発想法 - 情報処理と問題解決 -

情報処理・学習・旅行・取材・立体視・環境保全・防災減災・問題解決などの方法をとりあげます

カテゴリ: プロセシング

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アンハングエラ(翼竜目アンハングエラ科)
水面すれすれに飛んで魚をとって食べていたらしい(注1)

東京・上野の国立科学博物館の特別展「大アマゾン展」では、第1室で、アマゾンで産出した化石を紹介しながらアマゾン形成の自然史(進化)について展示していました。要約するとつぎのとおりです。

■ 約1億数千万年前(白亜紀初期)
ゴンドワナ大陸とよばれる巨大な大陸が分裂をはじめ、太平洋がひらきはじめた。

■ 約1億年前までに
南米大陸とアフリカ大陸が分離した。

■ 6500万年前〜3500万年前(新生代の始めの暁新世〜始新世)
アマゾンは温暖期であった。多様な生物相からなる熱帯雨林が存在したらしい。

■ 約3000万年前
地球規模の寒冷化がおこり、多くの生物が絶滅したらしい。

■ 約2000万年前までに
ナスカプレートの沈み込みが活発化してアンデス山脈が隆起し、アマゾン西部に湿地や湖があらわれた。

■ 約1000万年前
現在のアマゾン川に相当する東向きの流れが確立、現在いきている多くの生物の系統があらわれた。

■ おそくとも300万年前までに
パナマ陸橋の隆起により、北米大陸と南米大陸がつながった。両大陸のあいだで動物が移動した。さまざまな系統の絶滅もひきおこしたらしい。

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サンタナ層の魚類化石(注3)


会場では、アマゾン南東部のアラリペ高原に見られるアラリペ層群(約1億1千万年前、白亜紀中頃)からえられた化石群を展示していました。アラリベ層群は、大西洋がひらいたときにはじめて侵入してきた海の海際でたまった地層群です。そのなかにある、淡水の湖でたまったクラト層と、その後ラグーン(潟湖)でたまった上位のサンタナ層には化石がふくまれ、「化石鉱脈」として世界的に有名です。


今回の特別展の主題ではありませんでしたが、このような自然史の探究は歴史的・時間的に自然をとらえるということです。自然史は、直接は見ることができないので想像しなければならず、現在の自然を空間的構造的に見ることよりは一歩ふみこんだ認識になるかもしれません。
 
空間的に現在みられる多様性がどのような歴史で生みだされたのかを知ることは、未来を予想するためにも大切なことです。
 
空間的構造的に対象を見たら、つぎには歴史的時間的にもとらえなおしてみるとおもしろいとおもいます。


▼ 注1
アンハングエラは翼竜である。翼竜は、中生代に生息した空を飛ぶ爬虫類であり、サンタナ層はとくに大型の多様な種類をたくさん産出することで知られている。見た目には恐竜とはずいぶんちがうが、系統的にはかなり近縁の仲間である。

▼ 注2
国立科学博物館・特別展「大アマゾン展」

▼ 注3
南米の中生代魚類を代表する多様な化石。主な種類は、硬骨魚類のうち原始的な全骨類と、進化した真骨類のなかでは原始的な仲間、およびシーラカンス類からなっている。海生動物が見つからないことから、生息環境は淡水〜汽水環境で、地中海の前身であるテチス海の西端と浅い海で時々つながっていたとかんがえられている。

▼ 参考文献
『大アマゾン展』(公式ガイドブック)、発行:TBSテレビ、2015年3月13日

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生態系の階層構造をとらえる -「大アマゾン展」(5) -
人類の本来の生き方を知る - 伊沢紘生著『アマゾン探検記』-
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さまざまな種がすみわけて生態系をつくっている - 伊沢紘生著『新世界ザル アマゾンの熱帯雨林に野生の生きざまを追う』-
自然環境と共生して生きている人々がいる - アマゾン展 -


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東京都美術館

東京・上野の東京都美術館で開催されている特別展「新印象派 光と色のドラマ」を見ました(会期:2015年3月29日まで、注1)。20世紀へつながる絵画の革新をおしすすめた「新印象派」の誕生からの約20年間のながれを時間軸にそって紹介していました。

「新印象派」は「点描技法」という技法をつかって絵をえがきました。特別展図録のなかでつぎのように説明しています。

スーラは、パレット上で絵具を混ぜずに、画面に純色の小さな筆触を並べ、鑑賞者の網膜上で色彩が混ざるように制作を行った。(図録41ページ)

つまり「新印象派」の画家たちは、絵の具を画家が直接まぜて色をつくりだすのではなく、絵の具そのままの色を小さな点としてカンバスにひたすらおいていき、絵を見る人(鑑賞者)の視覚のなかで色がまざるようにしました(注2)。

目に見えた世界をカンバス上にそのまま再現したのではないため点描画はそれ自体では完成しておらず、展覧会場で鑑賞者が見たときに生じるイメージとして、鑑賞者の意識のなかで絵が完成することになるともいえます。おもしろいです。

情報処理の観点からこのことを整理すると、まず、鑑賞者が点描画に目をむけると絵に反射した光が目のなかに入ってきます。これはインプットです。そして目の中の網膜から脳へと情報が伝達され処理されて鑑賞者の内部でイメージが生じます。これはプロセシングです(図1)。プロセシングにより色は点ではなくなりイメージとして融合されます。絵のイメージはあくまでもわたしたち鑑賞者の内面に生じていることに注目してください。

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図1 色の点々がまざってあらたな色彩が生じる

展覧会場にいけばこのようなことを実体験することができます。絵にちかづいて見ると点描であることがわかり、絵からはなれてみると色がまざって風景画なり人物画として鑑賞できます(注3)。遠近によって見え方はまるでちがいます。今回の特別展は、視覚あるいは眼力に関するみずからの情報処理の様子を実験できる絶好の機会でした

このように絵は、ちかくで見ているだけだと意味がありませんので、ある程度はなれてじっくり味わうのがよいでしょう。そのためにはなるべくならすいている午前中のはやい時間に会場に行ったほうがよいとおもいます。


▼ 注1
東京都美術館・特別展「新印象派 光と色のドラマ」

▼ 注2
下記サイトでは、茂木健一郎さんらが視覚と脳の仕組みから点描技法に関してわかりやすく解説しています。

▼ 注3
会場には、色のブロックでつくった絵が展示されていました(これのみ撮影可でした)。ちかくで見ると色の点の集合であることがわかります(図2)。はなれて見ると色がまざって絵として認識できます(図3)。

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図2

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図3


▼ 参考文献
 


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遠くからみて、近くでみて、離れてみる - 「モネ展」-
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『はじめて学ぶ世界遺産100』の第6章から第9章では 47 件の世界遺産を解説していまます。以下にリストアップしておきます。第9章では自然遺産をとりあつかっています。

本書は、さまざまな世界遺産を全体として非常にバランスよく選択してとりあげており、人類の歴史と地球の多様性が短時間で効果的にとらえられる仕組みになっています。歴史と多様性を、世界遺産という具体な物と場所でつかめるというのが大きなポイントです

今回は、No.54〜No.100までの世界遺産の場所をおぼえてみたいとおもいます。本書を見おわったら下のリストだけを見てそれぞれの場所をおもいだしてみます。どこまで正確におもいだせるでしょうか。おもいだせない場所があったら本書をすぐにひらいて確認します。

第6章 アメリカ、アフリカ、オセアニアの文明と東アジアの変動
54 マチュ・ピチュ
55 チチェン・イツァの古代都市
56 ナスカとフマーナ平原の地上絵
57 ラパ・ニュイ国立公園
58 北京と瀋陽の故宮
59 フエの歴史的建造物
60 伝説の都市トンブクトゥ
61 大ジンバブエ遺跡
62 ウルル、カタ・ジュタ国立公園

第7章 近代国家の成立と世界の近代化
63 ヴェルサイユ宮殿と庭園
64 マドリードのエル・エスコリアール修道院と王立施設
65 シェーンブルン宮殿と庭園
66 ポツダムとベルリンの宮殿と庭園
67 ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター・アビーとセント・マーガレット協会
68 サンクト・ペテルブルクの歴史地区と関連建造物群
69 自由の女神像
70 フォンテーヌブロー宮殿と庭園
71 ウィーンの歴史地区
72 ニュー・ラナーク
73 アイアンブリッジ峡谷
74 シドニー・オペラハウス
75 ブラジリア

第8章 テーマでみる世界遺産
76 コルディリェーラ山脈の棚田
77 アランフエスの文化的景観
78 ワルシャワの歴史地区
79 ドゥブロヴニクの旧市街
80 バムとその文化的景観
81 アッシジのサン・フランチェスコ聖堂と関連建造物群
82 バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群
83 エルサレムの旧市街とその城壁群
84 ロベン島
85 ゴレ島

第9章 世界の自然遺産
86 カナディアン・ロッキー山脈国立公園群
87 ユングフラウ-アレッチュのスイス・アルプス
88 ピレネー山脈のペルデュ山(複合遺産)
89 ハワイ火山国立公園
90 カムチャッカ火山群
91 ロス・グラシアレス国立公園
92 ノルウェー西部のフィヨルド、ガイランゲルフィヨルドとネーロイフィヨルド
93 ヴィクトリアの滝(モシ・オ・トゥニャ)
94 イグアス国立公園
95 バイカル湖
96 マラウイ湖国立公園
97 グレート・バリア・リーフ
98 エル・ビスカイノ鯨保護区
99 ンゴロンゴロ自然保護区
100 中央アマゾン自然保護区


▼ 文献
世界遺産検定事務局著『はじめて学ぶ世界遺産100』マイナビ、2013年12月21日
はじめて学ぶ世界遺産100 世界遺産検定3級公式テキスト


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世界遺産を旅する -『はじめて学ぶ世界遺産100』-
100の地点を地球認識のとっかかりにする(1) -『はじめて学ぶ世界遺産100』-

『はじめて学ぶ世界遺産100』は世界遺産に関する非常にすぐれたガイドブックです。

本書の第2章から第5章まででは 53 件の世界遺産を解説しています。掲載順に通し番号をふって以下にリストアップしておきます。

世界遺産についてよく知りたい方は、まず第一に、本書にでている地図をよく見ながら各遺産の場所(位置)をおぼえるようにします。そして、本書を見おわったら以下のリストを見て(地図は見ないで)その場所(位置)をおもいだしてみます。どこまでおもいだせるでしょうか。おもいだせない場合は地図を見なおして確認します。場所(位置)をおぼえ想起できるようになることは記憶法あるいは学習法の基本といえるでしょう。

世界はとてもひろくて情報があふれかえっています。地球は大きいくてつかみどころがないような感じがします。漠然とながめているだけでは認識はふかまらないでしょう。

そこで「世界遺産100」が利用できます。本書を手がかりにして100ヵ所のポイントがおさえられれば、それらは世界あるいは地球を認識するためのとっかかりになります。そしてそれらが「情報の核」になってさらに情報があつまってきます。

第2章 日本の世界遺産との関連から 
01 セレンゲティ国立公園
02 サガルマータ国立公園
03 ラリベラの岩の聖堂群
04 始皇帝陵と兵馬俑坑
05 ガラパゴス諸島
06 トンガロリ国立公園
07 アルベロベッロのトゥルッリ
08 文化交差路サマルカンド
09 サンディアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路
10 カルカッソンヌの歴史的城塞都市
11 ポトシの市街
12 モン・サン・ミシェルとその湾
13 アウシュビッツ・ビルケナウ - ナチス・ドイツの強制絶滅収容所(1940-1945)-
14 グランド・キャニオン国立公園
15 宗廟(チョンミョ)

第3章 人類の誕生と古代文明 
16 アルタミラ洞窟とスペイン北部の旧石器時代洞窟壁画
17 アワッシュ川下流域
18 ストーンヘンジ、エイヴベリーの巨石遺跡
19 高敞(コチャン)、和順(ファスン)、江華(クアンファ)の支石墓石
20 ペルセポリス
21 フェニキア都市ビブロス
22 ヌビアの遺跡群
23 メンフィスのピラミッド地帯
24 アテネのアクロポリス
25 デロス島
26 ローマの歴史地区
 
第4章 アジア世界の形成と宗教
27 万里の長城
28 曲阜の孔廟、孔林、孔府
29 アンコールの遺跡群
30 ボロブドゥールの仏教寺院群
31 ラサのポタラ宮歴史地区
32 オルホン渓谷の文化的景観
33 高句麗(コグリョ)古墳群
34 敦煌の莫高窟
35 アジャンターの石窟寺院群
36 スコータイと周辺の歴史地区
37 『八幡大蔵経』版木所蔵の海印寺
38 イスタンブルの歴史地区
39 イスファハーンのイマームの広場
40 タージ・マハル
 
第5章 ヨーロッパ中世とルネサンス、大航海時代
41 パリのセーヌ河岸
42 ヴァチカン市国
43 ヴェネチアとその潟
44 ハンザ都市リューベック
45 グラナダのアルハンブラ宮殿、ヘネラリーフェ離宮、アルバイシン地区
46 カステル・デル・モンテ
47 アヴィニョンの歴史地区:教皇庁宮殿、司教の建造物群、アヴィニョンの橋
48 アイスレーベンとヴィッテンベルクのルター記念建造物群
49 フィレンツェの歴史地区
50 プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館とその関連施設
51 ピサのドゥオーモ広場
52 メカラとジョージ・タウン:マラッカ海峡の歴史都市
53 モスクワのクレムリンと赤の広場


▼ 文献
世界遺産検定事務局著『はじめて学ぶ世界遺産100』マイナビ、2013年12月21日
はじめて学ぶ世界遺産100 世界遺産検定3級公式テキスト


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世界遺産を旅する -『はじめて学ぶ世界遺産100』-

ムソルグスキー作曲(ラヴェル編曲)組曲《展覧会の絵》をききました(アレクサンドル=ラザレフ指揮、日本フィハーモニー交響楽団、杉並公会堂、2015年3月15日)。

ロシアの作曲家・ムソルグスキーは、友人・ハルトマンの遺作絵画展でみた10枚の絵の印象を音楽にしました。

ムソルグスキーは、絵(イメージ)をみてそれを音楽にしましたが、わたしたち聴衆はそれとは逆に音楽をきいて絵(イメージ)をおもいうかべます。これは「耳でたのしむ展覧会」であり、同時にとても効果的なイメージ訓練です。

10枚の絵がそれぞれ曲になっていて表題がついています。会場で配布されたプログラムノートから表題と解説を引用しておきます(注)。ただし、音楽をききながらイメージをするときには言葉にはあまりとらわれずに自由に想像をふくらませてかまいません。

第1曲:こびと
北欧神話の精霊・ノームがグロテスクに描かれる。

第2曲:古い城
中世の城にこだまする吟遊詩人の歌をエキゾチックに歌いあげる。

第3曲:チュイルリー宮殿の前庭
庭園での子どもたちのはしゃいだ姿が表情豊かに描かれる。

第4曲:ビドウォ
「ビドウォ」とはポーランド語で牛の群れのこと。重々しい牛車の響きの中に、ロシア帝国時代の暗くみじめな農奴の生活が浮かぶ。

第5曲:からを付けたひよこの踊り
元気いっぱいのひよこたちがあっちこっちと飛び跳ねる。

第6曲:サミュエル・ゴールデンベルグとシュミュレ
かたや威張った金持ち、かたや卑屈な貧乏人という、対照的なユダヤ人のおしゃべり。

第7曲:リモージュの市場
リモージュはフランス中部の町。おかみさんたちの威勢の良いおしゃべりが市場を縦横無尽に飛び交う。

第8曲:カタコンブ(地下墓地)
古代ローマ時代、迫害されたキリスト教徒たちの墓。こここでムソルグスキーは「死者とともに死者の言葉で」という表題で“プロムナード”を挿入し、亡き親友春とマンの追憶に浸る。

第9曲:鶏の足の上に建つ小屋
ロシア民謡の魔女バーバ・ヤガーの家。中空を自在に飛び回るような豪快さと、怪しげな呪文を思わせる昼間部が鮮やかなコントラストを描き出す。

第10曲:キエフの大きな門
ハルトマンが設計したキエフ市の門の重厚な印象。

こうして《展覧会の絵》は堂々とクライマックスをむかえ、わたしたちは光の世界へといざなわれます。


今回の方法は、音楽をインプットして絵(イメージ)を想像するというやり方でした。情報処理の観点からみると、イメージ訓練あるいは想像することはプロセシングのなかでもとくに重要な方法といえるでしょう(図1)。
150315 音楽と心象法
図1 音楽をきくことはインプット、想像することはプロセシング
(<インプット→プロセシング→アウトプット>は情報のながれ)


何かをアウトプットしようとおもったら、先にイメージをえがいて、イメージをおもいうかべながらアウトプットしたほうがうまくいくとおもいます。



▼ おすすめの音源
Amazon デジタルミュージック:展覧会の絵
こちらは 辻井伸行さんの演奏によるピアノ(オリジナル)版です。

▼ 注
曲のはじまりと各曲(各絵)の間には「プロムナード」というみじかい前奏曲あるいは間奏曲が演奏されます。この「プロムナード」はムソルグスキー自身が絵と絵のあいだをあるいている姿を表現しているといわれています。


▼ 参考文献

150311 MacBook
「新しいMacBook」は3色(アップルのサイトから引用)

2015年3月9日(米国現地時間)アップルは、「ノートブックを再発明」とうたう新設計の12型ノートブック「新しいMacBook」を発表しました。重量は2ポンド(920g)、薄さは13.1mm、Mac 史上最薄最軽量を実現、カラー(仕上げ)は、シルバー・ゴールド・スペースグレイの3色です。2015年4月10日発売予定で、価格は148,800円からです(注1)。

数多くのレビューがインターネット上にすでにでていますので、ここでは、アップルのいう「ワイヤレスな世界のために完全装備」について強調しておきたいとおもいます。「新しいMacBook」は、ワイヤレス化がますますすすむ世界に対応できるように設計されています。

「新しいMacBook」には、ヘッドホン端子以外ではたった一つのポートしかありません。それは「USB-C ポート」とよばれるもので、充電・外部ディスプレイの接続・USB 3 速度によるデータ転送ができます。

このポートには従来の周辺機器は直接はつなげないのでアダプタを別途かわなければなりません(注2)。


これについては、「非常に不便であり、消費者のニーズを無視した進化」と批判する人もいます。

しかしアップルは、消費者の都合を“無視する”かのように数々の新製品をこれまでも開発してきました。たとえば、フロッピードライブの廃止、シリアルポートの廃止、ファイアワイアの廃止、CD-ROMドライブの廃止、ブルーレイにいたっては完全に無視しています。

したがって今回の「USB-C ポート」の件についてもおどろきではありません。むしろ当然の流れということでしょう(注3)。


アップルは、ワイヤレス・インターネットでつながれたクラウド(iCloud)をユーザーがつかうことを想定しています。クラウドのビジョンがまず先にあって、それにもとづいて商品を開発しています。つまりアップルは未来を先取りして技術革新をつづけているのです

ビジョンがなくて現状を維持しようとする人にとっては「消費者のニーズを無視した進化」という批判になるでしょうが、ビジョンがみえている人にとっては、なるべく効率的にあたらしい世界にすすんでいこうということになります(注4)。


クラウドのビジョンによれば、デバイスはすべてクラウドでつながるようになり、データもクラウドにおいておくようになります。あたらしいクラウドの時代に人類はこれから本格的に突入していきます

クラウドは機能的にはインターネットをつかうワイヤレスであり、このようなビジョンであればデバイスにおいて最後にのこるポートは電源のみということになります。その電源とても将来のいつかはケーブルがいらなくなるでしょう。たとえばソーラーパネルを搭載するなどして。

そして、クラウド・システムにおける情報処理の主体はあくまでも自分(人間)であって Mac や iPhone や iPad などのデバイスではありません。デバイスは情報処理をするときに役立つ単なる道具にすぎません。道具をつかいこなして一人一人が情報処理をすすめていくことがこれからはもとめらます。デバイスにただ依存していても情報処理はできません。わたしたちはクラウドに適応して主体性を発揮しながら情報処理をすすめていかなければなりません。


アップルの商品開発の歴史は、ビジョンをえがくことがいかに重要かを物語っているとおもいます。まずビジョンがあって、そして物が顕在化してきます。
 



注1:新しいMacBook >>
 
注3:MacBook Air の Retina ディスプレイ化を非常に多くのユーザーはまちのぞんでいましたし、それが消費者のニーズでした。しかしというか やはりというかアップルは、既存の製品のディスプレイをとりかえて現在のニーズにこたえるだけという陳腐なことはせず、未来を先取りした商品をまたしても投入してきました。「新しいMacBook」はこれからの MacBook ラインナップ開発の方向性をしめすものであり、現状の MacBook Pro が今後どのよにうに変更されるのかを予告する内容になっているとかんがえられます。

注4:近年の日本では「生きのこりをかけて!」という言葉がよくさけばれます。これは、過去の実績をなんとか維持してみがきをかけて、きびしい競争を生きのころうとするかんがえであり、そこには過去をみつめる視点があります。しかしアップルは過去にはとらわれず、そして現在のニーズも切りすて、未来のユーザーのニーズにこたえる新商品を開発しています。


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チャイコフスキー作曲『イタリア奇想曲』をききました(小林研一郎指揮、日本フィハーモニー交響楽団、サントリーホール、2015.3.7)。チャイコフスキーはイタリア旅行をしたときにこの曲の着想をえたそうです。

奇想曲(カプリチョ)とはイタリア語で「気まぐれ」を意味し、『イタリア奇想曲』にはイタリアの愉快な旋律が自由にちりばめられています。イタリアの開放的な雰囲気を反映して、チャイコフスキーのほかの作品とくらべると非常にあかるい雰囲気が印象的でした。

チャイコフスキーは、1979年の暮れから1880年の4月にかけてイタリアに滞在、イタリアの風土・文化・芸術に魅了されて大きな感銘をうけ、その感銘がさめないうちにローマで作曲の構想をねりはじめました。

私は数日前から、民謡の旋律を基にして『イタリア奇想曲』のスケッチを書き始めました。この曲は輝かしい未来を持つであろうと思います。これらの旋律の一部は出版されている民謡集から拾い出したものであり、一部は街を歩いている時に私自身の耳で聴いたものです。(チャイコフスキー、1880年1月4日付けの手紙より)

仕事などで何かの構想をねるときには現地にいるあいだに構想をねるとよいとおもいます。リアルタイムで情報を感じとれますから。帰宅してしまうとあっというまに情報の鮮度がおちてしまいます。

構想をねるということは<インプット→プロセシング>に相当します。情報処理の絶好のチャンスとして旅行や出張を活用したいものです。
 



驚異のネイチャー3D 写真集です。風景や動物などの自然写真を(3D眼鏡をつかわないで)立体視することで眼力を高めることができます。目の前に空間がひろがる体験を是非たのしんでください。

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つぎのように解説されています。

眼力が高まれば、目がどんどんよくなるだけでなく、「ものを見る」判断力が高まり、脳の力も高まります。

さらに、眼精疲労が減ったり、癒し効果も生まれます。視力や知力を含めた総合的な「ものを見る」力である眼力を向上させ、人生を何倍も面白く生きることができます。


立体視のやり方については本書は説明が若干簡単なようですので、下記の本の説明もあわせて見て練習するるとよいでしょう。


また『視力回復トレーニング ミラクル・アイ』は図や絵の図版集ですが、『眼力を高めるパワード・アイ』は実際の野外の写真をつかっていますので、立体視の訓練になるだけでなく自然の見方をするどくすることができます。わたしも両書を併用してみたところ効果が倍増しました。自然の立体視ができるようになると自分の内面の世界がひろがって、風景のうつくしさをあらためて実感することができます。


▼ 文献
栗田昌裕著『 眼力を高めるパワード・アイ』健学社、2003年11月25日
眼力を高めるパワード・アイ


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立体視のやりかた
立体視訓練で眼力を高める -『視力回復トレーニング ミラクル・アイ』-
立体視をして目をよくする 〜 栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本【動物編】』〜

『視力回復トレーニング ミラクル・アイ』は、(3D眼鏡をつかわないで)多数の図と絵を立体視することをとおして「眼力」を高め、結果として視力も改善できる立体視訓練図版集です

本書では、見るということについてつぎのように解説しています。

目は最も優れた感覚器官です。周囲から受け取っている情報の8割が目から入ってきます。目はまさに情報の正面玄関と言えます。

その目の働きを通常は「視力」としてとらえますが、目の働きの重要な点は、目を通して入った情報を脳で解釈して、知的情報処理能力(略して知能)を発揮することです。

見るということは情報をインプットすることであり、本書をつかって訓練をすれば、このインプットとそれにつづく情報処理の能力を高めることができます。

具体的には、「眼球レベル」での改善と「脳のレベル」での改善がなされます。

立体視では、① 目線を調節して、画像を脳にきちんと届ける段階【=眼球レベル】と ② 脳に届いた画像が立体的に解釈される段階【=脳のレベル】の二段階があります。

第一段階目はインプットの段階、第二段階目はプロセシングの段階ととらえるとわかりやすいでしょう(図1)。
150228 眼力
図1 目で見て知的情報処理をする
(インプット→プロセシング→アウトプットは情報の流れ)


立体視には、交差法(クロス法)平行法(パラレル法)の2種類があります。本書の4-5ページでは、立体視のやり方についてとてもわかりやすく説明しています。

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写真1 立体視には、交差法と平行法の2種類がある

各図の上部に補助点がついていますので2つの補助点が3つに見えるように練習します。補助点が3つに見えたらその状態を保持するようにし、周辺視野をつかって図や絵の全体に意識をくばるようにします。立体視が成立するようになるまで根気よくつづけてみてください。

立体視は、できるようになるまでにはある程度の時間がかかる場合がありますが、一度できるようになると、あとはつぎつぎにできるようになり立体視の世界が大きくひろがっていきます。平面(2次元/2D)よりも立体視(3次元/3D)の方がはるかに情報量が多く、奥深い世界になっていることが体験できます。


▼ 文献
栗田昌裕監修『視力回復トレーニング ミラクル・アイ』辰巳出版、2013年8月25日
視力回復トレーニング ミラクル・アイ (タツミムック)


▼ 関連記事
立体視をして目をよくする 〜 栗田昌裕著『3D写真で目がどんどん良くなる本【動物編】』〜

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往時の姿に復元された東京駅丸の内駅舎

東京駅開業百年記念企画展「東京駅100年の記憶」を見ました(会場:東京ステーションギャラリー、会期:2015年3月1日まで)。

2014年12月、東京駅は開業100周年をむかえました。本展は、1世紀にわたる東京駅の歴史に光をあて、その文化的な意義を再検証しようという企画です。


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ドームの内部


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創建当時の煉瓦の壁


東京駅が開業した1914年、その50年後の1964年、そして2014年の3つの時代を、東京駅を中心とする丸の内地区のジオラマでたどり、あわせて、かつて丸の内に建っていた近代建築に関する資料などを見ることができました。


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東京駅が開業した1914年の丸の内地区のジオラマ


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1964年の丸の内地区のジオラマ


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2014年の丸の内地区のジオラマ


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現在の東京駅の地下構造の模型


東京駅の歴史の概要は以下のとおりです。

1908 中央停車場(のちの東京駅)の基礎工事開始
1914 東京駅が開業
1915 東京ステーションホテルが開業
1923 関東大震災が発生したが東京駅はほとんど無傷
1929 八重洲口を開設
1945 空襲で駅舎が炎上
1947 丸の内駅舎(3階建て)を2階建てとして再建
1949 共同企業体「日本国有鉄道」が発足 
1964 東海道新幹線が開業
1965 みどりの窓口を設置
1972 総武快速線の東京地下駅が開業
1983 北口新自由通路が全面使用開始
1987 日本国有鉄道が民営化
1988 東京ステーションギャラリーが開館
1991 東北・上越新幹線が東京駅まで延伸
1995 中央線重層化新ホームを使用開始
1997 長野新幹線が開業
2003 丸の内駅舎が国の重要文化財に指定
2012 丸の内駅舎が復元(竣工)
2014 東京駅開業100周年

南北のドームが往時の姿でよみがえり、2階建てだった建物も3階建てにもどされ、欠損していた赤煉瓦も復元されました。現在、丸の内地区では、2017年春の完成をめざして「都市の広場」と交通広場の建設がすすんでいます。


東京ステーションギャラリー企画展「東京駅100年の記憶」 >>


このように、実際の物にむすびつけて歴史を理解し記憶することは、たのしく効率的に認識をふかめる方法としてつかえます。情報を言語としてとらえるだけでなく、実際の物にむすびつけて記憶するのがポイントです。


▼ 参考文献
『徹底解剖!東京駅100年 過去 現在 そして未来へ』(JTBの交通ムック) JTBパブリッシング 、2014年12月10日
本書は、東京駅の歴史などについて徹底的に解説していて、鉄道ファンにとって必読の書となっています。


▼「美の巨匠たち」(TV Tokyo)で「辰野金吾『東京駅』」が放送されます。
2015年2月28日(土)22:00-22:30
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/


▼ 関連記事
空間を大観し、局所をほりさげる - スカイツリーと東京駅 -

Mac OS X には、ミッションコントロールMission Control)という便利な機能があります。

これは、デスクトップを仮想的にいくつもならべ、それらを切りかえながら作業ができる機能であり、複数のデスクトップや、フルスクリーン化したアプリケーションのウィンドウを一元管理できるシステムです

ミッションコントロールをひらくと今の画面でひらいているアプリがバッとあらわれ、また、上部にはてすべてのデスクトップのサムネイルが表示されます。ひとつのウィンドウをドラッグしてほかのデスクトップに移動することも可能です。

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ミッションコントロールをひらくとすべてのデスクトップが一望できる

仮想デスクトップは、ディスプレイの右上にカーソルをもっていくとあらわれる「+」ボタンをクリックすると追加できます。


ミッションコントロールをひらくには、Dock のアイコンをクリックするかキーボードをおせばよいですが、スワイプの設定をしておくと便利です。「システム環境設定」>「トラックパッド」>「その他のジェスチャ」>「Mission Control」とすすみます。

150216 Mission Control 4本スワイプ
「 3本指あるいは4本指で上にスワイプ」に設定する


また、デフォルト設定のままだと、ひらかれたデスクトップの順番がつかっているあいだに入れかわってしまいます。デスクトップは固定しておいた方が作業がやりやすいです。

固定するためには、「システム環境設定」>「Mission Control」>「最新の使用状況に基づいて操作スペースを自動的に並び替える」のチェックをはずします。

150218 ミッションコントロール2
チェックをはずす

この設定にしておけば各デスクトップの配置が記憶され、デスクトップを切りかえるときに何枚めくればあのソフトというのが感覚的にわかるようになり、デスクトップ一覧画面をわざわざ表示させることが減ります。

たとえば、デスクトップ1には Calendar、デスクトップ2には iTunes、デスクトップ3には Safari、デスクトップ4には Chrome、デスクトップ5には iPhoto、デスクトップ6には Word、デスクトップ7には Excel、デスクトップ8には Keynote・・・というように。


ミッションコントロールは作業スペースをただ単にひろげるだけではありません。それ以上の意味があります。

複数のデスクトップを並列配置することにより、それぞれの作業ごとにデスクトップをわりあて、それらを切りかえながら複数のことなる作業を並列的におこなうことができます。並列というところがポイントです。

情報の処理(プロセシング)の基本原理は情報の並列処理にあります(図1)。

15021 並列処理
図1 プロセシングの原理は並列処理である
 

<インプット→プロセシング→アウトプット>は情報の流れです。たとえばコンピュータでも、複数のプロセッサ(処理装置)を並列させてデータを処理しています。これと似て、人がおこなう情報処理も並列処理をした方が効率・効果があがります。

並列とは直列ではないということであり、いくつもの作業あるいは仕事を同時並行的にすすめた方がよいということです。このようにしておけば、もし一つの作業がいきづまっても、そのあいだにほかの作業をすすめることができます。そうしているうちにあたらしいアイデアもでてきます。並列的にできることが何かないか常にかかんがえながら仕事をすすめます。

ミッションコントロールをつかえば目前の作業を視覚的に並列的にとらえることができます。複数のデスクトップのコントロールは並列処理のモデルになります。

ミッションコントロールあるいは複数のデスクトップをモデルにして、並列原理をつかった情報の並列処理をすすめていくのがよいでしょう。

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国立科学博物館

博物館は、あるテーマに関して学習したり記憶したりするためにとても役にたちます。今回は、博物館をつかった空間学習法についてのべてみたいとおもいます。

わたしは先日、東京・上野の国立科学博物館の「ヒカリ展」に行き、次の手順で光について学習し記憶しました。 


1. 展示会場の全体構造を見る

まず、会場入り口で音声ガイドをかり、A4版の「音声ガイドリスト&フロアーマップ」(図1)をもらいました。このフロアーマップがとくに役にたちます。

150206 ヒカリ展
図1 音声ガイドリスト&フロアーマップ
 

このフロアーマップをよく見て、展示会場の空間的構造を自分の意識のなかにしっかりインプットします。会場全体は「家」、各展示室は「部屋」であるとイメージし、全体と部分をつかむようにします。

この空間(3Dイメージ)が情報の入れ物になります。


2. 展示室をイメージで記憶する

つぎに、フロアーマップを見ながら各展示室をあるいていきます。

それぞれの展示室において、その空間全体をよく見わたし、各展示物がそのなかのどこに置いてあるのか、その位置(場所)を確認します。そして、展示室の空間と展示物をイメージとしてインプットし記憶するようにします

さらに、それぞれの展示物に関する言語による解説をそれぞれのイメージにうめこむように、あるいはむすびつけるようにして記憶します。音声ガイドによる解説も同様に、それぞれのイメージにむすびつけて記憶するようにします。


3. まとめ:フロアーマップをみながら想起する

ひととおり見おわったら休憩所に行って、フロアーマップを見ながら、今あるいてきたルート上の各展示室と展示物をイメージとしておもいだします

さらに、その展示室あるいは展示物にむすびついていた言語による解説もおもいだします。どこまで正確におもいだせるでしょうか。

もし余裕があれば、入り口でもらった「音声ガイドリスト」のリスト(タイトル/言語)だけを見て、それぞれの展示室と展示物さらに言語的解説をおもいだしてみます。

実際にやってみると、フロアーマップを見ながらの想起の方が、言語リストを見ながらの想起よりも簡単におもいだせることがわかります。つまり、記憶や想起は、言語よりも空間(あるいはイメージ)を第一に利用した方がやりやすいのです。


「音声ガイドリスト&フロアーマップ」はスキャニングして保管しておきます。折にふれてこれを見なおすことにより、そのときの体験や情報をいつでも想起することができます。今回の特別展のテーマに関して継続して学習をしたい場合は、図録を買っておけばいつでも復習ができます。

▼ なお、フロアーマップは下記サイトにもでていました。こちらの方がカラーでわかりやすいです。
http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2014/hikari/map.html


以上の手順をモデル化すると図2のようになります。

150216 会場展示室理解
図2 博物館を利用した学習法


展示室や展示物を空間的にとらえ、その空間に言語的解説をうめこんでいくのがポイントです。つまり、すべての情報を位置情報(場所情報)にしてしまい、視覚的に情報を処理するのです。


以上の要点をさらにまとめるとつぎのようになります。

第1に、大局を見ます。大所高所から見るということであり、大観するといってもよいです。今回は、フロアーマップをつかって大局を見ました。

第2に、展示室という局所に入りこみ、イメージングをします。これは歩行という運動がともなう実践的行為です。

第3に、全体をふりかえり想起します。このとき、これまで見てきた情報の統合作用がおこり、全体がまとまります。できればテーマに関する本質をつかみ、それを書きだしてみます(アウトプットします)。今回の場合だと、光の正体であるとか、電磁波の波長とその用途などについてまとめておきます。

以上の要点をまとめると次の三段階にモデル化することができます(図3)。

150116 問題解決の3段階
図3 三段階モデル


博物館の空間を利用した学習法や記憶法は、あまり時間をかけずにしかもたのしく実践することができます。自分の興味のある博物館や企画展があったらすぐに出かけていくのがよいでしょう。


▼ 関連記事
光について理解をふかめる - 国立科学博物館「ヒカリ展」-





佐々木閑著『NHK100分de名著 ブッダ 真理のことば』は、仏教の開祖であるブッダの言葉をみじかい詩の形にして423句あつめた『ダンマパダ』の入門書です。『ダンマパダ』は、数ある仏教の経典の中でも、とくにふるい部類に属するものです。

まず、仏教の歴史の概略についてです。
 

ブッダは今から二千五百年くらい前にインドの北方、現在のネパール領内で生まれ、その後亡くなるまで、北インドの狭い範囲だけで活動しました。ブッダの没後、その教えはまず西のほうに伝わり、海岸に到達すると海伝いに南下してスリランカに入り、さらに海沿いに北上して東南アジアのタイ、ミャンマーなどに根づきました。これがいわゆる「小乗仏教」と呼ばれる仏教で、ブッダの教えをかなり正確に残した教派です。(中略)ただし「小乗仏教」というのは、敵対する大乗仏教側からの敵意のこもった蔑称ですから正当な呼び名ではありません。現在、当地の人びとは自分たちの仏教を「上座部仏教」と呼んでいます。

一方、ブッダ入滅後の仏教は南だけでなく、陸伝いに北のほうへも伝わったのですが、シルクロードがまだ開通していなかったため、中国まで行き着くことはできず、長く国境付近で足踏みする格好になりました。そうこうするうちに、紀元前後頃にインドの仏教世界で、内容的にかなり変容した第二派として「大乗仏教」が起こります。(中略)中国へはオリジナルの仏教と大乗仏教が並んで入っていったわけです。(中略)日本は、その中国から仏教を輸入したため大乗仏教一色の国になったのです。


つまり仏教は、歴史的地理的にみると、北インドから、「釈迦の仏教」→「上座部仏教」という南方への流れと、「釈迦の仏教」→「大乗仏教」という北方への流れがあり、日本には「大乗仏教」がつたわったということです。また「釈迦の仏教」以前には、バラモン教がありました。

「釈迦の仏教」についてはつぎのようにのべています。
 

ブッダが創始した仏教、すなわち「釈迦の仏教」の最大の特徴は、外の力に頼らず、あくまでも自分の力で道を切り開くという点です。

この世の出来事はすべて、原因と結果の峻厳な因果関係にもとづいて動きます。自分がなしたことの結果は必ず自分に返ってきます。因果関係を無視してどんなことでもしてくれる超越的な絶対者など存在せず、人は自分の行為に対して、一〇〇パーセントその責任を負わねばならないのです。


つまり、「釈迦の仏教」は「自己鍛錬システム」であるということです。

「空」についてはつぎのように解説しています。


自分というものが永遠に存在する絶対的なものではない、ということです。「私」と言っても、実は私という本体はどこにもない。第3章でもお話ししましたように、いろんな要素が集まってできているのが私ですから、そこにある私というものは〝空〟、つまり、からっぽだと。〝空〟というのは、形はあるのだけれども、その中に本質がないという意味です。ですから、そういうことがわかれば、自分というものに執著することによって起こってくる苦しみが消えていくであろうと。そういう教えなのです。 そして、なぜ実体がないのかといえば、それは諸行無常だからです。すべてのものはいつも移り変わって別のものに変わっていくのだから、いつまでも同じ形で残るものは何ひとつない、ということです。

執著とか無明とか、あるいは恨みとか。そういった煩悩が一種のフィルターになって、ものごとを自分中心に作り上げてしまう。それが私の実際の世界だと思い込んでしまう。これがものごとが心によって導かれてしまうということなのですね。ですから、心の持ちようをどうするかによって、われわれの心に苦しみが生まれるか、生まれないか、それが決まってくるということです。


本書の最後には、「世の中の在り方を正しく見るために」と題して、認知脳科学者の藤田一郎さんとの対談が掲載されていて、本書の大きな特色になっています。 
 

世界のものが私たちの体の中に直接飛び込んでくるわけではなく、あくまでも目や耳や鼻や口や、そういう感覚器官から、脳の中に入ってきた情報、つまり電気信号に基づいて、世界の情景を作り直している、ということです。それが私が言っている「作り直す」という意味なのです。


このように、人間の情報処理が世界の情景を「作り直している」という説明は非常に興味ぶかく、注目に値します。






本書は、「釈迦の仏教」→「大乗仏教」という仏教の発展段階、両者の相違をふまえ、「釈迦の仏教」についてわかりやすく解説していて、「釈迦の仏教」が「自己鍛錬システム」であることを理解することができます。また、「因果関係」や「空」についても認識をふかめることができます。

本書は、著者が元科学者であったこともあって、ほかの著者には見られない独特な解説を生みだしており、説明が合理的でわかりやすく、「釈迦の仏教」の入門書としてすぐれています。佐々木閑著『般若心経』とあわせて読んでみるとよいでしょう。
 
 




▼ 参考文献
佐々木閑著『NHK100分de名著 ブッダ 真理のことば』NHK出版、2012年6月22日
NHK「100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば NHK「100分de名著」ブックス


▼ 関連記事
「釈迦の仏教」との違いに注目して『般若心経』をよむ - 佐々木閑著 『般若心経』-
仏教を歴史的にとらえる -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(1)-
グローバルな視点にたって仏教をとらえなおす -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(2)-
自分を知り、他人や他国を理解する -『池上彰と考える、仏教って何ですか?』(3)-




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東京国立博物館本館

東京国立博物館で開催中の特別展「みちのくの仏像」を見ました(本館・特別5室、会期は 2015年4月5日まで)。

仏像をとおして東北の魅力にふれることで、東日本大震災からの復興の一助にする企画です。本展の収益の一部は、被災した文化財の修復に役立てられるそうです。

特別展「みちのくの仏像」 >>
特設サイト >>

「東北の三大薬師」と称される、黒石寺(岩手県)、勝常寺(福島県)、双林寺(宮城県)の薬師如来像をはじめ、東北各県を代表する仏像と対面することができました。

「東北の三大薬師」は、会場の奥に、かこむようにならべられていました。むかって右から順に、双林寺(宮城県)の《薬師如来坐像》と《二天立像(持国天・増長天)》、勝常寺(福島県)の《薬師如来坐像および両脇侍立像》(国宝)、黒石寺(岩手県)の《薬師如来坐像》と《日光菩薩立像・月光菩薩立像》であり、とても印象にのこりました。

また、天台寺(岩手県)の《聖観音菩薩立像》 は、像の表面に荒々しいノミ目をあえてのこしながら、木の質感を可能なかぎり生かした鉈彫(なたぼり)像で、樹木の中から仏像が出現してくることを想像することができました。

そのほかで印象にのこったのは、給分浜観音堂(宮城県)の《十一面観音菩薩立像》でした。牡鹿半島の給分浜の高台にまつられているそうです。

「みちのくの仏像」は、美を追求するというよりも、素朴さのなかの力強さや生命力を感じとることができました。

また、本展とあわせて、特別展「3.11大津波と文化財の再生」も開催されていました。東日本大震災による大津波は文化財にも甚大な被害をもたらしました。東京国立博物館は被災文化財の再生にもとりくんできたそうです。これまでの約4年にわたる成果を知ることができました。


▼ 関連記事
東京国立博物館 − 歴史をフィールドワークする − (記事リンク集)



 

国立民族学博物館の展示は、文化的にひとまとまりのある地域を単位にしていて、とてもわかりやすい展示になっています。具体的には、つぎの地域の展示を順番に見ることができます。オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、南アジア、東南アジア、中央・北アジア、東アジア(朝鮮半島、中国地域、アイヌ、日本)。それぞれの展示(地域)が情報のひとまとまり、つまりファイルになっています。

わたしは、これらの展示を見ることにより、世界一周の「圧縮体験」をすることができました。これはこれで思い出にのこる貴重な体験でした。

しかしその後、この体験をふりかえっていて、今度は、環太平洋地域が見えてきました。

国立民族学博物館には、環太平洋地域という展示はありません。そこで、オセアニア、東南アジア、台湾、日本、アイヌ、アメリカの各展示のイメージを接続して、環太平洋地域のイメージをえがいてみました。

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オセアニア


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台湾原住民族


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沖縄の海のくらし


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アイヌの家


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アメリカの農作物


環太平洋地域は、自然環境の観点からは、大地震・火山噴火・津波・台風などがある大きな変動帯としての共通点があります。特に近年は大災害が増えています。一方、経済的政治的には、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が進行中であり、あらたな経済圏が形成されつつあります。環太平洋という、ひとまとまりのある あたらしい地域(単位)ができつつあるのです。環太平洋地域は、世界的に見ても目がはなせない地域になってきました。

既存の展示を見て理解し記憶するだけではなく、このように、いくつかの展示イメージをピックアップして、イメージ空間のなかでそれらを自由に接続し、あらたなイメージをえがいてみることはとてもたのしいことであり、イメージ訓練(心象法)としても意味があります。このような方法は博物館の発展的な利用法であり、一歩ふみこんだ博物館の「応用編」と言ってもよいでしょう。


国立民族学博物館 >>


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パンにバターをぬって食べる人を想像する - 国立民族学博物館のヨーロッパ展示 -
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ユーラシア大陸をモデルでとらえる - 麦作と稲作(国立民族学博物館)-
文化的にひとまとまりのある地域をおさえる - 国立民族学博物館の西アジア展示 -
行動しながら情報処理をすすめる - 博物館での体験 -
多様性を大観する - 国立民族学博物館のアメリカ展示 -
世界を理解するために、国立民族学博物館の世界地図をつかう
人類の移動と拡散を想像する - 国立民族学博物館のオセアニア展示 -
イメージは情報処理能力を増幅させる - 国立新美術館企画展「イメージの力」-
「地球時代」をとらえる 〜梅棹忠夫著『地球時代の日本人』〜
情報の検索システムをつくる 〜梅棹忠夫著『メディアとしての博物館』〜
未知なるものへのあこがれ -『梅棹忠夫 語る』(6)-

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オセアニアの地図(展示ガイドから引用

国立民族学博物館のオセアニア展示は、展示空間が大きく、非常に充実しています。ここでは、地球上のほかの地域とはあきらかにちがう、海洋地域への人類の移動と拡散の歴史を想像することができます。

海がほとんどの面積を占めるオセアニアには、大小数万をこえる島々が点在しています。ここでは、発達した航海術をもち、根栽農耕をいとなむ人々がくらしてきました。

人々の移動と拡散についてはつぎのように説明していました。

今から5万年前は、海面が今よりも低く、多くの地域が陸つづきになっていて、東南アジアからの移動がしやすかった。

ラピタ土器が見つかる島々をたどると、人々がメラネシアを通ってポリネシアへ移動したことがわかる。

高度な航海術(スターナビゲーション)をつかって移動することができた。

つまり、海面低下・土器の分布・航海術の証拠から、東南アジアからこの広大な海洋地域に、人類が移動・拡散したことが想像できるというわけです。


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人々の移動と拡散


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ラピタ土器
 

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チェチェメニ号
(航海や漁撈につかわれるカヌー。3000キロメートルの航海記録をもつ)


オーストラリアやニューギニアでは4〜5万年前から人々が住みはじめ、また、今から3300年前ごろには、根栽農耕文化をもつアジア系の人々がオセアニア全域の島々にひろがり定住したそうです。

このようなことを想像するだけでも、オセアニアが、大陸地域とは基本的にちがう異色な地域であることがよくわかります。地球上の多様性を知るためにも、オセアニアは重要な位置を占めるのではないでしょうか。

なお、オセアニアの人々がどこから来たかについて、東南アジア起源説ではなく、南米起源説をとなえた学者もかつてはいたそうですが、現在では否定されているそうです。

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写真1 国立民族学博物館の西アジア展示

国立民族学博物館の西アジア展示では、西アジアの信仰、砂漠のくらし、パレスチナ・ディアスポラ(離散)、日本人と中東、音文化とポップカルチャーの展示がありました。わたしは、西アジアあるいは中東には行ったことがないので勉強になりました。



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写真2 西アジア展示であつかっている地域(北アフリカがふくまれている) 

国立民族学博物館の西アジア展示には北アフリカがふくまれています。これは、イスラム教徒の分布を意識した地域割りです。写真2で、「マシュリク」とは日出でる地を意味し、「マグリブ」とは日没する地を意味するそうです。この地域が、文化的にまとまりのある一つの地域になっているために「マシュリク」と「マグリブ」ということになるのでしょう。
 


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写真3 「覆う」文化とイスラム教の展示

印象にのこったのは、「覆う」文化とイスラム教の展示でした。つぎのような説明がありました。

頭部を覆い隠す風習はイスラム以前からあった。コーランでは、女性はうつくしさを身内以外にはみせないようにとされたため、その習慣はムスリム女性のたしなみとなった。被り物の名称や形は地域によってさまざまで、覆う範囲や巻き方には個人差や流行もある。


また、イスラム教は、予言者ムハンマドの後継者選出をめぐる対立から、スンナ派シーア派に分裂したそうです。スンナ派に反対して、預言者のいとこで、娘婿でもあるアリーとその子孫のみを指導者とみとめた人々がシーア派です。

現在、イスラム教徒の大多数(85%)がスンナ派ですが、イラン・イラク・バーレーン・アゼルバイジャンなどはシーア派が多数を占めています。イランはシーア派を国教としています。


このように、西アジア〜北アフリカの地域は、ひとまとまりのある文化圏になっています。そして、この地域を理解するためにはイスラム教について知らなければなりません。

世界を認識するときには、文化的にひとまとまりのある地域を地図上でまずおさえ、その地域に、さまざまな情報をむすびつけて理解し記憶していくとよいです。そのときには、地形的あるいは物理的な境界にとらわれる必要はないのです。すると、その地域は、意味のある情報のひとまとまり、つまりファイルとしてとりあつかえるようになります。国立民族学博物館の「西アジア展示」はそのための参考になります。


注)イラク共和国の大統領だったサダム=フセインはスンナ派でした。


国立民族学博物館 >>

国立民族学博物館の展示は、日本展示も非常に充実しています。
 
世界各地の展示室を一通りみおわってから日本の展示室に到達すると、日本を、世界のなかに位置づけて相対化してとらえなおすことができます。

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稲作の道具展示(日本展示)

日本展示では、日本の農業は稲作農業が中心であり、これが、日本文化の形成に非常に大きな役割をはたしてきたことがよく表現されています。

しかし、稲作および稲作文化に関する展示とともに、一方で、漁業(漁撈)に関する展示にもかなりのスペースをとっています。

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漁業(漁撈)に関する展示(日本展示)

これらの展示を見ていると、日本は、〔稲作+漁撈〕の半農半漁の地域だということがうかびあがってきます。これが、炊いた飯の上に魚をのせてたべる、寿司の食文化をつくりあげたことがわかります。日本食の代表が寿司であることは言うまでもありません。

このことは、ヨーロッパ展示と対比させると一層鮮明に想像できます。ヨーロッパは〔麦作+酪農〕の半農半牧であり、ヨーロッパ人はパンにバターをぬって食べます。それに対し、日本は〔稲作+漁撈〕の半農半漁であり、日本人は、米の上に魚をのせて食べるのです。

このように、博物館の各展示を空間的に対比させて見ると、おもしろいことがわかってきます。そのことは、直接みえる形で展示されているとはかぎりません。展示を見ているうちに想像できたということでよいのです。

建物のなかで、各展示物を空間的にとらえて想像をふくらませることは、博物館のなかをあるくたのしみのひとつです。


▼ 関連記事
パンにバターをぬって食べる人を想像する - 国立民族学博物館のヨーロッパ展示 -

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ヨーロッパのパンの数々(国立民族学博物館、ヨーロッパ展示)

国立民族学博物館のヨーロッパ展示でパンを見つけました。とてもおいしそうでした。もちろん模型ですが。

パンは、麦作を生業の中心としてきたヨーロッパではもっとも基本的な食べ物の一つです。

* 


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酪農にかかわる道具の数々(国立民族学博物館、ヨーロッパ展示)

その裏側にまわってみたら、酪農に関係する道具の展示がありました。

酪農(牧畜)は、ヨーロッパの農業の重要な一部分をなしています。牛・羊・豚を中心に、その乳と肉が利用され、特に乳は、バターやチーズに加工され、人々の日常的な食物のひとつになっています。

* 

これらのパンと酪農の展示から、ヨーロッパの農業は〔麦作+牧畜〕つまり半農半牧であること、そして、麦作農業からパンが生まれ、牧畜(酪農)からバターとチーズが生まれることを、展示物にむすびつけて理解し記憶できました。

そして、パンに、バターをぬってたべているヨーロッパ人の姿を、リアルに想像することができました。

具体的な物にむすびつけて理解し記憶し、そして、そこでは見ることはできないことでも想像してみることは大切なことです。博物館のなかをあるくたのしみのひとつは、自由に、想像をふくらませることができる点にあります。

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写真1 大阪市立自然史博物館の入り口

大阪市立自然史博物館では、自然の歴史、地球の歴史についてまなぶことができます。特に、第2展示室では、化石を見ながら、地球と生命の歴史についてくわしく理解することができます。

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写真2 第2展示室の化石展示

地球は、約46億年前に誕生しました。

約35億年前になると、最初の生命が誕生しました。

地球の歴史は、動物の進化にもとづいて時代区分されています。それは、古生代、中生代、新生代となっています。

古生代の初めには、海にすむ生物の数や種類が飛躍的に増え、ほとんどの脊椎動物があらわれました。

中生代は、「恐竜とアンモナイト」の時代です。植物界では裸子植物の時代になりますが、中生代後半に入ると被子植物があらわれました。

新生代第三紀は「哺乳類の時代」とよばれ、哺乳類が大発展しました。

そして、新生代第四紀(約200万年前)になってからは、人類が大発展しました。

このような自然史については、博物館で化石などを実際に見ることによって、とてもリアルに具体的に理解することができます。


ところで、大阪市立自然史博物館の別館ネイチャースクエアには、「自然史」ではなくて「自然誌」の展示がありました。これらは似ているようで異なります。「自然史」が、時間的歴史的な見方をするのに対して、「自然誌」は、どちらかというと空間的な見方を重視します。つまり、つぎのような対応関係があります。

自然史:時間
自然誌:空間


そこで、大阪市立自然史博物館の別館ネイチャースクエアの「自然誌」の展示では、空間的な見方を意識し、本館第2展示室の「地球と生命の歴史」展示では、時間的歴史的な見方を意識することによって、一見、非常に複雑に見える自然の現象あるいは地学の知識をすっきりと整理することができます。このあたりがごちゃごちゃになっていると混乱が増してしまいます。

このように、空間的な見方と時間的な見方をよく整理して、そしてそれらを組みあわせることは、複雑なことを見通しよく理解することに役立ちます。


大阪市立自然史博物館 >> 


▼ 関連記事
里山のモデルをつかって大阪の自然誌をとらえる - 大阪市立自然史博物館 - 
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