発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:計画実施


3ヶ月カレンダーをつかえば、来月のビジョンをえがき、今月を生き、記憶をつくり とらえなおすことを習慣的に実践していくことができます。

新年になりカレンダーもあたらしくなりました。わたしは3ヶ月が一望できる “3ヶ月カレンダー” をつかっています。

今回ご紹介するカレンダーは台紙と月表とからなり、各月を台紙にフックでつりさげる方式(差し替え式)になっています。通常の3ヶ月カレンダーは下から各月をちぎっていくような方式ですので、月が替わると月の順序がくるったりして見にくいのですが、これは適切な順序で常に表示できます。月表はとりはずせますので書き込みも容易です。

わかい月順に上から表示することを付属の説明書では推奨していますが、わたしは下から順に表示しています。


IMG_4602 (2)
写真 先月は下に、今月は中に、来月は上に配置する


つぎのようなつかい方をします。

  • 見えやすところに掲示して毎日みます。
  • 来月は何をするか、ビジョンをえがきます。必要に応じて具体的なプランをカレンダーに書き込みます。
  • 今月のカレンダーを見て今日を生きます。今日のプランを実施します。
  • 先月を見て、先月は何をし何をかんがえたか、記憶をざっと想起します。先月実施したことをおもいおこします。

来月はビションの月であり、今月は実施の月であり、先月は記憶の月です。

  • 来月:ビジョン
  • 今月:実施
  • 先月:記憶


来月のビジョンをえがくことはとても大事なことです。先が見えると不安になりません。先が見えるとやる気がでます。来月の計画をたてると見通しがよくなります。

そして先をきちんと見ながら今日の仕事を遂行するようにします。今月はビジョンを実現する場です。

ビジョンやプランはつぎつぎに現実のものとなってきます。さらに一方で、現実(実現あるいは実施したこと)はつぎつぎに記憶(過去)になっていきます。現在とは、記憶(過去)をつぎつぎにつくっていく場でもあるのです。

  • 来月のビジョンをえがき、
  • 今月を生き、
  • 記憶をつくる(過去をつくる)

先月の記憶を想起し、とらえなおしをすることもとても大切なことです。

3ヶ月カレンダーを上から下へ毎日みていると、このようなの心のなかでの情報の流れをスムーズにすることができます。他方で、今月とは、来月と先月とが接する時間帯であり、来月(未来)と先月(過去)とがぶつかりあう場面であるという見方もできます。

3ヶ月カレンダーを部屋のなかの見えるところに掲示しておけば、数秒から1分程度の短時間でこのようなことを確認し実践することが毎日できます。


先月の単なる延長線上に今月があり、今月の単なる延長線上に来月がやってくるという状態はのぞましくありません。ビジョン(未来)がまずあって、現在を生き、そして記憶(過去)をつくっていくという方法がよいでしょう。

160104 未来

過去の延長線上に現在そして未来を漠然と存在させるというのではなく、ビジョンをまずえがくことが重要です。心のなかの情報の流れは、<過去→現在→未来> という物理学的な時間の流れとは逆であってよいのです。これはひとつの発想の逆転といってもよいでしょう。



グローバリゼーションをまずは概観して、グローバリゼーションをふまえて個々の仕事を実施し、そして検証するという3段階をふんで問題解決をすすめるとよいです。

グローバリゼーションの影響を誰もがさけられない今日、グローバリゼーションを考慮して個々の仕事を誰もがおこなわなければならなくなりました。どのような課題にとりくむにせよどのような事業をするにせよグローバリゼーションをふまえることなく実施できない時代になりました。

たとえばボランティア活動をおこなうにしても、どこで何をすべきなのか、難民支援がいいのか、教育支援がいいのか、経済開発、貧困撲滅、医療、環境保全、公害対策、国際理解・・・、世界情勢をよくみたうえで判断しなければなりません。やみくもにつきすすんだり、何だかよさそうだということだけで行動するのはよくありません(注)。

そしてひと仕事がおわったら自分の仕事がどうであったのかを検証してみるとよいでしょう。行動をふりかえってチェックし反省します。情報処理にエラーはなかったかどうか。その結果にもとづいて今後の計画をたてなおします。

このような検証も、グローバリゼーションを背景にしておこなうことが重要です(下図)。
 

151208 グローバリゼーション
図 グローバリゼーションをふまえた問題解決の3段階モデル


現代はグローバリゼーションの時代です。グローバル化は刻々とすすんでいます。『グローバリゼーション事典』が出版されること自体がグローバル化のいちじるしい進行を物語っています。

『グローバリゼーション事典』などをつかってグローバリゼーションを概観したら、つぎには個々の仕事にそれぞれとりくんでいく、そして検証していくことを心がけるとよいでしょう。
 

▼ 注
開発途上国に人々にお金と物をホイホイとあたえてしまう人をみたことがありますが、そのような人も一旦たちどまって、グローバリゼーションのもとで自分の活動をとらえなおし、検証してみるのがよいでしょう。

▼ 引用文献
アンドリュー・ジョーンズ 著(佐々木てる監訳)『グローバリゼーション事典 地球社会を読み解く手引き』明石書店、2012年11月10日
グローバリゼーション事典

▼ 関連記事
グローバリゼーションをとらえる - アンドリュー・ジョーンズ著『グローバリゼーション事典』(1)-
グローバリゼーションの流れを知る -『グローバリゼーション事典』明石書店(2)-
グローバリゼーションをふまえて個々の仕事をおこなう - アンドリュー・ジョーンズ 著『グローバリゼーション事典』明石書店(3)-

 

自分の能力をのばすことも大切ですが、自分の居場所をさがすこと、自分の能力をアウトプットできる場をみつけることも重要です。


プロ野球の星野仙一監督がAチーム(仮称)の監督をしていたときに、佐藤選手(仮名)をBチームにトレードに出しました。すると佐藤選手はBチームで大活躍をしました。

これをみたAチームのオーナ会社の幹部がつぎのようにのべたそうです。

「佐藤君のような優秀な選手を何で放出したんだ!」

星野監督はつぎのようにこたえました。

「佐藤選手は、Aチームでは、おなじポジションに複数の優秀な選手がいたため能力をいかしきれなかったのですが、Bチームに移籍して自分の能力をいかす場をえたのです。それぞれの選手がそれぞれに能力を発揮できる場をえればよいではないですか」

佐藤選手は、Bチームに移籍してポジションをえたということでしょう。

野球選手の能力は、その人が本来もっている能力だけでなく、チームのなかのポジションによっても決まります。自分のポジションや役割が組織のなかにあるかどうか?

その人の能力や価値は、その人をとりまく全体状況のなかで決まってくるのであって、全体状況が変われば存在価値も変わってきます。その人の価値や意義はその人だけで絶対的に決まるものではなく、一つの場のなかで決まるといってよいでしょう。

したがってたとえばその人自身は何も変わらなくても、居場所が変わったり周囲が変わったりしただけで、その人が大活躍するようになることはありえるわけです。

* 

以上の教訓から、自分自身の能力を開発する訓練も大切ですが、一方で、自分の居場所を積極的にさがす、自分の能力をアウトプットできる場をみつけだす努力をすることも重要であることがわかります(下図)。

151210 能力と場
図 自分の能力をいかせる場をみつける

 

震災などにかかわる復興事業などをおこなう場合には、第一に主題(テーマ)を明確にし、そしてプロジェクトチームをつくり、現地で活動をすすめるようにします。

ある地域で大震災がおきると救援活動がまずおこなわれ、そしてその後、さまざまなチームが復興支援活動を現地でおこなうことになります。
 
先日、「自分たちにも何かできることはないだろうか?」といって、ある国の関係者たちが10数人からなるチームをつくった例がありました。

彼/彼女らの「復興に貢献したい」「現地の役にたちたい」という気持ちはとても重要なことであり、大切にしなければなりません。

しかし、思いだけでは事業はできません。被災地の現実は非常にきびしく、大きな困難がまちうけています。

「ある地域の役にたちたい」とおもったら、チームをつくりあげるよりも前にその地域(その市あるいは村など)の現地調査(フィールドワーク)をして、その地域の真のニーズをまずつかまなければなりません。そして課題をうかびあがらせ、さまざまな課題のなかの中心的課題つまり主題(テーマ)を明確にする必要があります。

そのうえでその主題を公表して、それにみあった人材をあつめます。あるいは公募します。

自然災害の軽減を主題にするのであれば、気象・地質・地震・土木・林業・地理などの分野から専門家を選択してチームをつくります。医療分野であれば医師や看護師・医療技術者などが中心になります。チームには事務スタッフなども配置します。

何かをやりたいと漠然とおもっていろいろな分野の人々があつまっても事業にはならないことを知らなければなりません。漠然とあつまるくらいなら、むしろ個人でボランティア活動をおこなった方がよいです。

このように、チームをまずつくってから何かできないだろうかとかんがえるのではなく、主題をまず明確にして、そしてプロジェクトチームをつくるという方式をとるべきです(注)。前者と後者とでは順序が逆であることに注意してください。

 × 1. チームをつくる → 2. 何かできないかとかかんがえる
 ○ 1. 主題を明確にする → 2. プロジェクトチームをつくる

このような方法(後者)はプロジェクト方式とよんでもよいでしょう。



▼ 注:事前調査隊とプロジェクトチームとのちがいについて
地域のニーズが何であるかを調査するために事前調査隊を現地に派遣することはよくあります。そのような調査隊を事前調査チームあるいは単に調査チームとよぶこともありますが、そのような調査隊と、主題を決めたあとに結成するプロジェクトチームとでは性格がことなることに留意してください。構成メンバーも当然ことなります。

全体を整理するとたとえばつぎのような順序になります。
<事前調査隊を結成>→<現地調査を実施>→<現地のニーズをつかむ>→<課題さらに主題をあきらかにする>→<プロジェクトチームを結成>→<事業を実施>

なお個人でボランティア活動をする場合でも活動そのものをいきなりはじめるのではなく、まず、現地調査をしてニーズをつかみ、課題さらに主題をあきらかにしてから活動をはじめるようにします。


取材法は、取材のために特別に時間をとらなくても、毎日の生活や仕事のなかで実践することができます。

たとえばつぎのような意見があります。
「取材が重要だとわかっていても、いそがしくてそんなことをしている暇はありませんよ」

今日、時代は情報化へと移行しました。情報処理をすすめるうえで取材活動は大切であり、取材の重要性に目覚めるべきです。

しかし同時につぎの着眼も大切です。すなわち多忙にはたらいている毎日の仕事や生活の場こそ取材の機会を提供する絶好の機会であるということです。つまり、取材のための時間を特別にとらなくても、毎日の生活や仕事そのものから取材ができるわけです。あるいは何らかの事業をすすめながらその事業それ自体から取材をすることができるのです。

このときに「点メモ」が役立ちます。点メモをつかった取材でしたらいつでもどこでも簡単にできます(注1)。

たとえば、スマートフォンのメモアプリと音声文字変換アプリなどをつかって、日付けとともに点メモを記録します。そして週末などの時間のあるときに、それらをみなおしながら文章化をするという方法が推奨できます(注2)。

何でもかんでも記録するというのではなく、基本的には、ハッとしたことだけを記録するようにすればよいでしょう。


▼ 注1
点メモをつけるときには「体験の玉」をイメージすることが大切です。

▼ 注2
点メモをつかった記録法はあくまでも取材の方法であり、その時その場で記録するのがポイントです。夜になってその日一日をふりかえって自分の心の内などを書きしるす日記とはちがう点に留意してください。

▼ 追記
点メモをつかって、毎日の生活や仕事の場で取材をする方法は「アクションリサーチ」とよばれる分野・方法に発展させることができます。

▼ 参考文献
川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』中央公論社、1986年11月20日
KJ法―渾沌をして語らしめる 

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『マンション・地震に備えた暮らし方』はマンションに特化した防災書です。マンションにはマンション独自の防災の方法があることを解説しています。

マンションの部屋のなかの安全性を高めるテクニックから、かぎられた収納スペースでもできる備蓄のコツ、地震がおこった瞬間の行動の仕方、そしてマンション全体として防災力を高める方法までをまとめたマンション居住者必読の地震防災マニュアルです。

目 次
1 マンションの地震被害を知る。
 日本で地震が起きない場所はない
 都市部における被害想定 ほか

2 地震に備える部屋づくり。
 費用ゼロで効果的な防災対策
 家具の配置を見直す ほか

3 自宅滞留のための準備。
 被害想定から考えてみましょう
 命をつなぐ備蓄品 ほか

4 もしも地震が起こったら・・・
 地震発生直後の行動
 キッチン ほか

5 マンション全体で考える防災対策。
 停電によりエレベーターが全停止
 敷地内の液状化と、10日間の断水 ほか

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第1章では、巨大地震がおこったとのさまざまな被害を想定しています。マンションは仮に倒壊しなかったとしてもさまざまな被害がでる可能性をもっています。たとえば、外壁の剥落、ドア・床・バルコニー・非常階段・受水槽・配管の破損などがあります。とくに配管が破損した場合、安全が確認されるまではトイレなどの配水はできません。

第2章では、マンションの部屋のなかの対策・備えについて部屋別・場所別にのべています。安全な空間づくりが何よりも大事です。

第3章では、地震がおこったときの自宅滞留のための準備についてのべています。通常のマンションは耐震性があるため、巨大地震がおこった場合でも避難所には避難せず自宅に滞留するケースが想定されます。そのための準備も必要です。

第4章では、大地震が発生した瞬間の行動の仕方について解説しています。あらかじめ思考実験をしておくとよいです。

第5章では、マンション全体でとりくむ地震対策・防災対策について提案しています。今すんでいるマンション全体の耐震診断はすでにおこなわれているでしょうか。まだの場合は専門家にすぐに依頼する必要があります。またマンションの非常用設備をあらためて確認するようにします。

本書には、耐震グッズ・防災グッズ・救急グッズについても写真つきで具体的に紹介されています。ソーラー式充電器はとくに有用です。

大地震はかならずやってきます。あらかじめ備えておくことが必要です。



▼ 引用文献
国崎信江・つなぐネットコミュニケーションズ著『マンション・地震に備えた暮らし方』 つなぐネットコミュニケーションズ発行、2013年3月20日
マンション・地震に備えた暮らし方 (地震防災の教科書)

▼ 関連記事
日本列島ではくりかえし巨大地震がおこる - 金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(1)-

震災対策のための建築設計について解説した本です。やや専門的ですが一般の人でもわかるように書いてあります。自宅や職場の建物などの安全性を確認し、対策を講じるために役立ちます。

目 次
1 防災技術の次の主役 40
2 分野別動向
3 防災技術の基礎知識

第1章では、地震対策など防災技術の概略が簡潔にのべられています。これからの防災技術は新建築物への適用だけではなく、むしろ既存の建築物への適用こそ必要です。たとえば今までどおりの通常の生活を工事中でも居住者がおくりながら防災工事ができる技術が開発されています。

第2章は分野別の各論です。免震、制震、耐震、天井対策、津波対策、衝撃力対応、節電、液状化対策、リスク管理のそれぞれについて解説しています。建築物は何でも補強すればよいというわけではなく、力を吸収したり にがしたりすることも重要です。コストもかんがえなければなりません。

第3章では、防災技術の基礎知識についてのべています。高層ビルでくらしていたり はたらいている方は長周期地震動について理解しておく必要があります。また大地震の際には建物の内装が凶器にならないようにしなければなりません。

そして何よりも重要なのは、家はこわれても命はまもるということであり、このかんがえにもとづいて「耐震シェルター」が実用化されました。耐震シェルターは、ベッドまわりだけをまもるタイプと寝室などの部屋全体をまもるタイプのものがあります。先のネパール大地震のときにも建物の倒壊によって多くの人々が死傷してしまいました。耐震シェルターの役割は大きいです。

「首都圏を震度7の地震がおそう可能性がある」と文部科学省のプロジェクトチームが2012年3月に発表しました。南関東のどこかでマグニチュード7程度の地震がいつ発生しても不思議ではないと警告しています。

もはや、建物のことは建築の専門家にまかせておけばよいという段階ではありません。本書を読んでそして専門家に相談するというのがよいとおもいます。


▼ 引用文献
日経アーキテクチュア編『新しい防災設計』日経BP社、2012年4月23日
NA選書 新しい防災設計

▼ 関連記事
避難場所をきめておく - 大木聖子著『家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩』-
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日本列島ではくりかえし巨大地震がおこる - 金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(1)-
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「仮に落ちても安全」という設計思想に転換した - 日本未来館の膜天井 -
建築物に震災対策を講じる -『新しい防災設計』-


東京都江東区にある日本科学未来館では、2011年3月11日の東日本大震災で天井の一部が崩落してしまいました。復旧にあたっては「仮に落ちても安全」というあたらしい設計思想にもとづいて天井の抜本的な改修をおこないました(注)。

日本科学未来館・館長の毛利衛さんはつぎのようにのべています。

施設を設計した日建設計は元々、国土交通省が求める以上の対策を、天井に施していたようですが、それでも地震で落ちてしまった。

お金をかけなくても安全でデザイン性が高い天井ができるのではないか、という発想をもつことが重要だと思います。

天井が落ちるリスクがあることを踏まえて設計し、地震時の行動を検討する。天井の安全性に対する考え方震災を機に大きく変わったことで、これまで想定外だった事態を、想定できるようになりました。以前よりも格段に、安全性が増したと思っています。

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こうしてあらたな天井は、かるくてやわらかい「膜」を採用した「膜天井」にはりかえられました。

防災対策にあたっては、従来の常識の路線上において、従来のものを補強したり強化すればすむというわけではないでしょう。「仮に落ちても安全」というような方向転換、発想の転換があってもよいとおもいます。日本科学未来館のあたらしい天井対策に発想の転換の実例をみることができます。


▼ 注:引用文献
日経アーキテクチャ編『新しい防災設計』日経BP社、2012年4月23日
免震・制震・耐震対策、天井対策、津波対策、節電、液状化対策など実際に確実に役にたつ防災設計について解説しています。大地震など、来るものは来るのですから、地震予知をあてにするのではなく、実際に役立つ対策をあらかじめほどこしておくことが重要です。「遠くの地震も侮れない」「家はこわれても命は守る」など大変参考になります。

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金森博雄著『巨大地震の科学と防災』第七章「予知・予測への期待と現実」では、地震発生の予測は確率論的にしかできず、地震予知はできないことをのべています。

現在、日本政府の地震調査研究推進本部は、海溝型や活断層の地震について、今後30年間に何パーセントで発生するといった確率予測を発表しています。

ここで問題になるのは、確率の数値をしめされた国民はどう対応したらよいのかということです。

たとえば地震の発生確率が30パーセントだとあまり備えなくてよいのか、確率が60パーセントをこえた場合はいそいで備えよということなのか? 

そうではないのです。確率が何パーセントであろうと大地震の可能性があるかぎりしっかりと備えておかなければならないのです。訓練もしておく必要があります。それが現実というものです。

確率予測は、天気予報を例にしてかんがえるとわかりやすいでしょう。

わたしはフィールドワークやトレッキングによく行きます。そのときにはかならず雨具をもっていきます。天気予報の降水確率が何パーセントであってもです。

降水確率が80パーセント以上だと雨がふるだろうと想像します。しかし降水確率がたとえ10パーセントであっても雨がふる可能性はあります。さらにたとえ快晴の予報であっても雨具は持参します。なぜなら天気予報ははずれることがときどきあるからです。局所的な天候の急変もありえます。山岳地帯にいてもし雨がふってきて雨具がなかったら大変なことになります。生死にかかわることもあります。したがって備えておくことが必要です。

大地震についても同様なことがいえます。 

金森さんはつぎのようにのべています。

地下の破壊現象にはさまざまな要因が複雑に影響を及ぼすため、確率論的にしか予測はできません。普通の人が知りたい「明日、大地震は起こるのか」といった質問に答えることはできないのです。

地震にしろ天気にしろ確率予測は、わたしたちに注意や警戒をおこたらないように、あらかじめ備えておくようにというメッセージをつたえているのだとうけとめた方がよいです。来るものは来るのですから準備しておくことが必要です。



▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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金森博雄著『巨大地震の科学と防災』第六章「アスペリティ」では地震をひきおこす断層の不均質性と自然現象の“ゆらぎ”について解説しています。

地震は地下の断層がずれうごく現象です。その断層において、地震の際に周囲よりも大きくすべって強い揺れをひきおこす場所を「アスペリティ」とよびます。そこは、ひずみをためながら長いあいだ頑張ってくっついていた「強い場所」です。しかし、あるときに耐えきれなくなり一気にすべって地震をひきおこします。

「アスペリティ」とはそもそもはでこぼこという意味です。断層はひとつながりになめらかなにずれるのではなく、断層面のなかでも大きくすべる場所と小さくすべるだけの場所があるわけです。つまり断層面と断層のひずみのたまり方は不均質であり、地震のおこりかたは複雑で毎回おなじように地震がおこるわけではありません。

著者の金森さんはこれを自然現象の「ゆらぎ」として説明しています。

自然現象にはいつもゆらぎがあります。東日本大震災を起こした地震を通じて、日本でもそのことが強く認識されました。

こうして同じ場所ではほぼ同じ大きさの大地震が一定間隔で繰り返すという「固有地震説」(注)は通用しなくなりました。

このように自然のゆらぎについてはこれまであまり意識されていませんでした。学校の理科教育でも自然の法則(自然の規則性)については強調していますが、ゆらぎについてはおしえていないのではないでしょうか。

たとえば地球や月の自転や公転は運動の法則にもとづいて規則的におこっていますが、実際にはゆらぎがあることが知られています。地表で観測される自然現象(地学現象)にもゆらぎがあり、それは天体の運行などにくらべてとても大きいことはあきらかです。

このように地震のおこりかたにゆらぎがあるために地震発生の厳密な予測はできないのです。いつ大地震がおこるかわからないわけですから、いつおこってもよいようにそなえておかなければなりません。



▼ 注
1995年の阪神・淡路大震災のあとにできた日本の地震調査研究推進本部(地震本部)は、長期予測の前提として「固有地震説」をつかっていました。「固有地震説」とは、おなじ場所ではほぼおなじ大きさの大地震が一定間隔でくりかえすというかんがえ方です。しかし東日本大震災をふまえ見なおすことになりました。

アスペリティも固有地震説も概念的な考えであるので地震の全体像(全体的な傾向)をつかむためには有効ですが、自然現象の複雑さをふまえると災害の予測につかうのには問題があるとのことです。


▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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金森博雄著『巨大地震の科学と防災』第五章「奇妙な地震『津波地震』」では、小さな揺れでも大津波がおこりうることをのべています。地震の揺れの大きさにかかわらず、津波警報がでたらすぐに高台に避難するようにしなければなりません。

1986年6月15日の明治三陸地震は大きな津波で、2万人以上の犠牲者が出ました。三陸沿岸での津波は30メートル以上に達しました。

津波は地震で海底が隆起し、その上にある海水がもち上げられるために発生します。(中略)(大津波なら地震の)揺れも大きいとおもうでしょう。ところが、揺れはとても小さかったのです。そういう意味で、たいへん奇妙な地震でした。

揺れは小さいが大きな津波を起こす特殊な地震を「津波地震」と名づけました。

地震災害に関連して津波についても理解をふかめ警戒しなければならないことは言うまでもありません。著者の金森さんは地震と津波の関係を研究し、小さな揺れでも大津波をひきおこす「津波地震」を世界各地で発見しました。「揺れは小さくても大きな津波がおこることがよくある」というのですからおどろきです。小さな地震で小さな津波、大きな地震で大きな津波という単純な図式はなりたたないのです。

また、2011年3月11の東北地方太平洋沖地震において、気象庁は、地震発生後3分で津波警報をだしましたが、津波の高さはつぎのとおり小さく予測してして発表してしまいました。
・宮城県:6メートル
・岩手県や福島県:3メートル

しかし地震発生の30分後、釜石沖の津波計が急上昇したため、つぎのように修正発表しました。
・宮城県:10メートル
・岩手県と福島県:6メートル

さらに地震発生の46分後にはつぎのように修正発表しました。
・東北の太平洋岸:10メートル以上

そのご気象庁は高い津波を推定できなかったことを反省し、最初の警報では津波の高さはしめさずに、巨大津波の可能性を指摘して、はやく避難を即す方法に変えました。

つまり津波の高さをあらかじめ予測することは不可能であるわけです。したがって警報がでたらすぐに高台に避難する以外に方法はありません。



▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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「仮に落ちても安全」という設計思想に転換した - 日本未来館の膜天井 -
建築物に震災対策を講じる -『新しい防災設計』-


金森博雄著『巨大地震の科学と防災』の第四章「地震波が教えてくれたこと - 多様な地震像」では、本震にひきつづいてやってくる余震と兄弟地震に警戒するようよびかけています。

地震の発生のしかたとして、前震とよばれる小さな地震がいくつかあり、大きな地震(本震)が来て、たくさんの余震が起こるというのが典型的なパターンです。余震は本震よりマグニチュードで1程度小さいのが普通です。ときどき本震と同じ程度のサイズの地震が続けて発生することがあり、「ダブレット」とよばれます。兄弟地震といった感じです。

大地震がおこったあとに余震がおこることは多くの人がすでに知っているとおもいますが、「ダブレット」(兄弟地震)については知られていないのではないでしょうか。本震と同程度の地震がまたおこりえるわけですから厳重な注意が必要です。

余震にしろダブレット(兄弟地震)にしろ防災上の大問題です。本震でひびがはいったりして弱くなった建築物がつよい揺れにふたたびおそわれて今度は倒壊してしまったり、津波で堤防がこわれた町をふたたび津波がおそう恐れもあるからです。地震が1回おこってしばらくして地盤がおちついたようだと安心することはできません。ダブレット(兄弟地震)が1年後あるいは数十年後におこるかもしれないそうです。

2011年3月11日のマグニチュード9の東北地方太平洋沖地震でも、本震がおこった40分後にはマグニチュード7.5の余震がおこり、2012年12月7日にはマグニチュード7級の地震がおこりました。今後とも余震あるいは兄弟地震がおこる可能性があり、もう大丈夫と油断することはできないとのことです。

そんなことを言われてもとおもいますが、大地震の可能性があり、いつく来るのかわからない以上、いつ来てもよいように準備をしておかなければなりません

また先日のネパール地震では、2015年4月25日にマグニチュード7.8の本震があり、2015年5月12日にマグニチュード7.3の大きな余震がおこりました。余震がおこることについて多くのネパール人に情報がつたえられていなかったために、ひびの入った家にもどっていて余震にあい、家が倒壊して多数の死傷者がさらにでてしまいました。「こんなに大きな地震がまた来るとはおもっていなかった」(被災した住民)。残念なことです。地震に関する広報活動も防災・減災のために非常に重要です



▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

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大木聖子著『家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩』の108ページには世界の地震帯分布の地図がでています。この30年間でおこった大きめの地震の地点を黒点でえがいてあります。これをみると日本列島は黒点でうめつくされています。

IMG_2051


したがって日本列島でくらしているかぎりどこにいても大きな地震にあう可能性があり、地震からはのがれられないということがわかります。ニュースなどをみていると活断層の分布などの議論をしていることがありますが、それはこまかい話でしかありません。来るものは来るという基本的な認識をもって備えておくことが必要です。

また、112〜113ページでは地震の正体をチョークの割れ方をつかって説明しています。チョークを万力にはさんで押していくと、ある瞬間にパキッと縦に割れます。このようにして地下の岩が割れるのが地震の正体です。

IMG_2052
 

チョークは一気にパキッと割れるのであって、すこしずつボロボロにくだけていくのではないことに注意してください。つまり地下の岩石はすこしずつくだけて粉々になっていくのではなく、ある時に一気に割れるのです。

こわれるときには突然パキッとこわれる。こわれるときには一気にこわれる。本当の大きな変化はあるときにガクンとおこる。大きな変化、本当の変化とはそういうものです。変わるときには一気に変わるのです。

これを自然には「飛躍」があると表現してもよいでしょう。実は、この自然の「飛躍」が人知を越えていて恐ろしいのです。津波や洪水・土石流・火山噴火などにもついても同様なことがいえます。

地震にそなえるにあたってこのようなとことを知っておくことも大切でしょう。

本書は子供でも読めるように平易な書き方をしていますが、実際には、自然の本質について実にわかりやすくかたっています。この点に注目してください。



▼ 引用文献
大木聖子著『家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩』東京堂出版、2014年1月30日
家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩

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大木聖子著『家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩』は大地震から命をまもるための本です。

目 次
1章 地図をつくろう
2章 学校の中
3章 おうちの中
4章 ピクニックに行こう
5章 生きている地球
6章 防災館で体験

本書の基礎をなすのは第1章〜第3章です。これらを踏まえて第4章から第6章に発展的にとりくむとよいでしょう。

第1章には、避難場所を決めておくというもっとも基本的なことがのべられています。海のちかくにいる人は、十分な高さのある場所を選択しなければならないことはもう言うまでもないでしょう。そして、「近隣から火事が発生したら、おうちを捨てて避難する。パパとママとは避難場所で会おうね」と約束しておきます。

第2章と第3章は学校の中とおうちの中、それぞれのケースにつて解説しています。学校では先生と生徒が、おうちのなかでは家族のみんなで訓練をくりかえしておかなければなりません。

学校の棚は固定されているでしょうか。窓ガラスやガラス扉にはガラス飛散防止シートが貼ってあるでしょうか。家具は絶対に手でおさえてはいけません。そもそも家具を固定していないからおさえようとしてしまうのです

第6章では、各自治体が開設している防災館で実際に体験してみるようにすすめています。たとえば火災がでて煙がでてきたら、口を布のでおおって姿勢を低く、上の階ににげてはダメ。扉は地震のときは開けっ放し、火災のときには締める。


本書は、地震予知はできないし来るものは来るのだから、いつ来てもよいように準備しておこうという立場で書かれているところがよいです。わかりにくくてあまり役にたたない未来予測の確率論を展開するのではなく、実際に命をまもるにはどうしたらよいか、その基本を解説しています。



▼ 引用文献
大木聖子著『家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩』東京堂出版、2014年1月30日
家族で学ぶ 地震防災はじめの一歩

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竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』は、地形の観点から日本史の謎をあらたに読みといた本です。地形をみて仮説をたてて歴史の常識をひっくりかえしていく様子は推理小説を読んでいるようでもあり大変おもしろいです。 

目 次
第1章 関ヶ原勝利後、なぜ家康はすぐ江戸に戻ったか
第2章 なぜ信長は比叡山延暦寺を焼き討ちしたか
第3章 なぜ頼朝は鎌倉に幕府を開いたか
第4章 元寇が失敗に終わった本当の理由とは何か
第5章 半蔵門は本当に裏門だったのか 徳川幕府百年の復讐 ①
第6章 赤穂浪士の討ち入りはなぜ成功したか 徳川幕府百年の復讐 ②
第7章 なぜ徳川幕府は吉良家を抹殺したか 徳川幕府百年の復讐 ③
第8章 四十七士はなぜ泉岳寺に埋葬された 徳川幕府百年の復讐 ④
第9章 なぜ家康は江戸入り直後に小名木川を造ったか
第10章 江戸100万人の飲み水をなぜ確保できたか
第11章 なぜ吉原遊郭は移転したのか
第12章 実質的な最後の「征夷大将軍」は誰か
第13章 なぜ江戸無血開城が実現したか
第14章 なぜ京都が都になったか
第15章 日本文明を生んだ奈良は、なぜ衰退したか
第16章 なぜ大阪には緑の空間が少ないか
第17章 脆弱な土地・福岡はなぜ巨大都市となった
第18章 「二つの遷都」はなぜ行われたか

本書の中核となるのは第1章と第5〜13章に見られる江戸と徳川幕府に関する論考です。

たとえば江戸城の半蔵門は江戸城の裏口であり、緊急時の将軍の脱出口であったとわたしもおもっていました。しかし第5章「半蔵門は本当に裏門だったのか」を読むと・・・。

竹村公太郎さんは、最初、天皇・皇后両陛下が半蔵門からお出になるのを見て、裏口の半蔵門からなぜお出になるのか疑問におもいました。また勤務先がちかくだったこともあってお堀端をよく散歩していました。そして、そこで見た光景が広重の絵《山王祭ねり込み》とかさなり最初の着想をえました。「半蔵門のところには橋がかかっておらず土手になっていた」。その後、江戸の古地図を見て甲州街道(今の新宿通り)が半蔵門に直結していることなどから「半蔵門は・・・」という仮説をたてました。そして仮説を実証するために皇居周辺を再度あるいてみました。現地調査です。すると、新宿通りは尾根道、難攻不落の地形、江戸の誕生は甲州街道から・・・、つぎつぎに新発見(再発見?)がありました。

こうして最初の疑問から、散歩をして、絵をみて、地図をみて、仮説をたてて、現地調査をして、検証をしていったわけです。これはフィールドワークの方法です

竹村さんは「地形を見ると、歴史の定説がひっくり返る」「地形を見ていると新しい歴史が見えてくる」といい、地形と歴史のあたらしい物語をみごとにえがきだしています。そしてなんと、江戸の地形からの推理が「忠臣蔵」の謎解きに発展していくのです。

本書は、著者と一緒に推理をすすめながら読める書き方になっています。著者と一緒に推理をたのしんでください。そして今度は、歴史のその現場を実際にあるいてみて自分の目でたしかめてみるとさらにおもしろいでしょう。



▼ 引用文献
竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(Kindle版)、PHP研究所、2013年10月1日
日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)


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歴史の流れを地形でとらえる 〜『地形から読み解く日本の歴史』〜
地形をみて歴史の謎をよみとく - 竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(1)-
空間全体に意識をくばって情報処理をすすめる - 竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(2)-
鎌倉から日本国をとらえなおす - 竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(3)-
現場をあるいて地形を観察する - 竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける(文明・文化篇)』-
五感をはたらかせて文明の下部構造をとらえる -『本質を見抜く力 - 環境・食料・エネルギー -』-
現場のデータから仮説をたてる - 竹村公太郎さんらの方法 -

『エマージェンシーハンドブック』は災害への備え方を解説した小冊子です。大地震や火山噴火などの災害はいつどこでおこるかわかりません。どのような場所にいても状況に応じて身をまもれるように本書をよんであらかじめ準備しておくことが必要です。

目 次
災害時に慌てないために書き込んでおきましょう

こうして身を守る まず!緊急時のサバイバル
 家にいて災害が起きたらどうする !?
 交通機関で災害が起きたらどうする !?
 屋外で災害が起きたらどうする !?
 外出先で災害がおきたらそうする !?

いざという時にいのちを守る応急処置

これは知っておきたいわが家の防災プラン
 今すぐチェックわが家の「防災対策」
 今すぐ備えたい! 安心グッズ

災害時の伝言ダイヤルの使い方
思い出せないときの為に

災害時に慌てないために書き込んでおきましょう 

IMG_2007


災害時の備えを場面別に整理していてとてもわかりやすいです。さまざまな場面を想定して思考実験やシミュレーションをしておくとよいです。
 
また災害時における連絡方法や安否の確認方法については、NTT・au・SoftBank のそれぞれについて具体的に記載されていますのでチェックしておく必要があります。

災害を想像して防災プランをたてて訓練しておくことがもとめられます。


▼ 引用文献
『エマージェンシーハンドブック 災害時の備え』塔文社発行、モンベル発売。
モンベル(mont‐bell) エマージェンシーハンドブック


たとえば旅行や現地調査や現地活動など何らかの行動をしようとおもったとき、地球上のどこかの地域、自分が問題意識をもっている地域に具体的に入っていくことになります。地球全体から見るとその地域とは地球上のある部分ということになります(図1)。
150509 地球と地域
図1 地球と地域のモデル


今では、"Google Earth" をつかえば地球も地域も具体的に画像で見ることができます。便利な時代になりました。

ここで地球と地域は大局と局所の関係になっています(図2)。

150509b 地球と地域
図2 大局と局所


大局を見ようとおもったら、以前でしたら、標高の高い場所にいったり飛行機にのったりして眼下をみわたすことをしましたが、現代では、"Google Earth" やその他のウェブサイトをつかって大局を見ることがでできます。

つまり局所(ある場所)に入る前に大局を見ることが簡単にできるようになり、あらかじめ大局をみてから行動するということが誰にでもでき、そうした方が道にまようこともなく効果が大きくなるのです。行動するということは局所に入りこんでいくということです。

このように行動とは、大局を見て局所にきりこんでいくことであるととらえなおすことができ、現代では、「"Google Earth" → 行動」というやり方でそれを具体的に実践することができます。


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Google Earth をつかって空からまなぶ -『Google Earth で地理学習』-
 
問題解決は3段階ですすめる - 大観 → 現地活動 → 考察 -
現場のニーズにもとづいて現地活動をすすめる
大局をみて局所にきりこむ - "Google Earth" → 行動 -
行動により局所をせめて問題を解決する - 1. 大観 →2. 行動 → 3. 考察 -
問題解決の各段階の内部で情報処理をくりかえす


ネパール大地震がおこってから半月がたちました。多くの救援隊や支援者が地震発生直後から被災地に入り現地活動をすすめています。時間の経過とともに活動内容は、被災者の捜索・救助から被災者や被災地の援助へ、そしてネパールの復興へと変化していきます。

外部から被災地に支援者が入って現地活動をおこなうときには、あくまでも被災地のニーズにもとづいて活動をすすめなければなりません。そのためには、まず、被災地をよく観察し被災者の声をよく聞くこと、ニーズ調査が必要です。そのようにしないで現場の声を軽視し、自分の思い・経験・知識を相手におしつけて行動すると被災地の役にたつことはできません。

このことは、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からも理解できます。支援者が、被災地を観察し被災者の声をよく聞くということはあらたな情報をインプットすることです。そしてそれらの情報を処理して話をしたり、行動につなげていきます。話したり行動したりすることはアウトプットにあたります(図1)。このような情報処理の過程で自分の経験や知識もいかしていけばよいのです。

150509 被災地
図1 被災地のなかで支援者は情報処理をおこなう


これに対して、自分の思い・経験や知識などを優先して被災地の観察や被災者の声を軽視するということは、情報のインプットを止めてしまうということです。この場合は、思いや経験や知識といった支援者がすでにもっている過去の情報をひっぱりだしてきてアウトプットをすることになります(図2)。

150509b 被災地
図2 あらたなインプットをせず、すでにもっている情報からアウトプットするタイプ


これは「そんなことはわかっている」というタイプです。自分の思いがつよい人(自意識が過剰な人)や経験や知識が豊富な人ほどあらたなインプットができない傾向がありますので注意が必要です。

しかし、いいかえると経験が豊富で知識をたくさんもっている人であっても、自己にはとらわれずに、あらたなインプットと情報の処理がスムーズにできる人は現場のニーズに適切にこたえる行動ができるのです。

このようにして現地活動ではあくまでも現場のニーズにこたえていくことが必要です。


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モンベル・フラッシュライト・クールキャップは太陽光で充電が可能な LED ライトつきのキャップです。アイデア商品です。暗いところでの作業のために、夜間のランニングやウォーキングで、キャンプで、防犯や災害時にも役にたちます。

バッテリーは太陽光で充電できるのが特色です。あるいは別売の「マルチコネクター充電ケーブルセット」を使用すればパソコンなどの USB 端子からも充電することができます。

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明るさは 0.5 ルーメン、照射距離は 9m、照射モードは点灯と点滅の2パターンになっていて、照射角度は上下4段階に調節できます。

重量は 106g、カラーはブラックとホワイト、サイズは S/M(54~58cm)と M/L(57~61cm)の2種類です。

電子パーツのついたツバ芯をとりはずして本体を洗濯することもできます。通気性と消臭機能をそなえ、夏でも快適に着用できます。

また、おもちの USB 変換ケーブルを併用することで携帯電話の非常用電源としても使用できます。


類似商品として「フラッシュライト ストレッチ O.D. キャップ」もあります。こちらはコットンのような風合いと高い伸縮性をそなえているのが特徴です。

ハンドルをまわして充電する電池交換不要の高輝度 LED ライトです電池をいれる必要がないので、いざというときにかならず役にたちます。アウトドアで、暗いところでの作業で、防犯のために、災害時に有用です。わたしはこれを常備しています。

ライトは点灯・強点灯・点滅と三段階の調節が可能です。重量は 98g、サイズは 約 81×49×38 mm、明るさは 15ルーメン(注)、ライト点灯時間は約1分間充電したとき約10分(LOWモード)です。


 
この製品には、頭につけてつかうヘッドライト式(ヘッドバンドつき)のものもあります。頭につけてつかうので両手が自由になり、暗闇での作業や行動のときに便利です。本体はヘッドバンドからとりはずして手でもってつかうこともできます。

コンパクト・フラッシュライト同様にハンドルをまわして充電できるので電池交換不要、ライトは LOW・HIGH・点滅と3段階の調節ができます。

ライト点灯時間は約1分充電時で約 90 分(LOWモード)とコンパクト・フラッシュライトよりもかなり長いですが、明るさは6ルーメンであり暗くなります。重量は 100g、サイズは 約 81×49×38 mm です。

わたしはこちらも常備しています。

明るさをとるか長い点灯時間をとるかによってどちらかを選択してもよいですが、できれば両方を常備しておいて用途にわけてつかいわけるとよいです。

これらは、何といっても電池切れの心配をしなくくてすむのがよいです。ライトが暗くなってきたらハンドルをグルグルまわすだけです。常備品としておすすめします。


▼ 注:ルーメンとは
ルーメンとは明るさをしめす値です。光源から発せられる光の総量をあらわした光学単位で、方向や距離に関係なく光源の本来もっている性能を表現できます。LEDは、消費電力に対する明るさが種類や仕様によってことなるためワットのような消費電力では明るさをしめすことができません。
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