鬼海カルデラの調査がすすみます。超巨大カルデラの構造と噴火のしくみがわかりました。巨大噴火はこれからもおこります。
『日経サイエンス』2020年6月号が超巨大火山について特集しています。現在、神戸大学海洋底探査センターが主導して「鬼界カルデラ」の調査・研究がすすんでいます。



超巨大噴火で生じた火砕流は海上を走って九州本土の薩摩、大隅の両半島を襲い、南九州の縄文文化が滅亡、日本列島は東北地方の仙台あたりまで火山灰に覆われた。地球規模で見ても直近1万年で最大の噴火で、もし現代に起きれば日本は滅亡の危機に陥る。


鹿児島港から船で3時間ほど南下すると薩摩硫黄島と竹島がみえてきます。これらは、世界最大の噴火をおこした「鬼海カルデラ」の頂上域が海上にでたものです。




そもそも火山の噴火には2つのタイプがあります。

ひとつは、富士山や桜島や浅間山のように、山頂や山腹で噴火がおきる「山体噴火」であり、もうひとつは、箱根カルデラなど、膨大な量のマグマの放出によって大地が陥没し、地表におおきな凹みであるカルデラができる「カルデラ噴火」です。

最近、調査がすすむ鬼海カルデラは、約7300年前に、超巨大カルデラ噴火をおこしたとかんがえられ、そのマグマ放出量は箱根カルデラの約50倍と推定されて、噴火で生じた火砕流により九州南部の縄文文化がほろびました。

今回、調査船による海底探査がおこなわれ、そこでは、海底にむけて音波を発射する「反射法地震探査」という方法がつかわれています。音波は、その一部は海底で反射されて海面にもどり、のこりは地震波となって海底下をすすみ、その地震波は、断層や地層境界などの地質構造が急変するところで反射や屈折がおこり、その一部は音波になって海面にもどってきます。これらの音波を調査船で観測して、海底の地形と海底下の構造をあきらかにします。

この方法により、このたび、鬼海カルデラは、二重構造のカルデラであり、またカルデラ中央部のドーム状の地形は「溶岩ドーム」であることがわかりました。






こうして、大量のマグマが噴出して二重構造のカルデラをつくり、カルデラ直下にうまっていたマグマが流出して溶岩ドームができたのではないだろうかという仮説がたてられました(超巨大カルデラ二重噴火モデルがつくられました)。

こうした研究は「プレート運動」(プレートテクトニクス)を前提としてすすめられます。この前提によると、鬼海カルデラ付近では、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートがしずみこんでおり、しずみこんだプレートの地下100kmあたりの上面で噴火をもたらすおおもとのマグマが発生するとされ、さらにプレート運動は、約300万年前から現在にいたるまで運動パターンに変化がないとされます。

今回の研究では、反射法地震探査による音波を観測してデータを集積し、プレート運動を前提として、超巨大カルデラ二重噴火の仮説をたてました(モデルをつくりました)。

  • 事実(データ):反射法地震探査による音波
  • 前提:プレート運動
  • 仮説(モデル):超巨大カルデラ二重噴火モデル

この論理(方法)は仮説法(仮説発想法あるいは発想法)です。

するとつぎに、プレート運動を前提とし、超巨大カルデラ二重噴火の仮説(モデル)がただしいとすると、超巨大カルデラ噴火はいずれまたおこると予見(予想)できます。プレート運動が今後ともつづく以上、同様な噴火がくりかえされます。

  • 前提:プレート運動
  • 仮説:超巨大カルデラ二重噴火モデル
  • 予見:超巨大カルデラ噴火がいずれまたおこる

この論理(推論)は演繹法です。演繹法により予見(予想)ができます。

鬼海カルデラの前回の噴火により南九州の縄文文化がほろびました。次回の噴火では西日本に壊滅的な被害がでると予想されます。ただしつぎの噴火がいつおこるのか、時期まではわかりません。

日本は火山列島です。こうした論理(方法)によって全国各地の火山噴火が予想されています。ただしそろそろ噴火しそうだとはいえても、噴火時期(日時)まではわかりません。

しかし被害予想はだされています。たとえば富士山が今後 噴火したら、首都圏は火山灰におおわれて都市機能が麻痺します。箱根カルデラでまた噴火がおこれば横浜ちかくまで火砕流が到達し、500万人ちかい命がうしなわれます。

日本でくらしている以上、火山噴火からのがれることはできません。火山のちかくにすんでいる人だけでなく、誰もが、火山の活動に注目していかなければなりません。



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▼ 参考文献
『日経サイエンス』(2020年6月号)日経サイエンス社、2020年
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