太陽系外にも多数の惑星が存在します。地球外生命が存在するかもしれません。バイオシグネチャーをもとめて観測・分析がすすみます。
『ナショナルジオグラフィック』2019年3月号では地球外生命の探査について特集しています。



太陽系外の惑星観測により、生命が存在する可能性のある惑星が数多くあることがわかってきました。


ケプラー宇宙望遠鏡と同様、TESS(トランジット系外惑星探索衛星)も、惑星が恒星の前を通過するときに恒星がわずかに暗くなる現象をとらえて、惑星の存在を突き止める。


今では、およそ4000個の系外惑星(太陽系外の惑星)の存在が確認されています。宇宙には、恒星よりもおおくの惑星があり、すくなくともその4分の1は「ハビタブルゾーン」の領域に位置する地球サイズの惑星です。


ハビタブルゾーンとは、主星からの距離を基準にして、極端に高温でも寒冷でもなく、生命が存在する可能性のある領域のこと。天の川銀河には少なくとも1000億個の恒星があるから、最低でも250億個は生命を宿せる惑星があるとみていい。しかも宇宙には天の川銀河のような銀河が何兆個もあるのだ。


宇宙科学者たちは、最新鋭の望遠鏡や探査装置をつかって惑星の表面の状態や雲の有無などを観測し、またさまざまな分析をはじめました。地球外生命の探査法のひとつは生命の痕跡「バイオシグネチャー」をさがすことです。

(1)光をしらべる
望遠鏡であつめた光に対して分光分析をおこなえば、酸素・二酸化炭素・メタンなど、生命と関連のあるガスの有無をしらべられます。

(2)色をしらべる
地球の植物が緑色にみえるのはクロロフィル(葉緑素)が赤と青の光を吸収するためです。ほかの惑星では、ほかの色素が光合成につかわれるかもしれません。光の反射率の急激な変化が観測されれば、それは、植物が存在する可能性をしめします。

(3)地球外の知的生命
高度な文明の痕跡「テクノシグネチャー」を検出するために可視光と赤外線による探査もおこなわれています。レーザーパルス、大気を汚染するガス、恒星をおおうような大規模構造物などがみつかるかもしれません。

(4)系外惑星の分布をしらべる
地球は表面が岩石で、太陽の放射がつよすぎず、太陽からの距離がほどよいために、液体の状態で水が存在できます。これらは、生命が存在できる条件の一部であるという仮説をたて、この条件をみたす系外惑星をみつけだします。これまでに47個みつかりました。

(5)探査機をとばす
超小型の探査機を20年かけて、系外惑星のプロキシマ・ケンタウリb に接近させる「ブレイクスルー・スターショット」計画がすすんでいます。探査機は、地上の施設から照射されるレーザーをうけて推進します。




地球外生命の探査・研究には、米国を中心に、一般の人々がかんがえている以上に予算が投入されています。

地球外にも生命がいるのかどうか? 人間は昔から関心をもっていました。もしいたとすると、それは原始的な生命なのか、高度な文明をもつ生命なのか? そのような地球外生命と地球人が接触した場合はどうなるのか? さまざまな思考実験がおこなわれ、また多数のSFもうまれています。

そもそも地球の生命とは身体だけではなりたたず、地球の環境のなかで、身体と環境が一体になってひとつのシステムをつくって生存しているものです。それは〈身体-環境〉系といってもよいでしょう。したがってわたしたち地球の生命は、地球がもつ独自の環境からはなれて存在することはできず、まさに「地球生命」になっており、人間は「地球人」でしかありえません。

このパターンからの類推によって地球外生命の研究をすすめると、おのずと、地球外生命も地球生命に似ているものにならざるをえません。

しかし地球のこのパターンは普遍的なものでしょうか? 実際には、人間が想像できないもっと別のパターンが宇宙にはあるのではないかとわたしはおもいます。

あるいはわたしたち人間が認識している宇宙は「人間の宇宙」でしかなく、人間の認識(情報処理)の限界をこえて認識することはできず、地球外生命や何か別のものの認識は不可能であるともかんがえられます。

このように地球外生命の研究は、天体観測と宇宙論、さらに人間の認識の仕組みの研究をセットにしてすすめていかなければなりません。

一方、地球外生命の研究結果をしることによって、地球生命のしくみを宇宙の視点からとらえなおすことができます。〈生物-環境〉系が地球(全球)の本質であり、それが、地球という星の個性であることもわかってきます。

いずれにしても、宇宙からの視点をもち、宇宙から地球をとらえなおすことができるようになったことは、現代文明のおおきな進歩であるといってよいでしょう。



▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック 日本語版』(2019年3月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年