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タグ:作文法


「日本語の作文技術」は、人がおこなう情報処理におけるアウトプットの方法として大変有用です。

本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日新聞出版)が新版になって文字が大きくなり読みやすくなりました。
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人間は情報処理をする存在です。インプットとプロセシングがよくできるとアウトプット(文章化)もすすみます。


近藤勝重著『書くことが思いつかない人のための文章教室』は、「書くべきことが浮かばない時にはどうすればよいか?」をとっかかりにして書くための技術をおしえています。


目 次
第1章 記憶を描写してみよう
第2章 伝わる文章の秘密
第3章 そもそも書く手順とは
第4章 文章はこう直す
あとがきに代えて 〈特別編〉文章に手を入れる


* 


文章を書くということは、人間がおこなう情報処理においては情報をアウトプットするということです。アウトプットをするためにはインプットとプロセシシングがその前に必要です。インプットとは、見たり聞いたり味わったりすることであり、プロセシングとは、おもいだしたりかんがえたりすることです。

160219 文章を書く
図 情報処理の仕組み
 

本書は、情報処理の観点からの説明をしているわけではありませんが、わたしは、インプット・プロセシング・アウトプットの観点から本書で説明している主要な技法を次のように整理してみました。


(1)インプット
  • 観察力をやしなう: 全体から部分、部分から細部を
  • 人間を観察する
  • 独自の視点をもつ
  • 「不思議」を発見する
  • 五感を活用する
  • 人に報告するつもりで見る
  • 事物との関係性を確認する
 
(2)プロセシング
  • 「思う」ことより「思い出す」
  • 感動体験を生かす

(3)アウトプット
  • 箇条書きからはじめる:メモをとる、アイデアはすぐに書き留める、起・承・転・結を組み立てる
  • 書き出しで興味をひく
  • 現在・過去・未来の順に書く
  • 「人プラス物」で書こう
  • 事物に託そう
  • 第一に場面提示
  • 人、物、自然との関係を描こう
  • ありふれた表現(紋切り型と過剰表現)をさける
  • 「子ども性」をとりもどそう
  • 比喩を生かす
  • 擬音語と擬態語をつかう
  • 文章をなおす:「思う」「考える」「感じる」を減らそう、もう一人の自分の目で推敲する




人がおこなう情報処理の観点からいうと、文章を書くということは情報をアウトプットすることであり、アウトプットの前にはインプットとプロセシングをおこなわなければなりません。インプットとプロセシングよくできればアウトプットもおのずとすすみます
 
何を書いたらいいかわからないということは、インプットがそもそもできていないわけですから、書こうとする(アウトプットする)前にインプットをまずはおこなわなければなりません。

したがって文章を書く訓練は、インプットとプロセシングとをあわせてすすめなければならず、文章化(アウトプット)だけをとりだして訓練していても能力はあがりません。バランスよく総合的に、インプット・プロセシング・アウトプットの三者にとりくむ必要があります。

よくできた文章を書くための技術にはさまざまなものがありますが、要するに、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉ということです

本書でも指摘しているように、文章を書いてみるともやもやした気持ちが晴れてきます。これは、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉という情報の流れが自分の心のなかに生じ、同時に、情報処理をやってのけたということのあらわれです。情報処理はアウトプットをすると完結します。


▼ 注
近藤勝重著『書くことが思いつかない人のための文章教室』(幻冬舎新書)幻冬舎、2011年9月29日
書くことが思いつかない人のための文章教室 (幻冬舎新書)




文章を書くときには、みずから主体的にかんがえて、自分のメッセージを正直に相手につたえることが大事です。


外にむかって自分らしく自分を発現し、自分の書いたもので相手を揺り動かすにはどうすればよいか? 山田ズーニー著『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(PHP研究所)(注)はこのための具体的な方法を提案しています。


あなたは暗記と応用ではなく、「自分の頭でものを考える方法」を習ったことがあるだろうか?


と著者の山田ズーニーさんはわたしたちに問うてきます。

たとえばある受験生に文章を書かせた例があります。彼女は「とりあえず」「とりあえず」「とりあえず」と、「とりあえず」を連発させていました。


進路の話になったとき、彼女にはやりたいことがあり、一方、親は、その進路では就職がないという。自分の興味と、親が勧める進路が違って、せめぎあう、と言った。彼女は、周囲の期待に合わせようとしているのだ。

 
よくある話です。

つまり、みずから主体的にかんがえて、みずからのメッセージを相手につたえることができていません。これでは生き生きとした文章は書けません。

文章を書くときには、自分の意志をあらわすことによって人の心をうごかし、のぞむ状況を切りひらいていくことをめざさなければなりません。それができたらこんなにうれしいことはありません。
 
これからの時代は周囲の期待に自分をあわせるのではなく、自分のことは自分で決めて 「とりあえず」の人生をけりかえしていくことが大事です。


 

本書は文章を書くための本ですが、このように、普通の文章術の本とはかなりちがっています。そこがおもしろいところです。


目 次
プロローグ 考えないという傷 考える方法がわかれば、文章は生まれ変わる
第1章 機能する文章を目指す いい文章を書くとは、どういうことか?
第2章 7つの要件の思考法 書くために、何をどう考えていくか?
第3章 伝わる・揺さぶる!文章の書き方 実践編
第4章 より効果を出す!テクニック 上級編
第5章 その先の結果へ
エピローグ あなたと私が出会った意味


文章を書く要件としてつぎの7点をあげています。


  1. 意見 ――あなたが一番言いたいことは何か
  2. 望む結果 ――だれが、どうなることを目指すのか
  3. 論点 ――あなたの問題意識はどこに向かっているか
  4. 読み手 ――読み手はどんな人か
  5. 自分の立場 ――相手から見たとき、自分はどんな立場にい
  6. 論拠 ――相手が納得する根拠があるか
  7. 根本思想 ――あなたの根本にある想いは何か


わたしたちは、いざ自分で自由にかんがえてよいと言われると不安になります。文章を書くのが苦手という人のほとんどが、どう書くか以前に、何をどうかんがえていけばよいかでつまずいています。
 
それでも思考を前にすすめたときに見えてくるのはほかのだれでもない「自分の意志」です。自分の意志にうそのない文章を書くことは、実は、もっとも有利な文章戦略なのです。是非、自分の生き方に立脚して書くべきことをさがしてみてください。自分に対して正直になることは文章を書くうえでももっとも重要なことです。




書きはじめは「問い」の立て方です。

読み手は、あなたの意見をまだ読んでいなくても、あなた独自の見方・センスを「問い」の立て方だけで感じとります。

しかし「問い」を立てているのに かんえがいきづまってしまうことがあります。たとえば、「今後の抱負は?」と聞かれて「問い」を立ててみるのだが・・・。今後、自分は何を目標にするか?  今後、自分が力を入れたいのはどこか?  今後、自分がかならずやるべきことは何か?

あらためてじっくりかんがえてみましょう。




要約することも大切です。

要約して極端にみじく言うことで、いらないものが捨てられ大事なものの順番がわかります。 「いま、あなたがやっていること、やろうとしていること、それを、ひと言でいうと?」というように、ひとこと要約を実践してみましょう。

また要約することであなたの根本思想もみえてきます。


 

読み手の心をうごかすことは重要です。読み手の心がうごけば、何らかのかたちで状況はうごいていき結果はでます。

書くことによって、あなたの潜在力が生かされて読み手が共鳴すれば、読み手に、共感・納得・発見などの心の動きが生じれば、やがてそれは読み手の内部で大きな振動となって、読み手自身の潜在力を揺さぶりおこすことになるでしょう。そういうふうに人につたわる、人を揺する文章を目指していきましょう。

そしてあなたにしか書けない かけがえのない文章が生まれておたがいの潜在力が生かされたとき、あなたと相手とが出会ったことは意味をもちます。あなたが書いたものは相手にとってもかけがえのないものになります。




文章を書くことは、人がおこなう情報処理の観点からとらえなおすとアウトプットにあたります。

すると かんがえることはプロセシングにあたります。周囲の期待に自分をあわせるのではなく、みずからかんがえるということはプロセシングを主体的にすすめるということです(下図)。

150218 メッセージ
図 かんがえることはプロセシング、文章を書くことはアウトプット
 
 
プロセシングをすすめていくと誰かにつたえたいメッセージがかならず生じます。そのメッセージを言語にして発信していくのが文章を書くことであり、アウトプットすることです。したがってアウトプットとはみずからの主体性のあらわれです。

このように文章とは、文章を書く以前に存在した自分のメッセージを文章にしてあらわしたものであり、そこには、それをつたえるべき相手(個人あるいは人々)がかならず存在します。つたえる相手を具体的に想定し、メッセージを明確にして文章化をすすめていくとよいでしょう。

そしてあなた自身の道をぜひ切りひらいていってください。


▼ 注
山田ズーニー著『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(PHP新書)PHP研究所、2001年10月31日
伝わる・揺さぶる! 文章を書く (PHP新書)




すべての出来事を平面的に記述するのではなく、全体の結果を決める急所をとらえて、それを中心にして文章化をすすめるのがよいです。


文章はどうしたら上達するのか。週刊朝日編『私の文章修業』(朝日新聞社)では、それぞれの分野で名文家として定評の多彩な顔ぶれの52人がご自身の体験を通して会得したコツを披露しています。文章修業のためにとても参考となります。

わたしは特に、音楽評論家の吉田秀和さんの「相撲と批評」(注)が印象にのこりました。

吉田さんは大の相撲ファンだったそうで、相撲のテレビ中継をみて、その勝負の経過をなるべくくわしく正確に記述する練習をしていたそうです。そうしているうちに次のことに気がつきました。


土俵上で起こったすべてが同じように重要なのではなく、勝負には勝負を決する「急所」というものがある(中略)。

出来事を出来事の流れに沿って平面的に見てゆくだけでなく、その決定的瞬間をいちはやく把え、その重要性を正確に評価できるかどうか、そこに勝負を見る核心があり、ひいては記述の急所がある。


つまり、一連の出来事のなかの決定的瞬間をとらえて、その急所がうかびあがるように書くべきであって、すべての事項を平均的に書きならべるべきではないということです。


 

ある出来事や現象は時間の流れに沿っておこるわけですから、経過をおってそれらを順番に記述することは可能です。

しかしおこったことのすべてが平等に重要なのではなく、その時間の流れのなかで、ある特定の出来事が特定の場所でおこったことによって全体の結果が決まったということに気がつかなければなりません。

出来事とはそもそもそのようなものであり、書き手はその急所にまず気がつかなければなりません。そして書く。かなりの修業がいります。



具体的には次のようにするとよいでしょう。

ある一連の出来事をみて、たとえば10の取材をしたら、急所となる一件の出来事(情報のひとまとまり)を選択してそれをくわしく書きます。そのほかの事柄についてはその急所を補強するように簡潔に追記するようにします。

急所となる情報をえらびだすときにいくつもの情報を評価することになります。たくさんある情報の全体をみて、これは重要でない、これはある程度重要だ、これはもっとも重要だなどとランクづけするのです。それから書きすすめます。 




それにしても、吉田秀和さんは音楽評論家であり、音楽評論を書くのに相撲とはおもしろい修業法です。吉田さんにとって、当時の相撲解説者・神風と玉の海の両氏は、文章修業だけでなく音楽評論の勉強の上でもかけがえのない先生であったそうです。

文章術(作文法)には、分野をこえた共通の本質があることがわかります。
 

▼ 注




旅行記を書くということは、旅行の体験をとりまとめてアウトプットすることです。アウトプットすることによって情報処理は完結します。
 

轡田隆史著『10年たっても色褪せない旅の書き方』(PHP新書)(注)は、旅行記を書いて「自分らしい旅」を実現させることを提案しています。


目 次
第1章 観光客から「旅行家」にヘンシンする法
第2章 「自分らしい旅」の演出&観察法
第3章 「いい文章」のマネをする技術
第4章 「最初の1行」を書きはじめる技術
第5章 他人に読んでもらえる文章の「基本」


著者の轡田隆史さんはいいます。

「書く」という行為を前提にして初めて、「自分らしい旅」は可能となる。
うまい下手なんて関係ない。まず観察し、考え、書いてみよう。


旅行記を書くときにはさまざまな出来事を総花的に羅列するのではなく、感動したところを集中的に書いた方がよいです。

そのためには旅行にでかける前から「ネライ」をさだめておくようにします。ネライをさだめた文章はいきいきとしてきます。仮に団体旅行であってもそのネライに意識を集中して観察すれば、ほかの人びととは一味ちがった旅をしたことになるでしょう。

すると「観光客」ではなく「旅行家」の旅を自由な気分でたのしんだことになり、「観光客」から「旅行家」への変身も可能になります。




旅の感想文はみんな同じようなものになりがちですから、読んでもらうためにはできるだけ具体的に書かなければなりません。たとえば旅先で出会った人も店も食べ物も、名前を大切にあつかって具体的に描きます。これは紀行文の基本です。地名を効果的にもちいるのも旅の文章の醍醐味です。歴史にまつわる事実を書きこめば観光客の文章が旅行家の文章に変わります。

旅先では、スケッチを描いたりや余白に走り書き(メモ)をしておくと、紀行文を書くときの記憶の助けになります。帰国してから「記録」と「記憶」をたのしみながら旅行記が書けます。

また決まり文句はなるべく避けた方がよいです。決まり文句はとても便利なようですが、昔からもちいられてきた表現をおもいついた瞬間、自分自身による現場での観察が放棄されてしまいます。決まり文句はなかなかやっかいな存在です。「美しい言葉」「難しい言葉」をさがすよりも「当たり前」の見聞に心をうごかされる旅の方がおもしろいです。




旅行からかえってきたら写真を見ながら誰もが旅を回想するとおもいます。しかし旅行での貴重な体験を文章にして書き出している人は意外に少ないかもしれません。

そこで旅行にでかける前の計画段階から「今回は、旅行記を書くぞ!」とつよく意識してみます。すると現地に行ってからの観察力は格段につよまります。ためしてみてください。そもそも観察とは自分の外の世界を意識することです。

そして帰宅したら見たこと感動したことを書き出してみます。文章にして書き出すことは情報処理でいうとアウトプットするということであり、情報処理はアウトプットまでやって完結します(下図)。現代では、ブログやフェイスブックといったツールがあるのでアウトプットはやりやすいとおもいます。

150215 旅行記
図 アウトプットまですると情報処理は完結する


アウトプットをしないと情報の流れはおこらず、情報は心の中で対流してしまいます。




旅行は計画するところからはじまります。計画は第1の旅です。そして現地をあるくことは第2の旅、旅行記を書くことは第3の旅であるといってもよいでしょう。こうして旅行は3回たのしめます。

書くことを前提にして、みずら計画し、自分らしい旅をし、感動を書き出す。ここに、「書くように旅をする」という旅の醍醐味があります。


▼ 注
轡田隆史著『10年たっても色褪せない旅の書き方』 (PHP新書) PHP研究所、2014年12月16日
10年たっても色褪せない旅の書き方 (PHP新書)

情報処理の一環として記憶法を実践し、情報を想起しながら書き出す(アプトプットする)ようにするとよいです。


記憶法とは具体的には〈記銘→保持→想起〉のことです。

記銘とは、経験したことをおぼえこみ定着させることです。保持とは、記銘された情報が心のなかで残存し維持される過程です。想起とは、保持された情報(経験)をおもいだすこと、おもいうかべることです。

現代の情報化社会においては、これらを、人間がおこなう情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の一環として実践するのがよいです。つまり、記憶法だけを単独でおこなおうのではなく、情報処理のプロセシングのひとつの技術として記憶法にとりくむのです(下図)。

160126 記憶法
図 記憶法はプロセシングのひとつの技術




たとえば日記を書くときはどうでしょうか。

日中、わたしたち人間は、見たり聞いたり味わったりというように感覚器官をつかって膨大な情報を意識の内面にインプットしています。

インプットされたそれらの情報のなかで重要なことについては記銘するようにします。記銘された情報は心の中で保持されます。

そして夜になって自室にもどったら、その日の体験(保持された情報)を想起しながら日記を書き出していきます。つまりアウトプットします。想起して書き出すというところがポイントです。具体的には、日中の出来事をイメージとしておもいうかべながら、それらを言語にして表現していきます。




このような記憶法を実践していると、記憶力をつよめるだけでなく情報処理能力が高まってきます。書く力、アウトプット能力が向上します。

そうだとすれば、アウトプットすることを念頭において記憶法を実践することにはとても大きな意義があるということになります。あるいは記憶法とアウトプットを念頭においてインプットをおこなうのです。よくできたインプットと記憶法はよくできたアウトプットをもたらします。

そしてそのためには、そもそも自分は本当は何に興味があるのか、どの分野にチャレンジしたいのかといった課題設定を明確にしておいたほうがよいです。
 

課題設定→〔インプット→プロセシング(記銘→保持→想起)→アウトプット〕


課題が明確に決まっていれば、インプットされた大量な情報のなかで何を記銘すればよいかも明確になります。何を記銘し保持すればよいかという自分なりの情報の評価ができます。課題設定は情報処理の全過程にひびいてきます。課題は重要です。




現代では、インターネットが発達したために、たいていのことは検索すればでてきますし、クラウドのデータにもすぐにアクセスできます。移動中でもモバイルがつかえます。時代は本当に変わりました。したがって何でもかんでもすべてを記憶しておく必要はなくなりました。

それでは記憶法はもはや必要なくなったのでしょうか?

そうではありません。記憶法は、情報化社会においてあらたな意義をもつようになりました。従来のような丸暗記をするのでななく、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムを意識して生活し、情報処理の体系のなかにくみこんで記憶法にとりくんでいくことが重要です。そして自分らしいアウトプットをつねに出していくのです。





旅先や取材先での体験のひとまとまりを圧縮・統合してメモを書きだし、体験のファイルをつくり記憶するとよいです。

昨日のブログ記事で、情報を圧縮・統合してファイル名をつけることをのべました。

情報を圧縮・統合してファイル名をつける >>


この方法は、旅先・取材先などでメモをとるときに応用できます。
 
メモをとるとはどういうことでしょうか。メモとは、見たり聞いたり味わったりしたこと(インプットした情報)の中で特に重要だと感じた情報についてキーワードなどを書きだして記録することです。つまりメモをとるとはアウトプットをするということです(図1)。

 
160113 メモ
図1 インプット→プロセシングの結果を
アウトプットしてメモを書きだす


見たり聞いたりしたことの全体を体験とよぶならば、メモは、体験のひとまとまりをうまく圧縮・統合したものの方がよいです。キーワードやキャッチフレーズなどをつかった適切なメモは、メモを見ただけで、体験のひとまとまりをすぐにイメージとしておもいおこすことができます。

旅先や取材先でメモをとるときには、現場での行動の区切りなどをうまくとらえて、体験のひとまとまり(ひとかたまり)を意識しイメージすることがポイントです。

こうして体験のひとまとまりに適切なメモをつけるとメモはその体験の見出しになり、それは情報の一単位になって一種の ”ファイル" としてあつかえます。メモは "ファイル名" です。メモを書きだすと同時にファイルができるというわけです(図2)。
 

160113 体験ファイル
図2 体験とメモとがセットになってファイルができる
(体験は情報の本体、メモはファイル名である)


ファイルを図2では球でモデル化しています。そしてこのファイルは、自分の心(意識)の中に記憶という形で保存されます。




たとえば旅先のある1日に10個のメモを書きだしたとしましょう。するとそれは10個のファイル名をつくったことになります。10個のメモは10個のファイル名であり、10個のファイルができたことになります。

そしてそれぞれのメモ(ファイル名)を見れば、そのメモがしめす体験のひとまとまりをイメージとして想起できるわけです(注)。これは、コンピューター・ファイルにおいて、ファイル名をダブルクリックあるいはタップして情報の本体を閲覧することと似ています。

  • 体験を圧縮・統合してメモを書きだす。
  • メモを見て体験を想起する。

単なるメモであってもこのようなことをちょっと意識するだけでそれは情報処理の訓練になります。メモをとるその瞬間に情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)はおこっているのです。たったひとつのメモにも情報処理やファイルの原理がふくまれています。メモはバカにできません。




このような体験のファイルは、コンピューターのファイル・システムと類似しています。コンピューターではストレージにファイルを保存しますが、わたしたち人間は心の中に記憶し保持します。

いずれにしても情報のアウトプットによりファイルができ、ファイルは情報の本体と表面構造とから構成され、ファイルは保存されるという仕組みを理解してつかっていくとよいでしょう。



▼ 注:メモのつかいかたの例
メモ(ファイル名)を見ながら体験を想起して文章を書いたり、複数のファイルを編成、統合しながら文章化をすすめるといったつかいかたがあります。

▼ 関連記事
その時その場で点メモをつける - 取材法(11)-
取材法をつかって現場をとらえる - 取材法のまとめ -


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ファイル名をつけるときには、情報を圧縮・統合することをつよく意識するとよいです。

わたしたち人間は、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をする存在です。

現代では、プロセシングの結果をアウトプットするときにパソコンなどのデバイスをつかいます。デバイスをつかってアウトプットすると1つのファイルができあがり、そのファイルはストレージ(記憶装置)に保存されます。ファイルとはデータや情報のひとまとまりのことであり、情報のもっとも基本的な単位としてきわめて重要なものです。(図1)

160112 アウトプットしたファイル
 図1 プロセシングの結果をアウトプットしてファイルをつくる


パソコンその他のデバイスでつくったファイルは、情報の本体とそれにつけたファイル名とから構成されます。ファイルをモデル化すると図2のようになります。

160112 ファイルの構造
図2 ファイルは、情報の本体とファイル名とから構成される


情報のひとまとまりであるファイル全体を球にモデル化すると、ファイル名は、ファイルの上部構造あるいは表層構造ととらえることができます。パソコンその他のデバイスでは、ファイルをストレージに保存するためにはファイル名をかならずつけなければなりません。そしてファイル名をダブルクリックあるいはタップすると情報の本体が閲覧できる仕組みになっています。




情報のアウトプットという観点からは、情報の本体をいかに生みだすかということも大事ですが、ファイル名のつけ方もとても重要です。今回はこの点を強調したいとおもいます。

ファイル名は、情報の本体を適切に圧縮・統合した見出しになっていなくてはなりません。また他のファイルと区別ができ混乱がおこらないような名称になっている必要があります。そのためにはキャッチフレーズ的な言葉がしばしば役立ちます。

適切なファイル名をつけておけば、あとでファイル名を見ただけで情報の本体がイメージでき、ダブルクリックをしてファイルの中身をいちいち見る回数を減らすことができます。ファイル名を適切につけておけば、その後の情報処理の効率を上げ、そしていくつものファイルを編成してもっと大きなファイルを効果的につくることもできます。アウトプットによりファイルが増えれば増えるほどファイル名は重要になってきます。

このようなことは、ブログの記事にタイトル(見出し)をつけるときにも意識しなければなりません。また新聞記事の見出しにも同様な原理がはたらいています。




簡単なことのようですが、ファイル名をつけるときにはこのようなことを意識することが大切でしょう。
 
そもそも情報のアウトプットの本質は情報の統合にあります。通常は、プロセシングの結果をすべてアウトプットすることは不可能であり、またそのようなことをしても意味がありません。情報は、統合してアウトプットしてこそメッセージが相手につたわります(図3)。

160112 アウトプット
図3 情報を統合してアウトプットする

 
ファイル名をつける作業には情報を統合する作用がおのずとはたらくわけです。したがってファイル名を意識してつけることをくりかえすことは情報を統合する訓練になり、ひいては、情報のアウトプット能力を高めることにつながってくるでしょう。



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ワープロソフトをつかうと、メモを箇条書きにし、箇条書きを文章にしながら、情報を並列的に編集することができます。

見たり聞いたり取材したりしたら(情報を内面にインプットしたら)重要な事柄についてはメモをのこしておくのがよいです。メモをのこすあるいは記録をとることは人がおこなう情報処理の観点からはアウトプットにあたります(注1)。

そしてメモから文章化をすすめるにあたっては次のような方法があります(注2)。

  • 一つのおよその課題を決める。
  • 関連するメモをワープロソフトに表示させる。
  • 前後を入れかえたりしながら、メモを統合したりメモに肉付けをして数項目にわたる箇条書きにする。
  • 箇条書きの順序を入れかえ、もっともすわりのよい配置、ながれのよい順序にする。
  • それぞれの箇条書きに肉付けをしふくらませて段落にする。
  • 段落があつまれば文章になる。

ワープロソフト、とくにそのアウトライン機能をつかうとこのような並列的な編集が可能になります。現代では、前から後ろにむかって順番に直列(一次元)で文章を書く必要はなくなりました。これは、原稿用紙に手書きをしていた時代にはできなかったことです。

たとえるならば画家が絵と描くときに、キャンバスにむかって左上をまず完成させて、次に右上を完成させて、次に真ん中を完成させて、つぎに左下を完成させて、最後に右下を完成させるといった直列的な描き方はしないでしょう。スケッチをして下絵を描いて、全体的に色をつけていくでしょう。つまり画家は並列的に描いているのです。

ワープロが出現したために今日では文章も、絵を描くように並列的に編集できるようになりました。このようなことは今では当たり前すぎることかもしれませんが、並列的編集の本質は空間をつかうことであることを今回は強調しておきたいとおもいます。空間をつかってイメージをしながら文章を書くのです。

このことがわかると、たとえば三次元空間をイメージしながら文章を編集できると、階層構造のあるインパクトのある文章が書けるということになります。


▼ 注1
人間がおこなう情報処理の観点からは、メモすることも、箇条書きにすることも、文章化することもすべてアウトプットにあたります(下図)。

151228 メモ
図 メモすること、箇条書きにすること、文章化することはアウトプット

▼ 注2
メモから箇条書きがおもように書けないとき、あるいは箇条書きから文章化がスムーズにすすまないときは、メモと箇条書きのあいだ、箇条書きと文章化のあいだに睡眠をとるとよいです。睡眠はプロセシングをすすめます。


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Mac では、Control キーと組み合わせたショートカットをつかうと日本語で文章を書くときに便利です。

Mac OS X El Capitan になってライブ変換機能が追加され、日本語で文章を書くのがはやくなりました。日本語をさらに快適に打つために、Control キーとの組み合わせショートカットをつかうと便利です。

US English キーボードをつかっている人は、caps lock キーを control キーに設定します。

「システム環境設定」→「キーボード」→「修飾キー」

151222 キーボード

「Caps Lock キー」を「Control」に変更します。
151222 Capslock


便利なショートカット

Control + a 行頭に移動(a: アルファベットの最初の文字)
Control + e 行末に移動(e: end)

Control + f 1文字すすむ(f: forward)
Control + b 1文字もどる(b: backward)

Control + n 次の行(n: next)
Control + p 前の行(p: previous)

Control + k カーソル位置から行末までを削除(kill)
Control + y その削除したものを貼り付ける(yank)

Control + h カーソルから1文字もどって削除
Control + d カーソルから1文字先を削除


ホームポジションからの移動がほとんど必要なくなるので便利です。





自分自身のアウトプットを見直せば、自分のプロセシングの状態をチェックし、自分の心の中をとらえなおすことができます。

自分で自分を見ることは非常にむずかしいことです。たとえばシェイクスピア劇のなかの「ファルスタッフ」も「ヴェローナの二紳士」も「オテロ」も自分で自分が見えていないのです(注)。

わたしたち観衆は客席から客観的に見ているので「彼には自分が見えていない」ということがわかりますが、当のご本人は自分で自分を見ることはできません。

それでは自分で自分を見るにはどうすればよいでしょうか?

たとえば鏡をつかってみます。鏡をつかうと、自分の顔や姿のフィジカルな様子はうつしだされます。しかし自分の心の中までは見えません。あるいは「胸に手を当ててかんがえる」などという人もいいますが具体的には何がわかるのか、効果があがりません。

そこでどうすればよいか。

そこで自分自身がアウトプットしたものを見直すようにします(下図)。

151217 アウトプットしたもの
図 自分がアウトプットしたものを見直して自分の心の状態を知る
 

人間は、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をする存在であることは現代ではあきらかであり、アウトプットとは、自分の心(意識)の中でおこったプロセシングの結果を外界にあらわしたものです。自分がアウトプットしたもの、たとえば書き出したものはすべて、100%、自分自身の心の中から出てきたものです。あるいは自分の動作や行動もすべて、100%、自分の心の中から出力されたことにほかなりません。

つまり、自分自身がアウトプットしたものは自分自身のプロセシングの状態を反映しているのであり、アウトプットは心の中をはっきりとうつしだしているのです。それは自分の心であって他人の心では決してありません。

したがって自分自身がアウトプットしたものを見直せば、自分自身の心をとらえなおしてその状態を自覚することができます。インプットとプロセシングは適切におこなわれていたかどうか? 情報処理にエラーはなかったかどうか?・・・

動作や行動を見直すにはビデオを利用するのもよいです。自分の言動を撮影してみるのです。横綱の白鵬は、自分の取り組みをビデオで毎日みて確認しているそうです。また音楽家は自分の演奏を録音して、演奏を聴き直してたえずチェックをしています。

このように情報処理の仕組みを理解し、アウトプットを見直して自分の心の状態を知ることは、つまり自分で自分を見ることにつながります。とても重要なことです。

アウトプットは人をあらわします。アウトプットを見れば人がわかります。


▼ 注
「自分が見えていない」をキーワードにして - シェイクスピア -



情報処理をすすめるためには、本を読んだら、書き出し(アウトプット)をかならずおこなわなければなりません。

人を、情報処理をする存在としてとらえた場合、情報のインプットの手段として本を読むことが重要であることはあきらかです。高度情報化社会になって情報があふれかえる今日、速読法を習得した人もふえてきています。

しかし今回は速読法ではなく、読書後のアウトプットの必要性について強調しておきたいとおもいます。

速読にせよ通常の読書にせよ、本を読むことは情報を意識(心)の内面にインプットすることです。そして著者のメッセージを理解したり、本の内容を記憶したりイメージしたり、自分なりに考察をくわえたりすることはプロセシングです。さらにプロセシングの結果を書き出すことはアウトプットです。このアウトプットまでおこなってはじめて情報処理は完結します(下図)。

151217 本を読む
図 本を読んだら、書き出しをおこなう


アウトプットをおこなわないと情報処理は中途半端な状態で放置されることになり、これが一番いけません。心の中で決着がつかないのです。

いそがしければ感想を3行かき出すだけでもよいのです。とにかくアプトプットまでしっかりおこなうことを心がけなければなりません。

なお書き出しをおこなうことを念頭において本を読むとインプットも効果的になります。



見たり聞いたり読んだりしていろいろな情報をインプットしたら、書き出しを積極的におこない情報の流れを生み出すとよいです。

人がおこなう情報処理〈インプット→プロセシング→アウトプット〉とは自分を主体とした情報の流れにほかなりません。

しかし自分の意識(心)の内面にせっかく情報をインプットしても、そのままにしてアウトプットをおこわないと情報の流れが生じず、心の中に情報が滞留して堂々巡りがおこります。

したがっておりにふれて書き出しをおこなっていくのがのぞましいです。課題を明確にして自分の思いをアウトプットしていくべきであり、また何らかの問題が生じたときには、そのときこそ情報処理をすすめるチャンスだととらえてアウトプットをしていくとよいでしょう。

心の中にある情報を積極的に書き出すと情報の流れがよくなり、心の中もすっきりします。そして人生とは情報の流れであるととらえなおすこともできます(下図)。現代では、ブログやツイッターやフェイスブックなどのツールもあるのでアウトプットはやりやすくなっています。

151215 情報のながれ
図 アウトプットして情報の流れを生み出す


意識して書き出す(アウトプット)する意義は大きいとおもいます。


レポートや論文などは「前書き」「本文」「結論」の順で構成され、この3段階は問題解決のモデルとしてもつかえます。

レポートや論文あるいは論説文は「前書き」「本文」「結論」という3段構成に通常なっています(図1)。自然科学の論文も基本的にはこのような構成になっています。


151213 報告書や論説文
図1 レポートや論文の構成


前書きでは、主題(テーマ)をめぐる情報を概観あるいは大観して、世界情勢や背景、これまでの研究史などの全体状況を簡潔に記述し、主題を選択した理由を明確にのべます。

概観をして主題を明確にするというとことがポイントです(図2)。また前書きの字数は少なめにしてダラダラと書かないようにした方がよいです。


151213 概観と主題
図2 概観したら主題を明確にする
 

本文では、選択した主題を徹底的にほりさげます。主題に関する専門領域や重要ポイントに集中します。見たり聞いたり調べたこと、観測・実験・分析の結果などをくわしく書くことになります。字数は多くなり章立てが必要になる場合が多いです。

そして結論では、本文で記載した内容を要約してまとめます。感想あるいは考察もくわえた方がよいです。要約するときには、前書きで概観したことを背景あるいは前提にして要約をするようにします。多量多種な情報を要約することは主題をめぐる本質へのアプローチにつながります。


このような執筆の3段階は問題解決の3段階モデルとしてそのままつかえます。

第1の段階では情報を概観します。第2の段階では主題(ポイント)をふかくほりさげます。第3の段階では情報を要約します(図3)。第1段階の最後で主題(ポイント)を明確に選択することが第2段階へのスムーズな移行を可能にし、また主題(ポイントあるいは局所)が適切に選択できると第2段階はうまくいくことになります。


151213 3段階
図3 問題解決の3段階

 
ここには、大局観、小局観、本質追求という情報のとらえかたの変化があることに注目するとよいでしょう。


151213 大局観
図4 情報のとらえ方の変化


情報処理をする存在として人間をとらえた場合、文章を書くということは情報をアウトプットをすることであり、執筆された文章はその人自身の情報処理の結果をあらわしています。このような観点から、上記の3段階の各段階の内部において情報処理がくりかえされるということがわかります。

情報処理は漠然とおこなうよりも、上記のような問題解決の3段階を意識しておこなった方が効果があがるとおもいます。


本多勝一さんの「日本語の作文技術」をつかうとわかりやすい日本語そして達意の日本語を書くことができます。

情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の最終場面において書いてアウトプットするケースは非常に多いとおもいます。書くということはアウトプットのもっとも基本的な手段といってよいでしょう(注1)。

151207 日本語を書く
図 日本語を書いてアウトプットする
 

また自分が書いたもの(アウトプットしたもの)を折にふれて見直すことにより、自分自身のプロセシングの進行状況や心の状態をとらえなおすこともできます。アウトプットしたものはプロセシングの結果や心の内面を反映したものにほかなりません。

* 

作文の技術を身につけることは、日本人にとってまた日本語を勉強している外国人にとってさけてはとおれない課題になっています。

ここでいう作文はアウトプットの手段である以上、読み手にとってわかりやすい文章を書かなければなりません。そのために役立つのが本多勝一さんの「日本語の作文技術」(注2)です。わたしは約30年にわたってつかってきて大変つかい勝手がよいと感じています。

「日本語の作文技術」の基本的原則は「修飾の順序」と「読点のうちかた」です。
 

修飾の順序
  • 長い修飾語ほど先に
  • 句を先に

読点のうちかた
  • 長い修飾語:長い修飾語が二つ以上あるときその境界にうつ
  • 逆順:語順が原則の逆になったときにうつ


これらを習得するだけでもかなりわかりやすい日本語になります。1週間ぐらい集中して練習をすれば基本はすぐに習得できるのではないでしょうか。あとは実践をつみかさねればよいです。学生であれば、レポートや卒論で文章を書くときに「作文技術」をあわせて練習すればよいでしょう。


「作文技術」をつかうにあたって、わたしたち一般の者が文法学や日本語学に深入りする必要はありません。徹底的につかってみてこれはつかえるとおもえばつかえばよいし、つかえないとおもえばつかわなければよいわけです。技術とはそういうものです。

たとえば車の運転技術をおぼえるときにも自動車工学に深入りする必要はまったくなく、自動車工学がわからなくても車の運転はできます。そしてトヨタがいいか日産がいいかホンダがいいか、つかってみて決めればよいし、つかえるとおもったらどんどんつかえばよいのです。

「日本語の作文技術」をつかって書いた人の文章を読んでみた経験からいっても、この技術をつかた人の日本語は大変わかりやすいです。わかりやすい文章は達意の文章になります。達意の文章が書けるようになることを目標にして「作文技術」を訓練していけばよいのではないでしょうか(注3)。


▼ 注1
情報処理は、アウトプットまでおこなってはじめて完結するのですから積極的にたくさん書くことが重要です。本を読んだりテレビを見たりしてもそのままにしておくと情報処理をしたことにはなりません。いそがしければ1ツイートをするだけでもよいのです。アウトプットまでおこなうことが大切です。

▼ 注2
本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日文庫)1982年1月14日

▼ 注3
「日本語の作文技術」をつかって書いた人の文章はわかりやすいということは、いいかえるとそれをつかっていな人の文章はわかりにくいということです。わたしは仕事の関係でフェイスブックやツイッターやブログなどをよく見ますがわかりにくい文章が結構おおいです。わかりにくい文章は、読みなおしを何回もしなければならないのでストレスを読み手にあたえてしまい、アウトプットとしては不適切な結果となります。「日本語の作文技術」は一度 習得してしまえば一生つかえるのではやめに身につけてしまった方がよいでしょう。

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文章を書くことによってさまざまな情報を統合してアウトプットすることができます。

わたしたちは、自分の心のなかに膨大な情報を日々インプットしています。インプットされた情報は心のなかでのプロセシングをへてアウトプットされることになります。文章を書くということは、インプットそしてプロセシングの結果をアウトプットすることにほかなりません。

そのとき、インプットされた情報のすべてをアウトプットすることなど不可能でありまたその必要もありません。新聞記者の本多勝一さんは「10 の取材をしたら1か2の記事を書く」とのべています(注)。つまりある課題のもとで 10 のインプットをしたら1か2のアウトプットをするというのがひとつの目安といってもよいでしょう。

したがってアウトプットするとは、多量で多様な情報を圧縮し統合することであるということになります。情報の統合こそアウトプットの本質であるとかんがえられます(下図)。そもそも言語には情報を統合していく作用があるといえるでしょう。

151204 統合
図 情報を統合してアウトプットする


たとえば日記を 10 行で書いたとします。それは、その日1日にインプットされたこと(その日1日の体験)を統合して 10 行にしてあらわしたということです。
 
このようにアウトプットをすることは情報を統合することであるという意識をつよくもって訓練をすすめていくとよいでしょう。


▼ 注
本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日文庫)1982年1月14日
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わたしたち人間は書くことによって情報処理能力を向上させることができます。

人間は、見たり聞いたり味わったりしながら自分の意識(心)の内面に大量の情報をつねにインプットしています。

インプットされた情報は自分の意識の内面においてプロセシング(処理)がすすみます。

そしてプロセシングの結果を書いたり話したりすることによってアウトプットします。

このアウトプットの場面で文章を実際に書いてみるとインプットとプロセシングの状態が点検でき、それらが不十分だったことを自覚することができます。(下図)。

151204 点検
図 アウトプットで書くことによってインプットとプロセシングを点検する


たとえばインプットした情報が少なかったり不正確だったことが書いてみるとよくわかり、見る力や聞く力などをもっときたえようということになります。

インプットにひきつづく場面では、自分の潜在意識にブレーキがかかっているとプロセシングがすすまず、何も書けないということがわかります。ウンウンとうなって無理に書こうとしても書けません。プロセシングがまだおわっていないのです。そのようなときは睡眠をとった方がよいです。

自分の好きな分野や興味のある課題にとりくんでいるかどうかということもプロセシングにはとても大きく作用します。好きな領域にいるとスイスイとプロセシングがすすむというわけです。この点は非常に大きな問題です。

また書くときには、意識のなかにある記憶から必要な情報をひっぱりださなければなりません。必要なときに必要なことをすみやかにおもいだせるようにするにはどうすればよいか。つまり想起力をつよめようということになります。

このように実際に文章を書いてみると、自分のおこなったインプットとプロセシングの状態が点検でき、結果として、インプットとプロセシングのそれぞれの能力を高めようということになってきます。たくさん文章を書くことはみずからの情報処理を向上させることにつながるのです。


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Mac OS X の最新バージョン「El Capitan」の日本語「ライブ変換」機能をつかうと日本語がスムーズに書けます。

Mac OS X El Capitan をインストールしてから約4週間がたちました。 El Capitan のあたらしい機能のなかには日本語の「ライブ変換」という機能があり、今回の OS のアップグレードのなかではこれがもっとも大きな進歩だったと感じています。

これまでの日本語システムは、平仮名を打つ →「スペース」で漢字に変換 →「return」で確定でしたが、「ライブ変換」ではキーを打ちつづけるだけで自動的に漢字に変換されます。平仮名がづっとつづいて最後に漢字になるということでもありません。そして文章がある程度ながくなってくると自動的に確定されます。ただし適切に変換されなかった箇所があった場合には矢印キーをつかってアンダーバーを移動させてスペースキーで再変換できます。

スペースキーをおさずに漢字に変換されていくということは、スペースキーをおしながら変換候補のなかから言葉を選択する必要がないということであり、これによって思考が中断することなくスムーズに書けるといった感じです。


このようなことができるようになったのは変換精度が非常に高くなりそして学習機能が強力にはたらくからであって、Mac OS の機能がそれだけ進歩したということです。iPhone ユーザーの文字変換傾向などを読みとって、それをとりいれたからではないかとも言われています。

アルファベットとはちがい、コンピューターではとりあつかいにくい仮名漢字まじりの日本語という複雑な言語にとりくむうえで「ライブ変換」は大きな進歩の一つになったのではないでしょうか。

ただし「なんだかつかいにくい」という人は、メニューから「ライブ変換」のチェクをはずして従来通りにすることもできます。とくに自宅では Mac、職場では Windows という場合は、Windows にはライブ変換がないのでこんがらがってしまうということがあるかもしれません。そのようのときにはオフにできます。

01

 
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本多勝一著『日本語の作文技術』をつかいこなす - まとめ -


▼ 追記
日本語で書くという行為は、人間の情報処理でいうと情報をアウトプットするということです(下図)。

151202 日本語
図 日本語で書くことは情報をアウトプットすること





類語辞典をつかうとアナロジーのセンスをみがくことができます。

『新版 日本語使いさばき辞典』(東京書籍)は豊富な語彙のなかから場面に応じて適切な言葉をえらびだすための一種の類語辞典です。「五十音目次」という五十音検索ができるおもしろい目次がついているのが特色です。


目 次
愛・愛する
あう 合・会・逢・遇・遭
明るい・明らか
朝夕
貴方・貴方がた
改める・改まる
あらわす・あらわれる 表・現・顕
歩く・歩き
〔ほか〕


たとえば「思う・思い」という大項目をみると、そのなかにはいくつも「内容見出し」(中項目)があります。

「内容見出し」(中項目)の「心をひかれ、心を向ける意からみた『思う・思い』」をたとえばみると、そのなかには多数の「グループ」があります。

「グループ」のなかの「初めに思い立った気持ち・考え」の項をみると「初心・初志・初一念・初念」という単語群がでています。

つまり本辞典は、つぎのような階層構造によって体系化されています

  • 大項目
  • 内容見出し
  • グループ
  • 単語群


目次にでている各グループのなかでは意味内容の簡潔な解説が文でまずしめされ、そのうしろにその意味内容に対応する単語群が配置されています。解説文が上位階層に位置し、最下層に単語がでいているのが本辞典の特色です。

たとえば相手につたえたい何らかのメッセージがうかんだ場合、本書を参照してふさわしい単語をさがしだしてアウトプットするといったつかい方が有効でしょう(注)。


類語辞典にわたしがなぜ注目しているかというと、類語辞典をつかっているとアナロジー(類推)のセンスをみがくことができるからです。

そもそも人間は、既存の情報にあたらしい類似な情報をむすびつけてあたらしいことを理解し記憶していきます。またアナロジーによってあらたな発想がえられることもあります。アナロジーは、情報処理の重要な方法のひとつであるととらえるべきであり、アナロジーの合理化・技術化は情報処理と問題解決にとっての大きな課題だとおもっています。

本辞典をみていると、似ているか似ていないかは相対的なものであって絶対的なものではないことがよくわかります。類語は、周囲の状況によって微妙に意味や用法が変わってくるのであり、空間的な位置によって単語の意味は決まるともいえます。本辞典をみていると単語の周囲の状況が全体的にみえるのでそのようなことがわかってきます。


▼ 注
ここでいうアウトプットとは書いたり話したりすることです。

▼ 引用文献
東京書籍編集部編『新版 日本語使いさばき辞典』東京書籍、2015年7月14日
新版 日本語使いさばき辞典

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類語辞典をつかってアナロジーのセンスをみがく -『新版 日本語 使いさばき辞典』-

確認し表現するための道具として言語をつかう

▼ 追記
情報処理におけるアウトプットの場面において、アナロジーをつかって文章化をすすめる技術のひとつの事例(サンプル)として視覚的にわかりやすいのが「KJ法」とよばれる方法です。




情報処理のアウトプットの場面では、プロセシングでイメージしたことを言語をつかって確認し表現するようにします。

情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をする存在として人をとらえた場合、情報を記銘・保持・想起したり想像したりするときに、つまりプロセシングにおいてはイメージが大きな役割をはたすことを本ブログでは強調しています。

それではプロセシングの後につづくアウトプットではとではどうかというと、今度は、言語が大きな役割をはたします。言語をつかってアウトプットすると心の内面でイメージしたことを確認し表現することができます(下図)。また自分のメッセージを相手につたえることができます(注1)。

151129 確認・表現
図 言語をつかって確認し表現する


言語は、確認と表現のための道具として非常に有効であり、またイメージを言語でとらえなおすとそれまでよりもイメージが鮮明になってきます。

このようなことを意識してアウトプットの場面で言語をつかっていくとよいでしょう(注2)。


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位置情報として単語を処理する -『分類語彙表』-
日本語表記の目安を知る -『新しい国語表記ハンドブック 第七版』-
取材の結果をブログにアウトプットする - 取材法(14)-
たとえることによってメッセージをつたえる - 中村明著『分類 たとえことば表現辞典』-


▼ 注1
本項では言語についてのべましたが、心のなかでイメージしたことをイメージとしてそのままアウトプットする方法もあります。あるいは言語とイメージとをくみあわせてアウトプットする方法もあります。

▼ 注2
アウトプットをすると、それまでのインプットとプロセシングが適切であったかどうかを確認・検証することができ、〈インプット→プロセシング〉のやり方を改善していくためのヒントもえられます。





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