散歩をしたら、体験を書きだしてみます。圧縮表現をします。はやく書くことで情報処理能力をたかめます。
栗田昌裕著『「速く・わかりやすく」書く技術』(ベスト新書)は「速書法」について解説してます。




「速く・うまく・わかりやすい」文書を書く力を方法を「速書法」といい、その能力を「速書力」とよびます。速書力をえるためには、まず、「質よりも量」の戦略でどんどん書くのがよく、そのための訓練方法として、15分間の散歩を日々おこなって、体験したことをどんどん書きだすことをすすめています。


散歩には、「身体を動かす」という第1の側面と、周囲のものをきちんと見ながら「新しいものごとを学習する」という第2の側面とがある。

15分間の散歩を終えたら、散歩で体験した内容を書き出してみよう。

速書の重要な側面は、「無意識の領域でとらえた内容」を「意識化する能力」をたかめることにある。


散歩の第1の側面は、体力維持と気分転換に役立ちます。あるくことは運動の基本であり、健康を維持するために必要なことです。第2の側面は、散歩を通じて、あなたがおこなう(人間主体の)情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の根本を活性化することにつながります。

散歩をおえたら、体験したことを書きだしてみましょう。書きだすとは、情報処理におけるアウトプットにあたります。つまり、みたり きいたり感じたりしたことなどをアウトプットします。

体験したことを連続的におもいだせるでしょうか。それぞれの場所でみたことが綿密に想起できるでしょうか。あるいたルートの全体がえがきだせるでしょうか。体験したことが連続的におもいだされ、個々の場所も想起され、全体的にもみわたせるかどうかが重要です。

どれくらいきちんと想起できているかは、文を書きだすまえに、絵をえがいてみるとよくわかります。実際にみてきた風景をできるだけこまかくスケッチしてみましょう。みてきたつもりの内容があいまいだったことが自覚できます。そして余裕があれば、そのスケッチをもってもういちど現場にいってみましょう。文章を書くまえにスケッチをする方法はとても効果的で、よい訓練になります。

たとえば、あるいたコースそのものはなじみのものであっても、ある草花のその年の最初の開花に遭遇して感動したとすれば、それは、その日だけの特徴的な体験になります。そのような体験を「目印体験」とよび、目印体験があるとその日の体験は、ほかの日の体験とは区別され、記憶が独立して形成され、あとで新鮮におもいだすことができます。目印体験を積極的に活用しましょう。

散歩記録は、目印体験、感覚、発見、想起、発想、行動のそれぞれの項目について書いてみます。感覚では、うつくしい場面、印象的な風景、あざやかな色彩、おもしろい形、ここちよい香りなど、五感に新鮮にうったえかけてきた内容を書きます。

「感覚、発見、想起、発想、行動」をひとまとめにしたものは「知的感動」または知的な「インパクト」といってもよく、「ある出来事で内面に生じた知的反応の全体」です。あるきながら、その場その場でインパクトを知的領域がうけることが大事です。

たとえば感覚体験に注目して、しっかり みて きくことができると、それまでみのがしていたことがみえてきます。つまり、インプットがすすみ、心の奥ふかくに情報が影響をおよぼし知的感動がおきやすくなります。

書くことをつづけていると、何を書くか、書くことをかんがえながらあるくようになってきます。さらにテーマをもってあるくことの重要性もわかってきます。




今日では、ブログや SNS といったツールがあるので書くことを誰もが日々おこなっています。せっかく書いているのですから、内容や意味のあることを書きたい、ただ書くだけでなくアウトプット能力をのばしたいと誰もがねがいます。そのための訓練として散歩をして書く方法が推奨できます。しかもスピーディーにはやく書く「速書法」がいいです。速書法は、時間がないからはやく書くというだけでなく、はやく書く過程で、従来とはことなる意識の領域をまきこむことにより、あなたの情報処理能力をたかめることにつながります。

はやく書くということにおいては、キーボードを高速でうちまくるということよりも、体験したことをわかりやすく簡潔に書くことのほうが大事です。体験したことをみじかい文で、たとえば1〜2行で圧縮して表現するようにします。目印体験、感覚、発見、想起、発想、行動について書くときもこのような「圧縮表現」をこころがけます。

公園のなかなどをあるいていると、その公園とは一見関係ないことをおもいつくこともよくあります。しかしうかんでくるアイデアは、その場の環境が無意識の領域に作動した結果としてひらめくことがすくなくなく、そのアイデアと散歩が心のふかい領域ではつながっているとかんがえたほうがよいでしょう。そこで、そのアイデアのつづきをえたかったり、さらにふかめたりしたいときには、もう一度その場所にいってみます。

そもそも物事は、それ自体だけで価値や意義がきまるのではなく、何らかの状況のもとで価値や意義をもつものです。みたことも きいたことも うかんできたアイデアも、たとえばその公園という空間・状況のなかでの出来事であることに意味があるのではないでしょうか。

このような散歩法は、旅行にいったときにも出張にいったときにも、どこでも実践することができます。新鮮な体験をすばやく書きだすことをこころがけるとよいでしょう。




▼ 関連記事
本多勝一著『日本語の作文技術』をつかいこなす - まとめ -
三上章著 『象は鼻が長い - 日本文法入門 -』をよむ
日本語法を理解する - 三上章『続・現代語法序説 - 主語廃止論 -』-

▼ 参考文献