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太陽の塔(現在)
(平行法で立体視ができます)
岡本太郎は、機械文明の進歩に反対していました。深層にある生命力を再生させ、機械文明をぶちぬき、もっと高次元の世界をめざしていました。人間は機械につかわれてはなりません。
映画『太陽の塔』(監督:関根光才、注1)が公開されています。2018年3月19日、48年ぶりに、芸術家・岡本太郎の《太陽の塔》(万博記念公園)の内部公開がふたたびはじまりました。岡本太郎は、いったい何のためにこの塔をつくったのか?「現代日本に残された、ひとつの謎」をおいかけます。

1970年の3月〜9月、日本万国博覧会が、大阪府吹田市の千里丘陵で開催されました。「大阪万博」です。「人類の進歩と調和」をテーマにかかげ、77ヵ国が参加、戦後、高度経済成長をつづけて経済大国となった日本国の象徴的なイベントでした。

国・国際機関・都市・企業など、のべ116もの展示館に来場者たちがながい列をつくりました。機械がきりひらくあかるい未来社会を夢みて、もっと便利になる、もっとゆたかになれるとおもい、永遠の進歩の妄想に誰もがよいしれました。

太陽の塔は岡本太郎がデザインし、万博会場のシンボルゾーンにテーマ館の一部としてつくられました。テーマ館は、地下・地上・空中の3層になった展示空間をもち、万博のテーマである「人類の進歩と調和」を表現していました。その地下部分では「生命の神秘」をサブテーマに、進歩や調和の根源にある原始的な体験を、地上部門では、「現代のエネルギー」をサブテーマに、人間の生き方の多様さとすばらしさや尊厳を、大屋根の空中部門では「未来の空間」をサブテーマに、人間尊重の未来都市の姿をそれぞれあらわしていました。

そのテーマ館の中心に太陽の塔は位置し、高さは約70メートル、シンボルゾーンの巨大屋根をぶちぬいてたちあがり、左右に腕をひろげて来場者をむかえました。人々は地下から、太陽の塔の内部をとおって、大屋根の空中展示へつながるがる経路で観覧しました。

太陽の塔は、頂部には、金色にかがき未来を象徴する「黄金の顔」、正面には、現在を象徴する「太陽の顔」、背面には、過去を象徴する「黒い太陽」という3つの顔をもっています。また博覧会当時は地下には、「地底の太陽」といわれる顔も展示されていましたが現在は行方がわからなくなっています。

塔の内部には、高さ約41メートルの「生命の樹」があり、樹の幹や枝には、大小さまざまな292体の生物模型群がとりつけられ、アメーバーなどの原生生物から爬虫類・恐竜・人類にいたる生命の進化をあらわしていました。




岡本太郎ははっきりのべていました。


わたしは進歩に疑問をもっている。


ここでいう「進歩」とは万博のテーマである「人類の進歩」であり、機械文明(科学技術文明)の進歩のことです。太郎は「進歩」に反対していました。ここに、重大な問題があります。

万博テーマ館の巨大屋根をぶちぬいて太陽の塔が力強くそびえているところに太郎のメッセージがあらわれています。機械と進歩にくみこまれることなく、それをうちやぶって、もっと高次元の世界に到達しようとする姿勢がよみとれます。


これは何だ!


また太郎は、縄文土器をみてさけんだといいます。そして縄文時代や縄文文化について理解をふかめ、日本人のみならず人類の生命力の根源を縄文にみいだしました。先日、東京国立博物館で開催されていた特別展「縄文」では、「筒形土偶」(神奈川県横浜市 稲荷山貝塚出土、縄文時代後期)が展示されており、これが、太陽の塔のモデルになったのかもしれません。もしそうだとすると、太陽の塔は現代の「縄文土偶」であり、縄文再生のシンボルです。

こうして、生命が深層からよみがえり、地上にのびて機械文明をぶちぬき、もっと高次元の世界をきりひらくのです。太陽の塔の内部にはそれを裏づけるように、生命の進化をしめす系統樹がそだっています。

人間は、機械の歯車になってはいけません。機械に支配されてはなりません。機械は、人間を補佐する道具でしかなく、人間がつかっていくものです。機械文明の進歩をつづけていると機械につかわれる大衆が大量に出現してきます。SF 小説や SF 映画でもすでにしめされているとおりです。




今回の映画『太陽の塔』では、29人の出演者が感想や意見をそれぞれにかたっていますが、けっきょく、まだわからないという人々がおおかったです。たくさんのインタビューをして、それぞれの人の言葉からの「つまみぐい」を編集(合成)しており、十人十色、人それぞれに感想や意見があってよいとおもいますが、監督自身はいったい何をつたえたかったのか? メッセージがつたわってきませんでした。言葉の断片を延々ときかされるだけだとつかれてしまいます。

この映画はきっかけとしてつかい、むしろ、岡本太郎自身がメッセージをたくさんのこしていますので、あらためてそられを見たり読んだりするとよいでしょう。


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▼ 注1
映画『太陽の塔』
監督:関根光才
企画:パルコ
制作:スプーン

▼ 参考サイト
太陽の塔 オフィシャルサイト
万博記念公園
再生!太陽の塔(朝日新聞デジタル)