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新生代は哺乳類と鳥類の時代です。類縁関係から進化が類推できます。大量絶滅により地球の生態系をヒトは崩壊させています。
古生代・中生代につづく現在の新生代は哺乳類と鳥類の時代です。国立科学博物館・地球館3階の「大地を駆ける生命」では代表的な哺乳類と鳥類を剥製でみることができます(注1)。


1. 進化の頂点・野生大型獣
2. 動物たちが生きるための知恵
3. サバンナの哺乳類
4. われわれの隣人
5. 絶滅の淵で
6. 鳥の多様な形


哺乳類と鳥類は、新生代になってから、大量絶滅のあとに空白になったニッチ(生態的地位)に進出して多様化したグループであり、哺乳類は約6000種、鳥類は約1万種に分類されています。



1. 進化の頂点・野生大型獣

大型獣のほとんどは草食動物です。体重が1トンちかくになるアフリカスイギュウやジャイアントエランドは十分に成長すればライオンでさえ手だしができません。草食動物にとっては大型化はもっとも基本的な防御になっています。

また子供がねらわれるので、大型獣のおおくは群れることによって子供をまもります。たとえばシマウマは、おなじ柄の子供が群れのなかにまぎれることによって子供をみえにくくしています。

子供を大切にそだてて十分に成長させる「育児」をおこなうのが哺乳類のおおきな特徴です。





2. 動物たちが生きるための知恵

角をもつ草食動物
角をもつ哺乳類はすべて草食動物であり、肉食動物に対する防御のために角が発達しました。

ウシ科の角には分岐はなく、かたい皮膚で骨の芯をつつむようにできています。シカ科の角は枝角とよばれ、頭骨の一部から毎年 成長して分岐してできあがります。ブロングホーン科の角の組成は、シカ科とウシ科の両方の特徴をそなえます。キリンの角は、皮膚と骨質からなります。奇蹄目のサイ科では、かたくなった皮膚で角はできており、なかに骨ははいっていません。このように、偶蹄目のウシ科・シカ科・ブロングホーン科、奇蹄目のサイ科といったことなる分類群でことなる組成の角を頭部に有するということは、角などの有益な形質は、進化の過程でさまざまに何度でも生じてくるということをしめしています。生物の体の進化にはさまざまな工夫みられます。


湿地への適応
シタツンガは、ほそながい形状をした蹄をもち、泥のなかにうまっても足をぬきだすのが容易です。マレーバクは、可動性のたかい鼻をもち、およいだり泥のなかで休息したりする際に水面に鼻をだして呼吸できます。


繁殖力が勝負
イノシシは、何でもたべる雑食と、たくさんうむ多産という特色をもちます。うまれた子供たちは、縞模様を背面にもち、藪のなかにうずくまっているとみつかりません。


寒冷地への適応
寒冷地に適応したユキヒョウやジャコウウシ・トナカイといった哺乳類は、とても厚い毛皮におおわれており、下毛がとくに発達することで体温が一定にたもたれます。また熱がにげやすい耳や尾といった突出部がちいさくなっています。





3. サバンナの哺乳類

アフリカのサバンナにはさまざまな草食動物が生息しており、子供の生存率をたかめるために採餌・出産・育児を集団でおこないます。

一方、捕食側の肉食動物は狩りの技術を発達させました。チーターは、時速90kmの高速ではしることができます。ハイエナは、よわった個体をしつこく追跡します。オオミミギツネは、昆虫食であり、おおきな耳でわずかな音をききわけて餌をさがします。





4. われわれの隣人

われわれヒトも哺乳類の一員であり、霊長目といわれるサルの仲間から進化しました。

霊長目にもっとも近縁な哺乳類はリスのような形をしたツパイという樹上性の動物です。樹のうえはとても安全なすみかです。

初期のサルは、ワオキツネザルのように、キツネのような顔をしており、このグループは、スローロリスやショウガラゴとともにひとつのグループをつくる原始的なサルです。

もっと進化したサルは、アフリカとアジアに生息する旧世界ザルとアフリカから南米にわたった祖先に由来する新世界ザルとに分類されます。

旧世界ザルのなかから、われわれの「隣人」、チンパンジー・ゴリラ・オランウータンをふくむ類人猿が進化しました。類人猿は、ほかのサルとはちがい尾をもたず、地上生活もおこない、ながい指を駆使して道具をつかうこともできます。類人猿は、われわれヒトの近縁であることはあきらかであり、このようなことからヒトの進化も類推できます。





5. 絶滅の淵で

有史以来の人間活動の活発化にともなって約60種の哺乳類が絶滅したとされます。そして現在、国際自然保護連合(IUCN)によると哺乳類は約20%、鳥類は約15%の種が絶滅の危機にあるとされます。今、地球史上第6回目の生物大量絶滅がすすんでいます。今回の大量絶滅は自然現象ではなく、ヒトの手による人為的な事件です。ここに大問題があります。

大量絶滅がこのまますすめば地球の生態系は崩壊し、ヒトの滅亡の時期もはやまります。地球館3階「大地を駆ける生命」展示をみればあきらかなように、多様な動物たちは類縁関係によってむすばれ、ひとつのおおきな体系(システム)をつくっています。そのバランスをくずし、崩壊させようとしているのがヒトです。

システムの崩壊がどんなにおそろしいことか。意外にもあっけなく崩壊はおこります。まずは、システムの存在に気がつくことが重要です。





6. 鳥の多様な形

新生代というと哺乳類の時代であるとかんがえられますが鳥類の進化もみのがすわけにはいきません。現在では、恐竜のなかの竜盤類が鳥類に進化したという仮説が有力です。

鳥の体の基本構造はみなおなじであり、とぶことに特化しています。

しかし鳥類は、餌のとりかたに応じてくちばしや足などの形をかえることで、哺乳類をしのぐ1万種あまりにも分化し、多様な生活様式をもっています。くちばしや足は餌をとるための「職人の道具」といえます。

ここではとくに、鳥類のくちばしと足の多様性に注目してださい。


(つづく)


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▼ 注1
国立科学博物館・地球館3階「大地を駆ける生命」