発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:心象法

家庭などで音楽を再生するときに、オーディオ・システムをつかっている方がいらっしゃるとおもいます。

オーディオ・システム(オーディオ・コンポーネント)は、プレーヤーとアンプとスピーカーの3つの機器から構成されています。

プレーヤーとはCDプレーヤーなどであり、ディスクなどに記録された信号をとりだしてアンプに伝達する装置です。アンプとは日本語では増幅器といい、プレーヤーから入ってきたを信号を増幅する「増幅装置」です。スピーカーは、アンプからおくられてきた電気信号を音にかえてならす機器です。

このように、プレーヤー・アンプ・スピーカーの3点セットが適切にそろってこそオーディオはなりたちます。

〔プレーヤー〕→〔アンプ〕→〔スピーカー〕

この過程は情報処理の過程になっており、プレーヤーからアンプに信号がインプットされ、アンプはそれを増幅し、スピーカーは音楽をアウトプットします

音楽の再生や表現もひろい意味の情報処理の一部であり、上記の3点がそろってこそ音楽の再生がなりたつということは情報処理の観点からも理解できます。

ここで、アンプ(プロセシング)に注目してみると、その基本的な機能は情報の増幅です

つまり、プロセシングでは増幅という機能が重要であり、増幅があってこそアウトプットに価値が生じてくるのです。ただ単に、情報(素材)を伝達しているだけではあまり意味がありません。

人がおこなうプロセシングにおいては、もっとも重要となる増幅能力はイメージ能力(心象力)です。イメージ(心象)には情報を増幅させる力があり、さらに、人の能力それ自体を増幅させる力ももちます。したがって、「増幅装置」としてのイメージの力に注目し、イメージ訓練をつんでいくことは大切な事です。


▼ 参考文献:菅野沖彦著『新レコード演奏家論』 ステレオサウンド、2005年6月
 
「オーディオで音楽を再生することは、音楽に生命をあたえ表現することである」と主張し、そのようなことをする人を「レコード演奏家」とよんでいます。「レコード演奏家」は受動的な音楽鑑賞者ではなく、能動的な表現者です。アウトプットの価値を高めていくと、それは単なる出力ではなく表現へと発展していきます。

国立新美術館の企画展「イメージの力 -国立民族学博物館コレクションにさぐる-」を先日みました。

この企画展は、「世界の本質や構造にかたちや色を与えて視覚化することは、人間に与えられた根源的な資質のひとつ」ととらえ、「イメージの活力を体感することによって、人類の文化に普遍的な『イメージの力』を堪能」するという企画でした。

全体は以下の4章から構成されていました。

第1章 みえないもののイメージ
「1-1 ひとをかたどる、神がみをかたどる」では、自らの身体に似せて神がみをイメージしていました。

「1-2 時間をかたどる」では、物語をイメージにしていました。

第2章 イメージの力学
「2-1 光の力、色の力」では、すでにある物に、あらたな光と色をあたえイメージを強化していました。

「2-2 高みとつながる」では、地上と上方世界とをつなぐことをイメージしていました。

第3章 イメージとたわむれる
よろこびの感情をイメージにしていました。

第4章 イメージの翻訳
「4-1 ハイブリッドな造形」では、外の世界のイメージをこちらにとりこむことであらたなイメージをえがいていました。

「4-2 消費されるイメージ」では、ブリキやアルミ缶を素材にしてあらたなイメージをつくっていました。


このように、何を素材にしてどのようなイメージをえがいたか、また、どのようにしてイメージをふくらませたのかの具体例を見ることができました。

わたしたちが何かをイメージし想像するとき、まったくのゼロからスタートすることはなく、外界からえられた素材を元にして、それをふくらませたり変化させたり発展させたりしてイメージしています。

したがって、イメージには素材がまず必要です。それは過去の体験から(記憶から)もってくることもできますし、現在の感覚体験を素材とすることもできます。

そしてわたしたちは、心のなかにインプットされた情報(素材)をそのままアウトプットするのではなく、イメージ能力をつかって、情報を編集・加工・増幅させて、つまり情報処理をしてアウトプットします。イメージ能力(心象力)は、情報処理をすすめるための基本的な能力であるわけです

今回の企画展などを利用して、まず、心のなかに素材をインプットすることを心がけ、次に、素材を元にしてイメージをふくらませる練習をするとよいでしょう。

「引き寄せの法則」について解説したDVDです。自分自身の明確なビジョンをもつことの大切さをおしえてくれます。未来を引き寄せるのも自分自身です。

情報処理(イメージ訓練)の観点からは次のようなつかい方をするとよいです。

1.想起する訓練
(1)DVDを普通に視聴する。
(2)映像を消して、音声だけをきき、映像(イメージ)を連続的におもいだす。
(3)音声を消して、映像だけを見て、音声を連続的におもいだす。字幕はオフにしておく。

2.ビジョンをえがく
(1)何をしたいのか、課題(テーマ)を書きだす。
(2)関連情報を収集、参考にして、何をするか決断する。
(3)自分自身の未来の姿を想像する。


1.想起する訓練
(1)DVDを普通に視聴して、映像と音声を心のなかにしっかりインプットします

(2)映像を消して、音声だけをきき、 映像(イメージ)を連続的におもいだします。イメージングに集中するためにはアイマスクをつかうとよいです。どこまで正確に映像が想起できるでしょうか。 どんな風景が見られたでしょうか。 登場人物の顔はおもいだせるでしょうか。

(3)今度は逆に、音声を消して、映像だけを見て、音声を連続的におもいだします。想起訓練のために字幕はオフにしておきます。登場人物はどんなを話をしていたでしょうか。どんなサウンドがながれていたでしょうか。

不確かな部分については、DVDを再度視聴して確認します。

こうして、〔(1)→(2)→(3)〕を1サイクルとし、このサイクルをくりかえします。これは、イメージング(心象法)と記憶法の訓練になり、普通に視聴をくりかえすよりも効果があがります。普通に視聴しているだけだと心象法と記憶法の練習にはなりません。


2.ビジョンをえがく
(1)想起訓練がおわったら、次に、自分は何をしたいのか、課題(テーマ)を書きだします。このとき、自分が本当にやりたいこと、真の願望をすべて正直に書きだせばよいです。困難にみえる課題であっても、それをのぞんでいるならば書きだします。たとえば、「・・・したい」というように書きだしてみます。

(2)課題(テーマ)に関して、必要があれば、インターネットや書籍などで関連情報をあつめます。あまり時間をかける必要はありません。その上で、今後あるいは将来、何をするのかを決めます。つまり決断をします

(3) そして、自分自身の未来の姿を想像します。つまりビジョンをえがきます。具体的で明確な映像(イメージ)をえがいてください。決断ができているとビジョンもえがきやすいです。

先の想起訓練では、インプットされた既存のイメージをおもいだせばよかったのですが、今度はさらに一歩ふみこんで、あたらしいイメージをみずからつくりだすことになります。単なるイメージ想起ではなくイマジネーションになります。

自分自身の未来の姿について理想的なイメージを心のなかにつくりあげてください。


■ 想起から想像へ
以上のように、まず、想起する訓練をし、次に、自分の未来の姿を想像する(つまりビジョンをえがく)訓練へすすむのが自然なやり方です。

自分の問題意識(興味・関心)がはっきりしているとビジョンもえがきやすいでしょう。問題意識のないところにはビジョンもありません。また、問題意識がシャープであると明確なビジョンがえがけます。

問題意識をとぎすますためには、課題(テーマ)がまず明確でなければなりません。

課題(テーマ)を明確にして生きていると、「これをやろう!」という決断ができ、おのずとビジョンがえがけるものです。何をするのか自分自身で主体的に決める「決断」は決定的なポイントになります。


■ イメージは能力を増幅させる
イメージは、第1には、心のなかにインプットされた映像を記憶したり、想起しアウトプットするときにつかわれ、第2には想像するときにつかわれます。第2の想像(イマジネーション)の段階では、すでにインプットされている情報(素材)を変化・発展させて自由に形・姿・色彩などをつくりあげてよいのです。

このように、イメージは情報を発展・成長させ、能力を増幅させる装置として機能します

『ザ・シークレット』のようなDVDをうまくつかって、できるだけ明るいイメージ(ビジョン)をえがけるように訓練をつんでいくのがよいでしょう。


DVD:『ザ・シークレット』(日本語版)出演:ロンダ・バーン他、発売日:2008年06月12日、発売元:インディーズ レーベル、時間:91分


▼ おすすめアイマスクはこちらです 

東京国立博物館のガイドブックです。

東京国立博物館は、上野公園内の大きな敷地内に、本館・表慶館・法隆寺宝物館・東洋館・平成館の5つの展示館が分布しています。

ガイドブックをあらかじめ見てから東京国立博物館を見学すると体験をふかめることができます。 出かける前に本書を見て、今日は、ここを見ようと決めてから出かけるとよいです。よほど時間がある人は別として、ガイドブックを見ないで大きな博物館をやみくもにあるきまわるのは効果的ではありまません。

本書の第一部では、各展示館について概説してあります。

■ 本館
2階「日本美術の流れ」(フロアーマップ:13ページ)
・第1展示室:日本美術のあけぼの(縄文・弥生・古墳)、仏教の興隆(飛鳥・奈良)
・第2展示室:国宝室
・第3展示室:仏教の美術(平安〜室町)、宮廷の美術(平安〜室町)、禅と水墨画(鎌倉〜室町)
・第4展示室:茶の美術
・第5-6展示室:武士の装い(平安〜江戸)
・第7展示室:屏風と襖絵(安土桃山・江戸)
・第8展示室:暮らしの調度(安土桃山・江戸)、書画の展開(安土桃山・江戸)
・第9展示室:能と歌舞伎
・第10展示室:浮世絵と衣装(江戸)

1階「ジャンル別展示」(フロアーマップ:25ページ)
・第11展示室:彫刻
・第12展示室:彫刻と金工
・第13展示室:陶磁、漆工、刀剣
・第14展示室:工芸
・第15展示室:民俗資料(アイヌ・琉球)
・第16展示室:歴史資料
・第17室:休憩室
・第18展示室:近代美術(絵画・彫刻)
・第19展示室:近代工芸

■ 法隆寺宝物館(フロアーマップ:45ページ)
1階
・第1展示室:灌頂幡(かんじょうばん)
・第2展示室:金銅仏・光背・押出仏
・第3展示室:伎楽面(ぎがくめん)
2階
・第4展示室:木・漆工
・第5展示室:金工
・第6展示室:絵画・書跡・染織

■ 東洋館(フロアーマップ:49ページ)
・第1展示室:中国彫刻、インド・ガンダーラ彫刻
・第2展示室:銅鼓・中国彫刻
・第3展示室:エジプト・西アジア、 東南・南アジアの美術と考古
・第4展示室:中国考古
・第5展示室:中国工芸
・第6展示室:画像石
・第7展示室:画像石
・第8展示室:中国の絵画、中国の書跡
・第9展示室:朝鮮考古
・第10展示室:西域美術

■ 平成館(フロアーマップ:58ページ)
1階:
・第1展示室:考古
・第2展示室:企画展示
2階:特別展示室


(注)展示の最新情報はウェブサイトで確認できます 東京国立博物館

博物館をつかって、記憶法やイメージ訓練(心象法)などの情報処理をすすめるには次の方法をつかうと効果的です。

1.空中写真を見る
博物館がある敷地全体を上空から撮影した全体写真をよく見て(インプットして)、建物の分布・配置をおぼえます。本書では、90-91ページに空中写真がのっています。Google Earth をつかってもよいです。

2.平面図(地図)を見る
博物館がある敷地の平面図(地図)を見て(インプットして)、建物の配置を確認します。本書ですと67ページに平面図がのっています。

3.フロアーマップを見る
博物館の建物のフロアーマップを見て(インプットして)、各展示室と各展示分野の分布・配置を確認します。本書では、 13ページ(本館2階)、 25ページ(本館1階)、 45ページ( 法隆寺宝物館)、 49ページ(東洋館)、 58ページ(平成館)にフロアーマップがのっています。

4.展示室を見る
各展示室に行って、その展示室全体の空間の様子をよく見ます(インプットします)。

5.展示物を見る
展示室で展示物を見て、その展示室内のどこに何が展示されているかを空間的にとらえて記憶します。各展示室内の位置にむすびつけてそれぞれの展示物をイメージとして記憶します。 展示物はほとんどが立体ですので、インプットされるものも立体イメージ(3Dイメージ)になります。

6.解説をおぼえる
あわせて、各展示物の解説の要点も記憶します。

7.あらたなイメージのための素材をえる
あわせて、各展示室内で、あらたなイメージをえがくために役立ちそうな素材をさがします。

8.想起する
ひととおり見終わったら、休憩室(休憩所)に行って、各フロアーマップを見なおし、各展示室の空間と各展示物をイメージとして順次想起します。

9.再確認する
よくおもいだせない場所については、もう一度そこに行って確認し、再度インプットします。


以上は、記憶法とイメージ(心象法)の訓練であり、全体写真・平面図・フロアーマップは、記憶とイメージをえがくためのベースとなっています。

ここでは、最初から理屈でとらえるのではなく、まず、イメージをインプットすることが重要です。

第1に、敷地内における各建物(各展示館)の配置(敷地内の位置)、第2に、各建物内における各展示室の配置(建物内の位置)、第3に、各展示室内における各展示物の配置(展示室内の位置)をそれぞれ空間イメージとして記憶します。そして、各展示物にむすびつけてその解説や関連情報を記憶していくわけです。

こうして次のような階層構造ができあがります。

 上 空中写真
 | 平面図(地図)
 | フロアーマップ
 | 展示室の空間イメージ
 下 展示物のイメージと解説

上部構造ほど、細部は見えませんが全体が見えます。下部構造では、全体は見えませんが細部が見えます。

たとえば、武士について理解し記憶したいとおもったら、空中写真と平面図で本館の位置を確認し、本館のフロアーマップを見て、2階第5-6展示室に行きます。展示室の空間全体を見てから、各展示物の前に行きます。展示室の空間内のどこにその展示物があるのか、場所を確認しおぼえます。そして展示物をよく見て、その解説を読みます。

さらに、その分野をふかめたいとおもったら、武士に関する適当な本を第5-6展示室にもっていき、その場で読んで、第5-6展示室にむすびつけて書名や要点を記憶します。

こうして、第5-6展示室は、武士に関する情報と記憶の倉庫になります。

そして、武士についておもいだすときは、まず、第5-6展示室の空間をおもいだせばよいことになります。空間から言語情報もひきだすことができます。

また、たとえば、「中国考古」について学習したいとおもったら、東洋館の第4展示室に行って同様なことをすればよいわけです。

このようにして、第一に、つかえる知識を体系的に増やし、第二に、あらたなイメージをえがくための素材がえられるように訓練していけば、博物館は単なる宝物の倉庫であることをこえて「情報の宝庫」としてつかえます

しかも、机のうえで本を読んでいるのとはちがい、体をうごかしながら体験的にとりくめるので、体験情報が心のなかにファイルされ、それは一生の思い出としてのこすことができます。


文献:新潮社編『こんなに面白い東京国立博物館』 2005年04月21日

▼ DVDはこちらです


本書は、イメージの訓練法(心象法ともいいます)について解説しています。 

イメージ訓練(心象法) も、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の過程ですが、 速読法はインプットに重点がおかれているのに対し、イメージ訓練(心象法)はプロセシングに重点がおかれています。

以下に、ポイントをピックアップします。

「速読法」は文書の情報を入れる方法、「記憶法」はその情報を蓄える方法、そして「心象法」は情報を出して操作する方法、「瞑想法」は情報操作の環境を整える方法です。このような心の活動で作り出された産物を外に出していく方法が「速書法」と呼ばれる部門です。

まずイメージには素材が必要です。それは過去の体験から持ってくることもできるし、現在の感覚体験を素材とすることもできます

現実を見る感覚が確かかどうか、また体験の倉庫に十分な材料があるかどうかが大事なのです。

開いた感覚を維持し、体験を瞬時に思い出せる回路を作ることが能力開発の入り口です。

イメージには形と動きとパワーが必要です。初心のうちは、形がきちんとして動きがあり、パワーがみなぎり、その上で少し味付けができたらいいのです。

今までの人生で一回だけの貴重な体験を思い出すようにすると、ぐんぐんと元気が出てきます。

イメージにはパワーやインスピレーションを発揮させる働きがあります。イメージは、人の能力の“増幅装置”です
 
皆さんをいい方向に導くような質のよいパワーイメージをたくさん描いて揃えていきましょう。

よいイメージを描くためには心の場が準備されて、よい状態にセットされなければなりません。工場をきちんと作る必要があるのです。

心は「(何となく)ある」ものではなく、積極的に「作る」ものだと考え直していただきたい

体験は発想や思考の素材です

潜在意識がきちんんと働くようになると、思いがけない素材がひょいと出てくるようになります。カツ丼を作った人、カレーライスを作った人も、それぞれのイメージの中で何かのアイデアを沸かせて、それを実際に活用したのです。

イメージ体験は、すべて発見的に書きましょう。書く作業はイメージの世界の内容を外の世界に出す大事な練習です。

イメージを完全にするには、外に対して働きかけ、イメージに基づいて行動することも大事です

イメージ訓練の最終目的は、未来をどう構築していくか、ということにあります。未来を作るには何かのモデル、すなわちアイデアの元となる形が必要です。


以上を実践し効果をあげるために、63の訓練が本書には用意されています。特に、12のイメージツアー(102〜134ページ)はとてもたのしく、くりかえし練習してみるとよいでしょう。

本書でものべられているとおり、心象法(イメージ訓練)は速読法や記憶法と連動していて、速読法や記憶法や速書法とあわせて訓練すると大きな相乗効果がえられます。

情報処理の観点からいうと、速読法はインプットに重点がおかれ、記憶法と心象法はプロセシングに重点がおかれ、速書法はアウトプットに重点がおかれます。したがって、次のようなおよその流れをおぼえておくとよいでしょう。

〔速読法〕→〔記憶法→心象法〕→〔速書法〕

心象法は、情報処理をすすめるためにはさけてはとおれない過程であり、アウトプットにつなげていくために必要な方法です。心のなかでイメージをえがいて、それを外に書きだすという過程をきたえていかなければなりません。

本書を参考にして、日々、よくできたイメージをえがけるように練習していくのがよいでしょう。


文献:栗田昌裕著『心と体に効く驚異のイメージ訓練法』廣済堂出版、1993年8月1日


▼関連ブログ(速書法について)
潜在意識を活性化させて速く書く 〜栗田昌裕著『栗田式驚異の速書法ドリル』〜 

本書は、国立民族学博物館初代館長・梅棹忠夫が撮影した写真(一部スケッチ)と、彼が書いた文章とをくみあわせてフィールドワークのすすめかたの要点をつかむための事例集です。

本書を見れば、梅棹忠夫がのこした写真と言葉から、世界を知的にとらえるためのヒントを得ることができます。

本書は次の8章からなっています。

第1章 スケッチの時代
第2章 1955年 京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊
第3章 1957-58年 大阪市立大学第一次東南アジア学術調査隊、1961-62年第二次大阪市立大学第二次東南アジア学術調査隊
第4章 日本探検
第5章 1963-64年 京都大学アフリカ学術調査隊、1968年 京都大学 大サハラ学術探検隊
第6章 ヨーロッパ
第7章 中国とモンゴル
第8章 山をみる旅

梅棹忠夫は、「あるきながら、かんがえる」を実践したフィールドワーカーであり、彼が、世界をどのように見、どのような調査をしていたのか、それを視覚的・言語的に知ることができます。

本書の特色は、写真と文章とがそれぞれ1セットになっていて、イメージと言語とを統合させながら理解をすすめることができる点にあります。知性は、イメージ能力と言語能力の二本立てで健全にはたらきます

イメージ能力をつかわずに言語能力だけで情報処理をすすめていると効果があがりません。学校教育では言語能力を主としてもちいてきましたが、これはかなりかたよった方法であり、すべてを言語を通して処理しようとしていると、大量の情報が入ってきたときにすぐに頭がつまってしまいます。

そこでイメージ能力をきたえることにより、たくさんの情報がインプットでき情報処理がすすみます。そのような意味で、写真撮影はイメージ能力を高め、視覚空間をつかった情報処理能力を活性化させるために有効です

写真は、言語よりもはるかにたくさんの情報をたくわえることができます。たとえば写真を一分間見て、目を閉じて見たものをおもいだしてみてください。実にたくさんの情報を想起することができます。あとからでも写真をみてあらたな発見をすることもあります。

こうして、写真と言語の両方で記録をとっていると、イメージ能力と言語能力とを統合することで相乗効果が生じ、視覚空間と言語空間は融合していきます

現代では、ブログやフェイスブックやツイッターなどをつかって、写真と言語とをくみあわせてアウトプットすることが簡単にできます。旅行やフィールドワークに行って、ブログやフェイスブックなどにそのときの様子をアップするときには上記のことをつよく意識して、梅棹流の形式で表現してゆけばよいでしょう。


文献:梅棹忠夫著『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界のあるきかた』勉誠出版、2011年5月31日

この年表は、宇宙の誕生から現在までの138億年の歴史を、倍率のちがう10個の「レンズ」を通して理解するための資料です。

縮尺のことなる10本の年代軸を「レンズ」とよびそれぞれの時間スケールで見たときにあらわれる重要なイベントが10本の年表にしめされています

ポイントをピックアップします。
年表の年代軸は左から右に若くなり、いずれも右端が現在になる。

150億年、50億年、6億年、7000万年、600万年、100万年、20万年、2万年、2000年、200年と縮尺のことなる10本の年代軸(レンズ)を用意している。

1つの年表における右端の部分についてレンズを1つ拡大したものが、下の年表になっている。

いくつかの年表では、気温や酸素濃度、海水準などの変動曲線もあわせて示し、その時代にどのような環境変動があったのか、視覚的に理解できるようにしている。

この年表を活用して、「時空を自在に飛ぶ感覚を、ぜひ味わっていただけたらと思う

本書が、宇宙の誕生から現在までのシームレスな地球史を認識する手助けとなり、われわれ地球人が進む未来像を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。

慣れてきたら、ぜひレンズ11として「自分史・家族史」を作ってもらいたい。われわれの人生も地球の歴史の一部であり、そして、現在がこれからの未来へつながる位置にあることを実感できるはずである。


レンズ1:宇宙史(150億年前〜現在)
138億年前、無からの猛烈な体積膨張「インフレーション」で宇宙の歴史ははじまった。

レンズ2:地球史(50億年前〜現在)
45億5000万年前に地球の核ができる。最古の生物化石は35億年のものである。

レンズ3:顕生代(6億年前〜現在)
5億3000万年前におこった「カンブリア大爆発」により生物は大型化した。

レンズ4:新生代(7000万年前〜現在)
グリーンハウス(温室世界)からアイスハウス(氷室世界)へ徐々に気候が寒冷化する時代である。

レンズ5:人類時代(600万年前〜現在)
440万年前にラミダス猿人、350万年前に二足歩行、人類が進化する。

レンズ6: 氷河時代(100万年前〜現在)
地球規模の寒冷化が顕著になる。

レンズ7:最終氷期(20万年前〜現在)
19万5000年前、ホモ・サピエンスが出現する。

レンズ8:先史・文明時代(2万年前〜現在)
1万6500年前、縄文時代が始まる。

レンズ9:歴史時代(2000年前〜現在)
375年、大和政権が成立する。

レンズ10:近現代(200年前〜現在)
産業革命がおこる。2度の世界大戦がおこる。

この資料は、時間スケールのことなる10本の年表を同時に一覧できることに最大の特色があります。この「スーパー年表」を見ると、レンズ(時間スケール)のとり方によって、歴史の見え方ががらりとことなってくることがよくわかります。

これは、空間的な見方と対比するとおもしろいです。空間スケールのとり方によっても世界の見え方はかなりちがってきます。たとえば、地表から地上を見る、高い塔から地上を見る、高い山から見る、人工衛星から見る、月から地球を見るなど、空間的な視点を変えると見える範囲・精度は変わってきます。レンズの倍率によって見える世界はことなるわけです

このような、空間的な視点・スケールを変えて見ることは比較的やりやすかったのですが、一方の時間的なスケールを変えて見るという見方は今まではむずかしかったです。多くの人々の場合、上記のなかの「歴史時代」あるいは「近現代」ぐらいしか視野に入っていない状況ではないでしょうか。

そのような意味で、「空間レンズ」ならぬ「時間レンズ」を提供するこの「スーパー年表」は画期的であり、このような時間スケールごとに複数の年表を対比・一覧できる資料は今まではなかったです。

この「スーパー年表」を見ていると、人間の存在が、宇宙空間のなかで小さな存在であるばかりでなく、時間的歴史的にも小さな存在であることがとてもよくわかります。

まずは、この「スーパー年表」を活用して10種類の時間「レンズ」を身につけるのがよいでしょう。

そして、それぞれの「レンズ」(時間スケール)で歴史をとらえなおし、それぞれの「レンズ」を通して見える歴史イベントを想像(イメージ)してみるとよいでしょう。どこまで想像できるでしょうか。歴史とは想像するものです。よく想像できない場合は本書の解説書をみたり、インターネットで検索したりして理解をふかめることが大切です。

このようにして、時間を自在にとびながらイメージ訓練をしていると、今までの固定した見方から脱却でき、さまざまな観点からしかも重層的な見方ができるようになり、あらたな発想も生まれやすくなります。


文献:清川昌一・伊藤孝・池原実・尾上哲治著『地球全史スーパー年表』岩波書店、2014年2月18日


ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指輪』から序夜《ラインの黄金》(演奏会形式)をききました(注)。東京春祭(東京・春・音楽祭)において、音楽史上 空前絶後の超大作『ニーベルングの指輪』を、毎年1曲ずつ4年をかけて全曲 演奏するという大きな企画の初年度でした。

声楽と管弦楽の演奏のみの、舞台装置や演技なしの演奏会形式オペラ公演であったため、ストーリーをおいながらイメージを自由にえがくことができました。

《ラインの黄金》のあらすじはつぎのとおりです。

第1場ライン川の底。地底からやってきた みにくい小人アルベリヒは、ライン川の黄金をまもる3人の乙女たちから、ライン川の黄金をうばいとってにげさります。

第2場:黄金をうばいとったアルベリヒは、その黄金を指輪にして地底の支配者となり、さらに、神々のすまう天界までをうかがう勢いをみせます。天界にすまう神々の長ヴォータンは法によって世界を統治していましたが、みずからの支配がおびやかされることをおそれ、その黄金の指輪をうばいとるために地底の世界へとおりていきます。

第3場ニーベルング族のすまう地底アルベリヒは、指輪の魔力により、神々をたおし、世界を支配してやろうという野望をいだいています。

火の神ローゲ神々の長ヴォータンは、そのアルベリヒをたくみにだましてつかまえ、地底からひきずりだします。

第4場神々の長ヴォータンは天界への道をひきかえします。ヴォータンは、アルベリヒから指輪をねじりとります。

世界が暗闇に突然つつまれ、未来を知る大地の女神エルダが登場、「指輪を手放し、災いを未然にふせげ」とヴォータンにつげます。そこでヴォータンは、神々の城ヴァルハラを建設した巨人の兄弟に指輪をあたえます。

すると、巨人族の兄弟、ファーフナーファーゾルは指輪をめぐってあらそい、ファーフナーがファーゾルをなぐりころします。

神々は、虹の橋をわたってヴァルハラ城に入っていきます。

今回の演奏会形式とは、通常のオペラ公演とはことなり、舞台装置などの演劇上の演出をせず、舞台上にオーケストラがのり、その前でソリストが歌を歌うような形式の公演です。

通常のオペラの場合は、演出家がえがいたイメージがすでにあり、それをあたえられるわけですが、 演奏会形式では舞台装置と演技がない分、自由にイメージをえがくことができます。
 
演奏会形式は本当のオペラではないといわれればその通りですが、自分で自由にイメージをえがくという別の楽しみ方ができるわけです。このような、音楽をききながら連続的にイメージをえがくことは、とても効果的なイメージ訓練にもなります


注:
東京文化会館、2014年4月7日、(東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.5)
指揮:マレク・ヤノフスキ
ヴォータン:エギルス・シリンス
ドンナー:ボアズ・ダニエル
フロー:マリウス・ヴラド・ブドイウ
ローゲ:アーノルド・ベズイエン
アルベリヒ:トマス・コニエチュニー
ミーメ:ヴォルフガング・アブリンガー=シュペルハッケ
ファーゾルト:フランク・ヴァン・ホーヴ
ファーフナー:シム・インスン
フリッカ:クラウディア・マーンケ
フライア:藤谷佳奈枝
エルダ:エリーザベト・クールマン
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香
管弦楽:NHK交響楽団
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン


参考資料:

・『ニーベルングの指輪』のとてもすぐれた入門書です。


・こちらはコミック版です。絵がある分わかりやすいです。


・おすすめCD(ハイライト)です。名演をきかせてくれます。くりかえしきいてたのしめます。

楽天市場


仏像の見方・たのしみかたがよくわかる本です。

仏像に関する本は多数ありますが、この本はとても見やすく、わかりやすいです。1ページあるいは見開き2ページをつかって写真とともに簡潔に解説されています。わかりやすくつたえるためにはレイアウトも重要だということを再認識させてくれます。
 
第1章「やさしい仏像の見方」では、如来、菩薩、明王、天部、羅漢・高僧についてそれぞれ説明しています。

 
1)如来(にょらい)とは、真理の世界から来た者の意で、仏陀と同意です。釈迦如来、阿弥陀如来、弥勒如来、薬師如来、毘盧遮那如来、大日如来などです。

2)菩薩(ぼさつ)とは、自らの覚りを求めるとともに、人々の救済を願い、福徳をもたらす仏をさしています。弥勒菩薩、聖観音、十一面観音、不空羂索観音、千手観音、如意輪観音、馬頭観音、准胝観音、文殊菩薩、普賢菩薩、虚空蔵菩薩、地蔵菩薩、勢至菩薩、日光菩薩・月光菩薩などです。

3)明王(みょうおう)とは、如来の教えに従わないものたちを忿怒相(ふんぬそう)の恐ろしい姿で懲らしめ、教化しようとする、密教の仏たちの総称です。不動明王、愛染明王、五大明王、孔雀明王、大元帥明王などです。

4)天部(てんぶ)とは、バラモン教やヒンズー教の神々が仏教に取り入れられたものの総称で、仏やその教えを護り、人々に現世利益をもたらす役目があります。梵天、帝釈天、金剛力士、八部衆、二十八部衆、四天王、毘沙門天、十二神将、吉祥天、弁財天、鬼子母神などです。

5)羅漢・高僧(らかん・こうそう)は、釈尊の高弟や最高位の僧、宗派の開祖など、仏教の普及に深くかかわった人々です。十大弟子、十六羅漢、 無著・世親、達磨大師、聖徳太子、義淵、行基、鑑真、空海、最澄などです。


情報処理・問題解決の観点からは、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、普賢菩薩(ふげんぼさつ)、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)に注目するとよいでしょう。

文殊菩薩は「智を象徴する菩薩」です。それに対して普賢菩薩は「行(行動)の菩薩」です。虚空蔵菩薩は「記憶力をさずける菩薩」です。虚空(こくう)とは「何もさまたげるものがない空間」の意であり、記憶は、このような広大な空間をつかっておこないます。空間記憶法は大昔から実践されていたわけであり、注目しなければなりません。

本書をつかって、 インドから日本までいたる東洋の広大な精神世界を、仏像たちを通して具体的に認識することができます。精神的・抽象的なことがらを、仏像を見ることにより、視覚的にとらえなおすことができるのです。

また、本書全体を心の中にインプットすることにより、東洋の精神世界全体の仏像による見取り図(スケッチ、インデックス)が心の中に生じます。抽象的なことがらは記憶しにくいですが、仏像はとても記憶しやすくできています。活用していきたいものです。


文献:熊田由美子監修『仏像の辞典』成美同出版、2014年2月20日

非常にわかりやすいニュース解説者として知られている、ジャーナリストの池上彰さんがまなぶたのしさについてかたっています。わかりやすさとは何か、わかりやすくつたえるためにはどうすればよいか、池上さんからまなぶことはたくさんあります。

本書は、NHKを辞めて大学でおしえることになった経緯を中軸にして話をすすめています。

わたしがまず印象にのこったのは「絵を描けるように話す」ということです。池上さんはのべています。
ビジュアルと言葉の両輪で説明しようと努めてきました。

また、紙の新聞の「ノイズ」で教養をふかめることものべています。「ノイズ」とは、自分の関心以外のニュースや情報のことです。
紙の新聞なら、自分の関心以外の記事も自然に目に入ってきます。目に入った隣の記事までつい読んでしまうことで、知識や関心が広がっていきます。

これは、大きな視野、大きな空間で情報をとらえるということであり、自分がもとめている情報だけではなく、その周辺や背景にある情報も同時に取得するといことです。これは、情報を取得(インプット)するときに重要なことです。中心視野だけではなく周辺視野もフルにつかって、その空間にある情報すべてをまるごとインプットしてしまうのがよいです。そして、本来目的としていた情報も、その周辺や背後の空間の中に位置づけてとらえ、記憶していけばよいのです。

また、池上さんは「リアル書店の棚で勉強できる」ことものべています。
何かについて勉強したい、知りたいとおもったら、まずはターミナルにある大規模書店に足を運び、そのテーマについてどんな本があるのかを見に行きます。そこでイメージをつかんで、自分にあった本を選べば良いのです。

以上のように本書のキーワードは空間とイメージです。新聞の紙面もリアル書店も空間です。そして「イメージを描く」となるわけです。このように、あるテーマについて何かをまなぶとき、空間を活用してイメージをえがくことが重要です。心の中に情報をインプットしたり、イメージをえがいたりする空間は大きければ大きいほど情報処理は加速され、その効率があがります。パソコンやタブレットの二次元のせまい画面(平面)や、ネットでえられた断片的な情報だけでは情報処理の効率はあがりません。

「アナログ人間のオヤジ」と自称する池上さんのアドバイスを参考にしたいものです。


文献: 池上彰著『学び続ける力』(講談社現代新書)講談社、2013年1月20日
 

問題解決にとりくむとき、ひとつの課題が決まったら、それに関して情報を収集し、認識をふかめなければなりません。そのときつぎの3段階を踏むと効果的です。

第1段階:大局( 全体)をみる
第2段階:局所( 部分)をほりさげる
第3段階:イメージをふくらませる


たとえばわたしは、地学の調査・研究を長年やっていて、そのときの基本的なやり方はつぎのとおりでした。

(1)平面的に、できるだけひろく地表を調査します。
(2)ここぞという地点を選択して、ボーリング調査をし、垂直方向のデータをあつめます。
(3)(1)と(2)のデータをくみあわせて、全体構造のイメージをふくらませます。

(1)では、幅広く全体的に調査し平面的なデータをあつめます

それに対して(2)では、狭く深く調査して垂直的なデータをあつめます。地学ではボーリングという手法が有効ですが、どこでボーリングをするか、その地点の選択が非常に重要です。あちこちでやみくもにボーリングをすることは物理的にも予算的にも不可能ですし意味もありません。ここぞという地点をいかにうまく選択するか、課題を追求するうえでの急所ともいうべき地点を選択するのが理想です。

(3)では、(1)と(2)の情報をくみあわせて、見えないところは想像してみます。立体空間のなかで構造をイメージしてみると、その地域をおおきな場として、空間的構造的に一気にとらえられるようになります。さらに、その場の歴史や原理までもわかってくることがあります。


また、たとえば、地球について理解をふかめようとおもったら、

(1)地球儀、Google Earth、インターネット、概説書などで地球の全体状況を見て、地球の大局をつかみます

(2)ここぞという地点を選択し、実際にそこに行ってみてしらべてみます

(3)(1)と(2)の情報をくみあわせて、地球に関するイメージをふくらませます

(2)において、ここぞという地点としてどこを選択するか、どこへ行くか、おなじ地球上にすんでいても、課題によって人によって大きくことなってきます。わたしの場合はヒマラヤを選択しました。この例では、(2)の行為は、旅行とかフィールドワークとよばれます。


以上のように、「大局局所想像」という三段階は、課題を追求し認識をふかめるためにとても有効です。とくに第2段階における局所の選択について意識してみるとよいでしょう。

「ブレーンストーミング」という、問題解決のための発想やアイデアをだす方法があります。これは、アメリカのオズボーン氏がはじめたもので、 通常は会議でつかわれますが、ひとりでもできます。ひとりでおこなう場合は「ひとりブレーンストーミング」といいます。

川喜田二郎著『続・発想法』(注)の 34〜35ページ にはブレーンストーミングについて解説されています。ここにまとめておきます。

ブレーンストーミングには以下の4原則があります。
1「批判を禁ずる」
2「量をもとめる」
3「自由奔放」
4「結合」

1「批判を禁ずる」は、そんなアイデアはダメだとおもって、他人の意見を批判したり否定してはいけないということです。

2「量をもとめる」は、ひとつひとつの意見の質の高さよりも、多種多様に数多いアイデアをだすということです。質よりも量を追求するということであり、そのためにはいろいろな角度からアイデアをだすのがよいです。

3「自由奔放」は、こういうことをいったら、他人にわらわれやしまいかなどという、いじけたひかえめな気持ちではなく、奇想天外にみえることでもだしてみることです。どのように後でまとめようかなどともかんがえない方がよいです。

4「結合」は、他人の意見をきいて、それに刺激され、あるいは連想をはたらかせ、あるいは他人の意見に自分のアイデアをくわえて、あたらしい意見としてのべます。

ひとりでおこなう場合でも4原則にしたがって、他人の意見を心の中で批判したりせず、また、過去の出来事ややりとりをおもいだしながらアイデアをだしていきます。

このブレーンストーミングはふるくからある方法ですが、現代の情報化の観点からこれをとらえなおしてみると、今日でも有用であり大いに活用すべき方法です。

そもそも情報処理は、「インプット→プロセシング→アウトプット」という3つの場面からなりたっていて、通常は、あたらしい何らかの情報を自分の心の中にインプットするところからはじめます。

ブレーンストーミングでは、過去に得られた情報、すでに心の中にインプットされている情報、過去のできごとをつかって情報処理をすすめようという仕組みであり、あらたなインプットがない分、手っとり早い方法であり、いつでもどこでもひとりでもできる方法です。

川喜田は、ブレーンストーミングを「内部探検」に発展させて論じています。つまり、自分や自分たちの心の中を探検するのです。自分の心の奥底にはどのような情報がありどのようになっているのか、自分のことは意外にもよくわかりません。この「内部探検」つまり「心の探検」はとても奥深い行為であり、これからの時代、誰もがとりくまなければならない課題です。


注:川喜田二郎著『続・発想法』(中公新書)、中央公論新社、1970年2月25日
 
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「モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」(国立西洋美術館)(注)を先日みました。

風景にそそがれたモネの「眼」の軌跡を、絵画空間の構成という観点から、他の作家の作品との比較しながらたどります。国内有数のモネ・コレクションをほこる国立西洋美術館とポーラ美術館の共同企画展です。

わたしはいつものように、館内をゆっくりあるきながら、まず、展示されているすべての作品を一気にみてしまいます。

そして次に、気に入った一枚の絵の前に行き、数分をかけてその絵を今度はじっくりとみつめます。そしてイメージトレーニングに入ります。今回は、クロード・モネ『セーヌ河の日没、冬』(1980年 ポーラ美術館蔵)を選択しました。

* 

目の前にひろがるその風景の全体をすっぽり心の中にいれたあと、夕日と夕焼け、それらがつくりだす陰影 、河・水・岸・対岸・木々、雲がつくりだす模様など、各要素の形と大きさをひとつひとつ丁寧にみていきます。

次に、今度は目を閉じて、今みた風景と各要素をありありとおもいだしてみます。自分自身の心の中で、モネの風景をイメージし、再現しとらえなおしてみるのです。

そして目を閉じたまま、今度は絵の世界の中へ入りこんでしまいます。わたしは、セーヌ河の河岸を自由にあるきまわり、そして空にまいあがります。上空からみると、みえなかったところも今度は自由に想像してみることができます。

東西南北からセーヌ河がうかびあがります。対岸の街並はどこまでもひろがっています。夕日はしだいにしずんでいき、夕焼け色のうつくしい世界がひろがります。その後、色彩感ゆたかな空間だけがのこり要素はなくなってしまいました。

そして、ふたたび美術館にもどってきます。

* 

このようなイメージトレーニングはとてもたのしい体験です。

対象の中に入りこみ、その世界を立体的にみて体験することにより、風景は、より鮮明に感動をともなってみえるようになります。 視野のひろがりのなかのそれぞれの場所でそれぞれの要素を記憶することもできます。

こうして、この日の美術展での体験は、一生に一度の、かけがえのない思い出となります。この日この場所をわすれることはもうありません。

このようなイメージトレーニングは、眼力の訓練でありますが、記憶法や能力開発の訓練にもなっています。


注:
「国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」
会期:2013年12月7日(土)~2014年3月9日(日)


▼ 参考文献:高橋明也監修『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』西村書店、2010年1月15日

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イメージ訓練「拡大縮小法」にとりくむ - オルセー美術館展 -
色がまざって見える - 特別展「新印象派 光と色のドラマ」-
遠くからみて、近くでみて、離れてみる - 「モネ展」-
見る仕組みを知る - 藤田一郎著『「見る」とはどういうことか』-

 

ヒーリングハープのCDが入っています。こまやかな波動をもつハープの音色が きく人の心身を解きほぐし、ふかい癒しと安心をもたらします。ハープはシンプルな楽器であり共鳴箱や増幅装置がないため、かなでる音楽はかえって心の中にひびきやすいです。

ハーピストの所れいさんは、キャビンアテンダントになって結婚して主婦をしていましたが、
「あ、私のやりたいのはこれだ」
と気がづき、もともと演奏していたハープを生かしてあらたな境地をきりひらきました。

ヒーリングハープ体験者のなかに「幸せのカギは自分の中にあるのだと気がついた」(注, p.40)という人がいました。ヒーリングハープがかなでる音楽は自分の外の空間にではなく、自分自身の心の中にひびいているのです。

ハープのかなでる音楽をゆっくりきいて、ポジティブな意識の変容をおこすことが大切です。そうすればあらたな気づきやひらめきもおこりやすくなります。


注:所れい著『悲しみが消えて喜びが満ちるヒーリングハープCDブック』マキノ出版、2013年
 

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「私、生まれも育ちも葛飾柴又です、帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んで、フーテンの寅と発します」

京成電鉄金町線・柴又駅の改札口をでると寅さんの銅像がむかえてくれる。寅さんは、ちょうどいま柴又を旅立つところだ。柴又をなつかしんでか、あるいは おいかけてきた妹さくらの声がきこえたのか、参道の方をふりかえっている。

寅さんにわかれをつげ、駅前から参道に入る。参道をすすんでいく。おもったよりもせまくてこぢんまりしている。まるで映画のセットのようだ。だんご屋がある。高木屋老舗、映画のなかのだんご屋とらや(のちにくるまや)のモデルになった店である。大勢の観光客が草だんごを買っている。

さらにすすんでいくと、うなぎ屋や土産物屋などのいろいろな店が立ちならんでいる。参道は雑然としていて決して洗練されておらず、庶民くささがのこっている。ここは庶民のふるさとだ。

さらにあるいていくと正面に豪壮な門が見えてくる。帝釈天の山門、二天門だ。「柴又帝釈天」と彫った大きな石碑が立っている。この寺の正式な名称は経栄山題経寺(きょうえいざんだいきょうじ)、日蓮宗の名刹である。寛永6年(1629)、日忠上人の草創とつたえられ、本尊は、日蓮上人自刻の帝釈天の板仏だという。

二天門をくぐると左手に大鐘楼が見える。源公がうつ鐘はいつもここから聞こえてくる。正面には帝釈堂が、右手には本堂がかまえている。たくさんの子供たちがあそんでいる。御前様が今にもあらわれそうな とてもなつかしい空間だ。ここはもう寅さんの世界そのものである。左手には「瑞龍の松」が横たわり見事な枝をひろげている。日蓮宗の僧・日栄がこの松の根元に霊泉がわく様子を見て、ここに庵をむすんだという。さらにその左には御神水がこんこんとわきでている。寅さんはこの御神水の産湯につかった。

帝釈堂の裏にまわると彫刻ギャラリーがある。法華経の物語を視覚的に再現している。回廊式のギャラリーを一周していくと、けやき材に奥深く刻み込まれた彫刻が見事な三次元空間をつくりだしている。まるで木に命がやどったかのように躍動感にみちあふれている。大正11(1922)年に名匠・加藤寅之助が一枚目を創作、すべて完成したのは昭和9(1934)年だったという。

帝釈堂の裏手には大庭園(遂渓園、すいけいえん)がひろがる。しずかな回廊式庭園である。庭園をのぞむ大客殿には、直径約30センチメートルで日本最大級という南天の木をつかった床柱がある。

柴又界隈でくりひろげられた『男はつらいよ』の数々の名場面をおもいだしながら、帝釈天をあとにし、寅さん記念館へむかう。帝釈天の裏手から江戸川の方へすすんでいくと、土手のわきの小山の地下に寅さん記念館がある。

入口を入ると とらや(のちのくるまや)がまっている。ここでは、とらやそのものの中に入ることができる。とらやに入ると草だんごを食べる客席があり、その奥には茶の間と土間があり、土間の右手には寅さんがいつも二階にのぼっていく階段がある。

寅さんはいつもこの店にかえってくる。ひさしぶりにかえってくると、何だか中に入りにくいが、今度こそは、とおもって足を踏みいれる。しかしやっぱりけんかをしてしまう。とらやの客席にすわってそんな光景をおもいだしながら、しばらく夢の中をただよっていく。寅さんの世界を外から見ているのではない。寅さんの世界の中に入りこんでしまう。映画の世界は空想の世界である。しかしその空想の世界に実際に入りこんだ現実がここにはある。これは空想なのか現実なのか。なんとも不思議な体験だ。

寅さんの世界は、『男はつらいよ』をくりかえし見ることによって私たちの心の中につくりだされてきたものである。それは、ながい年月をかけて私たちの心の中にイメージとして記憶されたもので、架空であり空想である。

わたしたちは通常は、どこかの物理的な空間をおとずれ、そこに入りこむことによって、様々なイメージや出来事を心の中に入力し記憶し、心の奥にそれを蓄積していく。つまり物理的空間が先にあって、それから心の中にその世界が形成される。

しかし今日はちがう。寅さんの世界は心の中にすでにできていた。そのすでに存在した心の中の世界に、物理的に入りこんだといった感じである。今回は、心が先にあり、実際の空間はあとになった。常識とは逆の体験をしたことになる。心の中に入りこむといった体験である。このようなことによって寅さんに関する理解が格段にすすんだ。これは、何とも不思議なフィールドワークである。

寅さん記念館をでて、江戸川の土手にのぼってみる。この川のほとりでも数々の出会いと別れがあった。とおくに「矢切の渡し」が見える。すこし肌寒くなってきた。そろそろ日が暮れようとしている。



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