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チューブの「あ」
(交差法で立体視ができます)
NHK・Eテレの人気番組「デザインあ」が企画展になりました。さまざまなデザインを身体をつかって体験できます。イメージやアイデアがうかび情報処理がすすみます。
企画展「デザインあ展 in TOKYO」が日本科学未来館で開催されています(注1)。NHK Eテレの人気番組「デザインあ」(注2)のコンセプトにもとづいてデザインの視点やかんがえ方を体験するという企画です。体験型展示ですので、子供から大人までたのしみながらデザインについてまなべます。

ステレオ写真は交差法で立体視ができます。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -



チューブの「あ」:あ! ケチャップがたれる。あ! 絵の具がたれる。あ! ボンドがたれる。たれ防止のためにメーカーはどれだけ研究をかさねてきたことか。この「あ」から本展ははじまります。



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たまごの変身
元ひとつのものが変化していきます。分化していきます。発展していきます。これはたまごの「変奏曲」です。スタートはおなじでもゴールはまったくちがいます。多様な世界も元をたどればひとつです。たまご料理は、もっとも簡単でもっとも難しい料理です。



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つめられたもの
ずらりとならんだ食材がギュッとつまってお弁当ができあがります。鱒寿司はシンプルイズベスト。一方、幕の内弁当には多様性の統一、渾沌のシステム化がみられます。渾沌をしてかたらしめる。ここに、幕の内弁当の「美学」があります。



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なかみのかたち
さまざまな容器があります。中には液体がはいっています。中身の形を想像してみよう! 液体あるいは気体があらわす形は空間の形です。たとえば建物内の空間とは壁や床や天井のことではありません。それらによってかこまれた空気のあるところであり、空気の形です。中身の形が想像できれば空間がわかります。



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マークだけの群れ
さまざまな商品にマークだけをのこしてみました。マークのつかわれかたがよくわかります。形とマークで何の商品なのかわかります。でも形がなくてマークだけになったら? マークだけでも結構わかるかも?



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かんばん「あ」
街のなかにはあちこちに看板があります。そこでは文字がマークです。文字の形だけでもそのお店の雰囲気がつたわってきます。お店のなかにはいろうか、やめようか? マークがあなたをうごかします。



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名は顔をあらわす
「あなたの名前はなんですか?」「へのもへ」です。あれ? 名前(文字)から顔がみえる。人間は、たりないものをおぎなってイメージをえがきます。世の中では、文字とイメージが融合しています。



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全国名字かずくらべ
日本全国のおよそ8万の名字をならべています。大小さまざまな四角の大きさは、その名字の人口に比例しています。あなたの名字はどこに位置しているでしょうか? 空間のなかの位置をしることが大切です。 
 


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アン・ドゥ・トロウ(1)
何気ない動作を3つの瞬間であらわします。いったい何をやっているところでしょうか?



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アン・ドゥ・トロウ(2)
子供は何をしているのでしょうか? 想像力をはたらかせてください。



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アン・ドゥ・トロウ(3)
全身のうごきがみえると手先だけのときよりも情報量が圧倒的にふえます。情報量がふえると想像できる枠組みがせまくなります。イメージがさだまりやすくなります。



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器のモンタージュ
さまざまなパーツをくみあわせてあたらしい容器をくみたてる(デザインする)ことができます。固定観念にとらわれない自由な発想がもとめられます。情報も、くみたててみると、あたらしいアイデアがうまれやすくなります。



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抽象度のオブジェ
左側(手前)ほど具象であり、右側(奥)へいくほど抽象化されています。左側ほど複雑であり、右側ほど単純です。左側ほど写実で、右側ほどマークです。現実によって喜怒哀楽が生じ、標識によって行動がうまれます。世の中の物事は、具象と抽象のあいだでたえずゆれうごいています。抽象度のことなるさまざまなオブジェからあなたは何をよみとるでしょうか?



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デッサン あ
東京タワーをよくみてデッサンしてみよう! アウトプットの練習です。えがいたデッサンをスタッフにわたすとスキャンしてくれて、ほかの人のデッサンとともに会場のモニターにうつしだされます。



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もんどころ
ここは紋をえがく場所、「もんどころ」です。ふるくから日本につたわる伝統的な紋のえがきかたに挑戦してください。アウトプットの練習です。梅、瓢、三つ巴、雁金。紋はマークのなかのマーク、統合のシンボルであり、集団のエッセンスです。



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体感のへや
音楽とぴったりシンクロする動画が四方の壁面いっぱいにうつしだされます。360度にひろがるデザイン空間にとりかこまれます。空間に没入します。ここでは、デザインは対象ではありません。デザインの一部にあなたがなるのです。



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じかんのかたち
時間が形になります。時間が空間になります。「そんなバカな」とおもう人がいるかもしれませんが、時間と空間は独立していません。時間と空間は一体です。両者は、同一のもののことなる側面にすぎません。時間を、空間的に表現するさまざまな方法をまなんでください。



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ト〜〜イレ
空間がのびてしまいました。それにしたがってトイレものびてしまいました。このままではつかえません。つかい勝手がよくなるようにデザインしなおさなければなりません。物事のデザインは、そのものだけできめられるのではありません。それがおかれている空間のなかで、全体状況を把握してデザインされます。



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歯車になる
うーん、最後に、おもしろい企画がきました。まずは、歯車そのものになってみます。なりきってみます。しかし 「“歯車” になってはいけません」という人が世の中にはいます。ところが「組織や社会は “歯車” によってなりたっている」という人もいます。“歯車” を批判しておきながら、内心では “歯車” を期待している人もいます。あるいは年をとってから かんがえがかわったという人もいます。このコーナーでは理屈ではなく、とにかく体験してみて、体で反応してみます。すると大人になってから、年をとってから「そういえばあのとき」とおもいだします。“歯車” になるかべきか、なるべきでないか?



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みらいの「あ」
展示会場をあとにして日本科学未来館のホールにでると作品投稿のコーナーがあります。未来ってどんな世界だろう? あなたのイメージを「あ」をつかってえがいてみてください。未来を自分でデザインすれば道がひらけるかもしれません? 未来のイメージが現在にながれこんでくるかもしれません? しっかりとビジョンをおもいうかべることが大切です。


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さて「デザインあ」展はいかがだったでしょうか。デザインは分野をこえて本当におもしろいです。デザインに関心をもてば世の中のみえかたがかわります。

今回の企画展では、さまざまなデザインをみたり、きいたり、さわったりすることができます。人間主体の情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)からいうと、みたりきいたりさわったりすることは情報の内面へのインプットです。そしてあなたはイメージをおもいうかべます。アイデアがでてきます。これらはプロセシングです。

今回の企画展がすぐれているのはアウトプットの場を用意している点にもあります。

  • デッサン あ
  • もんどころ
  • みらいの「あ」

情報処理は、アウトプットしてはじめて完結します。アウトプットまでかならずやらなければなりません。インプットしているだけではよいイメージはうかびません。アイデアもでません。是非、主体的にアウトプットしてみてください(図1)。

180919 デザイン
図1 空間と情報処理


それにしてもデザインの世界にひたっていると言葉や理屈から自由になれます。理屈のない空間がどんなにかろやかで肩のこらない世界であるか、身をもって体験できます。デザインやシンボルがつかいこなせるようになったら人生がかるくなるかもしれません。言葉や理屈や論理はあとからついてくればよいのです。


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▼ 注1
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
特設サイト
※ 写真撮影が許可されています。
会場:日本科学未来館(1階 企画展示ゾーン)
会期:2018年7月19日~10月18日



▼ 注2
NHK Eテレ「デザインあ」