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風景の科学展 
(平行法で立体視ができます)
風景をみて、対象を選択して、みえないものを想像します。〈大観→局観→達観〉という3段階の方法で認識がふかまります。問題解決にも応用できます。
(2019.11.10 更新) 
「風景の科学展 - 芸術と科学の融合 -」が国立科学博物館で開催されています(注1)。芸術家の目がきりとった風景に自然科学者は何をみるでしょうか? 本展は、写真家の上田義彦さんが撮影した風景写真とともに、その風景に関連した科学的な対象物(試料)が展示され(注2)、あわせて言語による解説文が掲示されており、風景写真を入口にして科学の世界に人々をさそう展示構成になっています。


  1. 風景写真
  2. 科学的対象物(試料)
  3. 解説文


以下に、会場に展示・掲示されていた、風景写真の場所、科学的対象物(試料)の名称、解説文の要約を順番に記述します。


  • シンクヴェトリル国立公園(アイスランド)
  • 玄武岩
  • 急崖からなる谷はアイスランド語で「ギャオ」とよばれ、海底下に本来は没している中央海嶺が陸上でみられる特異なところである。あらたな海洋プレートが現在も生まれつづけており、長大な時間スケールで起こる地球のダイナミックな活動を実感することができる。

  • シンクヴェトリル国立公園(アイスランド)
  • 温泉の生物皮膜
  • この地の湖は、温泉が流入するので冬季でも全面結氷せず、真冬でも珪藻の調査ができる。アイスランドの温泉は、日本の温泉に比べてわずかな量の珪藻しか付着していない。アイスランドの温泉水は青く着色していることが多く、その原因となる金属の影響が珪藻の生育に関係しているのだろう。

  • グレンコー(スコットランド)
  • ステップバイソンの肩甲骨
  • 最終氷期である約2万年前、西はイギリスやスペイン、東は北アメリカ大陸にまでステップバイソンが分布していてた。しかし最終氷期のおわる約1万年前を境に、マンモスなどの大型哺乳類とともに絶滅した。近年のDNAをつかった研究によると、現存するヨーロッパバイソンは、ステップバイソンと家畜牛の野生種オーロックスとの交雑種である。

  • グレンコー(スコットランド)
  • 泥炭
  • スコットランド北西部では、U字谷の谷底に湿地帯が広がり、泥炭層が形成されている。泥炭すなわちピートは、麦芽を乾燥させるための燃料となり、特有のスモーキーなフレーバーをウイスキーに付け加える。スコットランドの風景はウイスキーの香りと結びついている。

  • ノルマンディー(フランス)
  • フラギラリア・カプキナのアイソタイプ標本
  • 展示されているプレパラート標本は、共同研究の一環として大英自然史博物館から国立科学博物館に分与されたものである。この標本集には、珪藻研究者には有名なフラギラリア・カプキナという種が新種記載されている。もしかしたら、この風景の睡蓮池の水のなかに棲息しているのかもしれない。

  • ポポロ広場(イタリア)
  • 岩石
  • ポポロ広場の中心にある尖塔は「フラミニア・オベリスク」とよばれる記念碑で、赤みを帯びた花崗岩でできている。ローマ市内の広場は石畳で舗装されていて、火山岩が多く用いられている。ローマは実に岩と関係が深い都市ともいえる。

  • ラジャ・アンパット諸島(インドネシア)
  • ハマシコロサンゴ
  • ラジャ・アンパット諸島のサンゴ礁は、褐虫藻が体内に共生しているイシサンゴ類の70%以上の種が生息するなど、世界的にも多様性が高い熱帯の海である。サンゴ礁とその周辺に生息する動物は、褐虫藻が光合成でつくり出したエネルギーに依存している。サンゴ礁の風景は、さまざまな生き物の営みによってつくり出されたものである。

  • ラジャ・アンパット諸島(インドネシア)
  • 海食洞
  • 写真の海食洞は、新生代の石灰岩質堆積岩が隆起して、波の作用によって削られてできた。同じところが削られて窪んでいることから、近年は隆起が止まっていることが分かる。連続して隆起が起こっている場合は海食崖が形成される。

  • ベイルート(レバノン)
  • オレンジとオリーブ
  • オレンジとオリーブは、地中海のまわりの人々にとっては、どちらも日々の暮らしになくてはならない食べ物である。文化の中で大切な役わりを担ってきた地中海文明を象徴する植物たちといえるだろう。日本では、地中海沿岸に似た温暖で雨の少ない瀬戸内海の気候によくなじみ、特産品に成長している。

  • ワルザザート州(モロッコ)
  • モロッコ産地衣類標本
  • 乾燥や紫外線に曝された厳しい環境でも、土や岩・樹皮などの表面には地衣類が生育している。地衣類は、菌類と藻類から構成される共生体である。共生関係を進化させることで、砂漠や南極などの極限環境にまで分布を広げてきた。

  • ワルザザート州(モロッコ)
  • 最古のゾウの右下顎骨化石
  • モロッコの内陸に広がる砂漠は、3500万年前の始新世の終わり頃までは海鳥が乱舞する暖かな海辺だった。そこで進化の道を歩み始めた生き物の一つがゾウである。しかし海辺の楽園は、始新世の終わり頃になると寒冷化が進み、ゾウの祖先たちは内陸部へとすみかを変えた。

  • ガンジス川(インド)
  • 多様な人類集団とガンジスカワイルカ
  • インドには、人類の初期拡散によって人々が到達した後に、西方からは農耕民が、ユーラシアのステップからは遊牧民が進出し、多様な人類集団が混合した。ガンジス川には、本来は海に住む海産哺乳類の仲間であるガンジスカワイルカが生息するが、絶滅が危惧されている。

  • ドゥルミトル国立公園(モンテネグロ)
  • 北西アフリカ482隕石
  • 望遠鏡をのぞくと、月には、隕石の衝突でできたクレーターががたくさん見える。大きな隕石が衝突したときにできたもので、そのときに、月の岩石がはじき飛ばされて地球まで飛んできたものが月の隕石だ。これを研究することにより月の形成と進化がわかってきている。

  • ドゥルミトル国立公園(モンテネグロ)
  • 高い生物多様性
  • ドゥルミトル国立公園は、ヨーロッパでもっとも深いターラ渓谷をふくみ、多くの固有生物が知られている。モンテネグロの低地は温暖であり、高地は冷涼であり、地中海性気候の乾燥した低地では、山脈からながれる雪解け水が大河や湿地をつくっている。湿潤な環境がパッチ状に存在し、生物多様性が高い。

  • イスタンブール(トルコ)
  • 航路と泡
  • 船が通った後の航路にできる小さな泡がなかなか消えないことがある。水中に浮遊している微細藻類、特に、渦鞭毛藻類や黄金藻類が大量に発生していることが多い。微細藻類は、光合成でできた物質の一部を水中に放出していると考えられている。

  • ワディ・ラム(ヨルダン)
  • 楯状地の上に砂岩が堆積
  • ワディ・ラムは、ヨルダン高原の南端に位置し、基盤となるアラビア楯状地の上に古生代カンブリア紀の砂岩が堆積した場所である。岩山のほとんどは砂岩からなるが、基盤の花崗岩がその根元には露出している。荒涼とした風景は、『アラビアのロレンス』などの映画の撮影地として、最近は、火星に見立てたロケ地として使われている。

  • モンゴル草原(モンゴル)
  • もっとも原始的なウマ類の上顎第一大臼歯
  • ウマの祖先は、およそ5500万年前に現れたエオヒップスである。人類は、野生のウマを家畜化し、草原へ進出した。ウマの機動性は、遊牧民による巨大帝国を誕生させた。その末裔であるモンゴルの人々の中には、大型テントのようなゲルにすみ、ウマと車をつかって移動しながら生活している人が今でもいる。

  • ピンナワラ(スリランカ)
  • セイロンゾウ
  • アジアゾウは3亜種に分類され、スリランカに分布するセイロンゾウは本種の基亜種である。リンネは、アジアゾウを記載した際に、英国の博物学者ジョン・レイによる1693年の記載を参考にした。レイが調査したアジアゾウは、フィレンツェの博物館で展示されているものであることが2013年に確認され、模式標本として指定された。

  • マンダレー(ミャンマー)
  • ミャンマー産インドボダイジュ(クワ科)
  • インドボダイジュは、もっとも神聖な木として寺院には必ず植えられ、敬われている。仏教の聖木のひとつであり、釈迦は、この木の下で悟りを開いたとされる。その葉の先端は滴下先端と呼ばれ、極端に先細りに尖り、雨の滴をおとしやすくしている。

  • オアフ島(ハワイ)
  • カワツルモ
  • 水草の種類が少ないハワイ諸島にあって、カワツルモはすべての島に生育している。カワツルモ属は、数千kmの長距離を移動することがあること、それは、渡り鳥による可能性が高いことが DNA 解析によってしめされた。生物は、遠く離れた大陸から したたかに入り込んでくる。

  • マウイ島(ハワイ)
  • ハワイモンクアザラシ
  • ほとんどのアザラシ類が寒帯・亜寒帯に住むのに対して、ハワイモンクアザラシは熱帯の海に暮らす珍しいアザラシで、ハワイ諸島の固有種である。ハワイ諸島北西部の小島や環礁をもっぱらのすみかとする。1400頭あまりが生息するといわれるが、絶滅危惧種である。

  • ビッグベンド国立公園(アメリカ)
  • 天の川
  • 私たちの銀河系は2000億個ほどの恒星の集まりで、円盤のような形をしている。その円盤の中に太陽系もあり、そのため銀河系は、天を取り巻く帯のように見える。それが天の川である。私たちの銀河系は、天の川がもっとも濃く見える部分の向こう、2万8千光年の彼方を中心に回転している。

  • セントラルパーク(アメリカ)
  • ニューヨークルック
  • 統一のとれた外壁材を用いた建築物が並ぶ。多くの建物で壁面には、セーラムライムストーンとして知られるインディアナ州産の石灰岩が、底部には花崗岩が用いられ、ニューヨークルックとこの様式は呼ばれてきた。立面を3分割(3層構成)する伝統的な西洋建築作法がみられる。

  • オリンピック国立公園(アメリカ)
  • 温帯雨林
  • 温帯雨林は、年間降水量1400mm以上の地域で、海上で発生した雲が冷やされることで大雨が降る山岳部によく形成される。多くの温帯雨林ではブナなどの広葉樹が優占することに対し、オリンピック国立公園では、トウヒ・ツガなどの針葉樹が優占する。温帯雨林は開拓の対象になりやすく消滅が危惧され、その多くが世界自然遺産として保全されている。

  • ホワイトサンズ(アメリカ)
  • 純白の砂漠
  • ホワイトサンズの名で知られる広大な白い砂漠は細粒の石膏結晶からできている。石膏は、その成分だけが濃縮して岩盤を形成することがあり、ここは、風化と侵食によりそれが細かく砕かれ、風によって運ばれて砂漠となった奇跡的な自然景観をしめす。石膏は硫酸塩鉱物の代表格で、ギプスや石膏ボードの原料となる身近な鉱物である。

  • ヨエンスー(フィンランド)
  • 森林の生物資源
  • フィンランドは、森林率が7割以上とヨーロッパでもっとも高く、森林産業が発達している。森林資源の本格的な応用研究がおこなわれ、キシリトールや植物性スタノールなどもうまれた。フィンランドには、関連企業からなる森林クラスターという集団があり、森林から派生する生物資源を産業や文化に有効に活用するシステムがつくられている。

  • エル・カラファテ(アルゼンチン)
  • さまざまな被子植物化石
  • 5000万年ほど前の地層には広葉樹の多様な化石がふくまれており、温帯雨林がかつてこの地に広がっていたことが分かる。この地には、1万4000年ほど前に人類が到達した。南極や南太平洋の島々を除けば、ここは人類が最後に到達した地域である。しかし彼らは、19世紀以降に、ヨーロッパ人の侵入によりほぼ絶滅してしまった。

  • エル・カラファテ(アルゼンチン)
  • ペリト・モレノ氷河
  • アンデス山脈の南パタゴニア氷原から流れ出す全長30kmに及ぶ山岳氷河は2mほど毎年動く。この氷河には、1万5000年以上前の氷も含まれる。氷河は、山肌を削り取り(浸食)、また巻き込んだ岩石を溜め(堆積)、U字谷や氷河湖など、独特な氷河地形を生み出す。昔の大気や削り取った岩石片を内包しているため、氷塊が融解すると湖を白濁させる。

  • コジオスコ国立公園(オーストラリア)
  • バンクシア・エリキフォリアの果実
  • オーストラリアの乾燥地帯には、バンクシアなど、硬く閉ざされた果実をもつ植物たちが息づいている。ひとたび山火事がおこると、果実は、秘めていた種子を放出する。焼き尽くされた大地は植物たちにとっての新天地である。

  • ガラパゴス諸島(エクアドル)
  • ウミイグアナ
  • ダーウィウンが、島々の動植物をみて自然選択説を着想した。ゾウガメ・イグアナ・フィンチ類など、生物たちは、何らかの原因で島にたどり着き、独自の進化をとげた結果、固有種となった。最近、すでに絶滅したとされるゾウガメの亜種が本来は生息しない島でみつかった。これは、かつて大量に捕獲されたゾウガメが船から捨てられ、流れ着いたものの生き残りであると考えられる。

  • 南京(中国)
  • ヨウスコウカワイルカ
  • 2006年12月、中国を中心とした研究者グループは、ヨウスコウカワイルカの絶滅を発表した。揚子江(長江)の三峡より下流に分布した体長2.5mのカワイルカ科のハクジラであり、クチバシが長く、体色は全身灰色、目の発達が悪いなど、沿岸から河川に分布するイルカの一般的な特徴を持っていた。長江流域の文明の発達とともにその姿を消した。

  • 南京(中国)
  • 稲作
  • 長江中流域では、野生の稲が栽培化が1万年以上前に始まり、本格的な稲作が7000年前には始まった。稲作農耕が世界で最初に行われた地域である。それは、都市と文明をこの地域に生み、増加した人口は周辺へひろがった。この食料生産革命は、東アジアの集団の構成と文化を大きく変容させた。

  • ナジャファバド(イラン)
  • 小麦農業
  • 人類は、1万年よりも新しい時代になると世界の各地で農耕をはじめるようになる。西アジアは、小麦を中心とした農業が世界で最初に始まった地域であり、現在のイランやアフガニスタンにあたるペルシャでも人々が集まり、年が形成され、古代文明が誕生した。古代人のゲノムの解析から、およそ9000年前にイランの農耕民は東方への拡散を始め、インドまで到達したことが分かっている。

  • タキーレ島(ペルー)
  • 先住民
  • 15〜16世紀のインカ時代の遺跡から出土した人骨の DNA の調査から、先住民アイマラ族の人々は、インカの時代にこの地に住んでいた集団の子孫であることが証明された。彼らはインカの末裔だった。ヒトの DNA には、祖先のたどった道のりが刻印されている。風景を通して感じる古代人の息吹は科学によって裏打ちされる。

  • タキーレ島(ペルー)
  • 古代湖
  • 古代湖は遷移が進まず、100万年以上も存続し続け、その長い歴史性ゆえにさまざまな水生生物の固有種が生息する。チチカカ湖は、カダヤシ類の魚類が30種以上も分化しており、高い多様性と固有性を示す。しかし外来種の問題、水質悪化に観光ゴミが加わり、この古代湖の環境は危機に瀕している。

  • フリアカ(ペルー)
  • ジャガイモ
  • 標高6000mを超える山々が連なるアンデス地域は、砂漠の海岸地帯から人が住む限界の高地まで標高差は4500mにもおよぶ。チチカカ湖周辺の標高4000m近くの地域の気候は冷涼で、ジャガイモを主として栽培している。ジャガイモは疫病に弱い栽培植物で、単一の品種を栽培していると被害を受けやすいので、アンデスの先住民は複数の品種をまとめて栽培している。

  • フリアカ(ペルー)
  • ビクーニャ(アルパカ)
  • 南米に生息するラクダ科偶蹄類としてグアナコとビクーニャの2種がおり、いずれも家畜化され、ラマ(リャマ)とアルパカの名でそれぞれ知られている。アルパカは、狩猟採集民によって約6000年前にはすでに家畜化されていたと考えられている。アルパカの毛は非常に細かく緻密なので、この地の重要な産業になっている。

  • 屋久島(日本)
  • 付着藻類
  • 川底の石や砂の表面が茶色や緑色・赤色に着色してヌルヌルと滑りやすくなることがある。このような着色は、珪藻・緑藻・紅藻など、顕微鏡でないと見ることができないサイズの付着藻類によることが多い。石の表面に付着した状態の藻類を藻類皮膜とよぶ。実際には、バクテリアや水生昆虫などもこの皮膜に入っているので生物皮膜(バイオフィルム)とよぶこともある。

  • 屋久島(日本)
  • 花崗岩
  • 屋久島は、今から約1500万年前に花崗岩質マグマが浅所まで上昇してきたことで海底面が大きく隆起して島となった。花崗岩でできた島という、地球上でも得意な地質がその独特な景観をつくりだした。屋久島花崗岩の特徴は、最大で長さ10cmに達するような板状の正長石巨晶をふくむことである。

  • 京都(日本)
  • ヒノキ
  • ヒノキの材は強度が高く、湿度や虫などへの耐性も高いうえに、加工もしやすく、さらには日本人の好む芳香を発することなどから、大型社寺の柱材、家具や彫刻材、風呂の材など、多岐に利用されてきた。またヒノキの樹皮は屋根にも利用される。ヒノキは、福島から鹿児島にかけて分布する日本の固有種で、柱に利用できる太さになるまでに200〜500年を要する。

  • 東尋坊(日本)
  • 安山岩
  • 東尋坊の安山岩は、約1500万年前に日本海が開いて、ユーラシア大陸から日本列島が分断されたときに地下が割れて噴出したマグマが固化したものである。複数の石柱がたっていて、これは柱状節理とよばれ、溶岩流が冷えて固まるときに均等に収縮して規則正しい割れ目が入ってできたものである。上から見るとその多くは六角形をしている。

  • 東尋坊(日本)
  • プランクトン
  • 動物プランクトンは、昼間は、深いところに生息しているが、夜になると、海の表面近くに浮かんでくる。このような習性を日周鉛直移動とよぶ。海の表層には、餌となる植物プランクトンが多いものの、動物プランクトンを捕食する天敵の魚なども多いため、昼間は深部ですごし、餌を食べに夜間に浅所に上昇してくるのだろう。

  • 三宅島(日本)
  • ユノミネシダ
  • 三宅島では、2000年の噴火後、過去1度しか記録されたことがないユノミネシダが島内の各所に出現した。火山ガスによって多くの植物が枯死した場所に、火山ガスや酸性土壌に強い耐性を持つ本種が繁茂した。火山の活動は、植物相や景観に劇的な変化をもたらすことがある。

  • 山梨(日本)
  • 柿渋
  • 青いカキや渋ガキ品種を食べた際には強い渋みを感じる。この渋みの原因となるのがタンニンである。カキタンニンは柿渋として、染料や防腐剤、日本酒の清澄剤などに古くから利用されてきた。私たちは、さまざまな特徴を持つカキ品種を生み出してきた。それらはいずれも大切な遺伝子資源といえる。









以上のように、風景写真をみて、科学的対象物(試料)をみて、解説文をよむという3段階の過程をくりかえしていると、風景に意味がつけくわえられ、その場に関する認識がふかまります。風景の背後にある現象や自然の本質がわかってきます。

この3段階の方法は一般化することができ、第2段階目の対象の選択では、今回は、科学的な対象物を選択していましたがそれにとらわれる必要はなく、たとえば旅行にでかけて、城がすきな人は城を対象にしたり、鉄道がすきな人は鉄道を対象にしたり、民族がすきな人は民族を対象にしたり、興味のあるものを対象にすればよいです。

そして対象をよく観察したら、想像力をはたらかせて、目にはみえないところでは何がおこっていたのか、何がおこっているのかなどをかんがえてみます。

風景をみることは、その地域やその場を大局的・全体的にみることであり、大観するといってもよいでしょう。それに対して、特定の対象をよく観察したり、選択した局所をくわしくしらべることは「局観」とよぶことにします。大観し、局観することによって、こまかいことにはこだわらないで物事の本質をみとおすことができます。大局をみて局所をみると、いままで以上に全体がよくみえてきます。本質をみとおすことは達観ということもでき、こうして、〈大観→局観→達観〉という3段階の方法をモデル化できます(図1)。


191108 達観
図1 3段階モデル


誰もが、感覚器官をもっているわけですから、旅行にでかけたり散歩をしたりしながらあるいは通勤・通学中でも風景をみています。しかし漠然とみているだけだとそこから意味をよみとることはできません。記憶にものこりません。

そこで風景のなかから特定の対象を選択してしらべてみます。ひろくあさくではなく、集中的に重点的にとりくんでみます。するとおもわぬ発見があります。対象の意味がわかってきます。そもそも意味とは、全体のなかでの位置づけによってきまるものです。

一方で、たとえば鉄道がすきな人は鉄道ばかりをみているかもしれません。花がすきな人は花ばかりをみているかもしれません。粘菌がすきな人は粘菌ばかりをみているかもしれません。しかし特定の対象がすでにきまっている場合であっても、第1段階としてまずは、その場の風景をみてください。大局をつかんでください。するとその対象の存在意義がわかります。そもそも存在意義とは、それをふくむ全体の空間的なひろがりと時間的なながれのなかの位置づけできまることです(注3)。

このように、〈大観→局観→達観〉という3段階を自覚するだけでも世界がちがってみえてきます。

この3段階モデルはさまざまな分野に応用できます。学習にもつかえます。たとえばある科目を勉強するとき、その科目の教科書一冊をよみおわったら(不完全な理解でもよいのでなるべく短時間でよみます)、つぎに、もっとも興味のある章を選択して、その部分を徹底的に記憶します。そうしたほうが全体像がかえってよくみえてくるので、重点をきめないで幅ひろく勉強しているよりも理解と記憶がすすみます。

あるいは気象観測では、適切なモニター点を地球上に設置します。衛星画像で全体をみて、適切な局所をしらべると、現象の本質がわかります。局所の選択がきわめて重要です。

あるいは地質学者は、広域的な地表踏査をしたら、つぎに、特定地点のボーリング調査をおこないます。どこをボーリングすればよいか、局所の選択が重要です。広域調査とボーリングをくみあわせることによって地質構造と地史がわかります。

問題解決のポイントは局所のせめかたにあるといってもよいでしょう。

今回の企画展「風景の科学」には、写真をつかった世界一周旅行といった側面もあります。世界各地の個性、地球の多様性をあらためて感じとることができます。ここには、実験室のなかで実験と分析をくりかえしているだけの従来の科学とはちがう野外科学の世界がひろがっています。

今回の企画展は、科学的に風景を解説しただけの展覧会ではなく、探検からはじまった博物学、博物館でおこなわれてきた記載・分類学が、色も香りも質もある馥郁たる野外科学そして地球学へ発展することを方法論的にもさししめすものです。「博物学ルネサンス」を暗示しています。





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問題解決の方法(まとめ)


▼ 注1
風景の科学展 - 芸術と科学の融合 -
会場:国立科学博物館・日本館1階企画展示室
会期:2019年9月10日(火)~12月1日(日)
※ 写真撮影は許可されていません。



▼ 注2
言葉による説明のみで、試料そのものの展示がないものもあります。


▼ 注3
たとえば NHK の人気番組「ブラタモリ」をみても、どうしてそこに温泉町ができたのか、どうしてそこに鉄道がしかれたのかなどがわかります。その地域の地理的・空間的なひろがりと歴史的・時間的なながれのなかでその対象が位置づけられ、特定のその位置・場所によってその対象の存在意義が生じていることがわかります。


▼ 参考文献
佐藤卓(総合企画)・上田義彦(写真)『風景の科学 芸術と科学の融合(Illuminating Landscapes)』美術出版社、2019年9月10日



▼ 関連書籍
NHK「ブラタモリ」制作班『ブラタモリ』KADOKAWA