IMG_9072_3
マッコウクジラ
(平行法で立体視ができます)
生物たちの生きる工夫がみられます。生物は、環境に適応するように身体の構造と機能を進化させてきました。進化・共生・寄生によって地球上に生態系が成立しました。
国立科学博物館・地球館1階「地球の多様な生き物たち」の第5展示室では、環境に適応するための生物の体のしくみや暮らし方の工夫をみることができます。生物は、きびしい自然条件にさらされることがあっても、地球のすみずみにまで生息域をひろげて繁栄しています。


大型化と小型化
巨大な生物から微小な生物まで、体の大きさには生きるための術がかくされています。

たとえばマッコウクジラは、体長は15メートルをこえ、特徴的な巨大な頭部をもち、ハクジラ類のなかで最大であるだけでなく、歯のある動物では世界最大です。ふかさ3000メートルまでももぐるといわれ、大型のイカなどをとらえてたべます。水中生活をするようになったからこそなしえた大きな体をいかして海に適応していきています。

一方、チビトガリネズミは、体重1グラムほどしかない世界最小の、モグラやハリネズミにちかい哺乳類であり、ちいさな体は天敵から姿をかくすのに都合がよいです。ただしエネルギーを体内にあまりたくわえられないので、体温を維持するために餌をたべつづけなければなりません。



栄養やエネルギーをとる工夫
世界中で家畜としてかわれているウシは、4つにわかれた胃と40メートルちかい ながさの腸をもちます。ウシなどの草食動物は、たべた植物を自分では消化できないので、胃や腸のなかにいる微生物によって分解してもらい、栄養をえています。

また福島以南から南西諸島に分布する常緑低木のヤツデは日当たりのわるい林床にも自生します。葉はおおきくて切れこみがあり、下の葉ほど葉柄がながく、葉がかさならないようにして光を効率よくうけるしくみになっています。



子孫をのこす
ドブネズミは、多産の哺乳類の代表であり、10匹以上もの胎児を一度に身ごもり、交尾後わずか21日で出産します。ネズミ類は、ほかの動物に捕食される機械がおおいため、たくさんの子供を一度にうむことで子孫をのこす確率をたかくしています。

オヒルギは、マングローブを構成する重要な樹種のひとつであり、あまい蜜にさそわれて花をおとずれた鳥などの頭部に花粉をつけることによって、花粉をはこんでもらう仕組みをもっています。



きびしい自然条件下でいきる
南極海にすむスイショウウオの体液は氷点下でもこおりません。不凍液の役割をはたす糖タンパク質を多量にふくむ血液をもっており、ヘモグロビンは寒さから十分に機能せずに進化の過程でうしなわれたため、血液は無色透明です。酸素は、血漿(けっしょう)によってはこばれるほか、皮膚呼吸でおぎなっています。

アレナリア・デンシシマは、ヒマラヤとその周辺の高山に育成するノミノツヅリ属の多年生草本であり、植物体が小型化して密集し、コケのようなクッション状になっています。このようなクッション植物はさまざまな系統の植物にみられ、地表に接したり密集してくらしたりすることで成長に不可欠な熱や水分をたもっています。



共生と寄生
アリノトリデ属の一種やアリノスシダ属の一種は岩上や樹上に着生し、塊茎の内部にある多数のすきまにアリをすまわせます。アリからは排泄物を栄養としてもらい、またアリに害虫を駆除してもらっています。アリと共生関係をもち、体の一部にすまわせる構造をもつ植物を「アリ植物」といいます。

造礁サンゴ類の体のなかには褐虫藻という藻類がすんでいます。ハナガササンゴ属も造礁サンゴ類のひとつであり、ポリプの触手により動物プランクトンをとらえるほか、褐虫藻の光合成産物を栄養としています。褐虫藻は、サンゴの体内で安全にくらし、サンゴがだす二酸化炭素などを利用します。またサンゴ礁は、褐虫藻の光合成のために光がとどく浅海に発達します。






このように生物は、それぞれに特徴的な身体をもち、また生きる工夫をしながら地球上の特定の空間でくらしています。生物の体の構造は、生きるための機能をうみだす仕組みになっており、また生きるための機能は体の構造のはたらきにほかなりません。

展示室で標本を前にしたら、その外形や構造をみるだけでなく、その機能がどうなっているのかを想像してみるとよいでしょう。生物の構造は、どこまでも機能とむすびついたものであり、構造即機能というみかたをすることが大事です。

そもそもそれぞれの生物は、地球上の特定の空間を占めて生存しており、空間的・構造的な存在です。しかし一方で、およいだり あるいたり とんだりするということは生物の機能的側面であり、生物の構造が、生物の生き方をはなれてはありえないということは、生物は、特定の空間をただ占有しているだけではなく、その環境に適応して生きているのだといえます。この適応という現象が重要です。

生物は、環境に適応するように身体の構造や機能を進化させてきているのであり、それどころか「共生」や「寄生」といったことまでやってのけ、こうして、進化・共生・寄生によって、ひとつの巨大な生態系が地球上に成立し、この系(システム)が構造即機能的なものにまさになっています。

この生態系は、いわゆる「生存競争」と「適者生存」といった単純な思考では理解できず、そこには、「共存原理」が基本的にははたらいているとかんがえられます。そうでないとシステムは維持できません。

また環境への適応は、人間にとっても重要な課題です。環境とその変化への適応能力をたかめる訓練をちいさいときからおこなうことが実は重要であり、環境とその変化に適応できない(環境があわない)ときには身体と機能に不調があらわれます。



▼ 関連記事
国立科学博物館・地球館を概観する - 自然との共存をめざして -

▼ 注
国立科学博物館

▼ 参考文献
国立科学博物館編集・発行『地球館ガイドブック』2016年7月29日


Sponsored Link