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系統広場
(平行法で立体視ができます) 
生物は、階層分類や系統分類によって分類されます。進化の道のりをあるいてたどることができます。類比法と類推の練習になります(2019.2.8 更新)
すべての生物は約40億年前に誕生した細胞に由来しているとかんがえられます。あらゆる生物は、おたがいにどこかで祖先を共有する類縁関係にあり、生物の進化は1本の系統樹であらわすことができます。

たとえばヒトという種の祖先をさかのぼると、サルの祖先、真核生物の祖先、やがてはすべての生物の祖先にたどりつきます。

地球には、微小な細菌から巨大な樹木まで、名前があるだけで200万種、未発見のものまでふくめると1000万種ともいわれる多種多様な生物がくらしています。その生き方も、光合成で太陽エネルギーを利用するものや、ほかの生物からエネルギーをえるものまでさまざまです。

ステレオ写真は平行法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -





生物の分類

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よく似た生物の群を「種」と認識し、それに名前をつけてほかと区別することはふるくからおこなわれていましたが、これを、分類学として確立したのはスウェーデンのリンネ(1707-1778年)です。

たとえばハシボソガラスとよぶ鳥に、リンネは、「Corvus corone」という名前をあたえました。この命名法は、「属名」(Corvus )と「種小名」(corone)からなる「二名法」とよばれます。分類の基本単位を「種」とさだめ、種よりもおおきい群である「属」の名前とあわせた命名法であり、これが、世界共通の「学名」として一般的につかわれるようになりました。

さらに属よりもおおきい群を「科」、「目」、「綱」、「界」という階層にわけ、これを「階層分類法」といいます。

  • 界(かい)
  • 門(もん)
  • 綱(こう)
  • 目(もく)
  • 科(か)
  • 属(ぞく)
  • 種(しゅ)

最上位の分類階級は「界」といい、その下位には、「門」「綱」「目」「科」「属」「種」が位置し、下位の階級の分類群は上位の階級の分類群にふくまれます。

このように生物は、階層分類法によって分類され、二名法によって命名されます。





系統分類

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一方、ダーウィン(1809-1882年)による進化論があらわれ、また発生学や生化学の手法などもつかわれるようになると、生物の分類は、進化の道筋(系統発生)にもとづいておこなうことを目指すようになりました(系統分類、自然分類)。さらに20世紀後半以降、電子顕微鏡や分子生物学の発達によりあたらしい発見があいつぎ、生物の大分け(界の分類)も進歩してきました。

生物の分類において界をいくつに分けるかは、2界説(植物界と動物界)からはじまり、現在では、5界説、6界説、8界説などがありますが、国立科学博物館の系統広場では、分類学の進歩に柔軟に対応するために7つの界に分けています(注)。

  • 真正細菌界
  • 古細菌界
  • 原生動物界
  • 黄色生物界
  • 菌界
  • 植物界
  • 動物界





生命の花

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「生命の花」は、生物の「界」レベルの系統樹を一輪の花にたとえてあらわしたものです。

約20億年前にミトコンドリア、約10億年間に葉緑体を獲得した生物界は、飛躍的に大型化・多様化し、急激に種数をふやしていきました。

生物の界レベルの多様性は、ダーウィンらが提唱した自然選択説だけでは説明できず、細胞同士の合体(細胞共生)がおおきな役割をはたしたという仮説が現在では提唱されています。





系統広場 - 分化と構造化 -

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「系統広場」では、「生命の花」の前の原始生命の地点(写真手前)からさまざまな方向にあるいていくことによって、約40億年の進化の道のり、生物多様化の歴史を体験することができます。


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系統広場の見取図


7つの界 

真正細菌界:大腸菌やサルモネラ菌など、バクテリアとよばれる生物群です。地中・水中から生物の体内まで、地球上のいたるところに分布します。

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大腸菌(模型)



古細菌界
:メタン生成細菌などをふくむ生物群です。沸騰する温泉や海底の熱水孔、塩湖、深海底の泥のなかなどからみつかります。

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メタノサルシナ属の一種(模型)



原生動物界:アメーバ・ミドリムシ・変形菌など、さまざまな系統の微生物をふくむ生物群であり、ひとつの祖先に由来するグループではなく、黄色生物・植物・動物以外の真核生物をふくみます。水中から陸上までのさまざまな環境で生活し、生態系での役割は種によって多様です。

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クモノスホコリ(模型)



黄色生物界:微小なプランクトンから巨大な海藻までをふくむ生物群です。海・川・湖などの水中で生活しています。

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スチロニキアのなかま(模型)



菌界:酵母・カビ・キノコなどをふくむ生物群です。水中から陸上まで、さまざまなところで生活します。

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ハナイグチ(模型)



植物界:微小な緑藻から巨大な裸子植物までをふくむ生物群です。水中から陸上へ進出し、地上をひろくおおっています。

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マリモ



動物界:カイメンから哺乳類まで、もっともおおくの生物種をふくむ生物群です。水中から陸上へ進出し、地球上にひろく分布します。

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ゴリラ





原核生物と真核生物

地球上の生物は、DNA がむきだしになっている「原核生物」と DNA が核膜で保護されている「真核生物」 の2つにわけることもできます。

原核生物には、真正細菌界と古細菌界がふくまれます。真核生物には、原生動物界・黄色生物界・菌界・植物界・動物界がふくまれます。

原核生物:DNA がむきだし
  真正細菌界
  古細菌界
真核生物:DNA が核膜で保護されている
  原生動物界
  黄色生物界
  菌界
  植物界
  動物界

約20億年前に、真正細菌の一種(ミトコンドリアの祖先)と古細菌の一種が合体(細胞共生)して生じたものが「真核生物」であるという仮説が提唱されています。

さらに真正細菌のひとつである藍藻(葉緑体の祖先)を体内に共生させたものの子孫からは、太陽エネルギーをとらえて光合成をおこなう生物(植物界や黄色生物界)が進化し、地球の生態系をささえる役割をはたすようになりました。
 







生物の基本的な分類は階層分類であり、それは、さまざまな生物の姿かたちを観察をして、似ている点と異なる点をみいだし、似ている生物をひとつのグループにまとめるという方法です。ここでつかわれた方法は類比法といってもよいでしょう。

その後、生物の系統発生があきらかになってくるにつれて、階層分類をふまえつつも、系統発生にもとづいて分類する系統分類へと分類学は進歩しました。

たとえばサメとイルカはともに海の動物であり、姿かたちは似ていますが、解剖などをしてみるとサメは魚類であり、イルカは哺乳類であることがわかります。肉眼による観察にくわえて分析をおこなうことによって正確な分類ができるようになります。分析の方法としては、解剖、顕微鏡観察、化学分析、そして DNA 分析が近年では重要な役割をはたしています。

こうして系統分類がすすんでくると系統樹がえがけるようになり、さまざまな生物の類縁関係があきらかになってきました。

地球上には、きわめて多数の種が生息していますが、それらは、でたらめに無秩序に生きているのではなく、類縁という関係でむすばれており、また類縁によって生物の世界は構造化されています。「系統広場」はそのことを具体的に表現しています。

系統広場のディスプレイ(陳列棚)には、たくさんの生物標本や模型が展示されており、ちかい類縁関係にある生物はちかくに配置され、とおい類縁関係にある生物ははなれて配置されています。

一方、系統広場の床には多数のライン(系統樹)が表示されていて、生物の系統(進化の道筋)をみることができ、ちかい類縁関係にある生物同士は比較的最近 枝分かれし、とおい類縁関係にある生物たちはもっと大昔に枝分かれしたことがわかります。

こうして系統広場では、類縁関係の遠近が、空間的にも歴史的にも表現されて構造化されています。このように、生物の分類と系統の全容があきらかになってきたことはとても画期的なことです。

そもそもこのような研究で類比法が有効なのは、生物の世界が類縁によってなりたっているということに根拠があり、それは、もとひとつのものが分化して構造化されるという生物の世界のしくみからいって当然のことです。

類比法で、さまざまな生物のあいだに、似ているところをみとめるということは、同時に、異なるところもみとめているのであり、それらが同じだといっているのではありません。似ているという観点にたてばどこまでも似ており、異なるという観点にたてばどこまでも異なるのであり、似ているか異なるかは相対的なことであり、相対的に似ているものをちかくに、相対的に異なるものをとおくに配置することによっておのずと構造化がすすみます。

そして類比法は、類比をふまえて、みえないところを推しはかる類推という方法に発展させることができます。類推は、認識の方法としてとても有用です。

系統広場では生物の世界をとりあつかっていますが、そもそも、生物をふくむ地球全体(生物+非生物)が、もとひとつのものから分化して構造化された体系であり、地球の世界の全体に類縁関係がみとめられるとかんがえられます。地球全体の多様な情報が類比法によって整理され、地球の構成と進化をさぐる方法として類推がつかえるはずです。

このように、系統広場をあるく体験は、生物の世界にとどまらずに、地球の世界の認識に発展させていくことができます。系統広場をくまなくあるきながら、相似と相異に心をくばり、みえないところは想像してみれば、類比法と類推の練習におのずとなり、ここで身につけた方法や能力はほかの展示をみるときにも役立つにちがいありません。



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 ▼ 注
高校の生物の教科書などでは「5界説」が紹介されています。
  • 原核生物界
  • 原生生物界
  • 菌界
  • 植物界
  • 動物界