アイデアがうまれます。企画書が書けます。チームワークがすすみます。
企画書をどうつくればよいか? 川喜田二郎・山田しぶ著『まんがでわかる 発想法 -ひらめきを生む技術-』は、組織内での企画書づくりに役立つ「発想法」(KJ法)を紹介しています。



第1章 問題解決するための工程
第2企画室に異動した千夏。なぜ企画を考えるのが苦手なのか、その原因を探ることになったが・・・。

第2章 データを記録して分類する
小雪を第2企画室にスカウトする大谷室長。店舗にいたときは成績優秀だったが、小雪にはある悩みがあった。

第3章 発想をうながすKJ法
新しい企画を考えるため、情報を収集する千夏と小雪。そして千夏は、あるアイデアを思いつく。

第4章 KJ法の応用と効果
いよいよ二人は企画会議に臨むことに。はたして二人の考えた企画は会議を通過することができるのか!?



すぐにできる問題提起

「お客さんによりよい生活提案がしたい」
家具の製造販売会社ヤチヨ入社4年目の緑川千夏は、そんなおもいをもって企画室に異動してきました。そして問題提起がはじまります。しかし何が問題なのか、そもそもそれがよくわかっていないこと自体が問題でした。そこで自分の知識や経験から情報を整理する「内部探検」をおこないます。おもいだされたこと、おもいついたことなどを付箋に書きだしていきます。

「アイデアを出すことが苦手」「まだまだ経験が足りないから」と、あたらしい物事を発想することに苦手意識をもっている人がいるかもしれませんが心配はいりません。「KJ法」があります。

内部探検をして問題をはっきりさせようとするとき、問題そのものに最初からアプローチしようとはせず、関係のありそうな事柄、問題だと感じていることなどをどんどん付箋に書きだしていきます。自分の内面から外面に事柄(情報)をはきだす(アウトプットする)といった感じです。1人でもできますが、会社や役所などの組織ではチームをつくっておこなうとよいでしょう。

また内部探検がある以上、「外部探検」もあります。外部探検は、工場やお店や市場など、現場を実際にみにいく方法です。現場の刺激をうけながら、関係のありそうな情報を、360度の視角からあつめてメモをとってみましょう。



ブレーンストーミングで内部探検

「お客さんの生活が楽しくなるようなお手伝いがしたくて」
「今日からお世話になります紫村小雪です」
「まずはブレストをやってみようか」

「ブレスト」というのは「ブレーンストーミング」の略であり、チームでアイデアをだしあい、斬新なアイデアをうみだす手法です。内部探検をおこなう具体的な技術であり、つぎの原則があります。

  1. テーマを決める
  2. 他人のアイデアを批判しない
  3. 自由に発言する

意見やアイデアをつぎつぎに付箋に書きだしていきます。他人のアイデアを批判したり評価したりしないことがとくに重要です。批判や評価は人間を萎縮させ、よいアイデアがでなくなります。

またアイデアだけに限定せずに事実報告や見解など、関係のありそうなことを、参加者ができるだけアウトプットします。

付箋がほぼでつくしたら付箋のグループ編成をします。このグループ編成では、ホワイトボードや模造紙に付箋をひろげて、「なんとなく近いな」と感じる付箋をセットにしていきます。このとき、まず、小グループをつくり、つぎに、小グループをまとめて中グループをつくり、最後に、中グループをまとめて大グループをつくるようにするとアイデアがでやすくなります。その逆に、まず、大グループをつくって、つぎに、それを細分して中グループをつくり、さらにそれらを細分するというやり方では、既存の枠組みにしたがった単なる分類になってしまい、アイデアがでません。

またどのグループにも属さない「一匹オオカミ」があってもかまいません。無駄なデータは1枚もありません。



グループ編成・図解化・文章化、そして外部探検へ

「図解化の利点は一目で全体構造がわかることなんだ」
「的確に問題点が見つけられるってことなのさ」

付箋のグループ編成では、小グループをいくつかつくったら、それらの小グループそれぞれについて「一行見出し」をかんがえます。一行見出しがきまったら、その小グループのすべての付箋をかさねてまとめて、その上に、一行見出しを記入したあたらしい付箋をのせます。すべての小グループについておなじことをします。同様に、中グループ、大グループにも一行見出しをつけます。

大グループの一行見出し(付箋のかさなり)がいくつかできたら、ホワイトボードか模造紙などにそれらを「空間配置」します。付箋をうごかしながら、もっともすわりのよい配置をみつけます。

空間配置ができたら、かさなっている付箋をばらして、グループの中身を展開していきます。

すべての付箋が展開できたら、小グループ・中グループ・大グループのそれぞれを「島どり」をします。必要に応じて関係記号を記入します。この作業が「図解化」です。

そして千夏と小雪は外部探検にでかけました。
「店内を歩いているだけで楽しいね〜」
「うちの会社とは売り場の雰囲気が全然違うよね」

図解ができたら、今度は文章化です。付箋の内容をつなぎあわせて文章にしていきます。アイデアの種は、最初にまとめた小グループの中にあります。このグループからはじめたほうがいいかもというグループから文章化をはじめます。文章を書きながらアイデアをあらたにおもいついたら文章中に挿入します。

また文章化と並行して、チーム内で、プレゼンテーション(口頭発表)もします。はなすことでアイデアがうまれやすくなります。



チームワークがすすむ

以上のような工程で企画書づくりをすすめればチーム内での情報共有がすすみ、問題の核心が明確になります。したがって外部探検のときのアンテナの感度もあがります。

そして多様な情報を図解にまとめることによって情報を視覚的にとらえなおし、また情報をフィードバックすることができます。結果としてアイデアがでやすくなるだけでなく、チームワークもよくなります。提案の意図も理解してもらいやすくなります。








そもそも何が問題なのか? 意外にもそれがよくわかっていないことがおおいです。とくに、組織やチームにおいて問題が共有されていないことがよくあります。表面的な出来事にとらわれずに問題意識をとぎすますことが大事です。

そこで「内部探検」をおこないます。具体的には、「ブレーンストーミング」にとりくみます。ブレーンストーミングとは、あるテーマのもとで、参加者が自由に意見をのべながら、多彩なアイデアをえるための会議法です。批判を禁止し、質より量をもとめ、自由奔放に情報をだしていきます。付箋(ポストイット)をつかって書きだすとよいでしょう。

ブレーンストーミングでは、アイデアをだすことを主眼としますが、テーマに関係のありそうなこと、おもいだされたこと、かんがえたことなど、何でもいいので書きだします。チームをくんでおこなっていると、他者の発言に触発されてさまざまなことをおもいつきます。

記録については、記録係をおくよりも、みずからの意見やアイデアなどを各自が付箋に記入すればよいでしょう。

このような内部探検を、今日の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすと、他者の発言を聞くことはインプット、記憶が想起されたり、かんがえたり、アイデアをおもいついたりすることはプロセシング、付箋に書くことはアウトプットということになります(図1)。

190919 ブレーンストーミング
図1 ブレーンストーミングのモデル


付箋がほぼでつくしたら、付箋のグループ編成にうつります。そして図解化します。図解は、デジタルカメラで撮影してデータ化し、チーム内で共有します。図解にすることによって、グラフィックに体系的に多様な情報をとらえなおすことができ、アイデアがさらにでやすくなります。

時間がないときには、ここで、企画書づくり(文章化)にはいります。

このような「付箋→グループ編成→図解化→文章化」の段階が「KJ法」です(注1)。

余裕がある場合には、内部探検にとどまらずに外部探検をさらにおこないます。具体的には、フィールドワークをします。内部探検で図解がつくってあると、どこをどうあるけばよいか、何を見ればよいかといった調査項目がたてやすいです。フィールドワークは、つぎの5原則にしたがっておこないます。

  1. 360度の視角から
  2. 飛び石づたいに
  3. なんだか気にかかることを
  4. ハプニングを逸せず
  5. 定性的にとらえよ

現地・現場で見たこと、聞いたこと、気がついたことなどはかならずメモしてください。メモは、ノートに記入してもよいですが付箋に書きこんでもよいです。スマホのメモアプリやボイスレコーダーなどをつかってもよいです。

できれば、フィールドワークの結果も「KJ法」をつかって図解化します。

そして内部探検(ブレーンストーミング)と外部探検(フィールドワーク)の結果にもとづいて企画書を書きます(図2)。日本語の作文のためには「日本語の作文技術」がつかえます。

180927 3段階モデル
図2 3段階モデル


どのようにして ひらめきがうまれるのかということはとても深遠な問題であり、簡単には説明できませんが、人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点からとらえなおすと、ひらめきは、プロセシングに位置づけられ、心のなかの潜在意識とふかいかかわりがあるとかんがえられます。

わたしたち人間は、目や耳や鼻などの感覚器官をつかって外界(環境)から情報をえています。たとえばブレーンストーミングで他者の意見を聞いたり、フィールドワークで現場を観察することによってわたしたちは情報をインプットします。このようなインプットは内面への刺激となって、記憶がよみがえってきたり、刺激に触発されてアイデアをおもいついたりします。ふとしたことがきっかけで昔のことがおもいだされたという経験は誰にでもあるとおもいます。インプットとプロセシングの過程でさまざまな反応がおこるわけです。

したがってインプットを常日頃からこころがけることが大事です。課題をきめ、問題意識をとぎすますことも重要です。

他方、付箋に書きだすということは、プロセシングの結果をアウトプットすることです。ブレーンストーミングでは、心のなかにうかんできたことをすべてはきだすようにします。すべてをはきだしてしまうことによってあらたなアイデアもうかびやすくなります。心のなかにためこまないことは精神衛生上もいいです。「批判を禁ずる」というルールにしたがって実践してください。

そして「付箋→グループ編成→図解化→文章化」というKJ法をつかって企画書をつくったり、プレゼンテーションをおこなったりすることもアウトプットの過程にほかなりません。これは体系化の作業といってもよいでしょう。ポイントは、似ている付箋をあつめてグループにすることと、「小グループ→中グループ→大グループ」とすすむトップダウンではないボトムアップ方式をつかうところにあります。類似性にもとづいて情報を整理し体系化するとアイデアがでやすくなります(注2)。ここには、心のなかの過程が投影されているとかんがえられます。類似性にもとづいてひらめきをえる方法は類比直観法といってもよいでしょう。

こうして、内部探検・外部探検・企画書づくりにチームでとりくんでいるとチームワークもあきらかによくなります。チーム内に共鳴現象が生じます。みんなが仲良くなってきます。心が通じあいます。あるいはフィールドワークをくりかえしていると現地の人々や現場との共鳴が生じます。このような共鳴が、ひらめきをうみだすためにとても重要です。



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▼ 参考文献
川喜田二郎・山田しぶ著『まんがでわかる 発想法 -ひらめきを生む技術-』中央公論新社、2019年2月

▼ 注1
「付箋→グループ編成→図解化→文章化」を「狭義のKJ法」、狭義のKJ法にくわえて、内部探検と外部探検もふくめた全体を「広義のKJ法」とよぶことがあります。また今日では付箋をつかうのが便利ですが、川喜田二郎の著作では、付箋のかわりに「紙片」あるいは「紙きれ」あるいは「ラベル」と記載されています。

▼ 注2
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、理解という現象は、すでに知っていることと類似な現象をおもいついたときに生じるとかんがえました。物事や情報のあいだにある類似性に注目することが理解・記憶・発想のために重要です。
類似性をつかって理解し記憶し発想する - 特別展「古代ギリシャ - 時空を越えた旅 -」(5)-

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