ウユニ塩原の地下にはリチウム資源がねむっています。電池の材料になるリチウムの需要がたかまっています。ボリビア政府は、ウユニ塩原の開発をはじめました。
『ナショナルジオグラフィック』2019年2月号の特集では、南米ボリビアのウユニ塩原ですすめられているリチウム資源の開発について報告しています。



リチウムがボリビアの経済を救うには、リチウムが眠る場所、つまりウユニ塩原(ウユニ塩湖とも呼ばれる)を開発しなければならない。広さ1万平方キロ余りの盆地に塩が堆積してできたウユニ塩原は、ボリビアが誇る景勝地の一つだ。もし、地下に眠る資源を採掘すれば、その壮大な景観は、ほぼ確実に姿を変えるだろう。

2019-02-12 22.47.53 


ウユニ塩原は、ボリビアの首都ラパスから車で1日がかりで到着する世界最大の塩原です。

ここには、しろい壮大な砂漠の太陽をもとめて外国人がたくさんやってきます。結婚式や車のレースなどもおこなわれます。塩原の端には、塩のブロックをつかったホテルがいくつもたてられ、「塩のホテル」はどこもほぼ満室です。湖畔の町にはピザ店がたちならび、わかいバックパッカーでにぎわう観光地になりました。町の経済の9割は観光産業がささえています。

ところが、このささやかな幸福をぶちこわすおおきな変化がおきようとしています。

この塩原の地下には、世界の埋蔵量の推定17%をしめるリチウム資源がねむっているのです。

リチウムは、コンピューターや携帯電話などの電子機器の電池に不可欠な材料であり、2017年の世界のリチウムの消費量は約4万トン、2015年以降、年にざっと10%のペースでふえており、需要の急速なのびを反映して、価格は3倍にはねあがりました。

この傾向に拍車をかけるのは電気自動車の普及です。


米企業テスラには、重さ約63キロものリチウム化合物を用いたバッテリーを搭載する車種もある。米金融大手ゴールドマン・サックスによれば、これは携帯電話1万代に匹敵する量で、自動車販売台数の1%が電気自動車に置き換わるたびに、リチウムの需要は年間7万トン増える予測だという。また、フランスと英国は2040年までにガソリン車とディーゼル車を禁止すると宣言した。


「リチウムを豊富にもつ国は貧困を脱出できそうだ」。貧困層が人口の約40%をしめる南米の最貧国・ボリビアは、経済的な苦境から脱するためにリチウム開発をやらないはずはありません。塩原は、ボリビアの経済革命の「震源地」になると宣言されました。

リチウムはもっともかるい金属であり、耐熱性があり、大容量の電池の材料になります。開発ラッシュが世界中でおきていて、鉱石からとるほか、塩原の地下にとじこめられた塩水「かん水」から回収する方法もあります。

ボリビア政府は、ウユニ塩原へのダメージをへらすために先手をうって対策を講じたといいますが、一方で、塩原全体を将来は開発する予定だといいます。またリチウムの処理工場では、未熟練労働者の仕事はほとんどないため、地元の人々には利益は還元されません。子供たちに、「大学で勉強して帰ってこい」というしかないといます。

このようにして、幻想的な風景の終焉は確実な情勢となりました。






“開発屋” がもたらす「嵐」は、観光計画も、環境計画も、うつくしい景観も、地域住民の人心も、すべてをぶちこわします。

わたしがかかわったことがあるあるヒマラヤ山村もそうでした。ヒマラヤ山麓の素晴らしい景観のもとで、ちかくには温泉もあり、エコツーリズムの拠点としてのポテンシャルがとてもたかいところで、村の計画は着実にすすんでいましたが、水力発電所の建設工事が一方的にはじめられ、すべてが破壊しつくされました。

しかもそこで発電される電力は、都会の人々がつかうためのものであり、地元の人々や山村の人々がつかうのものではないのです。どこかの国の発電所とよく似ています。

“開発屋” との戦いがつづきます。



▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック』(2019年2月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年