発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:心象法

NHK DVD BOOK『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』をうまくつかって想像・記憶・想起の練習をすれば英会話が自然に理解できます。

学習の効果をあげるためにつぎの手順でDVDを利用します。

 1. 目を閉じて音声だけを聞きながら映像を想像する
 2-1. テキスト(字幕)をオフにして視聴する
 2-2. テキスト(字幕)をオンにして確認する
 3. 目を閉じて音声だけを聞いて、映像を想起しながら英会話を理解する


1. 目を閉じて音声だけを聞きながら映像を想像する
  • 目を閉じて、DVDの音声のみを聞き、どのようなシーン(動画)がながれているか、自由に想像してみます(注1)。
  • まずは “Week 1” の4つエピソードについてトライしてみるとよいでしょう。


2-1. テキスト(字幕)をオフにして視聴する
  • テキスト(字幕)をオフの設定にします。
  • DVD を普通に視聴し、自分の意識のなかに映像と音声をしっかりインプットします。
  • 人物だけでなく、その周辺や背景もしっかり見ます。
  • 自分の想像と実際の映像との相似点・相異点を確認します。
  • 事前に想像の訓練をしておくと、通常よりも鮮明に映像を見ることができます。
  • 音声だけのときよりも、それに映像がくわわった場合の方が段違いによく理解できることがわかります。
  • DVD をただ漠然と視聴する場合よりもはるかによくインプットができ印象にのこります。


2-2. テキスト(字幕)をオンにして確認する
  • 今度は、テキスト(字幕)をオンの設定にします。
  • DVD を視聴し、映像(イメージ)と音声とともに英会話をテキスト(文字)で確認します。
  • テキスト(字幕)をしっかり見るとともに、周辺視野をつかって背景や風景もしっかり見ます。
  • それぞれのテキストを映像のなかにうめこむようにして、それぞれのフレーズをそれぞれのシーンにむすびつけて記憶します(図1&2)。
  • 映像(イメージ)をフレーズを記憶するためのベースとしてつかいます。
  • 単語や文法など不確かなところがあったら BOOK(書籍)で確認します。

IMG_2671
図1 イメージのなかにテキストがうめこまれている
(英文もイメージの一部としてとらえる)

150719 画面と言語
図2 映像(イメージ)とテキスト(フレーズ)をしっかりむすびつけて記憶する


3. 目を閉じて音声だけを聞いて、映像を想起しながら英会話を理解する
  • ふたたび目を閉じて、DVD の音声のみを聞き、映像を想起しながら英会話を理解します。
  • それぞれのシーンと英会話がほとんどすべて理解できるとおもいます。
  • 不確かなところがもしあったら、DVD あるいは BOOK(書籍)をもう一度みて確認します。


上記の過程には、想像と記憶と想起の訓練がふくまれます(注2)。英会話の音声はただ音としてとらえるのではなく、イメージ(心象)を基盤にしてそれに言語をむすびつけて記憶するのがポイントです。そうすれば、その場面のイメージをおもいだすことにより、英会話のフレーズも自然にうかびあがってくるようになります。



▼ 注1
「おとなの基礎英語」をテレビ放送ですでに見たことがある人は、当時の記憶をおもいおこし、想像ではなく想起するようにします。

▼ 注2
人がおこなう情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)のなかで想像や記憶・想起はプロセシングにあたります。

▼ 引用文献
NHKテレビ DVD BOOK『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』2013年3月31日、主婦の友社
NHKテレビ DVD BOOK おとなの基礎英語 シンガポール 香港 タイ (NHKテレビDVD BOOK)

※ この DVD は、シンガポール・香港・タイ(バンコク)の観光ガイドにもなっています。主人公の美佳と一緒に旅をしている気分になって、たのしみながら英会話がおぼえられます。「おとなの」となっていますが、おとなだけでなく中高生でも十分たのしめます。そして将来余裕ができたらこれらの地域を実際に旅行してみるとよいでしょう。治安もよくコンパクトに見所がまとまっているシンガポールはとくにおすすめです。

▼ 関連記事
DVD をつかって英会話を理解する -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(1)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(2)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(3)-
イメージをつかってキーフレーズをおぼえ、言えるようにする -『おとなの基礎英語 シンガポール・香港・タイ』(4)-


海外旅行をたのしみながら英会話を習得する DVD『トラベラーズ イングリッシュ』のハワイ編です。ハワイのうつくしい風景に英会話のフレーズをむすびつけておぼえることができます。

英会話の訓練では、想像力をつかいイメージをおもいえがくととても効果があがります(注1)。そのためにDVDがつかえます。DVDをつかって想像力をつよめる訓練法としてはつぎのようなやり方があります。

 1.目をとじて音声だけをきき、画面の映像を想像する。
 2.DVDを視聴し、自分のイメージとDVDの映像との相似と相異をチェックする。
 3.画面の周囲やカメラの背後を想像する。


1.目をとじて音声だけをきき、画面の映像を想像する。
最初は、DVDの映像はうつしださずに音声だけをながします。

目をとじてDVDの音声に完全に集中し、ビジュアルなイメージをしっかりおもいうかべるようにします。

よけいな視覚を完全に遮断するためにアイマスク(注2)をつかうとよいです。また雑音を遮断するためにヘッドホン(あるいはイヤホン)をつかうとよいです。


2.DVDを視聴し、自分のイメージとDVDの映像との相似と相異をチェックする。
今度は、音声をきくとともにDVDの映像もみて、自分の想像と実際の映像との相似と相異をチェックします。周辺視野もつかって人物だけでなく背景もしっかりみるようにします。想像と実際とがちがっていて当然です。

この方法をつかうと普通にみるときよりも鮮明に映像をながめることができます。色彩がゆたかで生命力にあふれる世界がハワイにひろがっていることが感じられます。人や物も多く、膨大な情報が映像からよみとれることがわかります。

自分が想像したイメージが貧弱だったこともわかりますが、想像力を高める努力を徐々にしていけばよいでしょう。


3.画面の外側やカメラの背後を想像する。
つぎに、映像の外側やカメラの背後など撮影されていない部分を想像してみます。現地の実際の風景は立体空間として大きくひろがっているのですから、自由に想像をふくらませてみます。

今度は想像するのみで実際の映像でチェックすることはできません(注3)。


このようなことをすると映像と音声がむすびついてそれらが自然に記憶されます。常識的な視聴をただくりかえしているだけのときよりも効果があがります。こうした訓練のなかで英会話のフレーズも自然におぼえられます(注4)。



▼ DVD
『トラベラーズ イングリッシュ 1 ハワイ編』
トラベラーズ・イングリッシュ 1 ハワイ編 [ 英語で旅する TRAVELERS ENGLISH 1 Hawaii ] [DVD](エキスプレス)


▼ 注1
人がおこなう情報処理のプロセスのなかでイメージをおもいえがくことはプロセシングにあたります。


▼ 注2:おすすめアイマスク
Amazon:Dream Essentials 立体型アイマスク Sweet Dreams ブラック
※ とても売れているアイマスクです。わたしもいつもつかっています。旅行にももっていくとよいです。

▼ 注3
実際に現地に行ってみれば自分の想像が現実とどこまで一致するかをたしかめることができます。これは旅行法のおもしろい実践方法のひとつです。


▼ 注4
本ブログの以前の記事で、最初に DVD を視聴して、つぎに映像をみないで音声だけを聞いて映像をおもいだす訓練方法を紹介しました。これは想起訓練になります。今回の方法はそれとは順序が逆で、音声だけを先にきいてその後で DVD を視聴するやり方であり、これは想像力を高める訓練になります。時間に余裕があれば、想像力を高める訓練をまずしてから、そのあとで想起訓練をするとよいでしょう。想起訓練を先にしてしまうと想像力を高める訓練がしにくくなります。既存の映像が先にインプットされてしまうと想像力がおさえられてしまいますので。


▼ 関連記事
DVDをつかって、イメージとともに英語をおぼえる 〜 DVD『トラベラーズ・イングリッシュ 4 オーストラリア編』〜
英会話の学習から海外旅行体験へ 〜DVD『トラベラーズ・イングリッシュ3 -アメリカ西海岸編-』〜
ニュージーランドを記憶の場にする 〜 DVD『トラベラーズ イングリッシュ5 ニュージーランド南島編』〜
視聴覚体験とキーワードで情報の玉をつくる 〜 DVD『NHK 100語でスタート!英会話 〜アメリカ編』〜
旅行の場面をファイルにする 〜『NHK 100語でスタート!英会話』(オーストラリア編)〜
外国人に英語で日本を紹介する - 松本美江著『改訂版 英語で日本紹介ハンドブック』-


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体験(あるいは情報)のひとまとまりを玉(ボール)のようにイメージして、その要約や要点をツイート(アウトプット)すると情報処理がすすみます。

最近は、情報を投稿したり発信するための手軽な手段として Twitter(ツイッター)を利用している人も多いとおもいます。

Twitter(ツイッター)とは、ツイート(tweet)とよばれる140文字以内の短文を投稿できるウェブサイト上の情報サービスであり、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに本社をおく Twitter 社が運営しています。

人がおこなう情報処理の観点からこの Twitter をとらえなおすと、ツイートをするということは情報のアウトプットをするということです

わたしたちの心のなかには、見たり聞いたり味わったりすることによってさまざまな情報がたえずインプットされています。感覚器官を通してはいってきたこのような情報は体験の倉庫(記憶の倉庫)に一旦たくわえられます。そしてプロセシングをへて、ツイート(言語)がアウトプットされるわけです。

* 

このような過程において、おもいついたことをやみくもにツイートするのではなく、つぎのような「体験の玉」をイメージしてからツイートすると情報処理がすすみます。

見たり聞いたり味わったりした体験のひとまとまり(情報のひとまとまり)を圧縮してボールのように玉として瞬時にイメージします。体験や情報をどこかでうまく区切ってひとまとまり(ユニット)をつくりだします。ひとつの体験がひとつのイメージの玉となります。そしてその玉のイメージの要約や要点を言語にしてツイートするようにします。これは、手軽にできる<プロセシング→アウトプット>のやり方のひとつです(図1)。

150712 体験の玉をツイートする
 図1 見たり聞いたりしたことのひとまとまりを「体験の玉」
としてイメージし、その要約や要点をツイートする



それぞれのツイートは、体験あるいは情報のひとまとまりの見だしあるいはラベルとしても機能するようになります。つまり各ツイートをあとでみれば、それを書いたときにつくった体験の玉(イメージ)がおもいだせるのです。体験の玉(情報の玉)の構造は図2のようになります。

150712 体験の玉の構造
図2 ツイート後の体験の玉の構造

体験の玉は、情報の本体とツイートからなります。ツイートは玉の表面構造です。体験あるいは情報の本体は自分の記憶倉庫にイメージとして保存されています。ツイート(言語)は、体験あるいは情報のひとまとまりの見だしあるいはラベルであって、体験そのものあるいは情報の本体ではないことに注意してください。
 
このように、イメージをえがいてツイートをすることにより、ひとつの情報の玉が強固に確立し完成します。


このようなことをちょっと意識するだけでツイートを日々することが効果的な情報処理の訓練になります。このような訓練は現実をとらえる感覚を強化し、情報処理につかえる材料を記憶倉庫のなかににふやすことになります。



▼ 参考文献
栗田昌裕著『絶対忘れない!記憶力 超速アップ術』日本文芸社、2010年5月28日
絶対忘れない! 記憶力超速アップ術 (日文新書)

栗田昌裕著『心と体に効く驚異のイメージ訓練法 — 体力・活力・気力・記憶力が一気に全開! 』廣済堂出版、1993年8月1日
心と体に効く驚異のイメージ訓練法―体力・活力・気力・記憶力が一気に全開! (広済堂ブックス)

▼ 関連記事
ラベル法をつかってファイルをつくる
ラベル法により心の中を整理する


現場でえられた多種多様なデータを整理し文章化していくときに役立つ「KJ法」は、その過程で図解をつくるところに大きな特色があります。このことから、情報処理の第2場面のプロセシングではイメージをえがくことが重要であることがわかります。

KJ法では、情報収集のためにフィールドワーク(現地調査)をまずおこないます。現場にはいって周囲を観察したり、現地の人々から取材をしたりします。このような見たり聞いたりすることは人がおこなう情報処理の観点からはインプットに相当します。

そしてあつまったデータを図解にまとめていきます。図解とは空間的に物事をあらわすものであり、この過程はプロセシングに相当します。

この図解とは一種のイメージであり、図解をつかってデータを整理するということは、イメージをつかって情報を処理するということです。

したがって、たとえ図解をつくらなかったとしても、イメージをえがいてプロセシングをすすめればよいのです。イメージをえがくことはプロセシングの基本です。

文章を書くときには、図解やスケッチなどを実際にはえがかなくても心のなかにイメージをおもいうかべて、それを言語に変換していく作業をおこなうことになります。口頭発表をするときにも同様なことがいえます。

このように情報処理の第2場面のプロセシングではイメージをえがくことが基本であり、よくできたイメージがえがけると第3場面のアウトプットもスムーズにすすみます。 



▼ 参考文献
川喜田二郎著『発想法』(中公新書)1967年
発想法 創造性開発のために (中公新書) 

川喜田二郎著『続・発想法』(中公新書)1970年
続・発想法 KJ法の展開と応用 (中公新書) 

川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』中央公論新社、1986年
KJ法―渾沌をして語らしめる 


フィールドワーク(現地調査)でえられた多種多量なデータを整理し文章化していく方法として「KJ法」(注)とよばれる方法があります。

今回は、このKJ法のなかのひとつのステップである「グループ編成」に注目し、情報処理の原則をそこからよみとってみたいとおもいます。

KJ法の「グループ編成」はつぎの3つの場面からなります。ここでいうラベルとはデータをラベルに記入したもののことです。

1.ラベル拡げ
2.ラベル集め
3.表札づくり


「ラベル拡げ」とは、データを目の前にすべてひろげて全体をよく見ることです。「ラベル集め」とは似ているデータをあつめてセットにすることです。「表札づくり」とはセットになったデータを要約して単文として書きだすことです。


一方、いわゆる情報処理はつぎの3場面からなりたっています(注2)。

1.インプット
2.プロセシング
3.アウトプット


以上から、「グループ編成」の3場面と情報処理の3場面とは対応させて理解することができます。

1.ラベル拡げ:インプット
2.ラベル集め:プロセシング
3.表札づくり:アウトプット


「ラベル拡げ」では、課題をめぐる状況を大観し、すべてのデータをかたよりなく全体的にまるごとインプットするようにします。

「ラベル集め」では、データを空間的に並列させて、類似性に着目しながらデータを空間的にうごかしていきます。つまり並列処理をするということです。並列とはいいかえると直列ではないということであり、データを、時系列あるいは前後関係では処理しないとうことです。そのためには空間をつかうことが必要になります。

「表札づくり」では、あつまったデータのセットを単文に要約して書きだします。つまりデータを統合します。ここではじめて本格的に言語がつかわれます。「ラベル集め」ではデータを並列させましたが、ここでは一転してデータを直列的に処理します。そもそも言語は、前から後ろにながれていく直列的なもの(時間的なもの)であり、言語は情報を統合する道具として有用です。空間ではなく言語をつかい、情報を順番に処理していきます。


以上から情報処理の場面ごとの原則としてつぎがうかびあがってきます。

第1場面:大観
第2場面:並列
第3場面:統合


モデル(模式図)であらわすとつぎのようになります。

150630 原則
図 情報処理の3原則 


第1場面では特定の物事にとらわれることなく、すべてを全体的にまるごととらえ受けいれます。第2場面では空間をつかいます。第3場面では言語あるいは時間をつかいます。

このように3つの原則を意識して、またつかいわけることによって情報処理あるいは仕事がスムーズにすすむとおもいます。



▼ 注1
川喜田二郎著『発想法』(中公新書)1967年
川喜田二郎著『続・発想法』(中公新書)1970年
川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』中央公論新社、1986年

▼ 注2
見ることはインプット、書くことはアウトプットにあたります。本ブログでは、人がおこなう(人が主体になった)情報処理をとりあつかっています。

▼ 追記1
今回は、KJ法について説明するのが目的ではなく、情報処理の原則をあきらかにするのが目的であり、KJ法の「グループ編成」をサンプルとしてつかって情報処理について考察してみました。

▼ 追記2
第3場面でも全体がみえてきますがそれは第1場面とはことなり、正確にいうと第3場面では本質がみえてきます。この場面になると仮説やモデルなどが表現されるようになります。第1場面と第3場面のちがいに気がつくことも重要です。

▼ 追記3
なれてくると、インプット・プロセシング・アウトプットといった物理的なことよりも基本原則を意識することの方が重要になってきます。

金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(注)は、地震がおこるメカニズムとそのとらえかたについてわかりやすく解説しています。地震は、断層面がずれうごくことによりおこるのであり、地震を面的にとらえることにより被災地の空間的なひろがりも理解できるようになります。

地震は、地下の割れ目がずれ動き、食い違いを起こす現象です。割れ目といっても線ではなく、広がりをもった「面」で、断層とよばれます。

IMG_2067
断層の概念図(注)

断層の種類などこまかいことは別にして、上図をみれれば ずれうごくのは面であることがわかります。地震の報道をみていると震源についての発表がすぐにありますが、それにくわえて、断層面あるいは震源域に注目することが重要です。

震源とは、断層のずれうごきがはじまった最初の地点であり、そこから揺れがはじまったということです。実際の揺れは断層面を中心にして広域的におこるのですから、地震は、震源よりもむしろ震源域として面的にとらえた方が理解がすすみます

2015年4月におこったネパール大地震では、震源からとおい首都・カトマンドゥであれだけ大きな被害がどうしてでたのかという疑問をもつ人が多いですが、実際にずれた断層面は首都の地下にまでひろがっていたのです。このことがイメージできないと、震源地(断層のずれがはじまった地点)では大きな災害になり、そこからはなれるほど災害は小さくなるはずだという誤解が生じてしまいます。

このように震源(点)だけに注目していると被災地の全体状況はわかりません。被災地の救援活動や被災地でボランティア活動をする場合には、このような地震のメカニズムがイメージできているとよいです。

また日本列島の周辺や地下では、断層がずれうごきそうな面がいたるところに存在しています。このような面が立体的・構造的にひろがっているというイメージができれば、大地震はどこでもおこりうることがよくわかります。点から面へ、さらに立体へとイメージをふくらませてみるとよいです。



▼ 注:引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書) 


▼ 追記「マグニチュードと震度はちがう」
よく混同されるのにマグニチュードと震度があります。

マグニチュードは地震の大きさそのものをあらわすのに対し、震度は各地点での揺れの強さをあらわします。したがって1回の地震においてマグニチュードは1つの値にきまりますが、震度は地域によってさまざまであるわけです。巨大地震であっても震源域からはなれれば震度は小さくなります。被災地の被災の程度を理解するためには震度に注目しなければなりません。

なお現在のマグニチュードは、地震波のエネルギーを計算し、それをもとにした「モーメントマグニチュード」がつかわれているそうです。「モーメントマグニチュード」は「エネルギーマグニチュード」とよぶべきであると金森博雄さんはのべています。


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国立新美術館


東京・六本木の国立新美術館で開催されている「マグリット展」をみました(会期:2015年6月29日まで、注1)。常識の枠組みをとりはらった異空間を堪能できました。

ルネ=マグリット(1898−1967)はベルギーの国民的画家であり、20世紀美術を代表する芸術家です。今回は、ベルギー王立美術館、マグリット財団の全面的な協力をえて、世界10か国以上から代表作約130点があつまりました。

マグリットはつぎのようにかたっています(注2)。

シュルレアリストであるとは、
「見たもの」を頭から消し去り、
「まだ見ぬもの」を探し求めることだ。

会場には、つぎのような常識ではありえない世界がひろがっていました。

前面とはちがう世界が背後にのぞく。
表現が現実に連続する。
見えないものが見える。
人体の一部が別の物に変身する。
物の一部が人体に変化する。
世界が石化する。
ありえない尺度。
ありえない時間の一致。
ありえない空間(異次元空間)。
重力から解放される。
空間の一部が生物になる。

なかでも《光の帝国》は印象的でした。「夜と昼の和解と融合」がえがかれていました。

夜と昼という相矛盾するものが和解・融合し、同一のフィールドに実現するのかどうか、このような矛盾的自己同一は人類の永遠のテーマです。

たとえばつぎのような事柄についてです。

切実性と自発性
制約と自由
保全と開発
共存と競争
環境と主体
常識と独創
維持と進歩
保守と創造

空間や時間や重力といったわたしたちの思考や行動を制約する常識の枠をとびこえるマグリットの世界は、わたしたちの意識に強烈なインパクトをあたえ、わたしたちにつよい印象をのこします。

日常をはなれてこのような異空間を体験してみるのもたまにはいいのではないでしょか。



▼ 注1
京都市美術館に巡回します(2015年7月11日~10月12日)。

▼ 注2:参考文献
南雄介監修・著、福満葉子著『もっと知りたいマグリット 生涯と作品』東京美術、2015年3月20日
※ マグリットの入門書です。

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※ マグリットの生涯を作品とともに時系列でたどることができます。

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▼ 関連記事
フィールドワークで異空間を知る 〜川喜田二郎著『鳥葬の国』〜
絶景に接し、絶景を心のなかにとりこむ 〜 詩歩著『死ぬまでに行きたい!世界の絶景 日本編』〜
異空間旅行が人生を変える
地球の中から地球を見る - 国立科学博物館「シアター36○」-
絶景を旅して人生を変える 〜 小林克己著『10万円あれば行けちゃう! 世界の絶景100』〜
絶景を旅する 〜 H.I.S.著『世界の絶景さんぽ』〜
常識をはなれて異空間を体験する - 国立新美術館「マグリット展」-


東京都美術館
東京都美術館の企画棟(出典:Google Earth)

東京・上野の東京都美術館で「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」(注1)が開催されています。今回は、会場となっている東京都美術館の企画棟(建物)の階層構造をつかって世界史を概観してみたいとおもいます。


■ 企画棟(展覧会場)の階層構造をとらえる
今回の展覧会場には100個の作品モノ)が展示されていて、これらのモノのいくつかがあつまって1つの展示室をつくっていました。展示室はのべ8部屋ありました。

そしていくつかの展示室があつまって1つのフロアができていました。フロアは地下1階・地上1階・地上2階の3フロアとなっていました。

さらに、これらの3つのフロアがあつまって東京都美術館の企画棟(写真)が形成されていました。

展覧会場の東京都美術館の企画棟はこのような階層構造になっていました。


■ 展示内容を階層構造でとらえる
つぎに展示内容をみていきます。

展示室はつぎの8つの部屋から構成されていました。これらは世界史を8つの段階に区分したもので、歴史のなかのそれぞれの時代をあらわしていました。各展示室(部屋の空間)を意識することによりそれぞれの時代を体験できる仕組みになっていました。

第1展示室「創造の芽生え」
第2展示室「都市の誕生」
第3展示室「古代帝国の出現」
第4展示室「儀式と信仰」
第5展示室「広がる世界」
第6展示室「技術と芸術の革新」
第7展示室「大航海時代と新たな出会い」
第8展示室「工業化と大量生産が変えた世界」

つぎにフロアに注目してみると、第1〜3展示室は地下1階にありました。第4〜6展示室は地上1階、第7〜8展示室は地上2階にありました。

第1〜3展示室:地下1階
第4〜6展示室:地上1階
第7〜8展示室:地上2階

フロアの内容はそれぞれつぎのようにとらえられ、文明というより大きな概念が感じられました。フロアの空間を意識すると文明を体験できる仕組みです。

地下1階:文明のはじまり
地上1階:前近代文明
地上2階:もっと大きな文明の形成(グローバル化あるいは近代化)

そしてこれらのフロアがあつまって東京都美術館の企画棟(建物全体)が形成されており、この企画棟は、人類史の舞台あるいは空間であり、つまり地球に相当すると類比することができます。

企画棟:地球


■ 階層構造の類比をつかって理解をふかめる
階層構造とは、あるモノ(要素)が複数あつまってひとつのユニット(集合体)をつくり、そしてそれらのユニットが複数あつまって中ユニットをつくり、さらにそれらの中ユニットがあつまってもっと大きなユニットを形成していく構造のことです。

今回は、建物の階層構造と人類史の階層構造とを類比して理解をすすめてみました(図)。今回の展覧会は、階層構造の類比が特によくみとめられたすぐれた例でした。

150615 会場の階層構造と人類史の階層構造の類比

図 建物の階層構造との類比により世界史をとらえなおす。
 

階層構造に注目すると、個々のモノだけを見ていたときには見えなかったこと(時代とか文明といったこと)がつかみやすくなります。時代はモノを超え、文明は時代を超えていることもわかります。

具体的には、会場に行ったらモノに意識をくばるだけではなく、展示室に意識をくばり、フロアに意識をくばり、企画棟全体にも意識をくばることが大切です(注2)。

この方法は、言葉や理屈で対象をとらえる従来の学習法とはちがい、視覚的・空間的・体験的に物事を認知する方法です。記憶法としてもつかえます。


▼ 注1
東京都美術館「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」
特設サイト 
東京都美術館の会期は2015年6月28日まで。その後、九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)に巡回します。

▼ 注2
ここでいう意識をくばるとは、意識してその空間をよくみて感じることです。普通よりも時間をかけるということではありません。時間をかけるよりも視覚をつかうことです。こうすることにより比較的短時間で飛躍的に理解をふかめることができます。

▼ 関連記事
数字イメージにむすびつけて100のモノをおぼえる - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(1)-
作品の解説を音声できいて物語を想像する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(2)-
人類史を概観する - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(3)-
建物の階層構造との類比により世界史をとらえなおす - 大英博物館展 ─ 100のモノが語る世界の歴史(4)-
文明のはじまりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第1巻〉文明の誕生』/ 大英博物館展(5)-
前近代文明の発達をみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第2巻〉帝国の興亡』/ 大英博物館展(6)-
近代化への道のりをみる -『100のモノが語る世界の歴史〈第3巻〉近代への道』/ 大英博物館展(7)-
モノを通して世界史をとらえる - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(8)-
世界史を概観 → 特定の時期に注目 → 考察  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(9)-
文明と高等宗教について知る  - 大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史(10)-



先日わたしは、イメージをつかった記憶法を実践してみました。


キーとなるイメージを記憶しておくと、それをおもいうかべることにより関連情報を記憶の倉庫からひっぱりだすことができ、文章化などのアウトプットにつなげられます。これは自分の意識をつかった情報検索の方法のひとつです。

一方で近年は、グーグルに代表されるようにコンピューターやインターネットによる情報検索がさかんにおこなわれるようになりました。ここでおこなわれている検索方法はキーワード検索です。一般に検索といえば言葉による検索をさします。

キーワード検索によりイメージ(画像)を検索することはある程度可能になっていますが、しかしそれはイメージで検索しているわけではなく、あくまでもキーワードを入力した結果として画像がでてくるという仕組みです。イメージによる検索は技術的に非常にむずかしいということがわかります。

コンピューターにはできませんが、人間は、イメージによってさまざまな情報を想起する能力をもっています。イメージが鮮明におもいだせれば関連情報もおのずとうかびあがってきます。

まずイメージをおもいうかべ、そして関連情報を想起し、それらをアウトプット(文章化など)につなげていけばよいのです。人間がおこなう情報処理ではイメージをつかうことが重要なポイントになります。

アウトプットのときに言語的に記憶が不確かなものがあったらグーグルなどの検索システムをつかって確認すればよいです。言語であらわされた情報については検索が容易なので心配する必要はありません。


東京・上野の東京都美術館で開催されている展覧会「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」(注1)に関連して、NHKのウェブサイトで展示物の解説をきくことができます。これをきけば、世界の歴史についてさらに理解をふかめることができます。
これは、BBCと大英博物館展が2010年に共同制作したラジオ番組の日本語版で、過去に放送された番組をウェブサイトで公開したものです。
縄文土器からソーラーランプまで30のモノを選択し、それぞれの作品に10分間をかけてくわしく解説しています。人類の歴史をあらたな視点からとらえなおすことができるとおもいます。
 
展覧会をこれから見る人にとっては予習になりますし、すでにみた人にとっては復習になります。わたしはこの解説をきいてみて、もういちど本物をみにいきたくなりました。
ウェブサイトには各作品の写真とともに発掘場所や時代などの情報も掲載されていて、ひとつひとつの作品をとおして地理的あるいは時代的な背景を知ることができきます。音声をききながら、文明発達のさまざまな物語を想像することができ、イマジネーションの訓練にもなります。ひとつひとつの作品がわたしたちにどのようなメッセージをつたえようとしているのか、とても興味ぶかいです。


▼ 注1
東京都美術館「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」
特設サイト 
東京都美術館の会期は2015年6月28日まで。その後、九州国立博物館(2015年7月14日〜9月6日)、神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)に巡回します。

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東京国立博物館・表慶館

特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」が東京国立博物館で開催されています(会期:2015年5月17日まで、注1)。

今回は、第2展示室「釈迦の生涯」にあった「四相図」(しそうず)に注目してみます。物語と造形と場所とを簡潔にむすびつけた例として参考になります。

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「四相図」は、グプタ朝で花ひらいたサールナート派の作例だそうです。釈迦の生涯から代表的な4つの場面(① 誕生から出家、② 降魔成道、③ 初転法輪、④ 涅槃)をえらんで下から上にむけて配置されています(注2)。

① シッダールタ太子の誕生から出家までの場面である。向かって右にはマーヤー夫人がおり、右脇には生まれ出た子を受けるインドラ(帝釈天)があらわされる。その向かって左方には縦長の空間をつかって七歩を歩むシッダールタ太子が配される。左下には白馬カンタカにのって出家のために城を抜けだす様子がみられる。

② 降魔成道であり、釈迦の右脇に魔王マーラーが、マーラーの右脇と釈迦の左脇には、悟りをさまたげようと誘惑にやってきた魔王の娘3人がいる。

③ 初転法輪であり、椅子に腰かけて説法印をむすぶ姿がみられる。

④ 涅槃の場面であり、寝台上に横たわる釈迦が全体をしめくくっている。

このように釈迦の物語を造形にあらわしました。さらに興味ぶかいのは、4つの場面それぞれが特定の場所にむすびつけられていることです。つぎのようになっています。

① ルンビニー
② ボードガヤー
③ サールナート
④ クシナガラ

これらは四大聖地として原始仏典にも説かれ、その巡礼が推奨されています。

物語の場面をイメージ化して場所にむすびつけることにより、4つの聖地を地図上で確認すれば釈迦の生涯を一望できることになります。時系列の物語をイメージでとらえ、さらに場所でとらえることができるのです。時間的な流れを視覚的空間的にとらえなおすことができるというわけです。

150519 四大聖地
四大聖地の位置(Google マップ)


地図上(地球上)の特定の場所に特定の情報をむすびつけて記憶したり処理する方法はプロセシングの方法としてとくに有用です。旅行法としても活用できます。仏教の聖地をめぐる旅もこのようなことを意識しながらおこなうとより充実したものになるとおもいます。



▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

▼ 注2
東京国立博物館・日本経済新聞社・BSジャパン編集『特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流』2015年3月17日、日本経済新聞社発行
(展示会場は撮影禁止のため図録の写真を撮った。) 

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情報処理の3場面「大観→並列→統合」を実践する - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(5) - 
1枚のイメージで物語をあらわす - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(6)「ムーガパッカ本生」-
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時間と空間を往復する - 物語から場所へ、場所から物語へ -

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特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」が東京国立博物館で開催されています(会期:2015年5月17日まで、注1)。

今回は、第1展示室「仏像誕生以前」にある「ムーガパッカ本生」(シュンガ朝、紀元前2世紀頃)に注目してみます。ひとつのイメージで物語を一望する例として参考になります。

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これは、インド、マディア・プラデーシュ州、サトナ、バールフットで発見されました。展示会場は撮影禁止なので図録(注2)の写真をとって説明します。数字でしめしたように6つの部分にわかれていて、それぞれがつぎのことをあらわしています。

①  生まれたばかりのうごかない王子をだく父王
② 森に王子をすてにいくための馬車
③ 王子の墓穴をほる召使い
④ はじめて進退をうごかした王子
⑤ 森のなかで出家した王子
⑥ 王子の教えをきく父王と王族

釈迦前世の物語を1枚のイメージにあらわしたものであり、本来は同時には見えない場面を同時にみることができます。物語の全体を一望でき、全体像がわかります。

これを言語であらわすとつぎのようになります(注2)。

おさないテーミヤ王子(釈迦の前世)は、前世も国王でしたが、死後は、ながく地獄でくるしみました。そのため、また同じ人生をおくらないように今度は出家しようと不自由な身体をよそおいます。16歳になっても身体はうごかず父王は召使いに墓穴をほらせ、王子を森にすてました。そこで王子ははじめておきあがり出家したといいます。

物語の内容そのものは後世の人がつくったものでしょうし、今は問題にはしません。それよりも物語をイメージにすることが情報処理をすすめるために有効であることを強調したいとおもいます。

物語は時系列的な流れですから言語をつかった方が細部まで表現しやすいかもしれませんが、このように1枚のイメージとして空間的にあらわすこともできます。空間をつかうことによって視覚的に全体を瞬時にとらえることが可能になります。イメージと言語とは時と場合によってつかいわけ、またくみあわせて使用するとよいでしょう。

たとえば、ことなる時代のことなる条件下での出来事を地図上にすべてプロットするとすべての情報を瞬時に一望することができるようになります。地図の便利さはここにあります。情報を並列させて並列的に処理することができるようになるのです。地図をつかった情報処理システムとして Googleマップ や Google Earth をつかいこなすヒントもここにあります。

このようにプロセシングのポイントは空間をうまくつかうところにあります。「ムーガパッカ本生」は記憶法やイメージ訓練(心象法)を実践するうえでも参考になります。



▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

▼ 注2
東京国立博物館・日本経済新聞社・BSジャパン編集『特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流』2015年3月17日、日本経済新聞社発行

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『目でみる単位の図鑑』は、イメージをつかって単位について理解することができる図鑑です。子供むけの本ですが大人が見てもたのしめます。イメージをつかうことは情報処理の基本です。

つぎの単位について説明しています。

長さの単位
 m(メートル)
 yd(ヤード)
 nm(ノーティカルマイル:海里)
 ly(ライトレイヤー:光年)
 間(けん)と尺(しゃく)

広さの単位
 ㎡(平方メートル)
 ac(エーカー)
 坪(つぼ)

体積の単位
 ㎥(立方メートル)
 CC(シーシー)
 L(リットル)
 gal(ガロン)
 bbl(バレル)
 石(こく)

重さの単位
 kg(キログラム)
 t(トン)
 lb(ポンド)
 匁(もんめ)

時間の単位
 S(セカンド)

速度の単位
 kt(ノット)
 M(マッハ)

明るさの単位
 cd(カンデラ)
 lx(ルクス)

電気の単位
 A(アンペア)
 V(ボルト)
 W(ワット)

仕事量の単位
 PS(ピーエス:馬力)

力の単位
 N(ニュートン)

エネルギーの単位
 J(ジュール)

圧力の単位
 Pa(パスカル)

地震の大きさの単位
 M(マグニチュード)

音の単位
 dB(デシベル)

振動数・周波数の単位
 Hz(ヘルツ)

温度の単位
 ℃(セ氏温度)
 K(ケルビン)

物質量の単位
 mol(モル)

放射能の単位
 Bq(ベクレル)

文字の大きさの単位
 pt(ポイント)

画像解像度の単位
 dpi(ディーピーアイ)

情報量の単位
 B(バイト)

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たとえば Bq(ベクレル)とは放射能をしめす単位であり、放射性物質から放射線が1秒間に何回でるかをあらわします。放射能とは、放射線をだす能力があることをいいます。1Bq では、1秒間に1つの原子核がこわれて放射線を1回だします。Bq(ベクレル)とは、1896年にウランの放射線を発見したアンリ=ベクレルの名前にちなんで採用されました。

また、人体がうけた放射線の量をあらわす単位が Sv(シーベルト)です。Bq は放射能の強さをあらわす単位であり、放射線の量をあらわすものではありません。放射線は種類によって、性質や物をとおりぬける力がちがいます。そのため Bq がおなじでも人体への影響は種類ごとにことなります。そこで Sv がつくられました。

健康診断でうけるレントゲン撮影(X線)では1回あたり約 0.06 mSv です。宇宙や地面・食べ物などから1年あたり世界平均で約 2.4 mSv の放射線をわたしたちはあびています。原子力発電所などではたらく人に対する限度(年間)は 50 mSV です。


単位は、数字や理屈でかんがえているよりもイメージでとらえた方がはるかにわかりやすく、その方が短時間で理解できることにもなります。情報をイメージ化すると情報処理が促進します。また物事の比較をするためには単位について理解し単位をきめなければなりません。そしてイメージと数値とをむすびつけることにより比較が容易になり、その分野に関する理解がすすみます。


▼ 引用文献
丸山一彦監修『目でみる単位の図鑑』東京書籍、2014年8月8日
目でみる単位の図鑑

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東京国立博物館の特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」(会期:2015年5月17日まで、注1)は仏教史を俯瞰できるまたとない機会でした。

わたしは会場の展示を見たあと、地図そして年表をみて理解をふかめました。ここには理解をふかめる3つの場面がありました。

展示 → 地図 → 年表

第1の場面では、各作品(展示物)をよく見るとともに、展示室(展示空間)全体にも意識をはらい大局をとらえるようにしました。これは展示を大観したといってもよいです。

インド仏教美術をみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(1) - >>
展示室に意識をくばって仏教史の大きな流れをつかむ - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(2) - >>


第2の場面では、南アジアの地図をつかって出土地や遺跡の空間分布をとらえました。地図がおもしろいのは、歴史的段階や時間軸にはかかわりなく、情報を一望して並列的にとらえられるところにあります。

各作品が出土した場所を地図でみる - 東京国立博物館・特別展「インドの仏」(3) - >>


そして第3の場面では、年表をつかって情報を歴史的な一本の流れのなかでとらえました。時間軸をつかうと情報を一本に統合することができます。物語とはこうしてあらわれてくるのだとおもいます。


つまり、第1場面では展示を大観し、第2場面では情報を並列的にとらえ、第3場面では情報を統合したというわけです。

大観 → 並列 → 統合

こららの3場面は、人がおこなう情報処理のひとつのモデルとしてつかえます。つまり、「大観→並列→統合」は「インプット→プロセシング→アウトプット」にそれぞれ対応させることができます。

インプット→プロセシング→アウトプット

インプットでは周囲を大観し、要素だけにこだわるのではなくその空間全体をまるごとインプットするようにします。プロセシングでは情報を並列的に処理します。アウトプットでは情報を統合してメッセージを相手につたえるようにします。

理解をふかめるということは現代の情報化の観点からみると、このような情報処理をすることであるととらえなおすことができるでしょう。
 

▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

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時間と空間を往復する - 物語から場所へ、場所から物語へ -

世界遺産で仏教伝来の足跡をたどる -『世界遺産で見る仏教入門』-
ブッダの生涯と時代的背景を理解する - 中村元著『ブッダ入門』-
都市国家の時代の末期を検証する - 中村元著『古代インド』-
伝記と歴史書をあわせて読む - 釈迦の生涯と生きた時代 -


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東京国立博物館・表慶館の入り口

東京国立博物館・表慶館で開催されている特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」(会期:2015年5月17日まで、注1)は仏教史を俯瞰できるまたとない機会になっています。

会場のショップで売っていた特別展のカタログ(図録、注2)を見たところ190〜191ページにはインド地域の歴史をしめす年表がでていました(図1、2)。これが役立ちます。わたしは各作品(展示物)が制作された年代を年表上でたしかめてみました。年代は以下のとおりです。

1 仏像誕生以前
シュンガ朝:紀元前2世紀頃

2 釈迦の生涯
クシャーン朝:2世紀頃
グプタ朝:5世紀頃
パーラ朝:10世紀頃

3 仏の姿
クシャーン朝:1世紀頃
クシャーン朝:2世紀頃
グプタ朝:5世紀頃
パーラ朝:8〜9世紀頃
パーラ朝:9〜10世紀頃
チョーラ朝:12〜13世紀頃

4 さまざまな菩薩と神
クシャーン朝:1〜2世紀頃
クシャーン朝:2世紀頃
パーラ朝:8〜9世紀頃
パーラ朝:10世紀頃

5 ストゥーパと仏
パーラ朝:8世紀頃
チョーラ朝:10世紀頃
パーラ朝:10世紀頃
パーラ朝:11世紀頃
パーラ朝:12世紀頃

6 密教の世界
パーラ朝:9世紀頃
パーラ朝:9〜10世紀頃
パーラ朝:10世紀頃
パーラ朝:11世紀頃
パーラ朝:10〜11世紀頃
パーラ朝:11〜12世紀頃

7 経典の世界
パーラ朝:11世紀頃
14世紀頃

附編 仏教信仰の広がり
16〜17世紀頃
17世紀頃
18世紀頃 
18〜19世紀頃
19世紀頃

今回でてきた王朝を年表上でたしかめ赤枠でかこみました(図1、2)。

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図1 インド地域の歴史年表(その1)
(今回みられた王朝を赤枠でかこった)

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図2 インド地域の歴史年表(その2)
(今回みられた王朝を赤枠でかこった)

上記の王朝とともにつぎの事柄にも注目するとよいでしょう(年表上で青色下線をひいたところ)。

前600頃 十六大国の並立
前5世紀頃 釈迦(ブッダ、仏陀)
前3世紀頃 アショーカ王碑文(マウリア朝)
1〜5世紀 ガンダーラ美術が栄える
630〜644 玄奘のインド旅行

文字でおっていても年代はよくわかりませんが、上図のような年表を主催者がつくっておいてくれたので歴史的な流れがよく理解できました。


そもそも釈迦が活動した時代の南アジア地域は「十六大国時代」という群雄割拠の時代でした。そしてそのご紀元前4世紀末に、インド初の統一王朝である「マウリア朝」がおこりました。

ここでの注目点は、「十六大国時代」とは古代の都市国家の時代(段階)であり、その後のマウリア朝はより大規模な領土国家(帝国)であったということです。

十六大国の時代:都市国家の段階
マウリア朝:領土国家(帝国)

都市国家は、それぞれが小規模なうちはよかったのですが、それぞれの都市国家がしだいに勢力を拡大してくると摩擦や対立がおこり、たがいにあらそうようになります。そしてその後、より強力な都市国家が勝って生きのこり、それがより広範囲の地域を支配するようになり領土国家(帝国)になっていきました。

したがって釈迦が活動した時代とは、いくつもの都市国家が崩壊して領土国家が生じてくる時代であったのであり、都市国家の時代から領土国家の時代へと転換する過渡期であったのです。

つまり、この時代は戦争がはじまった時代であったということができるでしょう。だからこそ救済を必要とする人々があらわれたのではないでしょうか。

そしてさらに、領土国家(帝国)は領土をめぐる戦争をくりかえしていくことになります。戦争の規模が大きくなるにしたがって救済を必要とする人々の数も増えたことでしょう。それにこたえるかたちで仏教の様式も変化し、より多くの人々を救済するようになります。このような過程で仏像そして大乗仏教が発達したと想像することができます。

今回の特別展と関連資料からはこのような仮説がたてられるのではないでしょうか。このような歴史は作品(展示物)そのもに記入されているわけではないので、それらの背景を想像するしかありません。それぞれの時代がそれぞれの作品を生みだし、それぞれの作品はそれぞれの時代を反映しているはずです。したがって背景として時代はあらわれるのであり、それらを想像するところに歴史のおもしろさがあるのだとおもいます。

東京国立博物館の特別展は今回も充実した内容でとてもたのしめました。


▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

▼ 注2
東京国立博物館・日本経済新聞社・BSジャパン編集『特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流』2015年3月17日、日本経済新聞社発行

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東京国立博物館・表慶館で開催されている特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」(会期:2015年5月17日まで、注1)は仏教史を俯瞰できるまたとない機会になっていますが、一方で、南アジアの仏教遺跡の分布を地図上でくわしく見ることもできます

会場のショップで売っていた特別展のカタログ(図録、注2)の164〜166ページには南アジア地域の地図がでていました(図1〜3)。これが役立ちます。わたしは各作品(展示物)が出土した場所を地図上でたしかめてみました。出土地は以下のとおりです。 

1 仏像誕生以前
インド、バールフット

2 釈迦の生涯
パキスタン、マルダーン
パキスタン、ユスフザイ
パキスタン、ロリアン・タンガイ
インド、ナーランダー
インド、ビハール州
インド、クルキハール
インド、サールナート

3 仏の姿
アフガニスタン、カーブル周辺
パキスタン、ロリアン・タンガイ
パキスタン、タキシラ&チルトープ
インド、アヒチャトラー
インド、サールナート
インド、ナーランダー
インド、ビラト
インド、ナーガパッティナム
バングラデシュ、ジェワーリ

4 さまざまな菩薩と神
パキスタン、ロリアン・タンガイ
パキスタン、ジャマール・ガリ
パキスタン、ユスフザイ
パキスタン、ペシャーワル周辺
インド、ボードガヤー
バングラデシュ、ラージシャーヒー&パハールプル
イン、ナーランダー
イン、マトゥラー

5 ストゥーパと仏
インド、チェンナイ
バングラデシュ、アシュラフプール
インド・ビハール州、ボードガヤー

6 密教の世界
インド、ボードガヤー
インド、ビハール州
インド、クルキハール
バングラデシュ、ラージシャーヒー&チョウラパーラ
インド、北ベンガル

7 経典の世界
東インド

附編 仏教信仰の広がり
ミャンマー、ヤンゴン
ミャンマー、プローム
ミャンマー、アラカン
ミャンマー、バガン


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図1 南アジア地域の地図(出土地に赤色下線をひいた)


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図2 図1のガンダーラ周辺地域の拡大図(出土地に赤色下線をひいた)


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図3 図1の東ガンジス地域の拡大図(出土地に赤色下線をひいた)


これらの場所とともに、仏教の四大聖地、ルンビニー(釈迦誕生の地)、ボードガヤー(成道の地)、サールナート(初転法輪の地)、クシナガラ(涅槃の地)もおさえておくとよいでしょう。

これらの地図上で出土地の分布をみると、ガンジス川流域の東ガンジス地域インダス川上流域のガンダーラ地域(図1・2で赤枠でかこまれた2ヵ所)に出土地(遺跡)が集中していることがわかります。そしてガンダーラ地域が仏像の形成に非常に大きな役割をはたしたこともわかってきます。

地図上で場所を確認することは最初は時間がかかりますが、地名と位置を一旦おぼえてしまえばあとはらくです。地図がおもしろいのは、各作品の位置をひとつひとつおさえながらも、地図全体ではすべての情報が一望できるわけで、仏教史の歴史的段階には関係なく空間的・並列的に情報がとらえられるところにあります。

こうして南アジア地域に意識をくばるようにすると、南アジアの空間が自分の意識のなかにすっぽりと入りはじめて一気に世界がひろがる感じがします。たとえばこのあたりを旅行をしようとおもったときも旅行計画がたてやすくなります(注3)。わたしはこれまでにルンビニーとサールナートに行きましたのでそのほかにも行ってみようとおもっています。


▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

▼ 注2
東京国立博物館・日本経済新聞社・BSジャパン編集『特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流』2015年3月17日、日本経済新聞社発行

▼ 注3
上記の地域をはじめて旅行する場合はルンビニーをおすすめします。他の場所がインド領などに属しているのに対して、ルンビニーはネパール領に属し、治安も比較的よく、一大観光地になっていてよいホテルもあり滞在しやすいです。

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時間と空間を往復する - 物語から場所へ、場所から物語へ -

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150324s
アンハングエラ(翼竜目アンハングエラ科)
水面すれすれに飛んで魚をとって食べていたらしい(注1)

東京・上野の国立科学博物館の特別展「大アマゾン展」では、第1室で、アマゾンで産出した化石を紹介しながらアマゾン形成の自然史(進化)について展示していました。要約するとつぎのとおりです。

■ 約1億数千万年前(白亜紀初期)
ゴンドワナ大陸とよばれる巨大な大陸が分裂をはじめ、太平洋がひらきはじめた。

■ 約1億年前までに
南米大陸とアフリカ大陸が分離した。

■ 6500万年前〜3500万年前(新生代の始めの暁新世〜始新世)
アマゾンは温暖期であった。多様な生物相からなる熱帯雨林が存在したらしい。

■ 約3000万年前
地球規模の寒冷化がおこり、多くの生物が絶滅したらしい。

■ 約2000万年前までに
ナスカプレートの沈み込みが活発化してアンデス山脈が隆起し、アマゾン西部に湿地や湖があらわれた。

■ 約1000万年前
現在のアマゾン川に相当する東向きの流れが確立、現在いきている多くの生物の系統があらわれた。

■ おそくとも300万年前までに
パナマ陸橋の隆起により、北米大陸と南米大陸がつながった。両大陸のあいだで動物が移動した。さまざまな系統の絶滅もひきおこしたらしい。

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サンタナ層の魚類化石(注3)


会場では、アマゾン南東部のアラリペ高原に見られるアラリペ層群(約1億1千万年前、白亜紀中頃)からえられた化石群を展示していました。アラリベ層群は、大西洋がひらいたときにはじめて侵入してきた海の海際でたまった地層群です。そのなかにある、淡水の湖でたまったクラト層と、その後ラグーン(潟湖)でたまった上位のサンタナ層には化石がふくまれ、「化石鉱脈」として世界的に有名です。


今回の特別展の主題ではありませんでしたが、このような自然史の探究は歴史的・時間的に自然をとらえるということです。自然史は、直接は見ることができないので想像しなければならず、現在の自然を空間的構造的に見ることよりは一歩ふみこんだ認識になるかもしれません。
 
空間的に現在みられる多様性がどのような歴史で生みだされたのかを知ることは、未来を予想するためにも大切なことです。
 
空間的構造的に対象を見たら、つぎには歴史的時間的にもとらえなおしてみるとおもしろいとおもいます。


▼ 注1
アンハングエラは翼竜である。翼竜は、中生代に生息した空を飛ぶ爬虫類であり、サンタナ層はとくに大型の多様な種類をたくさん産出することで知られている。見た目には恐竜とはずいぶんちがうが、系統的にはかなり近縁の仲間である。

▼ 注2
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼ 注3
南米の中生代魚類を代表する多様な化石。主な種類は、硬骨魚類のうち原始的な全骨類と、進化した真骨類のなかでは原始的な仲間、およびシーラカンス類からなっている。海生動物が見つからないことから、生息環境は淡水〜汽水環境で、地中海の前身であるテチス海の西端と浅い海で時々つながっていたとかんがえられている。

▼ 参考文献
『大アマゾン展』(公式ガイドブック)、発行:TBSテレビ、2015年3月13日

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東京都美術館

東京・上野の東京都美術館で開催されている特別展「新印象派 光と色のドラマ」を見ました(会期:2015年3月29日まで、注1)。20世紀へつながる絵画の革新をおしすすめた「新印象派」の誕生からの約20年間のながれを時間軸にそって紹介していました。

「新印象派」は「点描技法」という技法をつかって絵をえがきました。特別展図録のなかでつぎのように説明しています。

スーラは、パレット上で絵具を混ぜずに、画面に純色の小さな筆触を並べ、鑑賞者の網膜上で色彩が混ざるように制作を行った。(図録41ページ)

つまり「新印象派」の画家たちは、絵の具を画家が直接まぜて色をつくりだすのではなく、絵の具そのままの色を小さな点としてカンバスにひたすらおいていき、絵を見る人(鑑賞者)の視覚のなかで色がまざるようにしました(注2)。

目に見えた世界をカンバス上にそのまま再現したのではないため点描画はそれ自体では完成しておらず、展覧会場で鑑賞者が見たときに生じるイメージとして、鑑賞者の意識のなかで絵が完成することになるともいえます。おもしろいです。

情報処理の観点からこのことを整理すると、まず、鑑賞者が点描画に目をむけると絵に反射した光が目のなかに入ってきます。これはインプットです。そして目の中の網膜から脳へと情報が伝達され処理されて鑑賞者の内部でイメージが生じます。これはプロセシングです(図1)。プロセシングにより色は点ではなくなりイメージとして融合されます。絵のイメージはあくまでもわたしたち鑑賞者の内面に生じていることに注目してください。

150320 新印象派
図1 色の点々がまざってあらたな色彩が生じる

展覧会場にいけばこのようなことを実体験することができます。絵にちかづいて見ると点描であることがわかり、絵からはなれてみると色がまざって風景画なり人物画として鑑賞できます(注3)。遠近によって見え方はまるでちがいます。今回の特別展は、視覚あるいは眼力に関するみずからの情報処理の様子を実験できる絶好の機会でした

このように絵は、ちかくで見ているだけだと意味がありませんので、ある程度はなれてじっくり味わうのがよいでしょう。そのためにはなるべくならすいている午前中のはやい時間に会場に行ったほうがよいとおもいます。


▼ 注1
東京都美術館・特別展「新印象派 光と色のドラマ」

▼ 注2
下記サイトでは、茂木健一郎さんらが視覚と脳の仕組みから点描技法に関してわかりやすく解説しています。

▼ 注3
会場には、色のブロックでつくった絵が展示されていました(これのみ撮影可でした)。ちかくで見ると色の点の集合であることがわかります(図2)。はなれて見ると色がまざって絵として認識できます(図3)。

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図2

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図3


▼ 参考文献
 


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ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)組曲《展覧会の絵》をききました(アレクサンドル=ラザレフ指揮、日本フィハーモニー交響楽団、杉並公会堂、2015年3月15日)。

ロシアの作曲家・ムソルグスキーは、友人・ハルトマンの遺作絵画展でみた10枚の絵の印象を音楽にしました。

ムソルグスキーは、絵(イメージ)をみてそれを音楽にしましたが、わたしたち聴衆はそれとは逆に音楽をきいて絵(イメージ)をおもいうかべます。これは「耳でたのしむ展覧会」であり、同時にとても効果的なイメージ訓練です。

10枚の絵がそれぞれ曲になっていて表題がついています。会場で配布されたプログラムノートから表題と解説を引用しておきます(注)。ただし、音楽をききながらイメージをするときには言葉にはあまりとらわれずに自由に想像をふくらませてかまいません。

第1曲:こびと
北欧神話の精霊・ノームがグロテスクに描かれる。

第2曲:古い城
中世の城にこだまする吟遊詩人の歌をエキゾチックに歌いあげる。

第3曲:チュイルリー宮殿の前庭
庭園での子どもたちのはしゃいだ姿が表情豊かに描かれる。

第4曲:ビドウォ
「ビドウォ」とはポーランド語で牛の群れのこと。重々しい牛車の響きの中に、ロシア帝国時代の暗くみじめな農奴の生活が浮かぶ。

第5曲:からを付けたひよこの踊り
元気いっぱいのひよこたちがあっちこっちと飛び跳ねる。

第6曲:サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュレ
かたや威張った金持ち、かたや卑屈な貧乏人という、対照的なユダヤ人のおしゃべり。

第7曲:リモージュの市場
リモージュはフランス中部の町。おかみさんたちの威勢の良いおしゃべりが市場を縦横無尽に飛び交う。

第8曲:カタコンブ(地下墓地)
古代ローマ時代、迫害されたキリスト教徒たちの墓。こここでムソルグスキーは「死者とともに死者の言葉で」という表題で“プロムナード”を挿入し、亡き親友春とマンの追憶に浸る。

第9曲:鶏の足の上に建つ小屋
ロシア民謡の魔女バーバ・ヤガーの家。中空を自在に飛び回るような豪快さと、怪しげな呪文を思わせる昼間部が鮮やかなコントラストを描き出す。

第10曲:キエフの大きな門
ハルトマンが設計したキエフ市の門の重厚な印象。

こうして《展覧会の絵》は堂々とクライマックスをむかえ、わたしたちは光の世界へといざなわれます。


今回の方法は、音楽をインプットして絵(イメージ)を想像するというやり方でした。情報処理の観点からみると、イメージ訓練あるいは想像することはプロセシングのなかでもとくに重要な方法といえるでしょう(図1)。
150315 音楽と心象法
図1 音楽をきくことはインプット、想像することはプロセシング
(<インプット→プロセシング→アウトプット>は情報のながれ)


何かをアウトプットしようとおもったら、先にイメージをえがいて、イメージをおもいうかべながらアウトプットしたほうがうまくいくとおもいます。



▼ おすすめの音源
Amazon デジタルミュージック:展覧会の絵
こちらは 辻井伸行さんの演奏によるピアノ(オリジナル)版です。

▼ 注
曲のはじまりと各曲(各絵)の間には「プロムナード」というみじかい前奏曲あるいは間奏曲が演奏されます。この「プロムナード」はムソルグスキー自身が絵と絵のあいだをあるいている姿を表現しているといわれています。


▼ 参考文献

150311 MacBook
「新しいMacBook」は3色(アップルのサイトから引用)

2015年3月9日(米国現地時間)アップルは、「ノートブックを再発明」とうたう新設計の12型ノートブック「新しいMacBook」を発表しました。重量は2ポンド(920g)、薄さは13.1mm、Mac 史上最薄最軽量を実現、カラー(仕上げ)は、シルバー・ゴールド・スペースグレイの3色です。2015年4月10日発売予定で、価格は148,800円からです(注1)。

数多くのレビューがインターネット上にすでにでていますので、ここでは、アップルのいう「ワイヤレスな世界のために完全装備」について強調しておきたいとおもいます。「新しいMacBook」は、ワイヤレス化がますますすすむ世界に対応できるように設計されています。

「新しいMacBook」には、ヘッドホン端子以外ではたった一つのポートしかありません。それは「USB-C ポート」とよばれるもので、充電・外部ディスプレイの接続・USB 3 速度によるデータ転送ができます。

このポートには従来の周辺機器は直接はつなげないのでアダプタを別途かわなければなりません(注2)。


これについては、「非常に不便であり、消費者のニーズを無視した進化」と批判する人もいます。

しかしアップルは、消費者の都合を“無視する”かのように数々の新製品をこれまでも開発してきました。たとえば、フロッピードライブの廃止、シリアルポートの廃止、ファイアワイアの廃止、CD-ROMドライブの廃止、ブルーレイにいたっては完全に無視しています。

したがって今回の「USB-C ポート」の件についてもおどろきではありません。むしろ当然の流れということでしょう(注3)。


アップルは、ワイヤレス・インターネットでつながれたクラウド(iCloud)をユーザーがつかうことを想定しています。クラウドのビジョンがまず先にあって、それにもとづいて商品を開発しています。つまりアップルは未来を先取りして技術革新をつづけているのです

ビジョンがなくて現状を維持しようとする人にとっては「消費者のニーズを無視した進化」という批判になるでしょうが、ビジョンがみえている人にとっては、なるべく効率的にあたらしい世界にすすんでいこうということになります(注4)。


クラウドのビジョンによれば、デバイスはすべてクラウドでつながるようになり、データもクラウドにおいておくようになります。あたらしいクラウドの時代に人類はこれから本格的に突入していきます

クラウドは機能的にはインターネットをつかうワイヤレスであり、このようなビジョンであればデバイスにおいて最後にのこるポートは電源のみということになります。その電源とても将来のいつかはケーブルがいらなくなるでしょう。たとえばソーラーパネルを搭載するなどして。

そして、クラウド・システムにおける情報処理の主体はあくまでも自分(人間)であって Mac や iPhone や iPad などのデバイスではありません。デバイスは情報処理をするときに役立つ単なる道具にすぎません。道具をつかいこなして一人一人が情報処理をすすめていくことがこれからはもとめらます。デバイスにただ依存していても情報処理はできません。わたしたちはクラウドに適応して主体性を発揮しながら情報処理をすすめていかなければなりません。


アップルの商品開発の歴史は、ビジョンをえがくことがいかに重要かを物語っているとおもいます。まずビジョンがあって、そして物が顕在化してきます。
 



注1:新しいMacBook >>
 
注3:MacBook Air の Retina ディスプレイ化を非常に多くのユーザーはまちのぞんでいましたし、それが消費者のニーズでした。しかしというか やはりというかアップルは、既存の製品のディスプレイをとりかえて現在のニーズにこたえるだけという陳腐なことはせず、未来を先取りした商品をまたしても投入してきました。「新しいMacBook」はこれからの MacBook ラインナップ開発の方向性をしめすものであり、現状の MacBook Pro が今後どのよにうに変更されるのかを予告する内容になっているとかんがえられます。

注4:近年の日本では「生きのこりをかけて!」という言葉がよくさけばれます。これは、過去の実績をなんとか維持してみがきをかけて、きびしい競争を生きのころうとするかんがえであり、そこには過去をみつめる視点があります。しかしアップルは過去にはとらわれず、そして現在のニーズも切りすて、未来のユーザーのニーズにこたえる新商品を開発しています。


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