鳥を撮影してみると鳥との距離がちぢまります。
『ナショナルジオグラフィック』2018年12月号では、北海道に移住した自然写真家・嶋田忠さんの活動を紹介しています。



嶋田さんは火の鳥とも呼ばれるアカショウビンを追って、38年前に埼玉からここ千歳へ移住した。鳥の写真が常設されているギャラリーの脇を通り、奥のカフェ・スペースへ行くと、その窓の向こうには、まるで絵のような森が広がっていた。

2018-12-12 22.58.29



嶋田忠さんは、1949年 埼玉県うまれの自然写真家であり、国内外の自然を鳥を中心に撮りつづけています。2019年7月末からは2ヵ月間、東京都写真美術館で個展が開催されます。

嶋田さんは2014年、北海道千歳市に、自身の作品を常設展示する「嶋田忠ネイチャーフォトギャラリー」を開設しました。そのギャラリーの奥には、「ザ・バードウォッチング・カフェ」があり、飲み物をたのしみながら森におとづれる野鳥を観察することができます。さらにそのカフェからつながる小屋があり、そこには窓のかわりに、撮影者の姿をかくすカモフラージュネットがかかっていて、外気にふれながら鳥の写真撮影ができるスペースになっています。「動物を写すときには自らの気配を消すという撮影流儀を体験できるのです」と嶋田さんはいいます。

千歳川ぞいのこの森には、シマエナガからクマタカまで、四季を通じてさまざまな鳥がやってきます。ここ4年間で確認した鳥をかぞえたところ、カフェの庭だけで75種、近隣の森もふくめると128種にものぼりました。ただアカショウビンは20年以上前からその姿を目にすることはなくなっています。

「肉眼で見える距離で野鳥を見て、その息吹を、命の大切さを感じ取ってほしいんです」と嶋田さんはいいます。何回もここにくるにつれて、しだいにじっくり鳥をみるようになり、図鑑もみて名前をしらべはじめ、写真の撮り方もうまくなっていきます。




ナショナルジオグラフィックは、全米オーデュボン協会、バードライフ・インターナショナル、コーネル大学鳥類研究所とともに、2018年を「鳥の年」と宣言し、鳥をテーマにした記事を年間を通じて連載してきました。

ふりかえってみると、渡り鳥など、鳥の能力のすごさにおどろかされる一方、生息地の消失や気候変動におびやかされる鳥たちが非常におおく、環境保全が急務であることをあらためておもいしらされました。

そのためには何よりも、鳥に興味をもつ人々がもっとふえなければなりません。嶋田忠さんのような活動はとても重要です。今では誰でも手軽に写真が撮れるようになりましたので、鳥を撮影してみるというのは鳥との距離をちぢめる方法として最適でしょう。そして写真集をみたり、写真展にいったり、図鑑をみたり、動物園にいったり、博物館にいったり・・・。


▼ 関連記事
鳥の集団がつくる生命体 -「羽ばたきの軌跡」(ナショナルジオグラフィック 2018.1号)-
鳥の多様性と進化 -「鳥たちの地球」(ナショナルジオグラフィック 2018.1号)-
もう一方の進化 -「鳥の知能」(ナショナルジオグラフィック 2018.2号)-
渡り鳥をまもる -「鳥たちのはるかな旅」(ナショナルジオグラフィック 2018.3号)-
事実と想像を区別する -「恐竜はどのように鳥になったか?」(ナショナルジオグラフィック 2018.5号)-
保護から共存へ -「タンチョウ」(ナショナルジオグラフィック 2018.6号)-
「楽園を失う海鳥」(ナショナルジオグラフィック 2018.7号)
オウム目の鳥をまもる -「インコとオウム 人気者の苦境」(ナショナルジオグラフィック 2018.8号)-
保護区をつくるだけではおわらない -「鳥を旅する」(ナショナルジオグラフィック 2018.9号)-
ハヤブサの人工繁殖 -「ハヤブサ 大空のハンター」(ナショナルジオグラフィック 2018.10号)-
ねらわれる珍鳥 -「オナガサイチョウ」(ナショナルジオグラフィック 2018.11号)-
鳥を撮影してみよう -「北海道 鳥を待つ森」(ナショナルジオグラフィック 2018.12号)-

デジタル一眼で撮影しよう(1)- 河野鉄平『大人のためのデジタル一眼入門』-
デジタル一眼で撮影しよう(2)- 応用撮影モード -
デジタル一眼で撮影しよう(3)- シーン別の撮影テクニック - 

▼ 参考文献
『ナショナル ジオグラフィック日本版』(2018年12月号)日経ナショナルジオグラフィック社、2018年