感染症が今後とも断続的におそってきます。野生動物と人間のあいだに緩衝帯をつくります。地球上でうまくすみわけます。
新型ウイルスの感染拡大によって、しずまりかえった大都市に野生動物があらわれました(注)。


イスラエルの大都市、テルアビブでは、日中にもかかわらず路上でくつろぐ野生のゴールデンジャッカルが目撃された。彼らは人をさけるため、人の多い地域では人気の少ない夜間に活動することが多い。しかし外出制限期間中は日中でも人がほとんどいないことから、こうして明るい時間帯にもかかわらず街の中に姿をあらわしたようだ。


似たようなことが世界各地でおこりました。スペインの主要都市マラガでは、野生のスペインアイベックスが人家の屋根を日中あるいている姿が目撃されました。シカゴやサンフランシスコ・ロサンゼルスといったアメリカの大都市ではコヨーテが日中 俳諧していました。

野生動物のこのような行動は人間が自宅にこもった直後からすぐにはじまりました。このことから、人間の普段の行動が、多大かつ即時的な影響を野生動物にあたえていることと、人間の領域と野生動物の領域がいまや直接しているということがわかります。つまり今日、人間の生活圏のすぐ周辺で、生息域を制限された野生動物がくらしており、野生動物と人間が接触する可能性が非常にたかまっているといえます。

今回およびこれまでの感染症の例からもわかるように、感染症のおおくは、本来は接触するはずのなかった野生動物と人間(や家畜)が接触することによってひきおこされます。

今回の新型ウイルス感染症が、治療薬とワクチンの開発により1〜2年後に収束したとしても、野生動物と人間の接触の機会がふえている以上、また、未知の別のウイルスがでてきて人間に感染します。長期的にみれば、今後とも、感染症の流行は断続的におこることが予想できます。

これまで人間は、自然環境を徹底的に開発し、破壊し、みずからの領域を拡大してきました。人間が、自然環境に悪影響をあたえているとおもう人はおおいかもしれませんが、そのことによって、人間にも危険がおよんでいるという事実にも気がつかなければなりません。

抜本的なウイルス対策が必要です。そのためには、野生動物の領域と人間の領域とのあいだ(自然環境と都市とのあいだ)に緩衝帯をつくり、野生動物と人間ができるかぎり接触しないようにするという方策がかんがえられます(図)。野生動物の領域と人間の領域とのあいだに明確な一線をひくのではなく、あいまいなゾーンをつくります。


200624 緩衝帯
図 緩衝帯のモデル


緩衝帯があれば、野生動物が人間にちかづいてきたとしても緩衝帯でおいはらえます。人間も、緩衝帯まではいきますが、その奥の自然環境には、特別な理由がないかぎりはいらないようにします。これは、都市の内部に多数の緑地を点在させる緑化活動とはことなります。野生動物・ウイルス対策という明確な課題をもって、都市の周囲に緩衝帯をつくり、緩衝帯で都市をとりかこむという方法です。

日本各地にかつて存在した里山にはこうした緩衝帯の機能がありました。里山をはさんで、野生動物と人間はすみわけていました。里山を介して、自然環境と人間はやりとりをしていました。これは、ウイルスを撲滅・抹殺しようという非現実的な愚策ではなく、すみわけて、地球上で共存するという方法です。すみわけがポイントです。



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▼ 注:参考文献
『Newton』(2020年8月号)ニュートンプレス、2020年