発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:動物

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アシリサウルス
アシリサウルスは恐竜の祖先の仲間です。まだ恐竜ではありません。このような動物が進化して恐竜になっていきました。

「恐竜博 2016」に行くと恐竜の進化の過程を見ることができます。生物を時系列でとらえることにより時間的なセンスをみがくことができます。

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ステレオ写真をつかって立体視をすると目と脳を同時にきたえることができます。


下の写真はいずれも平行法で立体視ができます。シンガポール・チャンギ国際空港のターミナル3にあるバタフライガーデン(Butterfly Garden)で撮影しました。

立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>
 
画像が立体的に見えるときには次の2つの機能がはたらきます。

 (1)目線を適切に調節して写真を見る(インプット)
 (2)脳にとどいた情報が脳で処理される(プロセシング) 

目線の調節と脳での情報処理という2つの機能によって画像がうかびあがって見えます。したがって立体視をくりかえすことによって目の訓練と脳の訓練を同時におこなうことができ、目と脳が同時にきたえられます。



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シンガポール・チャンギ国際空港、ターミナル3、バタフライガーデン(入口)



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たくさんの蝶がパイナップルの蜜をすっていた



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トラフタテハ



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キエリウツボ(ウツボカズラ属の食虫植物の一種)
蝶ではありませんが2階で栽培されていました。



シンガポール・チャンギ国際空港のターミナル3の「バタフライガーデン」(Butterfly Garden)ではたくさんの蝶がとびまわっています。

この国際空港は非常によくできた空港で、バタフライガーデン以外にもたくさんのエンターテイメント施設があって待ち時間をもてあますことはありません。

空港についたら、各ターミナルにおいてある日本語や英語などでかれた小冊子「空港とトランスファーガイド」をまず手に入れます。この冊子に、空港での滞在時間に応じたさまざまなたのしみ方が紹介してあります。とても遊び心にあふれた空港でおもしろいです。シンガポールを旅するときはもちろんのこと、乗り継ぎでたちよったらあちこち見てまわるとよいでしょう。

まじめ一辺倒でなく、こうしたゆとりやしゃれ気を日本人もまなばなければなりません。


▼ シンガポール・チャンギ国際空港
Changi Airport - Welcome to Singapore Changi Airport



わたしたち人間は生物学的にはホモ・サピエンスとよばれます。わたしたちがわたしたち自身について知ろうとおもったら、ホモ・サピエンスの頭脳や進化についての認識をふかめなければなりません。


『ホモ・サピエンス』(ニュートンプレス)はホモ・サピエンスについてイラストをつかってわかりやすく解説しています。


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ホモ・サピエンスとは、わたしたち人間を生物学的に分類したときの学名です。地球上には、実に多様な民族がくらしていて肌の色が様々だったりしますが、すべての人間は、ホモ・サピエンスというただ一種の動物として分類されます。まずはこの点をしっかり認識しなければなりません。

ホモ(Homo)はラテン語で「人」、サピエンス(sapiens)は「かしこい」という意味であり、ホモ・サピエンスとは「かしこい人」という意味です。

ホモ・サピエンスがはじめて地上にあらわれたのは約20万年前とかんがえられ、起源地はアフリカとする説が有力です。

ホモ・サピエンスは今や世界中に分布をひろげ、宇宙空間にまで居住しようとしています。これほどひろく分布した動物はホモ・サピエンス以外にはありません。


 

この驚異的な発展とひろがりが可能になったのは、ほかの動物とはちがう圧倒的な頭脳をもっていたからです。とくに発達が目立つのは大脳であり、大脳が発達したためにホモ・サピエンスは会話読み書きができ、かんがえることもできるようになりました。

また記憶もできます。本とは何か? 花瓶とは何か? 豚とは? といった記憶を「意味記憶」とよびます。類人猿にも意味記憶はあります。しかしホモ・サピエンスはそれだけではなく、特定の「エピソード」を記憶することができます。たとえば高校の卒業記念パーティー、はじめてバラをおくった女の子、車の運転をおしえてくれた人といった具体的なエピソードを記憶できるのです。さらに過去の記憶を時系列でなべたり、未来を想像したりすることもできます。このような能力は類人猿にはありません。

一方でホモ・サピエンスは模倣もできます。模倣によって、遺伝子にもとづいた自然淘汰から解放されて進化することができました。チンパンジーも行動を模倣することができますが、ホモ・サピエンスの場合はわずか1〜2回見ただけで模倣することができます。ほとんどの動物は進化するのに何百世代もかかりますが、ホモ・サピエンスの場合はわずか1〜2世代であたらしい行動をまなび、進化がひろがっていきます。これが、いわゆる文化や文明の基盤になりました。




それではホモ・サピエンスの脳はどのようにして進化したのでしょうか? 本書では、「脳は、徐々にではなく、突如、爆発的に進化した」という仮説を提示しています。

神経細胞1個1個の構造や性質自体に変化が起きなくても、細胞の数がふえれば、それらをむすぶ「配線」の数が爆発的に増加します。すると脳内のネットワークの状態や性質がガラリと劇的にかわります。

たとえるならば、氷の温度を上げると水になり水蒸気になるとき、H2O(水)の分子の構造や性質自体は変化しなくても、全体の性質はガラリと一変します。こうしたことが脳でもおきたのではないか。こうしてホモ・サピエンスだけが高度な文明社会をきずくことができたのではないか。

ホモ・サピエンスに関する探究は今後ともつづきます。



▼ 引用文献
『ホモ・サピエンス』ニュートンプレス、2015年11月16日
Newton ホモ・サピエンス: 圧倒的なヒトの頭脳。そのしくみは?



ホモ・サピエンスの能力を、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすことには大きな意義があります。


ニュートン『ホモ・サピエンス』(ニュートンプレス/Kinde版)は、ホモ・サピエンスについてイラストをつかってわかりやすく解説しています(注1)。ホモ・サピエンスとは、わたしたち人間を生物学的に分類したときの学名です。

本書では、ホモ・サピエンスがもつ特徴的な能力として次のものをあげています。

  • 会話する
  • 読む
  • 書く
  • かんがえる
  • エピソードを記憶する
  • 過去の記憶をならべる
  • 想像する
  • 模倣する


これらを、人間がおこなう情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点から整理するとどうなるでしょうか。

「会話する」とは、相手の話を聞くことと自分がしゃべることであり、前者はインプット、後者はアウトプットです。「読む」はインプットです。「書く」はアウトプットです。「かんがえる」「エピソードを記憶する」「過去の記憶をならべる」「想像する」はプロセシングです。「模倣する」とは、他人の動作や行動を見ることと、まねてやってみる、前者はインプット、後者はアウトプットです。

これらを図示すると以下のようになります。

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図 ホモ・サピエンスの特徴的な能力


このようなことから、ホモ・サピエンスがもつ特徴的な能力とは情報処理能力にほかならず、ホモ・サピエンスは情報処理をする存在であることがあきらかになりました。ホモ・サピエンスを、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉の観点からとらえなおすことにはとても大きな意義があるとおもいます。


▼ 注1:参考文献
『ホモ・サピエンス』ニュートンプレス、2015年11月16日





モデルをえがくと温帯地域の様子を端的に理解することができます。

『気候帯でみる! 自然環境〈3〉温帯』(少年写真新聞社)は『気候でみる! 自然環境』シリーズの第3巻です(注1)。温帯地域には、日本やヨーロッパやアメリカ合衆国などがふくまれます。日本やヨーロッパやアメリカをほかの気候帯と比較しつつ気候の観点からとらえなおしてみるとあらたな発見がありおもしろいとおもいます。

温帯は冬の寒さがそれほどきびしくなく、1年を通じてすごしやすい気候です。ケッペンの気候区分では、「もっとも寒い月の平均気温がマイナス3℃以上で18℃未満」のところとされています。四季のような季節の変化がみられるのも特徴です。


目 次
温帯の気候区分
温帯の気象災害

温帯の植物
温帯の動物

温帯の農業1 混合農業
温帯の農業2 園芸農業
温帯の農業3 さまざまな農業
温帯の牧畜

温帯の都市
 イタリア メッシナのくらし
 ベトナム ハノイのくらし
 日本 名古屋のくらし
 イギリス ロンドンのくらし


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■ 気温や降水量の特徴によって4つに区分されます。
  • 地中海性気候:夏は乾燥し、冬に雨が多く降ります。
  • 温暖冬季少雨気候(温帯夏雨気候):夏は気温が高くなり雨が多く降ります。冬は寒さはそれほどきびしくなく乾燥します。
  • 温暖湿潤気候:1年のうち、最暖月の平均気温と最寒月の平均気温の差(年較差)が大きいのが特徴です。夏には気温が高くなり、雨が多くなります。日本の大部分はここに属ます。
  • 西岸海洋性気候:夏はすずしく、冬の寒さはそれほどきびしくありません。1年を通じて適度に雨が降ります。


■ 温帯の気象災害には次のようなものがあります。
  • 熱帯低気圧
  • 温帯低気圧
  • 竜巻
  • 熱波
  • 寒波


■ 温帯には2種類の樹木があります。
  • 常緑樹:1年中葉をつけています。
  • 落葉樹:秋から冬にかけて葉を落とします。
常緑樹のなかで、夏の乾燥にたえられるように葉が小さく分厚い樹木を「硬葉樹」といいます(オリーブやコルクガシなど)。常緑樹のなかで、日光を照りかえすような光沢が葉にある樹木を「照葉樹」といいます(シイ、カシ、ツバキなど)。

また葉の特徴にって「広葉樹」と「針葉樹」があります。


■ 温帯の動物として次が紹介されています。
  • 哺乳類
  • わたり鳥

温帯の動物は、季節にあわせた変化やいとなみに特徴があります。


■ 温帯の農業には次ようなものがあります。
  • 混合農業:農作物の栽培と牧畜とをくみあわせています。
  • 園芸農業:大都市の近郊で、野菜や果物や花などを栽培しています。
  • 地中海式農業:夏には、乾燥にたえられる果物などを栽培し、雨が多くなる冬にはコムギの栽培や、ヤギやヒツジの牧畜をおこないます。夏の代表的にあ農作物は、レモンやオレンジ、オリーブやブドウなどです。
  • 東アジアの農業:おなじ農作物を1年で2回収穫する「二期作」をおこなう地域が多いですが、日本では、1年でおなじ種類を1回収穫する「単作」やちがう農作物を収穫する「二毛作」もおこなわれています。

■ 温帯の一部では牧畜がおこなわれてきました。
  • 企業的牧畜:規模大きく、家畜の肉や毛を売ることを目的として行われる牧畜です。
  • 酪農:ウシやヒツジ・ヤギなどを飼って乳や乳製品生産する牧畜です。

■ 温帯の都市とそこでの人々のくらしについて紹介しています。
  • イタリア、メッシナのくらし
  • ベトナム、ハノイのくらし
  • 日本、名古屋のくらし
  • イギリス、ロンドンのくらし
たとえばベトナムのハノイの気候は温暖冬季少雨気候であり、稲作(二期作〜三期作)がさかんにおこなわれています。米はご飯としてだけでなく、「フォー」や「ブン」とよばれる麺にしてもよく食べられています。また米粉の生地をうすくのばした「バインチャン」(ライスペーパー)は、ベトナム風春巻「ゴイクン」(生春巻)などにつかわれます。



以上のように温帯の地域には大きな都市が多数あり、その周辺には耕作地がひろがって混合農業や園芸農業がおこなわれています。人々は、温帯の自然環境(温帯の気候)に適応しながら農業を発展させてくらしてきました。ここにも、自然環境から人々への作用(インプット)と人々から自然環境への作用(アウトプット)がみられます(下図)。

160106 温帯
図 温帯地域のモデル


このようなインプットとアウトプットとの相互作用によって、自然環境をたくみに利用しながら人々は農業を発展させてきたのであり、このようなことがその地域の独自な生活様式さらに独自な文化を生みだしてきたといえるでしょう。

本書で紹介されている人々のくらしとその地域の気候とをセットにして統合的にとらえる視点をもつとあらたな発見があっておもしろいとおもいます。



▼ 引用文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈3〉温帯』少年写真新聞社、2013年1月22日
気候帯でみる!自然環境〈3〉温帯 (気候帯でみる! 自然環境)

▼ 注1
『気候でみる! 自然環境』シリーズは、『熱帯』『乾燥帯』『温帯』『冷帯・高山気候』『寒帯』の全5巻からなっています。






モデルをえがくと熱帯地域の様子を端的に理解することができます。

『気候帯でみる! 自然環境〈1〉熱帯』(少年写真新聞社)は『気候でみる! 自然環境』シリーズの第1巻です(注1)。植物園の温室などで熱帯植物を観察したり、動物園で熱帯の動物を見たり、あるいは熱帯地方を旅行したりするときに本書の内容を予備知識としてもっているとたのしみが倍増します。子供むけの本ですが大人が見てもおもしろいです。


目 次
熱帯の気候区分
熱帯の気象災害

熱帯の植物1 熱帯雨林
熱帯の植物2 サバナ

熱帯の動物1 熱帯雨林気候
熱帯の動物2 サバナ気候

熱帯の農業1 焼畑農業
熱帯の農業2 稲作
熱帯の農業3 プランテーション農業

熱帯の都市1 ブラジル マナウスのくらし
熱帯の都市2 バングラデシュ ダッカのくらし
熱帯の都市3 タンザニア ダルエスサラームのくらし
熱帯の都市4 オーストラリア ダーウィンのくらし
 

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気候とは、毎年くりかえす天気の特徴のことをいいます。さまざまな気候の特徴をもった地域が世界各地に存在し、おおまかにいくつかの「気候帯」にわけられています。もっともひろくつかわれているのはドイツ人の気候学者であるケッペンが考案した気候区分であり、生えている植物(とくに樹木)の種類に注目し、気温と降水量をもとにして、「熱帯」「乾燥帯」「温帯」「冷帯」「寒帯」の5つの気候帯にわけられています。




熱帯は、赤道付近に集中して分布します。1年を通じて気温の高い地域であり、ケッペンの気候区分では「もっともさむい月の平均気温が18℃以上」とされています。


■ 熱帯気候は次の2つにさらに区分されます。
  • 熱帯雨林気候:1年を通じて大量の雨がふります。
  • サバナ気候(注2):雨季と乾季とがはっきりわかれています。


■ 熱帯の気象災害としては次があります。
  • 洪水
  • 干ばつ
  • 熱帯低気圧・台風・ハリケーン・サイクロン


■ 熱帯の動植物としては次のようなものが紹介されています。

 熱帯雨林気候
  • 超高木層:鳥や虫が多い
  • 高木層:オラウータン、コモンリスザル、ナマケモノ、コアリクイ、ジャガー
  • 地表層:アグーチ、ラッパチョウ、カピバラ
 これらは高さによって棲み分けています。

 サバナ気候
  • キリン、ジェレヌク、イボイノシシ、ゾウ、シマウマ、クロサイ、ダチョウ
  • ライオン
 99%は草食動物です。別の植物を食べたり、おなじ植物の別の部分を食べて、食べ分けています。


■ 熱帯の農業には次の形態があります。
  • 焼畑農業(注3)
  • 稲作
  • プランテーション農業
 プランテーション農業とは、ひろい農地で一種類の農作物だけを大量に生産する農業のことです。サトウキビ・コーヒー・カカオ・天然ゴム・バナナなどが栽培されています。


■ 熱帯の都市とそこでの人々のくらしについて紹介しています。
  • ブラジル、マナウスの人々のくらし
  • バングラデシュ、ダッカの人々のくらし
  • タンザニア、ダルエスサラームの人々のくらし
  • オーストラリア、ダーウィンの人々のくらし
 たとえばタンザニアのラルエスサラームでは、トウモロコシやキャッサバの粉を水でこねてつくる「ウガリ」という料理が主食として食べられています。おもなおかずとなるのは野菜の入ったトマト味のスープである「ムチュジ」です。




以上のように熱帯地域は実に多様な世界になっていますが、次のモデル(模式図)で端的にあらわすことができます(下図)。

160104 熱帯
図 熱帯地域のモデル


熱帯地域には、マナウス・ダッカ・ダルエスサラーム・ダーウィン、そのた多数の都市が存在し、そこではたくさんの人々が自然環境(熱帯気候)に適応しながらくらしています。都市の周辺には耕作地がひろがり、焼畑農業・稲作・プランテーション農業などがおこなわれています。これらの農業は、熱帯の自然環境(熱帯気候)をたくみに利用していとなまれています。

このような自然環境と人々とのあいだには相互作用があり、自然環境から人々への作用は「インプット」、人々から自然環境への作用は「アウトプット」とよぶことができます。

インプットにより、食料やその他の物質・エネルギーあるいは情報が自然環境から人々のなかへ入ってきます。いわゆる「自然のめぐみ」といわれるものです。しかし不利益なインプットもあります。気象災害がそれです。不利益なインプットは人々のくらしを破壊します。

他方のアウトプットでは、人々は不要になった物質を外部に排出したり、あらたに耕作地を開拓したりして自然環境に作用をあたえています。近年、焼畑農業やプランテーション農業が大規模になり自然環境が破壊されています。これはアウトプットが巨大化し強力になって調和がくずれたことにほかなりません。




熱帯地域は多様な世界であり一見複雑そうに見えますが、このようなモデルをえがくことによってこの地方のさまざまな情報を統一的にとらえることができます。

モデルは、多様な情報を統合し全体の見通しをよくするためにとても役立ちます。



▼ 引用文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈1〉熱帯』少年写真新聞社、2012年11月22日
気候帯でみる!自然環境〈1〉熱帯 (気候帯でみる! 自然環境)

▼ 注1
『気候でみる! 自然環境』シリーズは、『熱帯』『乾燥帯』『温帯』『冷帯・高山気候』『寒帯』の全5巻からなっています。

▼ 注2
サバナ気候はサバンナ気候とよばれることもあります。

▼ 注3
焼畑農業とは、森の一部を燃やし、あとにのこった灰を肥料などにしておこなう農業です。熱帯の土地はもともと酸性度が高く、農作物をそだてるには適していませんが、焼畑をすると灰が土を中和させまた肥料にもなるためイモ類や穀類やバナナなどがそだつようになります。熱によって、害虫や病原菌をへらす効果もあります。焼畑農業は、数年間おこなうと雑草が増えたり土がやせたりして農作物がそだちにくくなるので別の土地に移動します。これを繰り返して10〜20年後にふたたび元の土地にもどってきます。しかし近年は、人口増加などにより焼畑農業を短期間でくりかえすようになり森が破壊されています。


気候帯で地球をとらえなおす - 気候帯(まとめ)-



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上野動物園 両性爬虫類館(平行法で立体視ができます)


普段 見慣れない生物を見ることは感受性の鈍化をふせぐために有効です。

東京・上野の上野動物園(西園)には両生爬虫類館というめずらしい施設があり、両生類と爬虫類が大集合しています。下記の写真は平行法(注)で立体視ができます。
 


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チュウゴクワニトカゲ(Chinese Crocodile Lizard / Shinisaurus crocodilurus



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ニシアフリカコガタワニ(West African Dwarf Crocodile)



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ガラパゴスゾウガメ(Galapagos Tortoise / Geochelone nigra



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アミメニシキヘビ(Reticulated Python)



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グリーンイグアナ(Green Iguana)



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チョウセンスズガエル(Oriental Fire-bellied Toad / Bombina orientalis



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クサガメ(Reeves' Pond Turtle / Chinemys reevesi


人間は、あたりまえの日常が毎日つづくと新鮮な気持ちをうしない、あらたな気づきや発見もなくなって感受性がにぶってきます。新鮮なインプットがなくなると情報処理もすすみません。

慢性的な慣れから脱却して感受性の鈍化をふせぐためには普段は見慣れないものを見てみるとよいです。


▼ 上野動物園
公式サイト
両性爬虫類館




▼ 平行法(パラレル法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。



生命は、自分の体の内と外とのあいだで物質やエネルギーなどのやりとりをしながら生きています。

『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊/ニュートンプレス)は「生命とは何か?」という大きなな課題に現代の科学者がどのようにいどみ、何をかんがえているかをわかりやすく解説しています。過去の『Newton』誌上に掲載された記事をまとめたものです。

生命は、多くの謎に今なおつつまれています。生命についてはわからないことがまだたくさんあります。生命と非生命の境界についてさえも科学者のあいだで見解がわかれています。

目 次
プロローグ 生命をめぐる疑問
1 生命の共通点
2 ウィルス
3 生命の誕生
4 生物の進化
5 “生きている”とは何か
6 生命の最先端研究
7 地球外生命
エピローグ 研究者が語る“生命とは何か”


地球上の生物はつぎの3つのグループ(ドメイン)にわけられます。これらは共通の祖先から分化しました。
 
(1)細菌
(2)古細菌
(3)真核生物
   ・原生生物(ゾウリムシやアメーバなどの単細胞生物)
   ・菌類(カビやキノコの仲間)
   ・植物
   ・動物


これらの生物に共通する特徴としては以下のことがあります。
  • 刺激に応答する。
  • 外から栄養をとる。
  • 内と外との区別がある。
  • 自分と同じ姿をしたものがふえる。

周囲の刺激に応答しながら生きていることはすべての生物に共通する特徴です。またすべての生物は生きるために外から栄養をとりいれ、エネルギーを体内でつくったり体を構成する材料にしています。このような体内における一連の化学反応のことを「代謝」とよびます。そして、不要な物質は外に排出しています。

このような生物のすべては細胞を基本単位としてできています。生物の体内では細胞の誕生と死がたえずおきていて、細胞の誕生と死のバランスによって生命体は維持されています(注1)。

地球上における最初の生命の誕生に関しては、「生命は RNA からはじまった?」と「生命はタンパク質かがらはじまった?」という仮説が紹介されています。「RNA」(リボザイム)は化学反応を促進する装置としてはたらくものです。

また進化とは、分子レベルでみれば、生命の設計図であるゲノムが世代をへるにつれて書きかえられていくことです。

生命は、外部とのあいだにエネルギーや物質のやりとりをもっているので、その秩序だった構造を維持することができています。逆にやりとりがない場合には、エントロピー増大の法則にしたがって時間とともに秩序だった構造は崩壊していくことになります。

以上の生命の特徴を模式的にあらわすと下図のようになります。

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図 生命のモデル
 
 
生命がおこなっている内と外とのあいだのやりとりに注目することはとても大事なことです(注2)。本書は読み物としてもとてもおもしろいです。類書の『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊、注3)とあわせて読むと生命科学についての理解が一段とすすむでしょう。



▼ 引用文献
『やさしくわかる生命の科学』(Newton別冊)ニュートンプレス、2014年8月15日
やさしくわかる生命の科学―生命と非生命の境界,最初の生命,進化,生命創生など (ニュートンムック Newton別冊)

▼ 注1
あたらしい細胞をつくる方法は「細胞分裂」です。一方、細胞が死ぬしくみは「アポトーシス」(自死)と「ネクローシス」(事故死や病死)です。「ネクローシス」とは、やけどや酸素不足、病原体によるダメージによって細胞が死ぬことです。

▼ 注2
刺激・物質・エネルギーが生命の内部に外からはいってきます。刺激は情報といいかえてもよいです。生命の内部では情報の処理と代謝がおこります。そして生命は運動や行動、不要物質の排出をします。人類の場合は話したり書いたりもします。これは応答するということです。

このようなプロセスは、<インプット→プロセシング→アウトプット>といってもよいです。整理するとつぎのようになります。
 インプット:刺激・物質・エネルギーが生命の中にはいってくる。
 プロセシング:情報処理・代謝。
 アウトプット:運動・行動・排出する。

▼ 注3
田沼靖一(監修・執筆)『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)、ニュートンプレス、2013年7月15日

▼ 関連記事
現代の生命科学を概観する -『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)-
キーワードとイメージとをセットにして記憶する
すすみたい分野の100のキーワードをおぼえて前進する


田沼靖一(監修・執筆)『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊/ニュートンプレス)は、近年めざましく進歩している生命科学の入門書です。わかりやすい視覚的な図をもちいて以下の100のキーワードを解説しています。

Contents
Part 1 生命を知るためのキーワード
 01 DNA
 02 核酸
 03 染色体
 04 遺伝子
 05 ゲノム
 06 RNA
 07 アミノ酸
 08 タンパク質
 09 糖質
 10 脂質
 11 無性生殖
 12 有性生殖
 13 性の決定
 14 単為生殖
 15 SOD
 16 サーチュイン
 17 老化
 18 寿命
 19 生命系統樹

Part 2 細胞を知るためのキーワード
 20 原核細胞
 21 真核細胞
 22 セントラルドグマ
 23 複製
 24 修復
 25 転写
 26 翻訳
 27 遺伝暗号
 28 細胞小器官
 29 核
 30 クロマチン
 31 ミトコンドリア
 32 ミトコンドリアDNA
 33 小胞体
 34 ゴルジ体
 35 ペルオキシソーム
 36 リソソーム
 37 葉緑体
 38 代謝
 39 分子シャペロン
 40 細胞増殖
 41 細胞分化
 42 アポトーシス

Part 3 病気を知るためのキーワード
 43 病原体
 44 ピロリ菌
 45 O-157
 46 ノロウイルス
 47 新型インフルエンザウイルス
 48 抗生物質
 49 免疫
 50 ワクチン
 51 アレルギー
 52 メタボリックシンドローム
 53 動脈硬化
 54 アルツハイマー病
 55 がん
 56 がん遺伝子
 57 がん抑制遺伝子
 58 がんの治療法
 59 不妊症
 60 卵子の老化
 61 生殖医療
 62 内視鏡検査
 63 MRI
 64 X線CT
 65 PET
 66 テーラーメイド医療
 67 ドラッグデリバリーシステム

Part 4 iPS細胞を知るためのキーワード
 68 杯
 69 発生
 70 細胞運命
 71 再生医療
 72 幹細胞
 73 ES細胞
 74 iPS細胞
 75 iPS細胞の応用例
 76 脳
 77 筋肉
 78 骨
 79 血液
 80 臓器移植
 81 脳死
 82 遺伝子治療

Part 5 バイオテクノロジーを知るためのキーワード
 83 遺伝
 84 伴性遺伝
 85 突然変異
 86 エピジェネティクス
 87 クローン
 88 制限酵素
 89 ベクター
 90 遺伝子組みかえ技術
 91 トランスジェニック動物
 92 ノックアウトマウス
 93 RNA干渉
 94 GFP
 95 PCR法
 96 DNAシークエンサー
 97 次世代シークエンサー
 98 一塩基多型
 99 バイオインフォマティクス
 100 遺伝子診断


地球上に生息している生物はすべて、DNA を遺伝情報としている “DNA生物” です。これらの生物の類縁関係を DNA の塩基配列から決めたのが生命系統樹とよばれるものです。

わたしたちの体はもともと一つの受精卵からはじまります。それが細胞分裂によって増殖していき、各器官や組織をつくる特殊な機能をもった細胞になっていきます。これを細胞分化といいます。一方で細胞には、みずから死ぬという基本機能としてアポトーシス(自死)が生まれつきそなわっています。つまり生命は、細胞の生と死の巧妙なバランスによってなりたっているのです。

生命科学の進歩によりヒトゲノムの解読が完了し、21世紀の医療は大きく変わろうとしています。患者の遺伝子診断の結果をもとにした、個々人の遺伝子体質にあった薬による適正な治療などが期待されています。また再生医療に関する研究開発が加速しています。とくに注目をあつめているのが幹細胞をもちいいた再生医療であり、ES細胞とiPS細胞の研究がすすんでいます。

バイオテクノロジーも進歩し、生命の設計図である遺伝子の解読と操作によって生命をデザインしなおすことが可能になりました。しかし、遺伝子組みかえ植物やクローン人間の問題など、社会的および倫理的問題も発生してきています。


本書は、とてもよくできたイメージ(画像)をつかって説明しているので学生や一般の人のための入門書として最適です。

まずは、キーワードとイメージに注目しながら本書の全体を一気に見てしまう、本書を概観してしまうのがよいでしょう。つぎに、各 Part 冒頭の解説や自分の興味のある項目について重点的に読んでみます。テーマ別に5つの Part にわかれてはいますが、それぞれのキーワードの解説は独立しているのですきなところから順不同で読むことができます。そしてふたたび本書全体を見て生命科学の動向を展望してみます。

151028 生命科学


ニュースなどでよくでてくる用語も本書のキーワードにたくさん含まれています。本書をつかって生命科学の「今」を知っておけばニュースもよく理解できるとおもいますし、自分が治療をうける場面になったときにも役立つでしょう。


▼ 引用文献

田沼靖一(監修・執筆)『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)、ニュートンプレス、2013年7月15日
生命科学がわかる100のキーワード―生命,病気,iPS細胞など,テーマ別でわかりやすい (ニュートンムック Newton別冊)


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現代の生命科学を概観する -『生命科学がわかる100のキーワード』(Newton別冊)-
キーワードとイメージとをセットにして記憶する
すすみたい分野の100のキーワードをおぼえて前進する


ステレオ写真をつかって立体視ができたら、対象だけに注目するのではなく、その空間のなかの遠近もしっかり見るようにします。

下のステレオ写真は平行法で立体視ができます。いずれもハワイ・ホノルル動物園(Honolulu Zoo)で撮影しました。

立体視ができたら動物だけに注目するのではなく、周辺視野をつかってその前後も見るようにします。近いところと遠いところの両方をしっかり見ます。普通の平面の写真とはちがい遠近が見えるのがステレオ写真のおもしろいところです。遠近もしっかり見ることは情報をインプットするときの重要なポイントのひとつです。


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Fennec Fox (フェネックギツネ, Vulpes zerda)


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Southern Ground Hornbill (ミナミジサイチョウ, Bucorvus Ieadbeateri)


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Serval (サーバル, Felis serval)


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Black Rhinoceros (クロサイ, Diceros bicornis)


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Lion (ライオン, Panthera leo)


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Tiger (トラ, Panthera tigris)


ホノルル動物園の面積は 0.17 k㎡ であり、日本の上野動物園(0.14 k㎡)とほぼおなじ広さです。しかし上野動物園では約400種類もの動物や鳥たちを飼育しているのに対し、ホノルル動物園は約220種類の動物や鳥を飼育しています。つまりホノルル動物園のほうが動物の密度は低いわけです。

ホノルル動物園に行ったけれど「ひろいわりには動物がいなかった」「1時間もあるいたのに動物があまり見えなかった」などという日本人もいるらしいですが、ここに来たら、日本にいたときの効率主義の生活から解きはなたれて、ゆったりとした気分になってみるとよいでしょう。木陰や芝生やベンチなどもたくさんあるのでのんびりすごすことができます。


▼ 平行法(パラレル法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。

▼ ホノルル動物園

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立体視をして周辺視野をきたえる - ホノルル動物園(1)-


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ホノルル動物園(入り口)

中心視野だけでなく周辺視野もつかって全体的に見るようにすると見る力がきたえられます。

下のステレオ写真は平行法で立体視ができます。いずれもハワイ・ホノルル動物園(Honolulu Zoo)で撮影しました。中心視野で動物だけに注目するのではなく、周辺視野をつかってその周囲と背景もしっかり見るようにします全体的にまるごと見るようにするとインプット能力がたかまります


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Siamang Gibbon (フクロテナガザル, Symphalangus syndactylus)


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Black-Handed Spider Monkey (クモザル, Ateles geoffroyi)


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Aldabra Tortoise (アルダブラゾウガメ, Geochelone gigantea)


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Giraffe (キリン, Giraffa cameloparadalis)


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Ostrich (ダチョウ, Stuthio camelus)


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Hamadryas Baboon (マントヒヒ, Papio hamadryas)


ホノルル動物園はハワイ・オワフ島にある動物園で、ワイキキ・ビーチからあるいていけます。 17ヘクタールの敷地は荒野をイメージしてつくられていて、哺乳類・爬虫類・鳥類など1200頭をこえる動物を飼育しています。


▼ 平行法(パラレル法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。

▼ ホノルル動物園




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伊沢紘生著『新世界ザル アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』は、さまざまな種がすみわけることによって、多様性にみちあふれる生態系が維持されまた発達していくことをおしえてくれる本です。

著者の伊沢紘生さんはアマゾン川流域で以下のようなたくさんの種類のサルをしらべ、それぞれの種の固有な「生きざま」をあきらかにしました。

ホエザル
フサオマキザル
クモザル
ウーリーモンキー
ピグミーマーモセット
ゲルディモンキー
サキ
ウアカリ
セマダラタマリン
ヨザル
ダスキーティティ 


■ 種の多様性が増大する
アマゾンのこれらのサルたちは、それぞれの種に固有な生きざまをどのようにして獲得するにいたったのでしょうか?

アマゾンのサルたちは、その生きざまにおいて多様性をもっているという事実が観察されました。

ながい時間幅でみれば、動物のどの系統をとってみても、種の数が増加して、種の多様性が増大していったというのが生物進化の実態であり、アマゾンのサルたちもこのような進化の過程で多様化していったとかんがえられます。


■ 多様なサルたちがすみわけて共存している
それでは、なぜ、アマゾンというひとつの地域のなかで、これだけ多様なサルたちが共存できているのでしょうか?

現地調査によって、それぞれの種ごとに生きざまを異にして共存していることが観察されました。つまり、さまざまなサルたちは見事に「すみわけ」ていたのです。たとえば森の上部層と下部層とですみわけていました。果実をおもに食べるサルと葉をおもに食べるサルと昆虫をたべるサルといった「食いわけ」によるすみわけも観察されました。

このようにすみわけによってさまざまな種が共存し、一方で、すみわけを通してあたらしい種が誕生するというのが生態系の維持と発達の仕組みでした。このようにして多様性にみちあふれたアマゾンの生態系がなりたっていたのです。


■ 生態系は共存原理でなりたっている
生きざまを変更し、生活空間やもとめる生活資源を分割してすみわけをおこなうところには共存原理がみとめられます。サル類にかぎらず熱帯雨林に生息するいかなる動物もこのようにして生きているそうです。

これは、一方が勝利して生きのこり、一方は負けて滅びるという競争原理ではありません。熱帯雨林の生態系には競争原理は存在しません。


■ 局所と大局とをくみあわせて体系を認識する
このようなことは、アマゾンに生息するさまざまな種類のサルたちをすべてしらべて、その生きざまとともに空間的な分布やひろがりを研究し、そしてそれらを相互に比較したからこそ認識できたことです。

これがもし、一つの種だけを専門的に調査していたらこのようなことはわからなかったでしょう。たとえばホエザルだけを専門的に研究する、ワニだけを集中的に研究する、カブトムシだけを局所的に研究する、動物の細胞だけを実験的に研究するといった分析的研究では、生態系という大局の認識はできないわけです。

つまり個々の種をとらえる部分的な見方と生態系という全体的な見方の両者が必要です。

これからのグローバルな時代は、局所と大局とをくみあわせることによって、全体の体系(システム)を認識する方法が重要になってくるとおもいます。そのような意味でも伊沢さんの研究方法は非常に参考になります。



▼ 引用文献
伊沢紘生著『新世界ザル(上)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
新世界ザル 上: アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う

伊沢紘生著『新世界ザル(下)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
新世界ザル 下: アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う 
※「新世界ザルのすみわけと進化」については下巻の最終章でくわしくのべられています。


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国立科学博物館

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大アマゾン展


国立科学博物館の「大アマゾン展」は生態系あるいは自然には多様性があることをおしえてくれるよい機会でした(注1)。生態系について理解するためにはその階層構造に注目するとよいです。

アマゾンは地球上でとくに多様性のある地域なのではないでしょうか。動物・植物・原住民そして気象・地形・地質・河川などがつくりだす物理環境、もしかしたら、こんなにも多様な生態系をのこしている地域は地球上にはほかにはもうないかもしれません。アマゾンは自然の多様性をまなぶために大変貴重な地域となりました。

アマゾンでは実にさまざまな動植物が共存しています。共存できているからこそ多様性があるわけです。共存できなかったら多様性はうしなわれます。

生態系のなかでは食べたり食べられたりということはありますが、これは生きるために生物が食料を補給しているのであって、戦って決着をつけようとしているのではありません。多様性のある世界は、淘汰によって勝者が生きのこり敗者がほろんでいく世界ではありません。

動植物が共存ができるのは彼らがうまく「すみわけ」をしているからです(注2)。たとえば、一般の哺乳類は地上でくらしていますが、サル類は樹上ですごし地上にはおりてきません。菌類、水草、魚類、昆虫類、爬虫類、両生類、哺乳類、サル類、鳥類など、それぞれに生きる世界をもってすみわけています。さまざまな生物がうまくすみわけつつ共生し、全体の系(システム)を統合・維持しているのが生態系といえるでしょう。

このような生態系は、個体あるいは局所にとらわれていると全体像は決してみえてきません。

生態系は複雑な階層構造になっていて、生物はただ単に共存しているのではなく、階層的にすみわけて共存しています。階層構造があるからこそこれだけ高密度な共存ができるのです。

このような階層構造がみえないと生態系は非常に複雑にみえて理解がむずかしくなります。あるいは個体や局所だけをみていると生態系の要素あるいは下部構造しか認識できません。

階層構造に着目することは生態系のみならず、世の中の構造を理解するためにも役立つとおもいます。



▼ 注1
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼注2:参考文献
生態系について理解するためには伊沢紘生さんの本をよく読むとよいです。わたしはかねてから伊沢さんの研究に注目し、伊沢さんの本はほとんどすべて読んできました。

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自然環境と共生して生きている人々がいる - アマゾン展 -


東京・上野の国立科学博物館で開催されている特別展「大アマゾン展」を再度みました(会期:2015.6.14まで、注1)。今回はサルの多様性に注目してみました(写真)。アマゾンにはおもしろいサルがたくさんいます。

IMG_2183 ピグミーマーモセット
ピグミーマーモセット

IMG_2284アカテタマリン
 アカテタマリン

IMG_2193ゴールデンライオンタマリン
 ゴールデンライオンタマリン

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 エンペラータマリン

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 フキオマキザル

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 ヨザル

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 アカウアカリ

IMG_2221ヒゲサキ
 ヒゲサキ

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 クロホエザル

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カオグロクモザル 

IMG_2237フンボルトウーリーモンキー
 フンボルトウーリーモンキー

IMG_2329ケナガクモザル
 ケナガクモザル


アマゾンは、生態系の全体をみても多様性に富んでいますが、サル類だけをみても大きな多様性があることがわかります。多様性は、対象を全体的にとらえて大観してこそみえてくるものです。局所を分析しているだけだと決してみえてきません。多様性を知ることは、地球環境を保全するためにあるいは環境変動に適応するために役立ちます。


▼ 注1
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

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国立科学博物館の特別展「大アマゾン展」(注1)に関連しておもしろい本があります。伊沢紘生著『アマゾン動物記』です。おもにアマゾンのサル(新世界ザル)とその研究にもとづく進化論についてかたっていて、たのしみながら読みすすめることができます(注2)。写真が豊富で、ほかの動物たちについてもある程度紹介しています。

目 次
新世界ザル
密林に生きる

新世界ザルについては、それぞれのサルの特徴をつぎのように形容してわかりやすく紹介しています。

おとなもあそぶウーリーモンキー
クモザルもあいさつをする
ホエザルはアマゾン一の大声の持ち主
道具を使うオマキザル
空々しいリスザルの群れ
夜行性のヨザルの行動
対照的なサキとウアカリ
"きたない森" にティティはすむ
生きた化石ゲルディモンキー
食物を分け与えるセマダラタマリン
高貴な顔だちエンペラータマリン
半日先を考えるピグミーマーモセット

たくさんの写真をつかってわかりやすく紹介していて、新世界ザルさらには生物の多様性について知ることができます。

そして、新世界ザルの調査結果にもとづいてサル類の進化についてつぎのような仮説をたてています。

新世界ザルの系統進化が、競争の原理でなく、すみわけ をとおした共存の論理で説明されうるなら、狭鼻猿類の系統進化や人類の起源もまた、後者にもとづいて説明する試みが必要になってくると思われる。

つまり、ゆたかな多様性をもつアマゾンの生態系は、競争原理と自然淘汰ではなく、すみわけによる共存原理で成立してきたと見なせるということです。狭鼻猿類とは、アフリカやアジアにいるサル類のことです。

本書の後半の「密林に生きる」では、アマゾン川流域でくらす現地住民の狩猟についてかたっていて、アマゾンの猟師が、野生動物たちのそれぞれの習性を知りつくし、それをたくみに利用して狩猟していることを具体的に紹介していて興味ぶかいです。


生態系というものは、多様性を生みだしつつも、みずからのシステムを維持するように進化するという大局に、アマゾンをとおして気がつくことが大切だとおもいます。
 
そのためには、物事の全体像を見る目をやしなう必要があります。その世界の大局を大観できるようになるということです。
 
そのうえで、たとえば昆虫に興味があれば昆虫をくわしくしらべる、魚類に興味があれば魚類をくわしくしらべてみればよいでしょう。最初から特定の局所にとらわれすぎないことが大切です。

課題にとりくむときは、〔1.大局を見る → 2.局所をとらえる〕という順序をふむとよいでしょう。


本書は専門書ではなく、『毎日グラフ』(毎日新聞社)と『アニマ』(平凡社)に寄稿したものが内容の一部になっているそうで、一般の読者が読んでも十分にわかる内容になっています。アマゾンの入門書としておすすめします。



▼ 引用文献
伊沢紘生著『アマゾン動物記』どうぶつ社、1985年3月15日
アマゾン動物記 (自然誌選書)  

▼注1
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼ 注2
アフリカ大陸とユーラシア大陸を旧世界とよぶのに対し、アメリカ大陸を新世界とよんでいます。

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▼ 関連書籍
上記の『アマゾン動物記』を発展させたのが下記の書籍です。世界的なサル学者によるアマゾン研究の集大成であり、熱帯雨林の壮大な物語、著者渾身の力作です。大部な本ですが専門的な学術書ではなく、一般の人が読んでもたのしめる内容になっています。アマゾンの自然、特にサル類について知りたい人におすすめします。

伊沢紘生著『新世界ザル(上)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
序章 絢爛たる樹上の世界
第1章 アマゾンでの調査三〇年
第2章 樹海に轟く咆哮 − ホエザルを追って
 1 本格的な調査に向けて
 2 お前はそれでもサルなのか
 3 アマゾン一の大声の謎
 4 オスの交代と子殺し
 5 ホエザルの別の顔
第3章 ずば抜けた賢さ − フサオマキザルを追って
 1 かたいヤシの実を割って食べる
 2 どれほど賢いか
 3 社会のありようを一五年間追う
 4 フサオマキザルの周辺


伊沢紘生著『新世界ザル(下)アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』東京大学出版会、2014年11月25日
第4章 林冠を風の如くに — クモザルを追って
 1 クモザルの群れの内側と外側
 2 クモザルの食べもの
 3 クモザルの行動と社会
 4 ウーリーモンキーの生態と社会
第5章 きたない森の小さな忍者 — ゲルディモンキーを追って
 1 ピグミーマーモセットの生態と分布
 2 ゲルディモンキーを探しての長い旅
 3 餌づけして調べる
第6章 浸水林に生きる — サキとウアカリを追って
 1 アマゾン一毛深いサル
 2 赤いマントを羽織ったサル
第7章 小鳥の囀りにも似て — セマダラタマリンを追って
 1 小さいサルの調査に挑戦する
 2 セマダラタマリンとほかのタマリンとの関係
第8章 樹林の月夜と闇夜 — ヨザルを追って
第9章 絡みつく蔦の中で
終章 きれいな森ときたない森
 1 新世界ザルの多様性
 2 アマゾン川上流域を舞台に起こったこと


国立科学博物館の特別展「大アマゾン展」ではアマゾン川流域地域の多様性を見ることができます。アマゾンの多様性は、アマゾン川の豊富な水、赤道直下の高温多湿などの環境とそこでくらすさまざまな生物とによって形成されました。アマゾン川流域には、約6万種の植物、100万種以上の昆虫、約1800種の鳥類、約3000種の魚類、約420種の哺乳類が棲息しています。せっかくの機会ですのでアマゾンの多様性について展示室ごとにいくつかメモをしておきます。

第2室 哺乳類
アマゾンで多様化した哺乳類としては霊長類(サル類)と齧歯目(げっしもく/ネズミ類)がいます。
 
霊長類:ゴールデンライオンタマリン、エンペラータマリン、ヨザル、フサオマキザル、シロガオサキ、マンクサキ、ダスキーティティ、クロホエザル、フンボルトウーリーモンキー、ケナガクモザル。

齧歯目:デグー、チンチラ、ビスカーチャ、パカラナ、ローランドパカ、アグーチ、パンパステンジクネズミ、マーラ、カピバラ。

その他の哺乳類:アリクイ、ナマケモノ、アルマジロ、ジャガー、ピューマ、オオカミ、クマ、スカンク、イタチなど。


第3室 鳥類
アマゾンのインコ類はとくに多様化がいちじるしく、30属150種にもなります。そのなかで体がもっとも大きく尾のながいものがコンゴウインコとよばれます。アマゾン川流域が発祥の地とされ、アマゾンを象徴する鳥です。

南米の鳥たちは収斂進化の実例の宝庫になっています。収斂進化とは、祖先はちがっても、生態系のなかでおなじような生活をする生物が似た形態を進化させることです。


第4室 爬虫類・両生類
アマゾンの爬虫類はヘビ・トカゲ・ワニ・カメです。オオアナコンダは、南米パラグアイより北部に分布する超大型のヘビです。

アマゾンの両生類のカエルは小型のものが多いです。ヤドクガエル類は、非常に色彩がゆたかなカエルであり、樹上性あるいは地上性です。皮膚に猛毒をもっているため素手でさわってはいけません。現地人は、矢じりにつける毒をこのカエルからえています。


第5室 昆虫
モルフォチョウは、中南米に特有の華麗なチョウとしてふるくから注目されています。ヘラクレスオオカブトムシは、世界最大の甲虫として有名であり、アマゾン地域にはエクアトリアヌスという亜種が分布しています。タイタンオオウスバカミキリは世界最大のカミキリムシで、体長は16cmに達することもあります。


第7室 アマゾンカワイルカ
イルカは普通は海に棲息しますが、大河に棲息するものもいて「カワイルカ」とよばれます。全身は白色ないしあかるい灰色、ほそくてながいクチバシがあり、相対的に大きくて可動域の大きい胸びれなどの特徴をもっています。


第8室 魚類
ピラクルーは世界最大の淡水魚といわれ、最大4mに達します。1億年前から姿がかわっていないことから「生きた化石」とよばれます。デンキウナギは電気ショックをあたえるおもしろいウナギです。ピラニアとカンディルという危険な魚もいます。ピラニアは肉食性で人間に危害をくわえるものもいます。カンディルには、大きな魚類や哺乳類に穴をあけてその肉をたべる種類と血をすう種類がいます。


第9室 菌類
きのこは生態系における分解者として知られています。スッポンタケ科の一種は世界最小のスッポンタケ類です。ハエをおびきよせるための悪臭をはなちます。


第10室 水草
アマゾンの水草の多くは、アマゾンの特異な水質に適応して生育しています。エイクホルニア・アズレアは、水上にでる葉と水中の葉の形が大きくことなります。水上では空気中から二酸化炭素をとりこみますが、水中では水から直接とりこみます。


第11室 先住民の装飾品
アマゾン流域には多数の先住民が今なおくらしています。文明社会と見接触の民族が今なお67存在するといわれています。彼らは自然とともに生き、自然の恵みを享受しながら自然を利用してきました。


アマゾン川流域は多様性の宝庫であることは間違いありません。是非 保全していきたいものです。


▼ 参考文献
『大アマゾン展』(公式ガイドブック)、発行:TBSテレビ、2015年3月13日

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国立科学博物館 


東京・上野、国立科学博物館で開催中の企画展「ヨシモトコレクションの世界」を先日みました(会期:2015年 1月18日まで)。多数の剥製標本を通して生物の多様性を実感することができました。


国立科学博物館ヨシモトコレクションとは、日系二世の実業家ヨシモトさんが、1957年から1995年にかけて世界中から狩猟によって得た標本群のことです。1997年から1998年にかけて、ハワイ・オアフ島のW.T.ヨシモト財団より国立科学博物館へ寄贈されました。

哺乳類・鳥類・爬虫類の標本約400点からなり、種数は全173種(鳥類13種、爬虫類2種)をふくみます。その多くは全身が剥製としてのこされており、内訳は全身剥製267点、頭部剥製98点、半身剥製7点、なめし皮7点、頭骨1点、角8点、牙10点です。

剥製の製作を手がけたのは、アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市のクラインバーガー社で、その優秀な技術は、動物の細部を見事に再生しているといえます。特に頭部に浮き出した血管の様子や、肛門周辺の造形は見事で、またいくつかの標本では生きていたときの行動を再現して作製されています。すべての個体について捕獲した時期と場所が記録されており、また各ハンティングの記録は付帯資料としてキャビネットにおさめられています。

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ヨシモトコレクションは今回の企画展示のほか、国立科学博物館・地球館3階や1階に常設展示されていて見る者を圧倒しています。もしこのコレクションがなかったなら、国立科学博物館の動物展示はかなり貧弱なものになったでしょう。

このコレクションをきずいたヨシモトさんとは、日系二世の実業家としてハワイで大成功をおさめたのち、世界各地で狩猟をおこない、動物の剥製の製作をすすめました。そして晩年には自然保護を推進するようになりました。

剥製標本は立体でリアリティがあったため体験的に動物について理解をふかめることができました。動物写真を図鑑で見ているのとちがい迫力がありました。また、せまいスペースのなかで多数の標本をみることができたので、動物の多様性を短時間・高密度で実感することができました。

動物の多様性をとらえる場合、つぎのような段階を踏むとよいでしょう。

 (1)図鑑で見る
 (2)博物館で見る
 (3)動物園で見る
 (4)フィールドワークをおこなう

(1)図鑑で見れば、地球上で知られているほとんどの動物を写真や絵で体系的に見ることができます。
(2)写真や絵は平面的(2次元)ですが、展示標本は3次元であり、いろいろな角度から動物を立体的にとらえることができます。
(3)博物館の標本は死んだ動物ですが、動物園では実際に生きている動物を見ることができます。より現実にちかづきます。
(4)フィールドワークをおこなえば、野性の動物を生態系のなかに位置づけて見ることができます。しかし、フィールドワークでは動物に出会える機会は少なくなり、ガイドや専門的なやり方が必要になります。

(1)から(4)にいくにしたがって動物に出会える頻度は低くなりますが、より現実の状態を知ることができます。

このような認識の段階の全体像を踏まえて博物館の動物展示を利用すれば、動物に関する理解がすすむとともに、ヨシモトさんの功績が後世まで生かされるとおもいます。

つぎのデータベースも有用です。


▼ 関連ブログ
哺乳類の進化と絶滅をまなぶ -太古の哺乳類展- 
具体例を蓄積して理解をふかめる -ダーウィンフィンチのクチバシ- 

国立科学博物館の企画展「ダーウィンフィンチ -ガラパゴス諸島で進化を続ける鳥-」をみました。

ダーウィンフィンチは、南米沖のガラパゴス諸島とその北方ココ島にのみに生息する小型の鳥類であり、そのクチバシのちがいが進化をしめす具体例として知られています。本展では、アメリカ自然史博物館からかりうけたダーウィンフィンチの貴重な研究用剥製を展示してそれを解説しています。チャールズ=ダーウィンはこの鳥から進化論の着想を得たといわれています。

ダーウィンフィンチ類は、ホオジロ類の仲間であるフウキンチョウ科の鳥が200〜300万年前にガラパゴス諸島にたどりつき、昆虫食・花蜜食・種子食・雑食の食性に適応して、クチバシの形状が大きく異なる15種もの多様な種に分化しました。

国立科学博物館の解説によりますと、15種のダーウィンフィンチは以下の7つのグループ(亜種)にわかれます。

1)サボテンフィンチ類:長いクチバシ
 サボテンの実や葉・花・花蜜をたべます。

2)種子食地上フィンチ類:がっしりとしたクチバシ
 花・花蜜や地面に落ちた種子をひろってたべます。

3)昆虫食樹上フィンチ類:太いクチバシ
 主に昆虫をたべます。

4)キツツキフィンチ類:頑丈でまっすぐなキツツキ型のクチバシ
 樹木に穴をあけカミキリムシの幼虫や樹皮の下にかくれた昆虫などをたべます。

5)ココスフィンチ:細長いクチバシ
 雑食で、フルーツや花蜜・昆虫・草の種子などをたべます。

6)植物食樹上フィンチ:オウムをおもわせるクチバシ
 葉や芽や木の実などをたべます。

7)ムシクイフィンチ:もっとも細いクチバシ
 木の葉などについた昆虫などをつまみとってたべます。

以上のようにダーウィンフィンチは、餌という環境条件に適応するために、特徴的なクチバシの形を進化させました。この例は、ただ一つの祖先種から多様な形質の子孫が短期間に出現するという適応放散の代表例です。

このような現場のデータにもとづく具体例をまなぶことは物事の理解を促進させます。具体例を知れば知るほど物事の理解はふかまります。具体例は、一般論では気がつくことができない盲点をおしえてくれこともあります。具体例を知ることにより安易な一般論から脱出することもできます。具体例をファイルしてたくさん蓄積するることにより理解がふかまるだけでなく選択肢も増えてきます。

企画展や展覧会などでの体験をうまく活用して、具体例の体験的なファイルを増やしていくことが重要です。


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3D 国立科学博物館(記事リンク集)

▼ 参考文献
日本ガラパゴスの会著『ガラパゴスのふしぎ』ソフトバンク クリエイティブ、2010年3月25日
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本書は、ダーウィン・進化論・生態系・不思議な生き物・環境保全などについて多数の写真とともに解説していて、ガラパゴスの入門書・ガイドブックとして有用です。21ページおよび124〜128ページに、ダーウィンフィンチのクチバシについて解説されています。ただし、本書におけるダーウィンフィンチの分類は、国立科学博物館の分類とは若干ことなっています。


ジョナサン・ワイナー著『フィンチの嘴 ガラパゴスで起きている種の変貌』(ハナカワ・ノンフィクション文庫)早川書房、2001年11月30日
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ダーウィンフィンチのクチバシについてさらにくわしく知りたい方はこちらをお読みください。エルニーニョや大干ばつなどによって変化する種子の大きさに合わせて、フィンチのクチバシの大きさも変化することなどが記述されています。

 

DVD『ヒマラヤ動物紀行』(飯島正広)を見ました。

ネパール南部・亜熱帯のチトワン国立公園から、ソルクーンブ・エベレストの近く、そしてツルのヒマラヤ越え(アンナプルナ越え)と多様な動物をみていきます。それぞれの動物は環境に適応して生きています。環境がことなれば動物もことなるので、それぞれの動物は環境の指標にもなっています。動物を見れば環境がわかり、環境がわかると動物が見えてきます。

動物と環境とはセットにしてとらえなければなりません。動物-環境系が一つのシステム(体系)です。それがわかれば生命を高い次元でとらえなおすことができます。
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