地球を、ひずみを均等に分散しながら長方形にうつしかえました。オーサグラフ世界地図をつかえば、中心のないあらたな観点から地球を再発見できます。
日本科学未来館の「Geo-Palette」(ジオ・パレット)は、世界の国々や地域に関するさまざまな情報をもとに、オリジナルの世界地図をえがくことができるオンラインサービスです。「みる」では、世界中から投稿された「みんなのマップ」をみることができ、「つくる」では、世界地図のうえに気になるデータをかさねあわせてオリジナルの地図をつくることができます。地球環境や人間活動の様相などをあらたな観点から再発見でき、また作成した地図をサイト上で公開し、ほかのユーザーと共有もできます。
日本科学未来館「Geo-Palette」

日本科学未来館では、地球を平面に表現する手法として「オーサグラフ世界地図」を採用しています(注1)。球体である地球を、ひずみを均等に分散しながら「長方形」にうつしかえることに成功しました。この地図では、地球上の陸地と海域の面積比がほぼ正確に長方形のなかにおさまり、また1枚1枚を縦横にならべてかぎりなくつないでいくことができ、世界のあらゆる場所を中心にした地図をつくることができます。


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オーサグラフ世界地図の例


南極などもふくめ、地球のあらゆる陸地の形と大きさがほぼただしくあらわされ、陸地と陸地の関係が遮断されることなく長方形の枠内にきれいにおさまり、またグリーンランドのむかいにはヨーロッパがあるというように、陸と海の位置関係をたもったまま、長方形の世界地図を上下左右に隙間なくならべられます。この長方形の枠をうごかして地図の中心となる場所をかえることで、世界のみかたをさまざまにかえることができます。

平面上で全方向に拡張が可能なので いきどまりなく球面の性質を再現できます。このため、地図上のどのポイントからでも、三角形・平行四辺形・長方形などの世界地図をあらたに切りだすこともできます。

この地図は、特定の中心点を排して世界全体を自由にみわたす観点、つまり「中心のない世界観」をもたらす画期的な地図です。






わたしたちは、メルカトル図法に子供のころよりなれ したしんできました。それが、世界をみる “常識” でした。メルカトル図法は、大航海時代の道しるべとしても役立ち、約440年間にわたってつかわれてきましたが、この図法では、2点間の最短ルートがおおきくカーブしてしまい、また極圏が巨大化してただしく表示できません。

1946年には、バックミンスター=フラーが「ダイマキシオン・マップ」を発表、この世界地図は、大陸の形を極力ただしく表示し、北極海をはさんで米ソが対立する構図をえがくことができましたが、陸地を優先したために海が分断されるという欠点がありました。

オーサグラフ世界地図では、球から平面への転写を、正四面体を経由しつつ多階層に投影(写像)するなどして、メルカトル図法とおなじ長方形でありながら、ダイマキシオン・マップと同様に面積と輪郭を極力ただしく表示できます。

この世界地図をつかって、メルカトル図法の常識から解放されてください。中心や偏見や固定観念にとらわれない自由なみかた、中心のない世界を是非 味わってみてください。

オーサグラフ世界地図をつかった「Geo-Palette」(ジオ・パレット)は、日本科学未来館の常設展示としては「地球とつながる」ゾーンのなかにあります。このゾーンは、地球を感じる「Geo-Cosmos」、地球を探る「Geo-Scope」、地球を解析する「Geo-Prism」、地球を描く「Geo-Palette」、データを一括管理する「Geo-Cockpit」から構成されています。

これら最新鋭のツールをつかって地球に関する科学情報を収集し、それらを視覚化しながら、地球の生命・環境と人間とのつながりを探究し、「わたしは今どこにいるのか?」、地球のなかにおける自分自身の位置をさぐり、地球における自分の位置づけをこころみます。今の地球をしるとともに、みずからの「知」をふかめながら、地球を未来につないでいくためのビジョンをえがきます。

ここにくれば、「知」と「感性」の融合したあたらしい地球観をえがくことができます。知識をただふやせばよいというのではなくて、みずからの五感を十分につかって情報処理をすすめることにおおきな意義があります。



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▼ 注1
日本科学未来館「オーサグラフ」
AuthaGraph
日本科学未来館「地球とつながる」