析的に説明していますが、一方で臭覚・味覚・触覚・視覚・記憶などの情報が総合的にくみあわされておいしさや風味を脳が判断しているとものべています。

大脳の前頭野では、臭覚・味覚・触覚・温度感覚が統合されて「風味」を認識する。

大脳の二次味覚野では、臭覚・味覚・触覚の情報が組み合わされてたとえば私たちが経験する「焼肉の味」が形成される。

私たちが普段料理を味わうとき、実は臭覚の影響も大きく受けているのだ。試しに、鼻をつまんでお茶やジュースを飲んでみると、かなり単純な味に感じられるはずである。

あざやかな色のキノコを“毒々しい”と感じることがあるように、見た目の印象もおいしさにかかわっている。どんな大好物の料理でも、もし水色だったら食べたくなくなってしまうだろう。

臭覚と味覚に加えて記憶にもたよって、安全で栄養が多いかどうかを脳は判断している。


このように臭覚・味覚・触覚・温度感覚・視覚などによりインプットされた情報は単独でつかわれるのではなく記憶もあわさって総合されて認識にいたるのです。(下図)。

151208 感覚器
図 各感覚器官からの情報は総合されて認識にいたる


同様なことは聴覚についてもいえるでしょう。

わたしは、クラシック音楽がすきでコンサートホールによくいきます。ホールできくライブ演奏は本当に感動的で印象にのこります。

ライブが感動的で印象にのこりやすいのは音楽が耳できこえるだけでなく、楽器が発する空気振動もつたわってくるからです。また床からも振動がつたわってきます。コンサートホールでは、耳で音波を感じながら空気振動や床振動を皮膚で体で感じることができます。つまり、聴覚・皮膚感覚・体性感覚などが総合されて音楽を味わうことができるのです(注2)。

こうして音波・空気振動・床振動などのすべての波動がホールの空間全体で共鳴して圧倒的な効果が生じるのです。ここにはイヤホンで音楽をきくのとはまったくちがう世界がひろがっています。


このように、情報のインプットとプロセシングについては、その仕組みを知るために各感覚器官をとりあげて分析的に理解することも重要ですが、インプットとプロセシングが実際の生活のなかでは分析的にではなく総合的におこっていることを知ることも大切です。

したがって情報をインプットするときには、わたしたちがもっているすべての感覚を大きくひらいた方がよく、その方がプロセシングもすすみやすいといえるでしょう。


▼ 注1:引用文献
『Newton』(2016年1月号)、ニュートンプレス、2016年1月7日
Newton(ニュートン) 2016年 01 月号 [雑誌]

▼ 注2
指揮者や演奏者の体のうごきをが見えるという視覚効果もくわわって印象がよりつよくなります。

▼ 関連記事
感覚器をつかって情報をインプットする 〜 岩堀修明著『図解・感覚器の進化』〜
臭覚系の情報処理の仕組みを知る - Newton 2016年1月号 -
おいしさが大脳で認識される仕組みを知る -『Newton』2016年1月号 -
総合的に丸ごと情報をインプットする


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