ねむっているときに脳の老廃物があらいながされます。プロセシングがすすみます。健康維持のために情報処理をおこないます。
『Newton』2020年7月号のシリーズ「教えて!お医者さん!」第4回では「脳神経外科」について解説しています。


質問者「脳の健康維持のために、何かできることはありますか?」

山田医師「しっかり使って、しっかり休めることです。脳も筋肉と同じように、使わなければどんどん衰えますし、筋肉と同じようにきたえることもできます。脳を使うとは、会話すること、読み書きをすることですね。そして、休める、つまり睡眠がとても大事です。脳内の老廃物は眠っているときに洗い流されるからです。」


脳は、人体で、もっともおおくのエネルギーを消費する臓器だといわれており、大人の場合、全身で消費されるエネルギーの約20%が脳で消費されています。この大量のエネルギーは、血液中のグルコース(ブドウ糖)と酸素によって供給されます。

脳は、水でみたされた容器に豆腐がはいっているように、「脳脊髄液」という液体のなかにはいっています。この液体のおかげで、約1.4キログラムもある脳は型くずれすることなく、また多少の衝撃をうけてもたえられます。脳脊髄液は、脳内の老廃物をあらいだす役目もになっていて、とくに、ねむっているときにそれが活発になります。脳をやすめ、老廃物をあらいながすために睡眠が必要です。

脳脊髄液の生産量がふえすぎたり、“排水” がうまくいかなくなると「水頭症」という病気になります。






睡眠中にはまた、情報の整理や記憶の定着などもおこることがしられています。

脳をよくつかい、よくやすめることを脳神経外科医はすすめており、脳をよくつかうとは、会話をすることと読み書きをすることだといいます。これらを、人間主体の情報処理の観点からとらえなおすと、会話において相手の話を聞くことはインプット、自分のメッセージを相手につたえることはアウトプット、読むことはインプット、書くことはアウトプットです。

  • インプット:聞く、読む
  • アウトプット:言う、書く

これらインプットとアウトプットをつなぐのがプロセシングであり、その中核的な役割を脳がになっています。プロセシングが睡眠によってすすむことに気がつけば睡眠をおろそかにすることはできなくなります。



▼ 関連記事
テーマを設定する -「新・睡眠の教科書」(Newton 2019.8号)-
記憶を強化する -「新・睡眠の教科書」(Newton 2019.8号)-
「失われる、ニューロンと記憶」(Newton 2019.7号)
睡眠と覚醒がきりかわる -「睡眠と覚醒の謎に挑む」(Newton 2018.7号)-
プロセシングが睡眠中にすすむ -「なぜ私たちは夢を見るのか」(Newton 2019.12号)-
睡眠をとりもどす -「乱される現代人の睡眠」(ナショナルジオグラフィック 2018.8号)-
睡眠によって記憶を定着させ整理する(Newton 2018.5号)
記憶の仕組みとアルツハイマー病 -「アルツハイマー病 研究最前線」(Newton 2017.3号)-
睡眠をとって記憶を強化する - ペネロペ=ルイス著『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』-
目・脳・手のコンビネーション -「サピエンス(1)」(Newton 2019.1号)-
インプットをしたらさっさと寝る
偽薬で効果が生じる「プラセボ効果」(Newton 2019.2号)
脳の仕組みを知る -『脳とニューロン』(Newton 別冊)-
記憶し判断し、直観とひらめきをえる -『脳力のしくみ』(ニュートン別冊)-
快眠して人生をゆたかにする - 井上昌次郎著『ヒトはなぜ眠るのか』-
睡眠が脳を活性化させる - 古賀良彦著『睡眠と脳の科学』-


▼ 参考文献
『Newton』(2020年7月号)ニュートンプレス、2020年