プラスチックによる海洋汚染がすすんでいます。マイクロプラスチックを魚介類がたべ、それを人間がたべます。環境汚染は人間にはねかえってきます。
『ナショナルジオグラフィック』2019年5月号では、深刻さをます、マイクロプラスチックによる海洋汚染について報告しています。




魚が育つハワイの沖の海は、今やマイクロプロスチックだらけだ。

米国海洋大気庁(NOAA)に勤務する海洋学者のゴーブと魚類生物学者のホイットニーは最近の調査で、ハワイ沖の潮目には魚とその餌以外のものも存在しているのを見つけた。プラスチックの小片「マイクロプラスチック」だ。それも大量に含まれていて、仔魚がそれを食べてしまうという。

英仏海峡で採取した海水からは、体長8ミリほどのオキアミ、さらに小さな甲殻類、幼生期を脱しつつあるヒトデが見つかった。英国のプリマス海洋研究所とプリマス大学の研究者たちが2017年に調査のために採取した仔魚のうち3%が微小なプラスチック製の繊維を食べていた。


海洋中に存在するプラスチックは、大半が、河川からの流入や陸地での投棄がもとになっており、その量は、年間約900万トンにものぼります。こうした海洋プラスチックは、日光や風・波にさらされてくだけ、5ミリ以下のマイクロプラスチックになり、海の魚に悪影響をおよぼします。

1970年代前半には、米国北東部ニューイングランド地方や英国の沖合で捕獲された魚の胃から、プラスチック製品の材料であるプラスチック・ペレットがみつかりはじめていました。最近の調査では、ペレットよりも微小なマイクロプラスチックがさまざまな魚の体内からみつかるようになっています。

プラスチックが目立つのは沿岸都市部の沖合ですが、海流によって外洋にもはこばれます。おおくがマイクロプラスチックであり、生物にとくに深刻な被害をあたえているのは海面付近のマイクロプラスチックだとかんがえられています。

このようなプラスチックを摂取した魚では、食欲低下や発育不全がみられ、こうした事態は魚の繁殖に影響し、個体数の減少をまねくおそれがあります。食物連鎖にも悪影響があります。

NOAA による調査では、メカジキやマカジキなど7種の仔魚の胃から、ポリエチレンとポリプロピレンの微細な繊維がみつかっています。トビウオは、とりわけたかい頻度でプラスチックをたべているとおもわれ、この魚は、サメなどの大型の魚の餌になるだけでなく、海鳥にとっても主要な食べ物です。大型魚や鳥たちはプラスチックも魚とともに体内にとりこんでいます。






このように海洋中をただようマイクロプラスチックを魚介類がたべることによって悪影響がでています。そしてそれらの魚介類をたべているのが人間であることをしるべきです。

プラスチックからとけだした有害化学物質は人体にも蓄積されます。けっきょく、人間たちがだしたプラスチックゴミは、めぐりめぐって人間たちを汚染します。

日本は、世界有数の使い捨てプラスチック消費国であり、たとえばペットボトルの年間出荷本数は227億本(2017年度)、1人当たりでは世界平均の約3倍にあたります。また日本で毎年でる900万トン超のプラスチックごみのうち、約70%が焼却され、リサイクルにまわるのは25%程度にすぎません。

まずは、容器・包装・レジ袋など、使い捨てプレスチックを極力つかわないようにしなければなりません。またペットボトルなどのリサイクルを徹底してすすめます。食品メーカやコンビニやスーパーなどの企業も環境問題にもっととりくむべきです。



▼ 関連記事
海が魚が汚染される -「プラスチック」(ナショナルジオグラフィック 2018.6号)-
リサイクルにとりくむ -「プラスチック」(Newton 2018.11号)-

▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック 日本版』(2019年5月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年