発想法 - 情報処理と問題解決 -

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よくできた表現(アウトプット)をするためには共鳴効果をつかうとよいです。そのためにはバランスが必要です。


劇団四季の新演出で『ウェストサイド物語』(注)をみました。
 
ミュージカルは総合舞台芸術であり、音楽・芝居・ダンスをバランスよくくみあわせて物語を構成していきます。その結果、ホールはひとつの共鳴空間になって大きな感動がまきおこります。

総合舞台芸術としてはミュージカル以外にもオペラ・歌舞伎・バレエがあります。いずれも総合芸術ですが、オペラは音楽に重点がおかれ、歌舞伎は芝居に重点がおかれ、バレエは踊りに重点がおかれます。
 
それに対してミュージカルは、音楽・芝居・ダンス(踊り)の三者のバランスが比較的よいのが特色です。作品にもよりますが、どれかかに重点を特におくということはなく、三者のバランスをとりながら共鳴効果をひきだしています(下図)。いいかえると一点豪華主義ではないということです。

160229 共鳴
図 音楽・芝居・ダンスのバランスが共鳴効果を生みだす



このことは、特定の一流スター(有名歌手や有名俳優)にたよって効果をあげるという方法ではないということでもあり、事実、劇団四季にはいわゆるスターはいないのです。
 
これはたとえば協奏曲(コンチェルト)と交響曲(シンフォニー)とのちがいにも似ています。協奏曲では一流のソリストがでてきて演奏します。それを目当てに聴衆もあつまります。それに対して交響曲には特定のソリストはおらず、すべての楽器による音の共鳴効果をあくまでも重視します。
 
オペラや歌舞伎やバレエにはない、無期限ロングランになるようなおどろくべきヒット公演をミュージカルが次々に生みだしているのは、ひとえにいちじるしい共鳴効果によるものだとかんがえられます。共鳴が観衆をまきこんでいるのです。


 

音楽と芝居とダンスの共鳴がおこった場合、これら三者をたしあわせた以上の効果が生じます。この場合 全体は、部分の単なる総和ではなく部分の総和以上のものになります。作品は機械ではなく、ここに合理主義をこえた感動がもたらされます。
 
このことがわかれば、表現(アウトプット)のときに共鳴効果をつかうのがよいということになります。共鳴力をつかう方法は表現(アウトプット)の効果をあげるためにとても役立ちます。
 
これは一点豪華主義を否定するものではありません。共鳴効果か一点豪華主義かは時と場合によってつかいわけていけばよいでしょう。注意点は、共鳴効果を生みだすためには前提として全体的なバランスが必要であるということです。


▼『ウエスト・サイド物語』(West Side Story)
劇団四季:『ウェストサイド物語』
原案:ジェローム=ロビンズ
脚本:アーサー=ローレンツ
音楽:レナード=バーンスタイン
歌詞:スティーヴン=ソンドハイム

『ウェストサイド物語』は、ジェット団とシャーク団の抗争と人間のおろかしさをえがいた悲劇だと誰もがおもいます。しかし今回は、マリアを主人公にした物語という見方ができました。かわいらしいマリアが変化し成長し、そしてきっとたくましく生きていくだろうと予感させるラストシーン。心踊る演技、そして力強い歌声が、マリアが大人になっていく姿を見事に表現していました。


今日、高性能なコンピューターである人工知能が発達してきました。これからのあたらしい時代は、コンピューターでできることはコンピューターでおこない、たとえば自分らしいアウトプットをするなど、人間にしかできないことは人間がおこなうようになっていきます。
 

松尾豊著『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(角川EPUB選書)は、人工知能の現況、コンピューターと情報化社会の今後の動向を知るためにとても役立ちます。


目 次
序 章 広がる人工知能 ー 人工知能は人類を滅ぼすか
第1章 人工知能とは何か ー 専門家と世間の認識のズレ
第2章 「推論」と「探索」の時代 ー 第1次 AI ブーム
第3章 「知識」を入れると賢くなる ー 第2次 AI ブーム
第4章 「機械学習」の静かな広がり ー 第3次 AI ブーム1
第5章 静寂を破る「ディープラーニング」 ー 第3次 AI ブーム2
第6章 人工知能は人間を超えるか ー ディープラーニングの先にあるもの
終 章 変わりゆく世界 ー 産業・社会への影響と戦略


人工知能といわれると何だか特殊な機能のように感じられますが要するに高性能なコンピューターのことです。




本書によりますと、現状では、人工知能は、決められた処理を決められたようにおこなうことしかできません。コンピューターは例外によわく汎用性や柔軟性がありません。「人間のように考えるコンピュータ」はできていません。

決められた処理を決められたようにおこなう処理とは、たとえば将棋・クイズ・入学試験・掃除・自動運転などがあります。これらのうち将棋・クイズ・入学試験などではコンピューターが人間の能力をうわまってきています。

たとえば入学試験では定型的な処理を要求されます。このようなことはコンピューターの方が人間よりも得意です。これからの時代は、コンピューターでできることはコンピューターでおこなうようになるでしょうから、現行の入学試験のようなやり方は歴史的にみて過去のものになっていくことはあきらかです。地名や年号を丸暗記していても意味がありません。生徒たちの勉強の仕方や筆記試験・入学試験のやり方は大きな変更を今後せまられてくるでしょう(注1)。




またコンピューターは言葉で書かれた文章の意味を理解したり、あたらしい知識を獲得することはできません(注2)。さらに人間の知能をささえるうえで重要である潜在意識や直観の領域にもコンピューターはアプローチできません。

結局、コンピューターは人間がつかう道具であると割り切った方がよいでしょう。




このようなことをふまえてわたしの展望(予想)をのべると以下のようになります。

コンピューターでできることはコンピューターをつかっておこない、人間にしかできないことは人間がやることになるでしょうから、決まり切った処理、答えが一つに決まるような問題はコンピューターでやり、人間は、コンピューターではできないことを重点的におこなうということになります。

たとえば情報処理をする存在として人間をとらえた場合、自分らしいアウトプットをするということがあります。

自分としては本当は何をまなびたいのかを明確にし、そしてどのように表現したいのか。何をアウトプットしたいのか。自分らしい個性あるアウトプットを想定して、インプットとプロセシングもおこなうようにします。芸術家とよばれる人々のやり方が参考になるでしょう。

コンピューターは、イメージをおもいうかべて言語を書き出すといったこともできません。イメージをつかって情報を検索することもできません。したがってイメージをつかってプロセシングをすすめ、言語をつかって書き出す(アウトプットする)といった方法も人間がおこないます。

またコンピューターは処理速度を速くすることをやたらに強調しますが、人間は、何でもかんでも速くやればいいというのではなくてプロセスをたのしむようにします。目的地につねに速く到達すればよいというのではなく、ゆっくりあるいていくことそれ自体をたのしみます。あるいは目的の達成という生き方から目的体系からの離脱という生き方へ転換します。



▼ 参考文献
松尾豊著『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』(角川EPUB選書)KADOKAWA / 中経出版、2015年3月10日
人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書) 

▼ 注1
現代では、ネットにつながっていない環境で仕事や情報処理をする人はほとんどいません。現行の入学試験のように、ネットにつながっていない完全閉鎖系での筆記試験も過去のものになりつつあります。

▼ 注2
そもそも言葉とは、言葉になる以前の、体験・イメージ・意味・メッセージなどを言葉という記号であらわしたものです。したがって言葉だけを解析していても、体験・イメージ・意味・メッセージなどの情報の本体は決してわかりません。言葉とは表面構造であり、情報の本体につけたいわば「ラベル」にすぎません。ラベルだけをいじくりまわしていても情報処理はできません。

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自分らしいアウトプットをする


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これからのあたらしい時代は人工知能にできることは人工知能にやらせ、自分らしいアウトプットをするなど、人間にしかできなことは人間がやることになります。

 
注目のハイテク35』(ニュートン別冊)の最終項では「人工知能」(注1)について解説しています(注2)。

2002年、将棋ソフト「ボンクラーズ」が、かつてトップ棋士だった米長邦雄永世棋聖と対決し勝利しました。さらに2013年には、将棋ソフト5種が現役のプロ棋士と対戦し、3勝1敗1引き分けとしました。将棋の世界では人工知能が人間をおいぬいたようです。

一方で2012年からは、国立情報学研究所の主催で「人工知能プロジェクト 〜ロボットは東大に入れるか〜」がはじまり、人工知能が東大入試にチャレンジしています。こちらは東大にまだ入学できていませんが人工知能は急速に進歩しています。東大入試突破はもはや時間の問題ではないでしょうか。




このように人工知能の進歩には目をみはるものがあります。するともやは、情報処理は人工知能がおこなえばよいということになるのでしょうか。

そんなことはありません。人工知能ができることは人工知能にやらせて、人間は、人間にしかできない情報処理をやるのです。たとえば自分らしいアウトプットをするということは人間にしかできません。ホームページやブログをみずから設計してつくって書きだしをしてみるなど。そして結果をもとめるだけでなくプロセスをたのしみ心ゆたかに生きる。心とは情報処理の場のことです。意識といってもよいです。

このような個性あふれるアウトプットは入試とか勝負とかとはちがう世界です。 




上記の将棋と入試を例にすると、勝負に勝つとか入試を突破するとかいうことは人工知能でもできますが、自分らしいアウトプットをする、個性的な表現や作品を生みだすといったことは人間にしかできません。

入試を突破したり勝負に勝ったりすることは目的では決してありません。これまでの生徒は入試を突破したり勝つことが目的であり、突破しおわるとホッとしてしまうという生き方をしている人が多かったです。しかし将来的には、人間にとって勝負と入試の重要度は極度にさがります。入試などは単なる通過点にすぎなくなります。そうではなくて高等の学校に入ってから本当は自分は何をまなびたいのか、どの分野に本当はチャレンジしたかったのかの方が重要です。


▼ 注1
人工知能といわれると何か特別な知能というような感じがしますが実際には高性能なコンピューターです。

▼ 注2
「進化を続ける人工知能」、『注目のハイテク35』(ニュートン別冊)ニュートンプレス、2014年11月15日、150-155ページ




自分なりのアウトプットのスタイルをわかいときに決めるとよいです。

〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をする存在として人間をとらえた場合、インプットは外から自分の内面への作用、アウトプットは自分の内面から外への作用のことです。アウトプットは情報を出力することであり、アウトプットまでやって情報処理は完結します。

アウトプットのもっとも典型は書くことです。ツイッターやフェイスブックやブログがあるのでアウトプットは今日ではやりやすいといえるでしょう。

一方、歌が歌える人は歌を歌い、絵が描ける人は絵を描き、あるいは俳優は演技をします。これもアウトプットです。行動することもひろい意味のアウトプットととらえた方がよいでしょう。

情報処理をとことんすすめるためにアウトプットの自分なりのスタイルを見つけることは大切なことです。

情報処理のアウトプットの場面では、プロセシングでイメージしたことを言語をつかって確認し表現するようにします。

情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をする存在として人をとらえた場合、情報を記銘・保持・想起したり想像したりするときに、つまりプロセシングにおいてはイメージが大きな役割をはたすことを本ブログでは強調しています。

それではプロセシングの後につづくアウトプットではとではどうかというと、今度は、言語が大きな役割をはたします。言語をつかってアウトプットすると心の内面でイメージしたことを確認し表現することができます(下図)。また自分のメッセージを相手につたえることができます(注1)。

151129 確認・表現
図 言語をつかって確認し表現する


言語は、確認と表現のための道具として非常に有効であり、またイメージを言語でとらえなおすとそれまでよりもイメージが鮮明になってきます。

このようなことを意識してアウトプットの場面で言語をつかっていくとよいでしょう(注2)。


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▼ 注1
本項では言語についてのべましたが、心のなかでイメージしたことをイメージとしてそのままアウトプットする方法もあります。あるいは言語とイメージとをくみあわせてアウトプットする方法もあります。

▼ 注2
アウトプットをすると、それまでのインプットとプロセシングが適切であったかどうかを確認・検証することができ、〈インプット→プロセシング〉のやり方を改善していくためのヒントもえられます。





JTBパブリッシング「大人の遠足 BOOK」シリーズの『奥多摩・奥武蔵・秩父 人気の山 50』と『山あるき12カ月 関東周辺』とを比較してみると、情報の並列と直列のちがいがわかっておもしろいです。

前者は、地域別にさまざまな山を配列しています。他方後者は、時間軸にそってさまざまな山を配列しています。たくさんの山々は、地理的・空間的に配列することもできますし、一方で時系列に配列することもできます。前者は並列であり後者は直列です。

後者は、季節感があらわれていて読み物としてもおもしいです。地理的・空間的に本来は存在する山々を、季節に注目してその旬をとらえ、時系列にならべれば物語になってしまいます。ここに読み物をつくるひとつのヒントがあります。時間的にならべるからこそ物語になり読み物としてもおもしろくなるのです。

情報処理の観点からは、<並列処理>→<直列> の順序が自然なやりかたでしょう。

直列には、並列的に整理された多様な情報を統合する作用があり、それが1本のストーリーを生みだしていくのだとかんがえられます。
 

▼ 引用文献
『奥多摩・奥武蔵・秩父 人気の山 50』 (大人の遠足BOOK) 、JTBパブリシング、2010年9月17日
奥多摩・奥武蔵・秩父 人気の山50 (大人の遠足BOOK)

中田真二著・写真『山あるき12カ月 関東周辺』 (大人の遠足BOOK)、JTBパブリッシング、2011年7月22日
山あるき12カ月 関東周辺 (大人の遠足BOOK)


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年間のビジョンをえがいてから行動する - 中田真二著・写真『山あるき12カ月 関東周辺』-


英会話の練習をとおして、イメージをいかしイメージをつかうことによって情報処理能力をたかめることができます。

英会話の練習も情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)になっています。

DVDやCDで見たり聞いたりすることはインプットです。それぞれの場面や会話を理解したり記憶したり想起したり想像したりすることはプロセシングです。英語を声に出して言うことはアウトプットです。(図)

150901 英会話の練習
図 英会話の練習も情報処理になっている
 

このような過程では、イメージ(心象)をいかしイメージをつかうことが重要なポイントになります。

このような観点からはDVD教材をやはりつかった方がよいです。CD教材をつかう場合は、音声をきいて自分なりに自由に場面を想像するようにします。DVD教材でも、目を閉じて音声だけを聞くことにより想像あるいは想起の訓練ができます。あるいはDVDの場合は、映像(イメージ)だけを見て、音声を消して、音声を想起して言ってみるという訓練もできます。


このような練習をくりかえしていれば、似たような場面に旅行先で遭遇したときに必要な表現がうかんでくるようになります。相手につたえたいメッセージをそれぞれの場面でどのように表現すればよいのかがおのずとわかります。

旅行先は情報処理の本番です。日本で練習したことをそのまま海外でいかせばよいです。緊張もありますがたのしく充実した時がすごせます。

こうして情報処理の訓練の一環として英会話も練習すれば英会話も上達するし情報処理能力も高まります。この方法はほかの言語の習得やほかの分野へ応用もできます。英語の学習がそのまま情報処理の訓練にもなり、身につけた方法はさまざまな課題へ応用できるようになるのです。



▼ 追記
それにしても、いいDVD教材がたくさん出版されるようになりました。わたしが子供や学生だったころはこのような教材がなかったために受験英語とリーディングを英語教師からおそわっただけで、そのご苦労しました。今ではそのようなこともなく、たのしく英語をおぼえ、そして海外旅行に行って実際にためしてみることが容易になりました。

▼ 関連記事
DVD をつかって英会話を理解し、おぼえる -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(1)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(2)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(3)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(4)-

DVDをつかって、イメージとともに英語をおぼえる 〜 DVD『トラベラーズ・イングリッシュ 4 オーストラリア編』〜
英会話の学習から海外旅行体験へ 〜DVD『トラベラーズ・イングリッシュ3 -アメリカ西海岸編-』〜
ニュージーランドを記憶の場にする 〜 DVD『トラベラーズ イングリッシュ5 ニュージーランド南島編』〜
視聴覚体験とキーワードで情報の玉をつくる 〜 DVD『NHK 100語でスタート!英会話 〜アメリカ編』〜
旅行の場面をファイルにする 〜『NHK 100語でスタート!英会話』(オーストラリア編)〜
外国人に英語で日本を紹介する - 松本美江著『改訂版 英語で日本紹介ハンドブック』-
Key Phrase と Situation をひとつの「ファイル」にする - NHK『おとなの基礎英語』-


DVD『おとなの基礎英語』にでてくる映像(イメージ)をおぼえて、それぞれの場面のイメージをベースにしてキーフレーズをおぼえると、フレーズが自然に言えるようになります。今回は「タイ(バンコク)編」にとりくんでみます。

  • まず、DVD をしっかり視聴します。人がおこなう情報処理の観点からはこれはインプットにあたります。
  • そしていったん目を閉じて、いま見たエピソードのキーとなる場面の映像(イメージ)をしっかりおもいうかべ、そして記憶します。そのイメージとともにキーフレーズも記憶します。よくイメージできない場合は DVD で再度確認します。これはプロセシングです。
  • 下記のリストを参照のうえ目を閉じて、各エピソードのキーとなるイメージをおもいうかべながらキーフレーズを声にだして言ってみます。これはアウトプットすることです。

これらの過程を図(モデル)であらわすと下図のようになります。矢印は情報のながれをあらわしています。この「インプット→プロセシング→アウトプット」をすべてのエピソードについてやってみます(注1)。 

150831 英会話
図 英会話の練習における情報処理のながれ



Weak 17
65 手紙を書いている場所を伝える(タイのバンコクからお便りしています。)
66 文房具を借りる(のりをお借りできますか?)
67 手紙を出せる場所を教えてもらう(この手紙はどこで出せますか?)
68 ポストの投入口を確かめる(ここに入れても大丈夫ですか?)

Weak 18
69 どの駅で降りればよいかたずねる(どの駅で降りればいいのかしら?)
70 地図上での場所をたずねる(ここって、この地図でいうとどこですか?)
71 探していた場所に違いないと言う(探しているのはここに違いないわ。)
72 どこに滞在しているかをたずねる(バンコクのどこに泊まってるの?)

Weak 19
73 感想を求める(バックパッカーってどういう感じなの?)
74 迷惑ではないかたずねる(いいかな?)
75 許可されているかたずねる(ここで写真を撮っても大丈夫なのかしら
76 相手に役立つ情報を伝えようとする(あなたにぴったりのものを知っているわ。)

Weak 20
77 電話するように指示する(彼女のこの番号に電話して。)
78 待ち合わせ場所や時間を相談をする(どこで待ち合わせますか?)
79 人違いであったと言う(人違いでした。)
80 職業をたずねる(どんな仕事をしているの?)

Weak 21
81 とても楽しみにしていたことを説明する(興奮しすぎて、ゆうべは眠れなかったの。)
82 待ちきれない気持ちを表現する(象に会うのが待ちきれないんです。)
83 信頼関係の大切さを伝える(彼女を信頼しないと、彼女にも信頼してもらえないのよ。)
84 勉強になったと感想(感謝)を述べる(とても勉強になったわ。)

Weak 22
85 自分が以前にやっていたことを説明する(私、この運動を毎朝やっていたの。)
86 相手が持ち出した話題をもとに話を展開する(高いものといえば、東京にとっても高いタワーがあるのよ。)
87 原材料について説明する(全部、大豆からできているの。)
88 ネガティブな心持ちだったことを表現する(私、仕事が嫌になってきちゃっていたの。)

Weak 23
89 自分が器用ではないと説明する(私、あまり器用じゃないんです。)
90 いつ戻るかを伝える(2分で戻りますね。)
91 開店時間をたずねる(この辺りの店は、だいたい何時からやっているんですか?)
92 お勧めのデザートをたずねる(デザートには、なにがいいかしら?)

Weak 24
93 頼まれていることについて説明する(彼は私に、新しいプロジェクト・チームに加わってほしいの。)
94 アドバイスを求める(どうしたらいいと思う?)
95 適切なアドバイスをくれた相手に感謝する(あなたに相談して正解だったわ!)
96 自分が求めているものを発見したと伝える(私、自分のやりたいことがわかったわ。)

Weak 25
97 荷物を預ける(ここで手荷物を預かってもらえますか?)
98 色違いのものがあるかどうかたずねる(これの色違いはありますか?)
99 旅の感想をたずねる(タイはいかがでしたか?)
100 連絡を取り合うことを約束する(これからも連絡を取り合おうね。)


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Episode 65 手紙を書いている場所を伝える


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Episode 100 連絡を取り合うことを約束する


上の写真のような、各エピソードのキーとなる場面を DVD でよく見ます。そのイメージをそのまま記憶します。英文のフレーズもイメージの一部として記憶します。たとえてみるならば、デジタルカメラでその場面をまるごとうつしとるように自分の意識にインプットし記憶するのです(注2)。そして、目を閉じて、イメージをおもいうかべならが(想起しながら)キーフレーズを声にだして言ってみます。
 


▼ 引用文献
NHKテレビ DVD BOOK『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』2013年3月31日、主婦の友社
NHKテレビ DVD BOOK おとなの基礎英語 シンガポール 香港 タイ (NHKテレビDVD BOOK)

▼ 関連記事
DVD をつかって英会話を理解する -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(1)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(2)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(3)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(4)-

▼ 注1
英会話の練習も情報処理の訓練にほかなりません。英会話の練習をくりかえすことによっても情報処理能力を高めることができます。その能力はほかの分野でもいかすことができます。

▼ 注2
ひとつの場面をまるごととらえインプットし記憶するということは、いいかえると、英文のフレーズだけを場面から切りとって取りだして断片化させないようにするということです。英文を音声だけでとらえて理解し記憶しようとしてもうまくいきませんし実践的ではありません。

むしろ、美佳が旅をしているそれぞれの場面をひとつの空間としてまるごととらえ、その空間のなかに音声もある、その空間に音声がひびいているととらえるのがよいでしょう。


DVD『おとなの基礎英語』にでてくる映像(イメージ)をおぼえて、それぞれの場面のイメージをベースにしてキーフレーズをおぼえると、フレーズが自然に言えるようになります。今回は「香港編」にとりくんでみます。


  • キーとなる場面の映像(イメージ)を DVD をつかってしっかり見ます(インプットします)。映像(イメージ)に英文がうめこまれている、英文もイメージの一部だととらえます。音声もしっかり聞きます(インプットします)。

  • 映像(イメージ)にフレーズをうめこんで理解し記憶します。
  • 下記のリストを見て、それぞれのエピソードのキーとなる場面の映像(イメージ)を、目を閉じてしっかりおもいうかべます(想起します)。英文も同時に想起します。

  • 英文を声にだして言ってみます(アウトプットします)。


Week 9
33 居所をたずねる(彼女がどこにいるか知りませんか?)
34 誤解していると思うと伝える(なにかの間違いです。)
35 自分がするはずだったことを伝える(ここで鍵を受け取るはずだったんですが。)
36 緊急の場合に助けを求めていいかたずねる(電話してもいいですか……なにかあったら。)

Week 10
37 重大な問題が起きたことを伝える(大変なんですよ。)
38 丁寧に助けを求める(お忙しいところ申し訳ないんですが、手を貸してもらいたいんです。)
39 どういう問題なのかを説明する(取っ手が取れちゃったの。)
40 修理をしてもらったお礼を言う(蛇口を直してくれてどうもありがとう。)

Week 11
41 仮定の話をする(もし(戻って)こなかったらどうするの?)
42 行った方角をたずねる(どっちへ行きました?)
43 手がかりがないと言う(さっぱりわからないわ。)
44 相手が肝心なことを忘れていると暗示する(なにか忘れていない?)

Week 12
45 自分で確かめると伝える(自分の目で確かめてみます。)
46 ぶらぶらしていたところだと説明する(ただちょっと見て回っていたところです。)
47 フォーマルな挨拶をする(お会いできて光栄です。)
48 体験についてポジティブなコメントをする(コツがつかめてきたようです。)

Week 13
49 ほかの言語でどう言うかたずねる(「気持ちいい」って、中国語でどう言うんですか?)
50 少し強めてもらうように指示する(もう少し強くしてください。)
51 誰がもっともよいのかをたずねる(ここで一番の占い師は誰ですか?)
52 ずっと興味を持っていたことを伝える(一度やってみたかったの。)

Week 14
53 食事をごちそうすると伝える(ごちそうするわ。)
54 料理について質問する(なにが入ってるの?)
55 料理の感想を述べる(今までで一番おいしい飲茶だったわ。)
56 値段についてコメントする(思ってたより、ずっと安かったよ。)

Week 15
57 どこに痛みがあるのかを伝える(お腹が痛いの。)
58 注射が嫌いであることを伝える(注射が大嫌いなの。)
59 気分がよくなったことを伝える(すごく気分がよくなったわ。)
60 薬をのむ回数をたずねる(1日何回のめばいいんですか?)

Week 16
61 デートに行くと説明する(デートなの。)
62 立つ位置を指示する(あなたの左にちょっと動いて。)
63 関連性を説明する(それで長期休暇を取ったってわけ。)
64 返事を保留する(あまりにも大きな決断だわ。)


キーとなる場面のイメージがフレーズとともに確実におもいうかぶようになると、そのような場面に実際に遭遇したときにそのフレーズが自然につかえるようになります。イメージをつかうことが記憶と想起のポイントです



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Episode 33 居所をたずねる


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Episode 64 返事を保留する

上の写真のような各エピソードのキーとなるイメージ(とそこにむすびついたフレーズ)を、目を閉じておもいうかべる練習します。



▼ 引用文献
NHKテレビ DVD BOOK『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』2013年3月31日、主婦の友社
NHKテレビ DVD BOOK おとなの基礎英語 シンガポール 香港 タイ (NHKテレビDVD BOOK)

▼ 関連記事
DVD をつかって英会話を理解する -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(1)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(2)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(3)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(4)-


DVD『おとなの基礎英語』にでてくる映像(イメージ)をおぼえて、それぞれの場面のイメージをベースにして英語のキーフレーズをおぼえると、フレーズが自然に言えるようになります。

今回は、『おとなの基礎英語』の「シンガポール編」の32のキーフレーズを確実に記憶し、声にだして言えるようにしてみたいとおもいます。「シンガポール編」には32のエピソードがあり、それぞれに1文ずつのキーフレーズがしめされています。

以下に、それぞれのエピソードにおけるキーとなる場面とキーフレーズの日本語訳のリストを掲載しました。

  • リストをみて、それぞれの場面の映像(イメージ)を想起します。
  • 目を閉じて、そのイメージをおもいうかべながら、キーフレーズをおもいだして声にだして言ってみます。
  • キーフレーズがうまく言えない場合は、DVD あるいは BOOK(書籍)をもう一度みて確認し記憶します。
  • イメージとともにキーフレーズをおぼえるのがポイントです。
  • 目を閉じて、もう一度イメージをおもいうかべて、キーフレーズを言ってみます。


Week 1
01 タクシーを拾える場所をたずねる(タクシーはどこでつかまえられますか?)
02 所要時間をたずねる(ホテルには、どのくらいで着きますか?)
03 両替をしてもらう(日本円をシンガポールドルに両替したいんですが。)
04 道順をたずねる(このホテルへの行き方を教えていただけますか?)

Week 2
05 食事ができる場所をたずねる(なにか食べたいんですが、どこに行けばいいですかね?)
06 食べ物についてたずねる(とてもおいしそうですね!)
07 食べ物を注文する(どういう意味ですか?)
08 席を確保する(ここ、誰か座ってます?)

Week 3
09 写真を撮ってもらう(私が写ってないんですけど。)
10 相手のことについてたずねる(あなたは?)
11 ローカルフードを食べてみる(お勧めは?)
12 別れの挨拶をする(お話できて楽しかったわ。)

Week 4
13 どこに連れて行ってくれるのかをたずねる(今日はどこへ連れてってくれるの?)
14 決心がついたことを表現する(決めたわ。)
15 冗談だということを伝える(冗談よ。)
16 値引きをお願いする(安くしてもらえませんか?)

Week 5
17 自分が感じていることを表現する(また別の国にいるような感じがするわ。)
18 初めての体験であることを説明する(モスクを見るのは初めてだわ。)
19 申し出をやんわりと断る(いいえ、遠慮しとくわ。)
20 相手を落ち着かせる(落ち着いて、楽しむのよ!)

Week 6
21 相手に指示・助言を求める(靴は脱いだほうがいいの?)
22 相手が作っている料理への期待感を表現する(なんか、すごくいい匂いがするわね。)
23 やり方を教わる(どうやるのか、お手本を見せて。)
24 食べきれなかったことを謝る(残してごめんなさい。)

Week 7
25 何かせざるをえない状況にあることを説明する(姉のために明日、香港に行かなくちゃならないの。)
26 しなくてはならない事柄を説明する(香港行きの明日の朝の便を、予約しないといけないんですが。)
27 電話の用件を説明する(お礼とお別れを言おうと思って、ちょっと電話したの。)
28 誰に何をあげるのかを説明する(お礼の品をあげたいんです。)

Week 8
29 レストランを予約したと伝える(落ち着けて、すてきなレストランを予約してあるの!)
30 会えなくなるのを寂しがる(あなたに会えなくてすごく寂しくなるわ。)
31 乾杯を提案する(さあ、乾杯しましょう。)
32 相手を丁寧に誘う(ご一緒にいかがですか?)


各エピソードのイメージが鮮明におもいだせたでしょうか。日本語を英語におきかえるのではなく、映像を想起しおもいうかべながら英語のフレーズが言えることが重要です。映像(イメージ)をベースにして、そこにうめこまれている、あるいはむすびついているキーフレーズをおもいだすようにします。


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Episode 01 タクシーを拾える場所をたずねる


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Episode 32 相手を丁寧に誘う

  • キーとなる場面の映像(イメージ)をしっかり見て、音声をしっかり聞きます。映像(イメージ)に英文がうめこまれている、英文もイメージの一部だととらえます。
  • 映像(イメージ)にフレーズをうめこんで理解し記憶します。目を閉じて、エピソードのキーとなる場面の映像(イメージ)と英文を想起します。
  • 英文を見ないで、英文を声にだして言ってみます。



▼ 引用文献
NHKテレビ DVD BOOK『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』2013年3月31日、主婦の友社
NHKテレビ DVD BOOK おとなの基礎英語 シンガポール 香港 タイ (NHKテレビDVD BOOK)

▼ 関連記事
DVD をつかって英会話を理解する -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(1)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(2)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(3)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(4)-


東京国立博物館の特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」(会期:2015年5月17日まで、注1)は仏教史を俯瞰できるまたとない機会でした。

わたしは会場の展示を見たあと、地図そして年表をみて理解をふかめました。ここには理解をふかめる3つの場面がありました。

展示 → 地図 → 年表

第1の場面では、各作品(展示物)をよく見るとともに、展示室(展示空間)全体にも意識をはらい大局をとらえるようにしました。これは展示を大観したといってもよいです。

インド仏教美術をみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(1) - >>
展示室に意識をくばって仏教史の大きな流れをつかむ - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(2) - >>


第2の場面では、南アジアの地図をつかって出土地や遺跡の空間分布をとらえました。地図がおもしろいのは、歴史的段階や時間軸にはかかわりなく、情報を一望して並列的にとらえられるところにあります。

各作品が出土した場所を地図でみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(3) - >>


そして第3の場面では、年表をつかって情報を歴史的な一本の流れのなかでとらえました。時間軸をつかうと情報を一本に統合することができます。物語とはこうしてあらわれてくるのだとおもいます。


つまり、第1場面では展示を大観し、第2場面では情報を並列的にとらえ、第3場面では情報を統合したというわけです。

大観 → 並列 → 統合

こららの3場面は、人がおこなう情報処理のひとつのモデルとしてつかえます。つまり、「大観→並列→統合」は「インプット→プロセシング→アウトプット」にそれぞれ対応させることができます。

インプット→プロセシング→アウトプット

インプットでは周囲を大観し、要素だけにこだわるのではなくその空間全体をまるごとインプットするようにします。プロセシングでは情報を並列的に処理します。アウトプットでは情報を統合してメッセージを相手につたえるようにします。

理解をふかめるということは現代の情報化の観点からみると、このような情報処理をすることであるととらえなおすことができるでしょう。
 

▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

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1枚のイメージで物語をあらわす - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(6)「ムーガパッカ本生」-
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写真1 ミニ企画展「はい、チーズ! 写真の歩み」入り口

東京・上野の国立科学博物館で開催されているミニ企画展「はい、チーズ! 写真の歩み」を見ました(会期:2015.4.5まで、注1)。銀塩写真までの写真の歴史を簡潔に紹介していました。

写真が誕生する以前、絵をかく道具として「カメラ・オブスクラ(写真鏡)」がつかわれました。レンズのついた箱のなかに45度の角度で反射鏡をおき、スリガラスにうつった像をなぞって絵をかきました(写真2)。この像を記録にのこすために写真が発明されました。

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写真2 カメラ・オブスクラ


写真技術は、1839年、フランスの発明家ダゲールとイギリスの発明家タルボットによって発明されました。日本へは19世紀半ばにつたわりました。日本で最初に撮影された写真は、1854年に、ペリー艦隊とともに来日した写真家ブラウンが函館で撮影したものです。

会場には初期のカメラとして「湿板カメラ」が展示されていました(写真3)。

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写真3 湿板カメラ

 
「湿板カメラ」の「湿板」とは、無色透明のガラス板に光に反応する化学薬品をぬった写真版であり、撮影直前にその場でつくり、乾燥する前に撮影・現像をしなければならなかったために「湿板」とよばれました。この湿板で撮影するカメラのことを「湿板カメラ」とよび、湿板の感度がひくいために日中の屋外またはあかるい室内で撮影はおこなわれ、数秒から数十秒を要しました。シャッター機構はなくレンズキャップの開閉で撮影しました。ピント調節は、後部のスリガラスにうつる像を見ながらおこないました。

その後、ロールフィルムの発明、カラーフィルムの発明、レンズの進化などにより、よりうつくしく、より手軽に写真が撮影できるようになりました。

このような写真の歴史を見ると、フィルムの発明がひとつの大きな転換点でした。そしてその後の、銀塩カメラからデジタルカメラへの転換は人類史上にのこる非常におおきな転換となりました。


そもそも写真は記録の手段としてはじまりました。写真撮影の過程を見てみると、対象を目で見る場面、被写体や構図を決める場面、シャッターをおす場面そして写真を他人に見せる場面があります。情報処理の観点からとらえなおすと、対象をみる場面はインプット、被写体や構図を決める場面はプロセシング、シャッターをおす場面と写真を他人にみせる場面はアウトプットに相当するとかんがえてよいでしょう。

写真をとって他人に見せるということは、何らかのことを相手にしめすことであり、それは自分のメッセージを相手つたえる行為であるといってよいでしょう。したがってアウトプットの手段として写真を意識することには大きな意義があるとおもいます。 

150326 写真
図1 アウトプットの手段として写真を意識する
 

▼ 注1
国立科学博物館・ミニ企画展「はい、チーズ! 写真の歩み」 

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立体視の訓練をする - 明治時代からあった3D写真 -

▼ 関連図書
 
 


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チャイコフスキー作曲『イタリア奇想曲』をききました(小林研一郎指揮、日本フィハーモニー交響楽団、サントリーホール、2015.3.7)。チャイコフスキーはイタリア旅行をしたときにこの曲の着想をえたそうです。

奇想曲(カプリチョ)とはイタリア語で「気まぐれ」を意味し、『イタリア奇想曲』にはイタリアの愉快な旋律が自由にちりばめられています。イタリアの開放的な雰囲気を反映して、チャイコフスキーのほかの作品とくらべると非常にあかるい雰囲気が印象的でした。

チャイコフスキーは、1979年の暮れから1880年の4月にかけてイタリアに滞在、イタリアの風土・文化・芸術に魅了されて大きな感銘をうけ、その感銘がさめないうちにローマで作曲の構想をねりはじめました。

私は数日前から、民謡の旋律を基にして『イタリア奇想曲』のスケッチを書き始めました。この曲は輝かしい未来を持つであろうと思います。これらの旋律の一部は出版されている民謡集から拾い出したものであり、一部は街を歩いている時に私自身の耳で聴いたものです。(チャイコフスキー、1880年1月4日付けの手紙より)

仕事などで何かの構想をねるときには現地にいるあいだに構想をねるとよいとおもいます。リアルタイムで情報を感じとれますから。帰宅してしまうとあっというまに情報の鮮度がおちてしまいます。

構想をねるということは<インプット→プロセシング>に相当します。情報処理の絶好のチャンスとして旅行や出張を活用したいものです。
 



東京、練馬区美術館で開催された「見つめて、シェイクスピア!」展を先日みました。

本年が、16世紀のイングランドを代表する劇作家で詩人、ウィリアム=シェイクスピアの生誕450年にあたることを記念して企画された展覧会でした。

シェイクスピアの作品に主題をえた絵画作品や挿絵が多数展示されていて、シェイクスピアを短時間で圧縮体験することができました。

フランス・ロマン主義の旗手、ウジェーヌ=ドラクロワによる版画《ハムレット》や、エコール・ド・パリの画家、マルク=シャガールの版画による挿絵本《テンペスト》、イギリスの挿絵画家アーサー=ラッカムやアーツ・アンド・クラフツのメンバーでもあったウォルター=クレインによる挿絵本などを見ました。

静止画をみて、物語をおもいだいし、とらえなおすという体験をすることができました。『オセロー』の第5幕第2場は印象的でした。

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ジョシュア=ボイデル:「オセロー」より、「第五幕第二場 眠るデスデモーナ」(図録より引用)


それぞれの絵は、物語の一場面をきりとったものですが、その前後を想像してみるのはたのしいものです。また、画家は、どうしてこの場面を選択したのかを想像してみるのもよいです。

それぞれの絵は、ストーリーの目印として利用できます。題名と絵をセットにしておぼえておけば、そのストーリーをおもいだしやすくなります。わたしは、図録を買ってきましたので、この図録に掲載されている絵は、ストーリーのインデックス(想起のための手段)としてつかえます。つまり、絵は「アイコン」の役割をはたします。

あるいは、印象的な絵を見て、原作にあたってみるという逆コースもおもしろいです。

こうして、イメージと言語を自由に往復しながらたのしめる展覧会でした。

141208 言葉とイメージ



▼ 文献
「見つめて、シェイクスピア!」展(図録)、マンゴスティン制作・発行、2014年


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感情が意識をゆさぶる グノー作曲『ロメオとジュリエット』-
音楽と演技が融合して一本のストーリーになる - ヴェルディ作曲『マクベス』-
絵の前後を想像する -「見つめて、シェイクスピア!」展 -
「自分が見えていない」をキーワードにして - シェイクスピア -

自分のアウトプットを見直して、自分で自分を見る




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上の写真は、Bunkamura ザ・ミュージアムで開催された企画展「だまし絵 II」の図録から引用した、ラリー=ケイガン作「トカゲ」です(注)。

企画展「だまし絵 II」での実際の展示物は、 鉄のワイヤーを溶接して組みあげられた構造物であり、その構造物を見ても何をあらわしているのかはわかりません。しかし、ある位置から光を照射すると、壁面(平面)にトカゲの影があらわれるのです。とても不思議な影の芸術でした。

ラリー=ケイガンは、光と影をたくみに利用した彫刻を得意とするアーティストだそうです。

この彫刻のおもしろさは、3次元では認識できないことが、2次元では認識できる点にあります。


わたしたちは、通常は、2次元(平面)にえがかれた絵を見て、3次元の世界(立体空間)を想像します。これは誰もがやっていることであり、問題はありません。

しかし、ラリー=ケイガンのこの彫刻では、3次元(立体)の構造物を見ても何だかわかりませんが、2次元(平面)に投影された影を見ると、トカゲであることが認識できたのです。

通常は、「2次元→3次元」ですが、これは「3次元→2次元」であり、順序が逆です。ここに、逆転の発想がありました。


この作品は、わたしたちに次元を意識させ次元を変えて見ることのおもしろさをおしえてくれます。

次元を変えるという観点にたつと、さまざまなことをとらえなおすことができます。

たとえば、あるストーリーは、時間軸にそって(時系列で)ながれていきます。これは1次元です。そのような1次元のストーリーを、平面上で絵や図解にすることができれば、それは2次元に変換されたことになります。

その逆もできます。たとえば、2次元の図あるいは3次元の立体を見て、その内容を、文章で書きあらわすとします。文章は、前から後ろにながれる1次元です。2次元あるいは3次元のものを1次元に変換したことになります。

あるいは、1冊の本があり、そこには文章(1次元)が書かれています。しかし、この本を立体的な構造物(3次元)と見ることもできます。この構造物のなかに、たくさんの文字が、3次元的に分布していると見ます。これは、次元を変えて、1冊の本をとらえなおしたことになります。

3次元的に本をとらえなおすことは速読法に通じます。次元が高いシステムをつかった方が情報処理はより効果的にすすむことが知られています。

他方で逆に、次元のちがいによって、あるいは たまたま対象を見たときの次元によって、錯覚が生じてしまうということもあるでしょう。

次元を変えることによって、見え方が変わるということに気がつくことは大事なことです。


「だまし絵 II」の会場には、ラリー=ケイガンの作品として「蚊 II」という作品も展示されていました。こちらは、蚊を影で表現しており、おどろいたことに、その蚊の影までうつしだしていました(影で表現された蚊の影まで、影であらわしていました)。どのようにしてこれをつくったのか、試行錯誤をくりかえしたのか、興味がつきませんが、影とは3次元を2次元に投影したものであることを実体験できました。



METライブビューイング(新宿ピカデリー)でヴェルディ作曲『マクベス』を視聴しました。

指揮:ファビオ=ルイージ 
演出:エイドリアン=ノーブル
出演:アンナ=ネトレプコ(マクベス夫人)、ジェリコ=ルチッチ(マクベス)、ルネ=パーペ(バンクォー)、ジョセフ=カレーヤ(マクダフ)

オペラ『マクベス』は、ウィリアム=シェイクスピアの戯曲『マクベス』を原作とし、イタリアの作曲家ジュゼッペ=ヴェルディが全4幕のオペラにした作品です。1847年にフィレンツェで初演され、1865年に大幅な改訂がなされ、今日ではこの改訂版の方がより頻繁に上演されています。

ヴェルディは、シェイクスピアを原作とするオペラ『マクベス』『オテロ』『ファルスタッフ』を作曲しており、いずれも名作となっています。

原作の『マクベス』は、1606年頃にシェイクスピアによって書かれた戯曲です。勇猛果敢ですが小心な一面もある将軍マクベスが、妻と はかって主君を暗殺し王位につきましたが、内面・外面の重圧に耐えきれず錯乱して暴政をおこない、貴族や王子らの復讐にたおれます。『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』とならぶシェイクスピアの四大悲劇のひとつです。

オペラでは、マクベスよりもマクベス夫人を中心にしてドラマが展開していて、マクベス夫人の心の内面(深層意識)にある欲望が悪魔のような歌声で見事に表現されていました。

一方で、みずからの手を実際によごしたのは夫のマクベスであり、運命に翻弄されていく姿がよくあらわれていました。

こうして、マクベス夫人の内面世界と夫マクベスの現実の行為の両者が、マクベス夫人の歌声と夫マクベスの演技とのコントラストによってうかびあがり、そして、音楽と演技とが融合して一本のストーリーになっていく様子がとてもおもしろかったです。総合芸術の醍醐味がありました。

それにしても、このようなおそろしい人間の内面世界をドラマチックにえがきあげることができるヴェルディは、やはり西洋音楽史上にのこる大作曲家といえるでしょう。オペラといえば、情緒あるうつくしい音楽で聴衆をたのしませるのが普通ですが、この作品は異質です。

本作の再演のおりには是非もういちど視聴して、音楽と演技が融合して、人間の深層意識がえがきだされる過程を検証してみたいとおもいます。


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今シーズンもMETライブビューイングがはじまりました。METとは、アメリカ・ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場のことです。

METライブビューイングは世界中の映画館で上映され、現代におけるオペラのスタンダードをつくりあげつつあります。多くのオペラファンは、まずライブビューイングを視聴して、そして気に入った作品があれば実際の劇場に足をはこぶというパターンを確立しつつあります。

こうした背景のひとつにはオペラの鑑賞料の問題があります。実際の劇場で上演されるオペラはチケット代がとても高額です。オペラは言わずもがなもっとも巨大な総合芸術であり、歌手以外にもかかわるスタッフが多数であり、装置も大がかりな物が多く、したがってお金がとてもかかり、それがチケット代に反映してしまいます。

しかし、ライブビューイングのチケットは1回あたり3600円と、普通の映画にくらべれば高いですが、オペラにしては手頃な価格です。

こうしてオペラファンはまずライブビューイングを見て、ときどき劇場に行ってライブを鑑賞するようになります。この過程では、ライブビューイングを基準にして、どの作品をライブで鑑賞するか、判断し選択するということがおこります。こうして、非常に多数の人々が見るライブビューイングがオペラのスタンダードとして確立されていきます。判断基準・評価基準が人々の意識のなかでできていくのです

これはかつて、ヘルベルト=フォン=カラヤンとベルリンフィルハーモニー管弦楽団が、LPやCDでクラシック音楽のひとつのスタンダードをつくりあげたことと似ています。

いずれも、メディアや情報化などの技術革新の時流にのって実現したことです

カラヤンのときは音声だけでしたが、今度のMETには映像も入っています。情報量は圧倒的に増えました。いいかえれば、今世紀になってから巨大な情報量をあつかえるようになり、ライブビューイングの配信は実現できたのです。

METライブビューイングのおもしろいところは、毎回 幕間に、歌手へのインタビューがあり、また舞台裏の様子をありありとうつしだしていることです。劇場では絶対に聞けない話を聞くことができ、劇場に行っても見られない所が見られるという特典つきです。これは今までになかった演出であり、あらたなチャレンジです。

今後、METライブビューイングは世界のオペラ水準を上げることに貢献するでしょうか、それとも、METの一人勝ちになるのでしょうか。

今シーズンのMETライブビューイングは名作が目白押しです。臨場感が味わえる中央の席で鑑賞するのがよいでしょう。また東京都内の場合、音質は、新宿・ピカデリーの方が銀座・東劇よりも圧倒的によいです。東劇は音が悪く、ヴァイオリンの音が金属音的に聞こえます。これはおもにスピーカーの善し悪しに起因します。オペラは長時間上演になりますので音質のよい映画館に行った方がよいでしょう。


METライブビューイング

音楽のたのしみ方にはライブとオーディオの二種類があります。

ライブはいうまでもなく舞台上での生演奏です。それに対して、オーディオ音楽は録音を再生した音楽です。ライブが舞台で上演される演劇に相当するとすると、録音は映画に相当します。

オーディオ音楽についてはいろいろなたのしみ方があるとおもいます。ひとつは原音再生をめざすものであり、生演奏をできるだけ忠実に再現するのがよいとするかんがえ方です。もうひとつは、オーディオ音楽は独立したジャンルであり、コンサートホールで聞く音楽とは別物であるというかんがえ方です。

ここで、舞台芸術と映画のちがいにも注目しなければなりません。舞台芸術は目前で実演するのに対し、映画はカットを編集してつくります。

しかし、舞台は実演しているといっても、舞台は現実ではなく、背景その他は現実を模して装飾されたものです。それに対して映画は、現実の世界でロケをしたり、撮影場のきわめてリアルなセットの中で撮影され、映像を見ているかぎりは現実のように見えます。

このようにかんがえてくると、舞台か映画かということは表面的なことであり、どちらにもそれぞれのよさがあります。むしろ、舞台か映画かといった表現手段よりも、どのようなメッセージを作者がつたえたいのかということの方が重要だとおもいます。

こうして、オーディオ音楽に録音再生芸術という独立したジャンルをあたえてもよいのではないでしょうか。ライブは演劇に、オーディオ音楽は映画に相当するのです。

すぐれたオーディオで聞く音楽はしばしばライブを越えます。また、今では絶対に聞けない歴史的名演が録音の再生というかたちでよみがえり、臨場感をもって大きな感動をあたえます。コンサートホールとはちがうよろこびを味わえることがよくあります。

オーディオ用に録音された音楽はしばしばカットや音を編集してつくりあげますが、それはそれでかまわないとおもいます。ライブではないのですから。むしろオーディオはライブを越えることをめざせばよいのです。

一方で、ライブはライブでオーディオとはちがうたのしみ方をすればよいのです。

演劇と映画、ライブとオーディオ、それぞれによさがあります。
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