現代の最新の科学をつかって中国医学が検証されています。中国医学に分析のメスがはいります。東洋と西洋の思想のちがいに気がつくことも大事です。
『ナショナルジオグラフィック』2019年1月号は「まるごと一冊 医療の未来」であり、中国医学についても紹介しています。



成都で沐浴する生後2カ月の赤ちゃん。蒸し暑い夏にほてった体を冷やし、毒素を排出する薬草の入力剤を使う。病気だけを治すというよりは、体全体の調子を整えるのが中国医学の基本理念だ。
 
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世界各地で伝統医学が発達してきましたが、それらのなかでも中国医学はとくにながい歴史をもち、文献のおおささでも群をぬいています。

中国医学の文献記録は紀元前3世紀までさかのぼります。人体を観察してその機能を記述し、生薬やマッサージ・鍼といった治療の効果を記録したのがはじまりです。それから2200年以上がたち、膨大な知見が蓄積され洗練され、風邪から性病、麻痺からてんかんまで、あらゆる健康問題に対処できる知識体系ができあがっています。

近年、米国では、西洋医学では不調がなおらないときに中国医学をためす人がふえているといいます。

しかし一方で、「中国医学はいかさまだ」と非難する医師もいます。病気に効くというおもいこみによって症状が改善する「プラセボ効果」がおこっているという指摘もあります。

こうしたなかで、中国医学を、現代の最新科学で検証しようという動きが活発になってきました。中国医学の薬効を、分析と実験によって立証しようというこころみです。


ベビ油はエラブウミヘビを原料とする中国伝統の軟膏だ。(中略)エラブウミヘビの脂肪に、オメガ3脂肪酸がサケより豊富に含まれていることがわかった。オメガ3脂肪酸は炎症や悪玉コレステロールを抑える、うつ状態を緩和する、知的能力を向上させる効果があることで知られ、スキンケア製品にもよく使われている成分だ。


伝統医学から現代の薬がうまれた例はたくさんあります。アスピリン、アルテミシニン(抗マラリア薬)などもそうです。あるいはクマの胆汁からとりだされた化学物質「ウルソデオキシコール酸」は肝臓病や胆石の薬としてひろくつかわれています。中国医学の文献にクマの胆汁が登場するのは8世紀の『外台秘要方』です。現代科学が中国医学においついたといってもいいような事例が多数あらわれてきました。




現代科学の方法をつかって中国医学を検証し、本当に効果のある処方をみつけるのが現代の医学者の役目です。中国人たちは、経験の蓄積によって効能をしり、中国医学を体系化してきましたが、そこに科学の「メス」をいれるというわけです。あたらしい光があてられ、あらたな再生期を中国医学はむかえようとしています。

ただし西洋医学と中国医学(東洋医学)の基本理念のちがいには注意しなければなりません。西洋医学では、症状を分析して病気だけをなおそうとしますが、東洋医学では、体全体の調子をととのえ、全人的な生き方をめざします。

東洋では昔から、「病は気から」といいます。病気は気のもちようによって、良くも悪くもなるということです。この「気」とは何か? とても重要です。そもそも東洋では、心と体を一体のものとしてとらえ、心のはたらきと体のはたらきをむすびつけてととのえようとします。このような心と体をむすびつけるものとして気が重要であり、具体的な実践として呼吸法を重視します。

そもそもどのように心身をととのえたいのか、どのような人生をおくりたいのかが重要です。薬はただのめばよいというものではなく、全人的な人生観があってこそ薬も効きます。

これに対して西洋医学や西洋文明では、人間は最高の存在であり、ほかの生き物はおとっているとかんがえ、やたらに「消毒」しようとします。西洋文明のおおきな特色のひとつは消毒にあります。ところが消毒しきれない現実があることがあきらかになってきました。

中国医学をしるためには、このような東西の思想のちがいにも注目しておいたほうがよいでしょう。


▼ 参考文献
『ナショナルジオグラフィック日本版』(2019年1月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2019年

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