AI(人工知能)が、医師の役割と医療の方法をかえようとしています。AI をつかえる医師の養成とともに、AI 使用のルールづくりが必要です。
グラフィックサイエンスマガジン『Newton』2018年10月号の連載「人工知能革命」第3回(終)では、人工知能(AI)がかえる医療について解説しています。




  • 脳の断面の画像から、AI が脳血管の異常を指摘
  • 話し方の特徴から AI が精神疾患の有無を判定
  • 手術の “腕” を AI が 客観的に評価
  • がんの全情報をAI が解析し、患者ごとに最適な治療を実現

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医療分野への AI の応用がすすんでいます。大量の医学論文を参照して、患者の症状から病名を推測したり、胃や大腸の内視鏡検査でがんのうたがいのある場所を指摘する AI がすでに開発されています。またカルテの記入や手術をサポートする AI の開発がすすんでいます。あるいは画像診断は AI の得意分野であり、初期値段階のチェックは AI にまかせるようになります。さらに単純な手術は AI ロボットにまかせるようになるかもしれません。

将棋や囲碁で、AI の活用によって従来の常識とはことなるあたらしい戦略がうまれており、同様なことが医療分野でもおころうとしています。

医学においても高度情報化がいちじるしくすすんでいて、これにともなって医師の役割もかわりつつあります。当面は、AI をつかえる医師の役割が大きくなります。

なお医療分野にかぎりませんが AI は、「ディープラーニング」という学習機能をもち、この結果は、人間がみても容易には理解できない形でコンピューターのなかに記録されているので、AI のデータを人間が直接変更して、まちがった学習結果を修正することは困難です。

たとえば動脈硬化の画像を AI にたくさんみせて学習させたつもりが、まちがった特徴をおぼえてしまうということがおこりえます。しかしまちがった学習結果を修正することはほとんどできません。したがって学習させるデータの正確さ、質の高さがきわめて重要になってきます。

AI といえどももとは人間がつくったものです。人間は完璧ではありません。悪人や犯罪者もいます。このような前提のもとで、AI 使用のルールづくりをはやめにおこなうことがもとめられます。AI は、危険性もはらんでいることをわすれてはなりません。


▼ 関連記事
「AI が加速させる自動運転技術」(Newton 2018.8号)
「会話する AI」(Newton 2018.9号)

▼ 参考文献
『Newton』(2018年10月号)ニュートンプレス、2018年10月7日