微分と積分は、それぞれの場面でその瞬間の変化を正確にとらえ、そのうえで未来を予測するための計算法です。図と言葉で理解して数式化できれば情報処理が容易になります。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2018年11月号の Newton Special では「微分と積分」についてわかりやすく解説しています。


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2018年6月に小惑星リュウグウに到着し、いよいよサンプル採取に挑む探査機「やはぶさ2」。2014年に打ち上げられた「はやぶさ2」を、無事にリュウグウにたどりつかせるには、進行方向や速度を精密にコントロールする必要がありました。その計算こそ、まさに微分と積分を駆使したものです。


たとえば重力によって落下する物体の速度は一定ではなく、時間とともに物体は加速していきます。世の中には、物体の速度にかぎらず、気温の変化から株価の変動にいたるまで、時々刻々と変化する値があふれています。

つぎのような分野でも微分と積分がつかわれています。

  • 化石がいつの時代のものかをしるための年代測定
  • 金融市場をあつかう金融工学
  • 台風の進路予測などをおこなう気象学
  • 高速道路の設計などをおこなう建設工学

微分と積分は、それぞれの場面でその変化を正確にとらえ、そのうえで未来を予測するための計算法であり、判断と予測のための数学的な方法です。

微分のポイントはつぎのとおりです。たとえば時間とともに距離が変化するとき、微分によって瞬間の速度がわかります。このように物事の変化について「瞬間の変化の度合い」をしる方法が微分です。物事の変化をあらわす関数をグラフにえがいたときに、ある点での接線の傾きは、そのときの「瞬間的な変化の度合い」をあらわします。したがってある点での接線の傾きをもとめることが微分です。関数を微分すると、「瞬間的な変化の度合い」をあらわすあたらしい関数(導関数)がえられます。

積分のポイントはつぎのとおりです。積分とは、直線や曲線のグラフをえがいたときに、線の下側の領域(横軸とのあいだの領域)の面積をもとめる方法です。積分には、曲線にかこまれた領域をこまかい四角形に分割して面積をもとめる「区分求積法」などの技法があります。関数を積分すると、その関数がしめす線と横軸にはさまれた領域の面積をあらわすあらたな関数(原始関数)がえられます。

微分積分学の基本定理によると微分と積分は逆の計算になります。したがって「微分すると元の関数にもどる関数」こそが原始関数です。

微分積分学の基本定理を発見し、微分積分学の創始者とされているのはアイザック=ニュートン(1642〜1727)とゴットフリート=ライプニッツ(1646〜1716)です。ただしニュートンの約50年前にうまれたフランスの哲学者・数学者であるルネ=デカルト(1596〜1650)は、座標軸をつかって図形を数式に変換し、あるいは数式を図形に変換して問題をとく「解析幾何学」を確立し、接線(実際には、接線に垂直な直線である法線)をもとめる方法などを論じていました。ニュートンは、デカルトが書かいた本を読んで勉強して、みずからの学問形成に役立てました。微分積分学は、現代数学が最初になしとげた大きな成果であるといわれます。




今回の特集は「今度こそよくわかる!」と銘打っているだけあって、微分と積分について、数学が苦手な人でもわかるように図と言葉と数式を駆使してわかりやすく解説しています。数学の授業でよくわからなかった人は是非みてください。またすでにわかっている人でも本特集をみれば、こういう説明のしかた(表現の方法)もあるのだということがわかります。図と言葉と数式のシンクロナイズがすばらしいです。自分がわかるのと、他者に説明することは別のことです。自分がわかるのはプロセシング、他者に説明するのはアウトプットであり、人間主体の情報処理におけるステージがことなります。本特集は、よりよいアウトプットのためにも参考になります。

ある現象を目のまえにして、図と言葉で確認して、そして数式で表現できれば、あとは、図も言葉もつかわないで計算だけで情報を処理し、現象を理解し説明し予測することができるようになります。数式化によって情報処理が高速化します。情報を数値化することによってメモリーの軽量化もできます。今日的にいえばデジタル化の効果があらわれます。情報処理の進歩を理解するためにも本特集は参考になります。


▼ 参考文献
『Newton』(2018年11月号)ニュートンプレス、2018年11月7日