発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

タグ:仮説法

161012 ひらめき
図1 記憶・判断・直観・ひらめきはプロセシング
 
記憶・判断・直観・ひらめきは、人がおこなう情報処理のなかのプロセシングに位置づけられます。情報をとりいれたら(インプット)したら睡眠をとるのがよいです。

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ティラノサウルス(交差法で立体視ができます)

国立科学博物館で開催中の「恐竜博 2016」にいくと、恐竜の進化に関する展示・解説をみながら、想像や推理がどのようにすすめられているかを知ることができます。

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〈1. 大観 → 2. 分析 → 3. 総合〉の3段階をふむと認識がふかまります。


たとえば目の前に象がいたとします。対象からある程度はなれて全体を見ればそれが象だと誰でもすぐにわかります。全体を見ることは大観とよんでもよいでしょう。

それに対してたとえば分子生物学者は、象の細胞をとりだしてくわしくしらべます。これは分析といえます。

もうひとつ別の方法があります。たとえば「群盲象を評す」というおしえがあります。
 

あるとき、目の不自由な人たち6人が象をさわりました。
 
足をさわった人は「柱のようです」と言いました。
尾をさわった人は「綱のようです」と言いました。
鼻をさわった人は「木の枝のようです」と言いました。
耳をさわった人は「扇のようです」と言いました。
腹をさわった人は「壁のようです」と言いました。
牙をさわった人は「パイプのようです」と言いました。


象のことなる部分をそれぞれにさわればたしかにこのように感じるとおもいます。

しかしこのままでは象の本当の姿はわかりません。そこでこれらの情報(データ)すべてを総合して、またそれぞれの部分の空間的な配置をとらえて象の姿(全体像)を想像することが必要になってきます。象の全体像がわかれば、象の部分を実はさわっていたのだということにも気がつきます。これは総合の方法です(注)。




このように何かを認識する基本的な方法として大観・分析・総合の3つの方法があります。

ここでよく混同されるのが大観と総合です。

大観は、対象の全体を瞬間的に見る方法です。見ることができれば わかるわけです。それに対して総合は、断片的情報(データ)を集積・構築して「こうではあるまいか」と全体を想像する方法です。 両者はことなる方法ですので注意が必要です。


* 


たとえば地球を認識するとき、近年では、地球の全体を宇宙からとらえた画像やデータが簡単に手にはいります。このような情報をつかって地球の全体像を見るのは大観です。

それに対して、特定の地域のフィールドワークをしたり、地球の火山を集中的にしらべたり、地球の物質を研究したり、現地住民の暮らしをしらべたりするのは分析です。

そして世界各地に存在する断片的情報(データ)を集積・構築して地球の全体像や本質を考察するのは総合の方法です。




けっきょく、大観・分析・総合の方法は、それぞれの利点をいかしながら時と場合によってつかいわけていくのがよいでしょう。そのときに、まず対象を大観し、つぎに分析し、そして総合するという手順をふむと認識がふかまります(下図)。

160229 認識の方法
図 認識の3段階


認識がふかまるということは、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)がすすむということであり、問題解決の道がひらけるということです。大観・分析・総合という3段階のそれぞれの段階の内部で情報処理をくりかえしておこなうようにします。問題解決とは情報処理の累積です。


▼ 注
「KJ法」とよばれる方法は総合の方法を技術化したものです。


自分にとって居心地のよい場所に身をおくとあらたな情報処理がすすみアイデアが生まれやすくなります。


"Asahi Shinbun Degital &" で「アイデアの生まれるところ」という記事を特集していました。


デザイナーの人たち10数人に、「あなたにとって、アイデアの生まれるところはどこですか?」とインタビューしています。アイデア・着想・ヒント・イメージなどはどこで生まれているのか。一箇所にじっとして仕事をしているのではなく、「アイデアの生まれるところ」をデザイナーたちはそれぞれにもっているようです。


街を歩くのはここ2~3年の習慣で、コレクションに関わることを整理するため。(中略)情報があふれかえっている環境から距離を置き、街を歩きながら思考を巡らす中でアイデアを具現化していくことが多いんです。(木村晶彦さん)

博物館で見聞するものは、服作りのアイデアにつながります。たとえば、葉っぱの形や葉脈の模様はテキスタイルのディテールに。動植物の造形的な部分は、服のフォルムに活かされることもあります。もうひとつ、重要なインスピレーションは色彩。(中略)植物の色や貝の色などの自然の色やグラデーションは美しく、魅力的ですね。(廣川玉枝さん)

僕は自然豊かな岐阜県・高山市で生まれ育ちましたから、幼少期の原風景に似た環境に安堵(あんど)感を抱くのかもしれませんね。自然の中に身を置くことで、都会の喧噪(けんそう)や日々の活動から距離をとって、無心の状態で自分を見つめ直すことができます。(研壁宣男さん)

この場所に自分を置くことで体感できる開放感や感動は、ものづくりの動機や原動力にもなります。東京のギャラリーの中でもこれだけ巨大で、なおかつモダンで何もない空間というのは他にあまりないですよね。独特な抜け感と空気感があって、気持ちさえも解き放してくれる自由な感覚があるけれど、白い壁の存在感にはそれを抑制するような絶妙な緊張感がある。(八木奈央さん、勝井北斗さん)

パリから東京に戻ってきてすぐの頃ふらっと初めて科学博物館に来たとき、ふつふつとインスピレーションがわいてきたんです。自分のなかに蓄積しておけば、半年後か1年後、あるいはもっと何年も経ってから、コレクションのイメージのひとつとして浮上してくるかもしれない。この博物館に限らず、気になった場所には繰り返し行くことが多いんです。(堀内太郎さん)

インターネットの普及によって、“場所”というものが意味を持たなくなっているような気がしますが、人のアイディンティティーとしての場所は絶対に取り替えられない。自分の身体で場から感じる多くのことは、いつもアイデアのヒントになりますね。(堀畑裕之さん、関口真希子さん)


このようにアイデアが生まれる特定の場所がそれぞれにあるようです。人がいればどこでもよいということではありません。

人を、情報処理をする存在としてとらえなおしたとき、情報は環境から人へインプットされ、人から環境へアプトプットされます。つまり情報処理は人間が単独でできるものではなく、人間と環境とがセットになってはじめて可能になります。情報処理は、人間と環境との "共同作業" といってもよいです(下図)。

16227 アイデアの生まれるところ
図 情報処理のモデル

 
したがって場所を変えれば環境が変わり、インプットされる情報(刺激)も変わります。情報処理も普段とはちがったものになり、アウトプットもあたらしいものになります。

そうだとするならば、どのような場所に自分の身をおくかが重要になってきます。つまりは自分自身にとって居心地のよい場所に行けばよいのです。自然の中でも街中でも旅先でも、自分にとって居心地のよい場所は誰にでもあるとおもいます。もしなければこれからさがせばよいではないですか。

そのような居心地のよい場所にはもう一度 行ってみる。滞在してみる。そしてくりかえして何回も行くようにします。自分の生き方や自分の道をもっている人は自分の居場所をかならずもっているものです。居場所のある人は生きていきます。居場所がなくなると生きていくのが困難になります。

このように居場所はとても大事です。居場所を変えてみる。居心地のよい場所に身をおいてみるという方法はとても簡単なことですが、あらたな情報処理をすすめアイデアを生みだすために大きな効果がある方法といえるでしょう。

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沖縄美ら海水族館(入り口)


垂直軸を想定して、垂直方向のうつりかわりに注目すると海の生き物たちがよく整理されて見えてきます。


沖縄・海洋博公園にある沖縄美ら海水族館(ちゅらうみすいぞくかん、注1)は、世界的にみてもトップクラスのよくできた水族館です。とても大きな水族館であり、4階の入り口から3階→2階→1階へと、浅海から深海へもぐっていく構造になっているのが特色です。


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美ら海水族館の見取り図
 

各階のテーマはつぎのとおりです。
  • 3階:サンゴ礁への旅
  • 2階:黒潮への旅
  • 1階:深海への旅


■ 3階「サンゴ礁への旅」
サンゴの海:サンゴ礁とそこでくらす生き物が見られます。


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サンゴの海

 
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ユビエダハマサンゴ
(平行法で立体視ができます)

 
熱帯魚の海:太陽光がふりそそぐ浅瀬から薄暗い洞窟まで「熱帯魚の海」水槽はすべてつながっていて、そこにすむ魚たちを、海のなかにふかくもぐっていくいくように順番に見ることができます。


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熱帯魚の海



■ 2階「黒潮への旅」
深さ10m、幅35m、奥行き27m、容量7500m³の大水槽「黒潮の海」が圧巻です。ジンベイザメ、ナンヨウマンタ、トラフザメ、マダライルカなど、約70種の海洋生物がおよいでいます。


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黒潮の海
大きな魚はジンベイザメ。その名は「ジンタ」。 
 

この大水槽を水面から自由に観覧できる人気の「黒潮探検」コースもあります。スタッフによる解説もおこなっています。いろいろ質問してみるとよいでしょう。
 

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大水槽の上から見る


■ 1階:深海への旅
はなやかなサンゴ礁や大きく流れる黒潮の海とはちがう静かな世界がひろがっています。深海には不思議な形態をもつ生き物がおおく見られます。あまり紹介されることのなかった深海の多様な生き物たち約70種が展示されています。

 オキナワクルマダイ、マダラハナダイ、アオダイ、アカサンゴ、
 ムラサキヌタウナギ、オオグソクムシ、ドウケツエビ、フクロウニ、
 タカアシガニ、イモリザメ、ハマダイ、ノコギリザメ、など。
 

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深層の海


世界の海洋はその大部分が水深200mを超える深海でしめられています。そこはまだまだ謎につつまれた世界であり、その神秘性が印象にのこります。




沖縄美ら海水族館は、海をもぐっていく体験ができるところに大きな特色があります。海の生き物の垂直分布、海の垂直構造がよくわかります。

海の生物や海の世界を理解しようしとおもっても、海はひろすぎて何だかよくわからないといった感じがします。そこでおもいきって垂直方向のみに注目してみます。大きな海の空間に垂直の軸(浅深の軸)を1本いれてみます。その軸を基準にしてさまざまな生物を整理してみるのです。

このように垂直構造に注目すると、平面的に見ていたときにはわからなかったことがよく見えてきます。
160128 縦軸
図 垂直軸を想定して垂直方向に注目する



浅瀬から浅海・中層・深海へと、美ら海水族館の海の世界をもぐっていくと、生き物たちは見事にうつりかわっていくではないですか。生き物たちは垂直方向で「すみわけ」をしていたのです。

自然学者・今西錦司はかつて、「生物は、地球上ですみわけて共存し、またすみわけるように進化してきた」という「すみわけ」説を発想しました(注1)。

美ら海水族館を体験すると、この「すみわけ」説を検証することができます。浅瀬・浅海・中層・深海というそれぞれの場所においてそれぞれの生物がくらしています。生物の空間配置が海にはあります。それぞれの生物は「居場所」をそれぞれにもっています。「居場所」があるというところが重要です。




このような垂直軸をつかう方法は応用が可能です。

多様な情報がたくさんあってどうも整理がつかないというときに、1本の縦軸を想定してみて、その軸を基準にして多様な情報を配列してみると整理がつくことがよくあります。多様で複雑な情報が空間配置できるのです。同時に、情報の多様性も理解できてくるでしょう。


▼ 注1
沖縄美ら海水族館



▼ 注2
今西錦司著『生物の世界』講談社、1972年1月15日
生物の世界 (講談社文庫)

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プレートテクトニクスのモデルをつかうと地球の様々な自然現象を短時間で統一的に理解することができます。

木村学・大木勇人著『プレートテクトニクス入門』(講談社)は、地球科学の基本モデルであるプレートテクトニクスについて一般の人むけに解説した入門書です。地球科学が発展してきた歴史を順をおって説明しているので読み物としてもおもしろいです。
 

目 次
1章 大陸移動説の成り立ち
2章 海洋底拡大説からプレートテクトニクスへ
3章 地球をつくる岩石のひみつ
4章 海嶺と海洋プレートのしくみ
5章 なぜ動くのか? マントル対流とスラブ
6章 沈み込み帯で陸ができるしくみ
7章 衝突する島弧と大陸のしくみ
8章 プレートテクトニクスと地震


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最近は、巨大地震や火山噴火の仕組みがテレビや新聞などで解説されるときに「プレート」という用語がかならずでてきます。

地球の表層は、硬い岩石の板がジグソーパズルのピースのように分かれて覆っており、その一つ一つをプレートとよぶ。

「テクトニクス」とは一般には構造を意味し、地球科学では地質構造や地殻変動のことをあらわします。

プレートテクトニクスは、大陸の移動、海洋底の拡大、岩石の形成、海溝や陸や高い山ができる仕組み、巨大地震、火山噴火などの実にさまざまな自然現象を統一的に説明することを可能にします。

またプレートはなぜうごくのかという疑問に対しては「プレートとマントルが全体として対流する」からであるとかんがえられています。

地球は内部に熱源をもち、表面にプレートという冷却システムをもつ一種のエンジンのように見立てることができる。

地球の内部から表層までを全体的にダイナミックにとらえることが重要です。

プレートテクトニクスは方法論的にいうと基本仮説でありモデルです。モデルは多種多量な情報を統合し、複雑な現象の本質を体系的に理解することを可能にします

体系的・直観的に物事を理解したり、ある分野を高速で学習するためにモデルが役立ちます。地球科学にかぎらずどの分野でもよくできたモデルがあるとおもいます。何かをまなぼうとおもったらよくできたモデルをさがしだして活用するとよいです。


▼ 引用文献
木村学・大木勇人著『図解 プレートテクトニクス入門』(ブルーバックス)講談社、2013年9月20日
図解 プレートテクトニクス入門 なぜ動くのか? 原理から学ぶ地球のからくり (ブルーバックス)


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